2022(02)
■クリエイターは命懸け
++++
「お前ら! 来週から始まるFMにしうみの新番組を聞け!」
今日はUSDXの新年会配信をやることになっていて、朝霞宅に集合するやいなやカンノが高らかに声を上げた。カンノがFMにしうみの番組を宣伝する意味が全く以って理解出来んが、オレや塩見さんは西海市在住だから、一応聞こうと思えば聞けてしまう。カンノは心なしかオレと塩見さんに宛てて強く言っているようにも見えるものだから面倒臭い。
「……何でFMにしうみ? って、確かコミュニティラジオ局だよな? それとカンが何の関係が」
「俺の曲が公共の電波に乗るからな!」
「もっと掻い摘んで説明せんか。尤も、説明されたところではいそうですかとタダで周波数を合わせるようなオレではないが」
「オメーってそーゆーヤツだよな。去年かな? でじかもさんの配信であっちの視聴者とチーム組んで遊んでたんだけど、それきっかけでそいつにいくらか曲作ってやったんだよ。大学のサークルでラジオやってるからセンスいいBGMは常に探してるって聞いてさ。じゃあ俺が作ってやらなきゃじゃん?」
「ああ、“Dai_Sak”か」
「そーそーダイサクちゃん! ソル、知ってんの?」
「たまにプチメゾンで会うけど、確かFMにしうみでバイトしてるって言ってたな」
「そのダイサクちゃんが来週からFMにしうみで新番組を受け持つとかで、俺に作ってもらった曲使わしてもらっていいですかーっつって連絡もらったんだよ。もちろん俺は使ってちょーだいよっつって返事をしたワケだけども」
いくらゲームでチャンピオンになって気分が良かったとは言え、でじかも氏のファンの視聴者に無償で曲を複数渡すとは。つくづくカンノは阿呆の極みだと思う。趣味でやっていることとは言え、仮にも今はその音楽で金をもらっている人間がそんなことをしてしまえば後がどうなるか。自らも同人サークルを持っているのであればわからんワケではなかろうに。
今回は“Dai_Sak”なる視聴者が律儀に楽曲の使用許可を取るほど真面目だったから良かったものの、それを使って不当に利益を得ようとする可能性も全くないワケではない。現にUSDXで公開している楽曲の二次利用に関してもいろいろと面倒なことになっているようだ。その辺りはキョージュが然るべき措置を取っているようだが。
「そのFMにしうみの新番組っつーのが、前にユーヤがやってた枠でアイツがやってた路線を踏襲した学生番組だそうだ」
「なんだ、そこまで聞ーてんのかよ」
「高崎はインターフェイスでも指折りのアナウンサーだったし、アイツの番組が好評だったからまた学生番組をやってみようかってなったらしいな」
「朝霞お前も事情通かよ!」
「菅野お前、俺が何部で何の仕事をしてたと思ってんだ」
「放送部で狂い散らかしながらステージの台本書いてたイメージしかねーよ」
「お前だって狂い散らかしながら曲書いてたクセに」
「カン、朝霞は向島エリアにある他の大学の放送系団体と連絡を取り合ったり会議や行事に出たりしてたんだぞ」
「へー、そーなんだ。ああ、そんでユーヤとかカズのことも知ってんのか!」
「遅っ!? いやつかお前山口からその辺のことを聞いてたんじゃねーのかよ」
「洋平はあーゆーヤツだから学校の枠とか関係なく友達多いのもわかるけど、部でのお前を見てたらとてもじゃねーけど他の大学の人と真っ当に話してるとは思わねーだろ。誰彼構わずブチ切れてトラブル起こすイメージしかねーわ」
「お前俺を何だと思ってんだよふざけんな!」
「そーゆートコだ!」
朝霞とカンノは大学時代同じ部活でありながらほとんど関わりが無かったということもあり、語られるイメージもなかなかに極端だ(が、朝霞に関しては確かにそう言われればそのように想像することも難くないので短気な男であることには違いない)。ただ、スガノは連中の仕事に対するスタンスは似通っているから話してみると分かり合える部分はあるはずだと前々から思っていたそうだ。
「チータ、毎度の質問になるけど、レイ君てそんなに短気なのかな?」
「チョー短気」
「班長会議の度に当時の部長と喧嘩ばかりしてたし、それでもお前がアイツに手を出さなかったことだけは奇跡だと俺は思ってる」
「放送部時代はガチで命懸けだったからな。自分だけならまだしも、班員の命も預かってるワケだから」
「確かに、奴ならやりかねないけども」
「オレはサークルなどには所属しとらんかったから知らんのだが、たかが大学生のサークルで命のやり取りが行われるのか」
「朝霞は実際殺される一歩手前まで行った」
「えっお前マジで!?」
「アイツの策略にハマってぶっ倒れたのは俺の落ち度もあったけど、ブースの中に盗聴器があったりレーザーポインターで目をやられたり。他にもいろいろ」
「朝霞班マジヤベーじゃん。そら戸田もあんだけスレて口悪くなるわ」
「その時受けた妨害の経験はUSDXに入ってからの企画で役立たせてもらってるけどな。あと、戸田のそれは元々だ」
「え、お前そんだけ嫌がらせされながらあんだけ台本書いてたってこと? しかもその経験を今に生かしてる? うわーキチガイだわー」
「お前にだけは言われたくないって何度言えばわかるんだ!」
どこから何が襲って来るかわからないから常に警戒する感覚はよくわかる、と塩見さんは小さく頷きながら朝霞の経験に耳を傾ける。今でこそ定職と住居を持つが、塩見さんは塩見さんで昔は壮絶な生活だったそうだ。それこそ学生の小競り合い程度ではない命のやり取りの経験もあるとかないとか。どこまでが事実か虚構かはわからんが、朝霞の好きそうな話でしかないだろう。
「えー、何にせよ、そーゆーコトなんで我らがチータのBGMをぜひラジオで聞くんだお前ら!」
end.
++++
フェーズ2でサキがチータにBGMをもらったという話を読み返してて、それってその後どうなった?と思った結果。
PさんとカンDがお互い狂い散らかしてるとか言い合ってるのが良き。
(phase3)
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「お前ら! 来週から始まるFMにしうみの新番組を聞け!」
今日はUSDXの新年会配信をやることになっていて、朝霞宅に集合するやいなやカンノが高らかに声を上げた。カンノがFMにしうみの番組を宣伝する意味が全く以って理解出来んが、オレや塩見さんは西海市在住だから、一応聞こうと思えば聞けてしまう。カンノは心なしかオレと塩見さんに宛てて強く言っているようにも見えるものだから面倒臭い。
「……何でFMにしうみ? って、確かコミュニティラジオ局だよな? それとカンが何の関係が」
「俺の曲が公共の電波に乗るからな!」
「もっと掻い摘んで説明せんか。尤も、説明されたところではいそうですかとタダで周波数を合わせるようなオレではないが」
「オメーってそーゆーヤツだよな。去年かな? でじかもさんの配信であっちの視聴者とチーム組んで遊んでたんだけど、それきっかけでそいつにいくらか曲作ってやったんだよ。大学のサークルでラジオやってるからセンスいいBGMは常に探してるって聞いてさ。じゃあ俺が作ってやらなきゃじゃん?」
「ああ、“Dai_Sak”か」
「そーそーダイサクちゃん! ソル、知ってんの?」
「たまにプチメゾンで会うけど、確かFMにしうみでバイトしてるって言ってたな」
「そのダイサクちゃんが来週からFMにしうみで新番組を受け持つとかで、俺に作ってもらった曲使わしてもらっていいですかーっつって連絡もらったんだよ。もちろん俺は使ってちょーだいよっつって返事をしたワケだけども」
いくらゲームでチャンピオンになって気分が良かったとは言え、でじかも氏のファンの視聴者に無償で曲を複数渡すとは。つくづくカンノは阿呆の極みだと思う。趣味でやっていることとは言え、仮にも今はその音楽で金をもらっている人間がそんなことをしてしまえば後がどうなるか。自らも同人サークルを持っているのであればわからんワケではなかろうに。
今回は“Dai_Sak”なる視聴者が律儀に楽曲の使用許可を取るほど真面目だったから良かったものの、それを使って不当に利益を得ようとする可能性も全くないワケではない。現にUSDXで公開している楽曲の二次利用に関してもいろいろと面倒なことになっているようだ。その辺りはキョージュが然るべき措置を取っているようだが。
「そのFMにしうみの新番組っつーのが、前にユーヤがやってた枠でアイツがやってた路線を踏襲した学生番組だそうだ」
「なんだ、そこまで聞ーてんのかよ」
「高崎はインターフェイスでも指折りのアナウンサーだったし、アイツの番組が好評だったからまた学生番組をやってみようかってなったらしいな」
「朝霞お前も事情通かよ!」
「菅野お前、俺が何部で何の仕事をしてたと思ってんだ」
「放送部で狂い散らかしながらステージの台本書いてたイメージしかねーよ」
「お前だって狂い散らかしながら曲書いてたクセに」
「カン、朝霞は向島エリアにある他の大学の放送系団体と連絡を取り合ったり会議や行事に出たりしてたんだぞ」
「へー、そーなんだ。ああ、そんでユーヤとかカズのことも知ってんのか!」
「遅っ!? いやつかお前山口からその辺のことを聞いてたんじゃねーのかよ」
「洋平はあーゆーヤツだから学校の枠とか関係なく友達多いのもわかるけど、部でのお前を見てたらとてもじゃねーけど他の大学の人と真っ当に話してるとは思わねーだろ。誰彼構わずブチ切れてトラブル起こすイメージしかねーわ」
「お前俺を何だと思ってんだよふざけんな!」
「そーゆートコだ!」
朝霞とカンノは大学時代同じ部活でありながらほとんど関わりが無かったということもあり、語られるイメージもなかなかに極端だ(が、朝霞に関しては確かにそう言われればそのように想像することも難くないので短気な男であることには違いない)。ただ、スガノは連中の仕事に対するスタンスは似通っているから話してみると分かり合える部分はあるはずだと前々から思っていたそうだ。
「チータ、毎度の質問になるけど、レイ君てそんなに短気なのかな?」
「チョー短気」
「班長会議の度に当時の部長と喧嘩ばかりしてたし、それでもお前がアイツに手を出さなかったことだけは奇跡だと俺は思ってる」
「放送部時代はガチで命懸けだったからな。自分だけならまだしも、班員の命も預かってるワケだから」
「確かに、奴ならやりかねないけども」
「オレはサークルなどには所属しとらんかったから知らんのだが、たかが大学生のサークルで命のやり取りが行われるのか」
「朝霞は実際殺される一歩手前まで行った」
「えっお前マジで!?」
「アイツの策略にハマってぶっ倒れたのは俺の落ち度もあったけど、ブースの中に盗聴器があったりレーザーポインターで目をやられたり。他にもいろいろ」
「朝霞班マジヤベーじゃん。そら戸田もあんだけスレて口悪くなるわ」
「その時受けた妨害の経験はUSDXに入ってからの企画で役立たせてもらってるけどな。あと、戸田のそれは元々だ」
「え、お前そんだけ嫌がらせされながらあんだけ台本書いてたってこと? しかもその経験を今に生かしてる? うわーキチガイだわー」
「お前にだけは言われたくないって何度言えばわかるんだ!」
どこから何が襲って来るかわからないから常に警戒する感覚はよくわかる、と塩見さんは小さく頷きながら朝霞の経験に耳を傾ける。今でこそ定職と住居を持つが、塩見さんは塩見さんで昔は壮絶な生活だったそうだ。それこそ学生の小競り合い程度ではない命のやり取りの経験もあるとかないとか。どこまでが事実か虚構かはわからんが、朝霞の好きそうな話でしかないだろう。
「えー、何にせよ、そーゆーコトなんで我らがチータのBGMをぜひラジオで聞くんだお前ら!」
end.
++++
フェーズ2でサキがチータにBGMをもらったという話を読み返してて、それってその後どうなった?と思った結果。
PさんとカンDがお互い狂い散らかしてるとか言い合ってるのが良き。
(phase3)
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