2022(02)
■気付けばワーカホリック
++++
「おーすジュン」
「奏多先輩、これから何が始まるんですか」
「さあ。忘年会とは聞いてるけど、どこの誰が来んのかとか、諸々の情報は俺も持ってねーからなァ」
奏多先輩から「忘年会に誘われたからお前も来いよ」と誘われ、指定された日時、場所に向かう。待ち合わせ以外の情報を一切聞かされてないので正直不安でしかない。
どうやら奏多先輩も詳細な情報は持っていないようで、そんなところによく人を誘ったなと……いや、もしかしなくても俺は巻き添えを食らったのか(そんな場所に春風先輩を誘うと怒られそうだし)。
「えーと、ここかな?」
どうやら会場であるらしい店の暖簾をくぐると、煙と香ばしいいい匂いがする。見た感じ、焼き鳥の居酒屋か。
「……どーしたモンか。全っ然わかる顔がいねー。店間違えたか? ……いや、玄だよな? 合ってるはずだ」
「奏多先輩、これ、俺たちはどうすれば」
「あ、松兄。それにジュン。いらっしゃい」
「高木さぁん! アンタの存在が今ほど神懸かって見えたことはないっす! 忘年会の参加者すか!?」
「そうだね。つばめ会の忘年会ならこっちだよ」
緑ヶ丘の高木先輩がトイレからひょっこりと顔を出してくれたおかげで店が間違っていないことがわかり一安心。こっちだよ、と言われてついて行く。店の奥の小上がりが忘年会会場のようだ。
「戸田先輩、向島の子たちが来てくれましたよ」
「おー、本日の目玉だね! アンタらも座んな」
「め、目玉…?」
「今をときめく映像クリエーターの新星が来るって聞いてんだけど、どっち?」
「そ~れはこっちっす! ウチのジュンです~」
「そう、アンタがジュンか。アタシは星ヶ丘の4年で、この会の主催やってる戸田つばめってんだ」
「向島の1年の、鷹来純平です」
「で、アンタは?」
「2年の松居奏多。一応俺も、定例会のシステム構築班って意味じゃ、新星だと思うんすけどね~」
「アンタ調子いいヤツだね」
「ま、ダテに22年生きてないんで? そこらの2年よか2年長く生きてる分、好き勝手やらせてもらってますわ」
今をときめく映像クリエーターとか、どんな話になってるんだと思いつつも、いちいち否定したりリアクションしたりするのが面倒になってきたので最近では聞き流すことを覚えた。
高木先輩によると、この戸田さんが“気のいい連中”を集めた飲みというのが不定期開催されていて、それを高木先輩は内々に“つばめ会”と呼んでいるそうだ。
それにどうして俺が呼ばれたのかは謎だけど、周りには知らない人もたくさんいるし、みんながみんな現役の人というワケでもなさそうだ。変に浮かないようにだけ気をつけよう。
「ところで、俺はハナさん経由でこの忘年会に誘われたんすけど、どういう経緯でこうなったんすか? その割にハナさんいねーし」
「とりあえず飲むモン決めな。フードは最初5種盛り頼んどけば間違いないから」
「じゃ生と5種盛りで。ジュン、お前は」
「えーと、そしたら俺も同じので」
「おやっさーん! 生2と5種盛り2ー! そう、アタシは向島で三井が暴れ散らかしたっておハナから聞いたエージから又聞きして、話を聞いてくと三井相手に正面から啖呵切った活きのいい1年がいるっていうんで、飲んでみたいなって思ったんよ」
「あ、それじゃあ用事があったのはジュンの方で、俺はバーターっつーか連絡役やってるついでに誘われたと」
「でもアンタもまあまあ面白そうなヤツじゃん。ちなみにおハナは家飲み派で、こういう現場に来ることは稀だね」
少しして出てきた焼き鳥が本当においしい。5種盛りは定番の串をしっかりと押さえてあるので、俺の好きなねぎまもあって第一印象はとてもいい。食べる前に写真も撮ったので、帰ったら備忘録として絵にしよう。
「と言うか、俺がブチ切れ一歩手前まで行った話が他校にまで伝わってるとか、恥ずかしすぎます。作品が一人歩きするよりよっぽどの恥です」
「あーあー、問題ない問題ない。アタシも対策委員時代は三井にブチ切れてたし、このみちるはウチの秘密兵器だけど、コイツは夏合宿で乱闘起こした前科持ちだ」
「みちる先輩は夏合宿で同じ班で、今もお世話になってます」
「そーなんだ」
「たまに彩人がバイトしてる店にコーヒーを飲みに行ってるんですよ」
「へー、オシャンなの飲むんだねー」
「みちる先輩に教えてもらってハマりました」
「へえ。ジュン、コーヒーが好きなんだったら土田先輩にいろいろ教えてもらえばいいよ」
「えーと、律先輩ですね」
「土田先輩は本当にコーヒーに詳しいし、淹れるのも上手いそうだから」
「殿とパロが律先輩のバイトしている喫茶店に何度か行ってるそうですけど、本当に美味しいらしいですね」
みちる先輩が“秘密兵器”と称されるのは何となくわかるかもしれない。夏合宿の班でも北星先輩をシバく役割を担っていたそうだし(実際には派手にシバく必要はなかったようだけども)。たまにコーヒーを飲みながらいろいろ話すけど、その内容にもたまに“兵器”らしさが滲み出ていると言うか。おさげに眼鏡という大人しそうな風貌とはかけ離れているんだよな。
つばめ会が陣取る小上がりにはまだいくつか席が空いている。今日の会は別に時間がきっちり決まっているワケではないので自由な時間に来て満足したら帰って行く、というフリースタイルだそうだ。この店は戸田さんのホームで、店主の方ともツーカーのような感じ。いろいろ話していると、こちらの席にまた人が増える。
「おっ、やってんな戸田」
「ったく、こちとら年末でクソ忙しいんだぞ」
「朝霞サン高崎サンお勤めご苦労さまでーす。さ、上がって上がって。って言うか仕事納めいつ?」
「俺は明日だ。法律で決まってっから」
「へー、お役所ってそーなんだ。朝霞サンは?」
「俺の仕事に仕事納めという概念はない」
「出たよ出たよー」
「で、今日の会はどういうコンセプトのメンツが呼ばれてんだ?」
「インターフェイスブチ切れ三銃士的なアレです」
「あ? だったら俺は違えだろ」
「そーゆートコ。でもたまに違う人も混ざってますよ、タカティとか。でも基本コンセプトはブチ切れ三銃士なんで」
「まあ、お前とみちるはわかるけど、他のメンバーはどの辺がブチ切れなんだ?」
「エマは去年乱闘起こした向島の女にブチ切れてたし、ジュンはこないだ向島に乗り込んで先輩風吹かせてきた三井にブチ切れたって話だよ」
「4人いるなら三銃士じゃなくて四天王だろ」
「じゃその四天王を統べんのは朝霞サンだね。アタシアンタ以上にブチ切れまくってる人見たこと無いわ」
「なんだと!?」
「ほらー、自己紹介もしないうちから可愛い後輩に怒鳴り散らかすから朝霞サンのコト知らない子がビビってるよー」
「誰の所為だと思ってんだ戸田ぁ!」
この間局で挨拶をさせてもらった高崎先輩に、戸田さん曰く近年のインターフェイス一短気の朝霞さん。社会人の人にまで声がかかっている飲み会は混沌を極めている。でも、今はこういった意図しない出会いも楽しめるようになっている。これも心の余裕なのかもしれない。
「この朝霞サンて人がねー、現役時代は泣く子も黙るステージバカだったワケ。台本書く合間に別の台本書いてるし、それで食事も睡眠も抜くからね」
「ジュン、お前はさすがにそこまでイってねーよな?」
「干し芋を食べてるんで飢えはしてないです」
「純平、お前のその手の話を聞く度に思うんだが、逆に干し芋以外の物を食ってねえんじゃねえのか」
「あ、いや~……ねえ。手に届くところにありますし、ワンハンドで食べられるんで食べてる間も右手は動かせますし、程良く糖分があって腹持ちがいいので制作途中の間食としては本当に優秀でして」
「なるほど、いいことを聞いた。干し芋か」
「いいですよ、干し芋」
「ジュンから朝霞サンみをちょっと感じたわ。アンタ、周りから飯食えとか寝ろとか休めとか、そーゆー声かけされてたらちゃんと聞きなね。ぶっ倒れられたらその介抱がめんどくさいから! ねえ朝霞サン! アンタレッドブル買いに人畜無害なディレクターパシらせてたよね!」
「あ~……えーと、何だ。そーゆーコトなんで、制作活動は、1日当たりの時間を決めてですね、えーと」
「誰よりも守れてねえ奴が何か言ってるぞ。壮馬から聞いたぞ、まーた音楽祭にハブられてブチ切れた結果の詞が送られてきたって」
「今年はハブられたんじゃない! 仕事だ! 伊東さんが先に有給取ってる以上俺が出るしかねーだろ!」
「……ああ、事情は察した」
どうやら話の流れの空気を読むに、朝霞さんは作業に没頭すると周りが見えなくなる人で、それを補佐してお世話していたのが戸田さんはじめ周りの人たち、ということになるのだろう。あ、何だろう、みんなの顔が浮かんでちょっと胸が痛む。もしかしてこれが良心?
「飯食えとか寝ろとか休めとか? ジュン、そーいやお前サークルメンバーらから顔合わす度に言われてんなァ?」
「で、でも、しょうがないじゃないですか。作業には流れというものがあって、手を止めるとまた波に乗るまでが長いんです」
「その通り!」
「朝霞サンは黙ってな」
「ぐっ」
「社会人になっても何一つ態度を改めもしないで同期の旦那に毎日弁当作らせてる人が言えることはないよ」
「うるせえ、タダではやってもらってねーよ」
「……ちょっと、俺にも飛び火でダメージが」
「高木、お前は相変わらずエージに飯作らせてんのか」
「さすがに毎日ではないですけど」
「ジュン、一応聞くけどエナドリには手ぇ出してないよね?」
「それは飲んでないです」
「なら良し」
「ジュンだっけ。他人とは思えないし、俺持ちでだし巻き玉子食べよう。玄のだし巻きは美味いぞ」
「すみません、いただきます」
「あと、これまでの作品って今見れる?」
end.
++++
三井サンの話をしたかったけど、飲み会の現場なんて所詮こんなもの。楽しい話をしてるくらいがちょうどいい。
Pさんは現在鬼のプロデューサーでないので対つばちゃんもちょっと朝霞班比で穏やか。朝霞班は正義。
年末なのにTKGは帰ってないんかって思ったけど、このために少し残ってた可能性もほんのわずかに
(phase3)
.
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「おーすジュン」
「奏多先輩、これから何が始まるんですか」
「さあ。忘年会とは聞いてるけど、どこの誰が来んのかとか、諸々の情報は俺も持ってねーからなァ」
奏多先輩から「忘年会に誘われたからお前も来いよ」と誘われ、指定された日時、場所に向かう。待ち合わせ以外の情報を一切聞かされてないので正直不安でしかない。
どうやら奏多先輩も詳細な情報は持っていないようで、そんなところによく人を誘ったなと……いや、もしかしなくても俺は巻き添えを食らったのか(そんな場所に春風先輩を誘うと怒られそうだし)。
「えーと、ここかな?」
どうやら会場であるらしい店の暖簾をくぐると、煙と香ばしいいい匂いがする。見た感じ、焼き鳥の居酒屋か。
「……どーしたモンか。全っ然わかる顔がいねー。店間違えたか? ……いや、玄だよな? 合ってるはずだ」
「奏多先輩、これ、俺たちはどうすれば」
「あ、松兄。それにジュン。いらっしゃい」
「高木さぁん! アンタの存在が今ほど神懸かって見えたことはないっす! 忘年会の参加者すか!?」
「そうだね。つばめ会の忘年会ならこっちだよ」
緑ヶ丘の高木先輩がトイレからひょっこりと顔を出してくれたおかげで店が間違っていないことがわかり一安心。こっちだよ、と言われてついて行く。店の奥の小上がりが忘年会会場のようだ。
「戸田先輩、向島の子たちが来てくれましたよ」
「おー、本日の目玉だね! アンタらも座んな」
「め、目玉…?」
「今をときめく映像クリエーターの新星が来るって聞いてんだけど、どっち?」
「そ~れはこっちっす! ウチのジュンです~」
「そう、アンタがジュンか。アタシは星ヶ丘の4年で、この会の主催やってる戸田つばめってんだ」
「向島の1年の、鷹来純平です」
「で、アンタは?」
「2年の松居奏多。一応俺も、定例会のシステム構築班って意味じゃ、新星だと思うんすけどね~」
「アンタ調子いいヤツだね」
「ま、ダテに22年生きてないんで? そこらの2年よか2年長く生きてる分、好き勝手やらせてもらってますわ」
今をときめく映像クリエーターとか、どんな話になってるんだと思いつつも、いちいち否定したりリアクションしたりするのが面倒になってきたので最近では聞き流すことを覚えた。
高木先輩によると、この戸田さんが“気のいい連中”を集めた飲みというのが不定期開催されていて、それを高木先輩は内々に“つばめ会”と呼んでいるそうだ。
それにどうして俺が呼ばれたのかは謎だけど、周りには知らない人もたくさんいるし、みんながみんな現役の人というワケでもなさそうだ。変に浮かないようにだけ気をつけよう。
「ところで、俺はハナさん経由でこの忘年会に誘われたんすけど、どういう経緯でこうなったんすか? その割にハナさんいねーし」
「とりあえず飲むモン決めな。フードは最初5種盛り頼んどけば間違いないから」
「じゃ生と5種盛りで。ジュン、お前は」
「えーと、そしたら俺も同じので」
「おやっさーん! 生2と5種盛り2ー! そう、アタシは向島で三井が暴れ散らかしたっておハナから聞いたエージから又聞きして、話を聞いてくと三井相手に正面から啖呵切った活きのいい1年がいるっていうんで、飲んでみたいなって思ったんよ」
「あ、それじゃあ用事があったのはジュンの方で、俺はバーターっつーか連絡役やってるついでに誘われたと」
「でもアンタもまあまあ面白そうなヤツじゃん。ちなみにおハナは家飲み派で、こういう現場に来ることは稀だね」
少しして出てきた焼き鳥が本当においしい。5種盛りは定番の串をしっかりと押さえてあるので、俺の好きなねぎまもあって第一印象はとてもいい。食べる前に写真も撮ったので、帰ったら備忘録として絵にしよう。
「と言うか、俺がブチ切れ一歩手前まで行った話が他校にまで伝わってるとか、恥ずかしすぎます。作品が一人歩きするよりよっぽどの恥です」
「あーあー、問題ない問題ない。アタシも対策委員時代は三井にブチ切れてたし、このみちるはウチの秘密兵器だけど、コイツは夏合宿で乱闘起こした前科持ちだ」
「みちる先輩は夏合宿で同じ班で、今もお世話になってます」
「そーなんだ」
「たまに彩人がバイトしてる店にコーヒーを飲みに行ってるんですよ」
「へー、オシャンなの飲むんだねー」
「みちる先輩に教えてもらってハマりました」
「へえ。ジュン、コーヒーが好きなんだったら土田先輩にいろいろ教えてもらえばいいよ」
「えーと、律先輩ですね」
「土田先輩は本当にコーヒーに詳しいし、淹れるのも上手いそうだから」
「殿とパロが律先輩のバイトしている喫茶店に何度か行ってるそうですけど、本当に美味しいらしいですね」
みちる先輩が“秘密兵器”と称されるのは何となくわかるかもしれない。夏合宿の班でも北星先輩をシバく役割を担っていたそうだし(実際には派手にシバく必要はなかったようだけども)。たまにコーヒーを飲みながらいろいろ話すけど、その内容にもたまに“兵器”らしさが滲み出ていると言うか。おさげに眼鏡という大人しそうな風貌とはかけ離れているんだよな。
つばめ会が陣取る小上がりにはまだいくつか席が空いている。今日の会は別に時間がきっちり決まっているワケではないので自由な時間に来て満足したら帰って行く、というフリースタイルだそうだ。この店は戸田さんのホームで、店主の方ともツーカーのような感じ。いろいろ話していると、こちらの席にまた人が増える。
「おっ、やってんな戸田」
「ったく、こちとら年末でクソ忙しいんだぞ」
「朝霞サン高崎サンお勤めご苦労さまでーす。さ、上がって上がって。って言うか仕事納めいつ?」
「俺は明日だ。法律で決まってっから」
「へー、お役所ってそーなんだ。朝霞サンは?」
「俺の仕事に仕事納めという概念はない」
「出たよ出たよー」
「で、今日の会はどういうコンセプトのメンツが呼ばれてんだ?」
「インターフェイスブチ切れ三銃士的なアレです」
「あ? だったら俺は違えだろ」
「そーゆートコ。でもたまに違う人も混ざってますよ、タカティとか。でも基本コンセプトはブチ切れ三銃士なんで」
「まあ、お前とみちるはわかるけど、他のメンバーはどの辺がブチ切れなんだ?」
「エマは去年乱闘起こした向島の女にブチ切れてたし、ジュンはこないだ向島に乗り込んで先輩風吹かせてきた三井にブチ切れたって話だよ」
「4人いるなら三銃士じゃなくて四天王だろ」
「じゃその四天王を統べんのは朝霞サンだね。アタシアンタ以上にブチ切れまくってる人見たこと無いわ」
「なんだと!?」
「ほらー、自己紹介もしないうちから可愛い後輩に怒鳴り散らかすから朝霞サンのコト知らない子がビビってるよー」
「誰の所為だと思ってんだ戸田ぁ!」
この間局で挨拶をさせてもらった高崎先輩に、戸田さん曰く近年のインターフェイス一短気の朝霞さん。社会人の人にまで声がかかっている飲み会は混沌を極めている。でも、今はこういった意図しない出会いも楽しめるようになっている。これも心の余裕なのかもしれない。
「この朝霞サンて人がねー、現役時代は泣く子も黙るステージバカだったワケ。台本書く合間に別の台本書いてるし、それで食事も睡眠も抜くからね」
「ジュン、お前はさすがにそこまでイってねーよな?」
「干し芋を食べてるんで飢えはしてないです」
「純平、お前のその手の話を聞く度に思うんだが、逆に干し芋以外の物を食ってねえんじゃねえのか」
「あ、いや~……ねえ。手に届くところにありますし、ワンハンドで食べられるんで食べてる間も右手は動かせますし、程良く糖分があって腹持ちがいいので制作途中の間食としては本当に優秀でして」
「なるほど、いいことを聞いた。干し芋か」
「いいですよ、干し芋」
「ジュンから朝霞サンみをちょっと感じたわ。アンタ、周りから飯食えとか寝ろとか休めとか、そーゆー声かけされてたらちゃんと聞きなね。ぶっ倒れられたらその介抱がめんどくさいから! ねえ朝霞サン! アンタレッドブル買いに人畜無害なディレクターパシらせてたよね!」
「あ~……えーと、何だ。そーゆーコトなんで、制作活動は、1日当たりの時間を決めてですね、えーと」
「誰よりも守れてねえ奴が何か言ってるぞ。壮馬から聞いたぞ、まーた音楽祭にハブられてブチ切れた結果の詞が送られてきたって」
「今年はハブられたんじゃない! 仕事だ! 伊東さんが先に有給取ってる以上俺が出るしかねーだろ!」
「……ああ、事情は察した」
どうやら話の流れの空気を読むに、朝霞さんは作業に没頭すると周りが見えなくなる人で、それを補佐してお世話していたのが戸田さんはじめ周りの人たち、ということになるのだろう。あ、何だろう、みんなの顔が浮かんでちょっと胸が痛む。もしかしてこれが良心?
「飯食えとか寝ろとか休めとか? ジュン、そーいやお前サークルメンバーらから顔合わす度に言われてんなァ?」
「で、でも、しょうがないじゃないですか。作業には流れというものがあって、手を止めるとまた波に乗るまでが長いんです」
「その通り!」
「朝霞サンは黙ってな」
「ぐっ」
「社会人になっても何一つ態度を改めもしないで同期の旦那に毎日弁当作らせてる人が言えることはないよ」
「うるせえ、タダではやってもらってねーよ」
「……ちょっと、俺にも飛び火でダメージが」
「高木、お前は相変わらずエージに飯作らせてんのか」
「さすがに毎日ではないですけど」
「ジュン、一応聞くけどエナドリには手ぇ出してないよね?」
「それは飲んでないです」
「なら良し」
「ジュンだっけ。他人とは思えないし、俺持ちでだし巻き玉子食べよう。玄のだし巻きは美味いぞ」
「すみません、いただきます」
「あと、これまでの作品って今見れる?」
end.
++++
三井サンの話をしたかったけど、飲み会の現場なんて所詮こんなもの。楽しい話をしてるくらいがちょうどいい。
Pさんは現在鬼のプロデューサーでないので対つばちゃんもちょっと朝霞班比で穏やか。朝霞班は正義。
年末なのにTKGは帰ってないんかって思ったけど、このために少し残ってた可能性もほんのわずかに
(phase3)
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