2022(02)
■ケーキ食べる大会での役割
++++
「えーと、地図的にはここでいいのかな」
くるみから指示された場所へ、徹平くんと一緒に向かいます。みちるさん宅でクリスマスケーキを食べる会をやってるから来てねと誘われていたのです。くるみが趣味で撮影しているコンビニスイーツの断面動画は、クリスマスケーキもその対象のようなのです。コンビニ各社が発売したホールケーキをいくつか選りすぐって断面の撮影をしたそうなのですが、それに使ったケーキを食べなければならないのです。
「ああ、すがやんに春風。狭いところだけどどうぞ上がって。くるみー、すがやんと春風ー」
「あーっ、すがやーん! とりぃもー! 今日はどんっどん食べてって!」
「ブログ見たけどいくつ割ってんだよ。絶対8じゃなかったよな?」
「だって我慢できなかったんだもん!」
「で、ノルマは?」
「男子は5つ以上は食べて欲しいな」
「5つかー、結構だな」
「でもすがやん満腹セット食べたんでしょ? イケるイケる! 女子はお腹の容量が許すまでって感じで」
「くるみ、お腹の容量が許すまでというのは、可愛らしい量に限らないという解釈でいいですか?」
「どんっどん食べちゃって。あたしの奢りだから」
最終的にホールケーキは10台、二桁の大台に乗り、それに比例して動画編集の助っ人として働く北星さんの仕事が増えていくという構図になります。クリスマスケーキの受け取りは日にちの決まっていることですし、ネタとしての鮮度のこともあります。ケーキを受け取ってから出来るだけ早く割って、撮って、編集して、上げる。これだけの行程をこなさなければならないのです。
割ったケーキはくるみがまず味を見てレビューをしていて、残った分がこの会に出されています。ケーキは8等分されているので、くるみが食べた分を除いて7ピースが10種類で、70ピースのケーキが並ぶ現場です。まるでバイキング会場のようでもあります。これだけのケーキを目の当たりにして、改めて自分の役割を確認しました。罪悪感など置いてきました。
「どれにしようかなー、こんだけあると悩むな」
「徹平くんが好きそうなのはあれじゃない? ミルフィーユの。それかあのナポレオンパイとか」
「あっ、ホントだうまそー。じゃ俺これとこれ食べよ。春風はどれ食べる?」
「私はとりあえず1ピースずつ食べ回ろうかと。……確認するけど、本当に食べても?」
「いいです」
「まずは定番のイチゴのケーキにしようかな。いただきます。……んーっ、美味しいです! くるみ、とても美味しいですよ!」
「さすがとりぃ、お目が高い! それ、今回の目玉だよ!」
「目玉なのですか?」
「大奮発も大奮発、この企画やるなら絶対割らなきゃいけないっていう意地とプライドのケーキで、お値段なんと税込み12000円!」
「い、12000円!? 割る8……い、いけないいけない、計算してはいけません。くるみ、さすがにそれを参加費なしではいただけません」
「助けてもらってるのはあたしの方だし、食べてもらった方が嬉しいんだよ」
この会に参加する前にコンビニのクリスマスケーキの相場というものを調べていたのですが、それをあっさりと越えて来るグレードのケーキに驚くばかりです。そしてくるみはこれを絶対に割らなければならないと言い切りました。コンビニスイーツを紹介するブロガーとしては、避けて通ることが出来ない物だというのは理解出来ますが。
「春風、あれ、くるみに渡したら?」
「あれ?」
「参加費なしとは聞いていましたが、コンビニのクリスマスケーキの相場を調べるとさすがに手ぶらでごちそうになりに行くだけでは申し訳なかったので、クリスマスプレゼント名目でくるみにこれを」
「えーっ、そんなわざわざ! 開けていい?」
「どうぞ」
「これってハンドクリーム? あんま見たことないのだけど」
「くるみは動画でケーキを割る時に、少し手が映りますよね。ですから、せっかくのケーキを映えさせるために手のコンディションを整えてもらえたらいいなあと思ったのです。そのクリームは、私の兄が使っている物なのです。兄は職業柄、洗浄力の非常に強い洗剤で頻繁に手を洗うのですが、その後にこれを塗ると乾燥や荒れなども防げるそうなのです。実際兄の手は綺麗なのですよ。お肌に合えばいいのですが」
「へー、ありがとー! 今使ってるのが無くなったら使うねー」
「はい。ぜひ」
「でも、そんなにいいクリームだったら実際いい値段しちゃうんじゃ?」
「このケーキ程ではないので安心してください」
「とりぃ、ホントにどんっどん食べてね! って言うかこれは人助けだから! サキなんて戦力になれないからーって言って来てくれなかったしー」
サキさんは小食ですし、量を食べることを期待される会では厳しそうです。自分の力量をきちんと把握して、無謀な戦いをしないという点は普段ゲームをしているときのスタイルにも通じるなと思いますが。
「今年は4つ5つ食わなきゃいけないなら尚更サキの出る幕はなかっただろ」
「じゃあその分すがやんが食べるんだよ!」
「あ、いや、俺は1人分のノルマで精一杯だし、そういうのはササに頼んでくれねーかなマジで」
「ササはもう彩人が食べれない分を食べてくれてるの!」
「徹平くん、私が食べるから心配しないで」
「それはそれであんまりカッコよくないんで、今日の俺のノルマは6だな! くるみ、これでどーだ!」
「じゃ、すがやんはそーゆ―ことで頑張ってね! コーヒーも紅茶も用意してあるから」
食べる順番を間違えると死ぬな、と徹平くんは作戦を立て始めました。徹平くんは甘いものは好きですが、比較的あっさりとした物が好みのようなので、濃厚な物が続くと苦しくなりそうです。適度にフルーツの乗った物を挟んでいくのがいいでしょう。
「私もそろそろ次をもらおうかな。どれにしよう? うーん、これだけあると悩みますね」
「結局は全部食べるんだろ?」
「全部食べるけど、食べる順番を悩むのも楽しみのひとつだから。イチゴを食べたし、次はキャラメルにしようかな」
end.
++++
彩人は別に小食じゃないけど甘いものばっかりたくさんは食べられない。しょっぱい物も欲しいタイプ。
今回のポイントはすがやんに対しては口調が少しずつ砕け始めている春風。
(phase3)
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「えーと、地図的にはここでいいのかな」
くるみから指示された場所へ、徹平くんと一緒に向かいます。みちるさん宅でクリスマスケーキを食べる会をやってるから来てねと誘われていたのです。くるみが趣味で撮影しているコンビニスイーツの断面動画は、クリスマスケーキもその対象のようなのです。コンビニ各社が発売したホールケーキをいくつか選りすぐって断面の撮影をしたそうなのですが、それに使ったケーキを食べなければならないのです。
「ああ、すがやんに春風。狭いところだけどどうぞ上がって。くるみー、すがやんと春風ー」
「あーっ、すがやーん! とりぃもー! 今日はどんっどん食べてって!」
「ブログ見たけどいくつ割ってんだよ。絶対8じゃなかったよな?」
「だって我慢できなかったんだもん!」
「で、ノルマは?」
「男子は5つ以上は食べて欲しいな」
「5つかー、結構だな」
「でもすがやん満腹セット食べたんでしょ? イケるイケる! 女子はお腹の容量が許すまでって感じで」
「くるみ、お腹の容量が許すまでというのは、可愛らしい量に限らないという解釈でいいですか?」
「どんっどん食べちゃって。あたしの奢りだから」
最終的にホールケーキは10台、二桁の大台に乗り、それに比例して動画編集の助っ人として働く北星さんの仕事が増えていくという構図になります。クリスマスケーキの受け取りは日にちの決まっていることですし、ネタとしての鮮度のこともあります。ケーキを受け取ってから出来るだけ早く割って、撮って、編集して、上げる。これだけの行程をこなさなければならないのです。
割ったケーキはくるみがまず味を見てレビューをしていて、残った分がこの会に出されています。ケーキは8等分されているので、くるみが食べた分を除いて7ピースが10種類で、70ピースのケーキが並ぶ現場です。まるでバイキング会場のようでもあります。これだけのケーキを目の当たりにして、改めて自分の役割を確認しました。罪悪感など置いてきました。
「どれにしようかなー、こんだけあると悩むな」
「徹平くんが好きそうなのはあれじゃない? ミルフィーユの。それかあのナポレオンパイとか」
「あっ、ホントだうまそー。じゃ俺これとこれ食べよ。春風はどれ食べる?」
「私はとりあえず1ピースずつ食べ回ろうかと。……確認するけど、本当に食べても?」
「いいです」
「まずは定番のイチゴのケーキにしようかな。いただきます。……んーっ、美味しいです! くるみ、とても美味しいですよ!」
「さすがとりぃ、お目が高い! それ、今回の目玉だよ!」
「目玉なのですか?」
「大奮発も大奮発、この企画やるなら絶対割らなきゃいけないっていう意地とプライドのケーキで、お値段なんと税込み12000円!」
「い、12000円!? 割る8……い、いけないいけない、計算してはいけません。くるみ、さすがにそれを参加費なしではいただけません」
「助けてもらってるのはあたしの方だし、食べてもらった方が嬉しいんだよ」
この会に参加する前にコンビニのクリスマスケーキの相場というものを調べていたのですが、それをあっさりと越えて来るグレードのケーキに驚くばかりです。そしてくるみはこれを絶対に割らなければならないと言い切りました。コンビニスイーツを紹介するブロガーとしては、避けて通ることが出来ない物だというのは理解出来ますが。
「春風、あれ、くるみに渡したら?」
「あれ?」
「参加費なしとは聞いていましたが、コンビニのクリスマスケーキの相場を調べるとさすがに手ぶらでごちそうになりに行くだけでは申し訳なかったので、クリスマスプレゼント名目でくるみにこれを」
「えーっ、そんなわざわざ! 開けていい?」
「どうぞ」
「これってハンドクリーム? あんま見たことないのだけど」
「くるみは動画でケーキを割る時に、少し手が映りますよね。ですから、せっかくのケーキを映えさせるために手のコンディションを整えてもらえたらいいなあと思ったのです。そのクリームは、私の兄が使っている物なのです。兄は職業柄、洗浄力の非常に強い洗剤で頻繁に手を洗うのですが、その後にこれを塗ると乾燥や荒れなども防げるそうなのです。実際兄の手は綺麗なのですよ。お肌に合えばいいのですが」
「へー、ありがとー! 今使ってるのが無くなったら使うねー」
「はい。ぜひ」
「でも、そんなにいいクリームだったら実際いい値段しちゃうんじゃ?」
「このケーキ程ではないので安心してください」
「とりぃ、ホントにどんっどん食べてね! って言うかこれは人助けだから! サキなんて戦力になれないからーって言って来てくれなかったしー」
サキさんは小食ですし、量を食べることを期待される会では厳しそうです。自分の力量をきちんと把握して、無謀な戦いをしないという点は普段ゲームをしているときのスタイルにも通じるなと思いますが。
「今年は4つ5つ食わなきゃいけないなら尚更サキの出る幕はなかっただろ」
「じゃあその分すがやんが食べるんだよ!」
「あ、いや、俺は1人分のノルマで精一杯だし、そういうのはササに頼んでくれねーかなマジで」
「ササはもう彩人が食べれない分を食べてくれてるの!」
「徹平くん、私が食べるから心配しないで」
「それはそれであんまりカッコよくないんで、今日の俺のノルマは6だな! くるみ、これでどーだ!」
「じゃ、すがやんはそーゆ―ことで頑張ってね! コーヒーも紅茶も用意してあるから」
食べる順番を間違えると死ぬな、と徹平くんは作戦を立て始めました。徹平くんは甘いものは好きですが、比較的あっさりとした物が好みのようなので、濃厚な物が続くと苦しくなりそうです。適度にフルーツの乗った物を挟んでいくのがいいでしょう。
「私もそろそろ次をもらおうかな。どれにしよう? うーん、これだけあると悩みますね」
「結局は全部食べるんだろ?」
「全部食べるけど、食べる順番を悩むのも楽しみのひとつだから。イチゴを食べたし、次はキャラメルにしようかな」
end.
++++
彩人は別に小食じゃないけど甘いものばっかりたくさんは食べられない。しょっぱい物も欲しいタイプ。
今回のポイントはすがやんに対しては口調が少しずつ砕け始めている春風。
(phase3)
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