2022(02)
■小なりと小なりイコール
++++
「ねえ智也見てよ外!」
「ん? つか俺今メシの支度してんだけど」
「いーから!」
「何だよ」
台所に立つ俺を引き摺って、麻衣が部屋の窓へと駆け寄る。包丁だけ何とか置いて、何事だとそれに付き合う。言われるままに窓の外を見ると、空からは白い物が降っていて、ガラス伝いに冷たい空気が頬を冷やしている。
「ほら、雪だよ」
「……マジか」
「え、てか何でそんなテンション低いの?」
「いや、お前こそ何でそんなテンション高いんだよ」
「だってキレイじゃん」
「ただたださみーだろ、こんな中原付で外出るとか地獄だぜ」
「価値観の違いってヤツね」
「そうだな」
逆にスキー場くらいまで行けば雪も「雪だー!」って感じになれるんだけど、普通に日常生活送ってる中での雪はただただ憂鬱でしかない。さみーのがマジでダメなんだよな。MBCCの同期6人の中でも寒いのが一番ダメだし。毎年冬になるとサキがすげーもこもこになってるけど、俺も正直あのレベルでもこもこしたいんだよ。でももこもこし過ぎると動きにくいし、眠くなるしでダメなんだ。
「つか、畑やってんだったら雪とか大敵なんじゃねーのかよ」
「まー温度管理が厳しいのもあるっちゃあるけど敢えて寒い中置いとくのもあるし、一概には言えないんだわ」
「マジムリ。見てるだけで寒い。火だ火。メシの支度してたっつーのに」
「ムードもへったくれもないねアンタ」
「雪に求めてねーだけだ」
ムードねえ。正直俺に求められてもなーっつー感はある。そーゆーのは百戦錬磨のササに聞いてくれと強く思う。大体、そんなモンもクソもないのが俺だってお前もわかってんだろっつーのに。色気より食い気が基本だ。自分がこんなにも利用できそうなシチュエーションに乗じない奴だとは思ってなかったし、恋愛について悩みはするけどがっつきはしないんだなーとわかったここ1年だ。
現状、麻衣とは友達以上恋人以下のような関係だ。未満じゃなくて以下っつーのは、その辺のことが曖昧になっているから。学祭後くらいに麻衣から告られたんだけど、それにすぐ返事が出来なかった。麻衣のことは俺も気になってたっつーか好きか嫌いで言えば好きなんだけど、俺は同時に海月のことも好きで。
その辺のことはササに相談してたけど、一般的にはなかなか理解されにくいと思うとは言われてたし。大体、俺が誰かに告ったとして、お前のことは好きだけど他にも好きな奴がいるからって言われたときにどう反応すりゃいーんだよっつー話で。今すぐどっちかを選ぶことも出来ないし、かと言って不誠実なことも出来ないし。……と言うのも見る奴からすりゃ十分ロクでもない男のすることなんだろう。
その辺のことを正直に言った結果、ライトに付き合うという感じで落ち着くことになった。「あっちの子もいい子なんだろうけど、付き合うとアタシがどんだけいい女かわかるから覚悟しなよ」と言われた通り、それまでとは違う彼女仕様の顔も見せられて正直まあまあドキドキしてる自分がいる。
「ホント、アンタって雰囲気に流されないよね」
「つまんねーか?」
「どーやってオトしてやろうかって燃えるね」
「ああそう」
「昨日だってその気になるまで結構かかったよね。スキンシップ自体は満更でもなさそうなのに。ライトな付き合いだから?」
「いや、ライトでもヘビーでもこんなモンだと思う」
「1年ン時のアンタは誘われたらガーッと来てそのまま抱き潰されそうな脳筋バカって感じだったけど」
「あ? 誰が脳筋バカだ」
「第一印象の話」
「じゃあ今は何なんだよ」
「スロースターターって感じ。勢いもあるけど意外に慎重。エッチは思ったより優しいけど火が付くとクソエロ。でもそれがイイ」
「お前はどーにか俺をその気にさせようといろいろ仕掛けて来るけど、正直何回かイって小細工仕掛けて来る余裕がなくなって来たのを見たくらいで火が付く」
「はあ!? 小細工って! もーちょっと何か言い方!」
「あー、えっと、テク的なアレ?」
「アタシのテクがご不満?」
「いや、不満じゃねーけど、お前がイキまくってグズグズになってんのを見るともっと泣かせてえって思うだけだ。1回突く度にビクビクすんのがすげー可愛くて」
「奥押し当てられたらマジでトぶからムリ。ホントダメあれ」
アンタ実はまあまあSっ気あるでしょ、と麻衣は昨日のことを引き合いに出して俺を睨んでくる。お前のMっ気が強いんじゃねーのかと返すとぶん殴られる。
……なんつーか、することもシてんだからライトな付き合いっつーのもどうかと思うけど、一応“ライト”なんだよなあ。つか、今の俺が仮に海月と同じ状況になったとして、同じことが出来るかと言えば。十分雰囲気に流される男だと思うけどな。体を決め手にするっつーのも最低を極めてるんじゃねーかと自己嫌悪も少し。
「そーいやお前いつまでいんの。ナチュラルにお前がいる前提でメシ作ってたけど」
「あっ、ご飯食べる」
「ああそう、じゃこのまま作るわ」
「アンタホント料理上手くなったよね。フツーにめっちゃ美味しいし」
「お前に料理を褒められんのは素直に嬉しいな」
「って言うかいつまでいんのって、アンタ今日バイト入れてないっしょ?」
「入れてねーよ。明日の昼までいんの?」
「いる。イブの夜空けてるってそーゆーコトっしょ」
「まあ、付き合ってる体ならな」
「今日は最後まで小細工仕掛け続けてやる」
「お前のヤる気ってホントすげーよな」
「それ、アタシだけがっついてるみたいでムカつくんだけど」
「お前が言ったんだろ、俺はスロースターターなんだっつーの」
「スロースターター云々はエッチの話じゃないんですけど!?」
「あー、はいはいわかったわかった。じゃあ今日はご希望通りがっついてやる。明日起きられなくても責任とらねーからな。絶対潰す」
end.
++++
シノくらは高菜ルート的なことをいつか言ってたけど、まあこうなるかなと
シノまいはぎゃあぎゃあ口喧嘩しながらも何だかんだ仲が良いのが良き。
終身名誉アドバイザーの陸さんは、相棒の大事な話に関してはポカせずちゃんとやっていると信じたい
(phase4)
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「ねえ智也見てよ外!」
「ん? つか俺今メシの支度してんだけど」
「いーから!」
「何だよ」
台所に立つ俺を引き摺って、麻衣が部屋の窓へと駆け寄る。包丁だけ何とか置いて、何事だとそれに付き合う。言われるままに窓の外を見ると、空からは白い物が降っていて、ガラス伝いに冷たい空気が頬を冷やしている。
「ほら、雪だよ」
「……マジか」
「え、てか何でそんなテンション低いの?」
「いや、お前こそ何でそんなテンション高いんだよ」
「だってキレイじゃん」
「ただたださみーだろ、こんな中原付で外出るとか地獄だぜ」
「価値観の違いってヤツね」
「そうだな」
逆にスキー場くらいまで行けば雪も「雪だー!」って感じになれるんだけど、普通に日常生活送ってる中での雪はただただ憂鬱でしかない。さみーのがマジでダメなんだよな。MBCCの同期6人の中でも寒いのが一番ダメだし。毎年冬になるとサキがすげーもこもこになってるけど、俺も正直あのレベルでもこもこしたいんだよ。でももこもこし過ぎると動きにくいし、眠くなるしでダメなんだ。
「つか、畑やってんだったら雪とか大敵なんじゃねーのかよ」
「まー温度管理が厳しいのもあるっちゃあるけど敢えて寒い中置いとくのもあるし、一概には言えないんだわ」
「マジムリ。見てるだけで寒い。火だ火。メシの支度してたっつーのに」
「ムードもへったくれもないねアンタ」
「雪に求めてねーだけだ」
ムードねえ。正直俺に求められてもなーっつー感はある。そーゆーのは百戦錬磨のササに聞いてくれと強く思う。大体、そんなモンもクソもないのが俺だってお前もわかってんだろっつーのに。色気より食い気が基本だ。自分がこんなにも利用できそうなシチュエーションに乗じない奴だとは思ってなかったし、恋愛について悩みはするけどがっつきはしないんだなーとわかったここ1年だ。
現状、麻衣とは友達以上恋人以下のような関係だ。未満じゃなくて以下っつーのは、その辺のことが曖昧になっているから。学祭後くらいに麻衣から告られたんだけど、それにすぐ返事が出来なかった。麻衣のことは俺も気になってたっつーか好きか嫌いで言えば好きなんだけど、俺は同時に海月のことも好きで。
その辺のことはササに相談してたけど、一般的にはなかなか理解されにくいと思うとは言われてたし。大体、俺が誰かに告ったとして、お前のことは好きだけど他にも好きな奴がいるからって言われたときにどう反応すりゃいーんだよっつー話で。今すぐどっちかを選ぶことも出来ないし、かと言って不誠実なことも出来ないし。……と言うのも見る奴からすりゃ十分ロクでもない男のすることなんだろう。
その辺のことを正直に言った結果、ライトに付き合うという感じで落ち着くことになった。「あっちの子もいい子なんだろうけど、付き合うとアタシがどんだけいい女かわかるから覚悟しなよ」と言われた通り、それまでとは違う彼女仕様の顔も見せられて正直まあまあドキドキしてる自分がいる。
「ホント、アンタって雰囲気に流されないよね」
「つまんねーか?」
「どーやってオトしてやろうかって燃えるね」
「ああそう」
「昨日だってその気になるまで結構かかったよね。スキンシップ自体は満更でもなさそうなのに。ライトな付き合いだから?」
「いや、ライトでもヘビーでもこんなモンだと思う」
「1年ン時のアンタは誘われたらガーッと来てそのまま抱き潰されそうな脳筋バカって感じだったけど」
「あ? 誰が脳筋バカだ」
「第一印象の話」
「じゃあ今は何なんだよ」
「スロースターターって感じ。勢いもあるけど意外に慎重。エッチは思ったより優しいけど火が付くとクソエロ。でもそれがイイ」
「お前はどーにか俺をその気にさせようといろいろ仕掛けて来るけど、正直何回かイって小細工仕掛けて来る余裕がなくなって来たのを見たくらいで火が付く」
「はあ!? 小細工って! もーちょっと何か言い方!」
「あー、えっと、テク的なアレ?」
「アタシのテクがご不満?」
「いや、不満じゃねーけど、お前がイキまくってグズグズになってんのを見るともっと泣かせてえって思うだけだ。1回突く度にビクビクすんのがすげー可愛くて」
「奥押し当てられたらマジでトぶからムリ。ホントダメあれ」
アンタ実はまあまあSっ気あるでしょ、と麻衣は昨日のことを引き合いに出して俺を睨んでくる。お前のMっ気が強いんじゃねーのかと返すとぶん殴られる。
……なんつーか、することもシてんだからライトな付き合いっつーのもどうかと思うけど、一応“ライト”なんだよなあ。つか、今の俺が仮に海月と同じ状況になったとして、同じことが出来るかと言えば。十分雰囲気に流される男だと思うけどな。体を決め手にするっつーのも最低を極めてるんじゃねーかと自己嫌悪も少し。
「そーいやお前いつまでいんの。ナチュラルにお前がいる前提でメシ作ってたけど」
「あっ、ご飯食べる」
「ああそう、じゃこのまま作るわ」
「アンタホント料理上手くなったよね。フツーにめっちゃ美味しいし」
「お前に料理を褒められんのは素直に嬉しいな」
「って言うかいつまでいんのって、アンタ今日バイト入れてないっしょ?」
「入れてねーよ。明日の昼までいんの?」
「いる。イブの夜空けてるってそーゆーコトっしょ」
「まあ、付き合ってる体ならな」
「今日は最後まで小細工仕掛け続けてやる」
「お前のヤる気ってホントすげーよな」
「それ、アタシだけがっついてるみたいでムカつくんだけど」
「お前が言ったんだろ、俺はスロースターターなんだっつーの」
「スロースターター云々はエッチの話じゃないんですけど!?」
「あー、はいはいわかったわかった。じゃあ今日はご希望通りがっついてやる。明日起きられなくても責任とらねーからな。絶対潰す」
end.
++++
シノくらは高菜ルート的なことをいつか言ってたけど、まあこうなるかなと
シノまいはぎゃあぎゃあ口喧嘩しながらも何だかんだ仲が良いのが良き。
終身名誉アドバイザーの陸さんは、相棒の大事な話に関してはポカせずちゃんとやっていると信じたい
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