2022(02)
■Setting up Love & Peace
++++
「殿ー、ただいまー」
「ああ」
ジャックの部屋を借りて、明日の仕込みをしている。明日で年内のサークル活動は最終日となる。そこで、カノン先輩からの提案で全員で食事でも、という話になっている。ただ、11人となるとひとまとまりに動くにはなかなかの大人数だ。店に行くにしても前もって予約をしておかなければ厳しい。
議事録を見ていると、一昨年はカレーパーティーやおでん大会など、下宿生の家でのパーティーが多く開かれていたことがわかる。去年は現役に誰も下宿生がいなかったから、この手のパーティーはあまり開かれていなかったようだ。だが、今年はジャックが1人暮らしをしていて、1年生はよくジャックの部屋に集まっている。その要領でどうかと。
「やァー、殿が直々に自分を呼んだってーのは、なかなかな大仕事スか?」
「すみません、律先輩。少し、味や調理についての相談をしたく」
「今回はおでんスよね?」
「そうです。メインは、大根かと思い、少し多めに用意してあるのですが」
「多いくらいでちょうどスよ。実は、カノンから自分らも呼ばれてるンすわ」
「えっ、そーなんすか?」
「そーなんスよ」
「へー、楽しくなりそーっすねー。4年生の先輩みんな来てくれる感じっすか?」
「ヒロも来るって言ってヤしたよ」
「マジすか!」
4年生の先輩にも声がかかっているのは、賑やかなのが好きなカノン先輩らしいと思う。ちなみに、サークル後に皆で食事というところまでは奈々先輩にも伝えてあるそうだが、会は奈々先輩の3年間を労うというものなので、内容は秘密にしておくよう言われている。
「確か、4年生の先輩は、皆さん結構な量を」
「食いヤすね、特に野坂が。アイツはおでんなんか食ったうちに入らないッつータイプの人間なンで、白飯を用意してもらえると黙らせるコトは出来ヤす」
「現役も、多分とりぃ先輩がそーゆータイプの人なんすよねー」
「まあ……自分やジュンも、人並み以上には、食べる」
「殿とジュンは体が大きいスからね」
「でもジュンは細いっすよ? でけーにはでけーっすけど」
「……白飯と言えば。ジャック、あれはどうした」
「あるよ。まだ手付かず。はいどっこいしょー。5キロの新米ー」
「ジャックの私財スか?」
「こないだ購買のガラポン抽選会でツッツが当てたんすよ。せっかくだからみんなでメシ食う時にでもって言って俺が預かることになったんすけど、これを開けるとすればここっすよね」
「今年もMMPの一団が米を獲得したンすね。いやァーめでたい」
白飯は、先日ツッツが当ててくれた米を使わせてもらうことに。炊飯器は会場にもあると書いてあったが、5合炊きだと1人1膳計算でも足りないので、ジャックの炊飯器を搬入することになった。現役11人に4年生が4人で15人だ。炊飯器も、鍋も2、3セットあるくらいでちょうどいいだろう。
今回はジャックの部屋ではなく、豊葦市街にある貸し部屋がパーティー会場だ。時間単位でマンションやアパートのような部屋をレンタルでき、家電なども一通り揃っているので下手な店よりも思い思いに過ごすことが出来るそうだ。料金も、人数が増えれば増えた分だけ一人当たりの負担は少なくなる。
「殿、その大根の葉は使う予定はありヤすか?」
「いえ、今のところありません」
「じャ使っていースか?」
「どうぞ。ところで、何を」
「菜月先輩から教えてもらった最強のごはんのおともがあるンすわ」
「大根の葉で」
「他の葉っぱでも出来るンすけど、大根の葉が一番いいらしース。作り方を大雑把に言うと、湯がいて細かく切ったモンの味噌炒めス」
「自分にも、教えてもらっても」
「自分もうろ覚えスけど、それでも良ければ」
大根の葉の味噌炒めをごはんに乗せて、さらに温泉卵。これが菜月先輩の最強コンボであると、律先輩は言う。卵と言えば、おでんの具としても茹でてある。4人増えたことで、さらに用意した方がいいのではないかとも、少し。自分とジュン、そして春風先輩が食べるだろうと量自体は多く用意してあったが、……いや、余るよりは足りないくらいの方がいい。
結局、調理した物よりは、材料を持ち込んだ方がいいという結論に達した。材料であれば、最悪触らなければそのまま持ち帰ることも出来るし、現場の状況や気分に応じて臨機応変に対応出来るのが強みであると言えるだろう。いつもやっていることがジャックの家から貸し部屋の台所になるだけだ。
「現役生らはフツーにサークルが終わってから会場入りスよね?」
「そうですね」
「シたら、自分らが先行して粗方支度しときヤすよ」
「4年生の先輩にやらすのはちょっと申し訳なさすぎるっす」
「時間を考えると、会場入りしてすぐメシにした方がいーッしょ。白飯を大量に炊く必要もありヤすし」
「まーそースけど」
「奈々に対するサプライズっていう体なら、現役生が怪しい動きをしてたらバレバレすからね」
「確かに!」
「律先輩、お願いしていいですか」
「もちろんスよ。ああ、でも1回ジャックの部屋に寄らせてもらうコトにはなりヤすね。こーたを引き摺ってくるンで、そこで必要なモンを積みヤしょう」
「えーっと、鍋と炊飯器と、あと何だろ。食器類はあるって書いてたしなー」
「どーせなら自分らが先行することはカノンにも伏せて軽くラブ&ピースをカマしやしょーぜ」
4年生を招集したカノン先輩を含めた全員をドッキリにかけるんすね! とジャックは楽しそうにしている。皆が楽しめるドッキリであれば、自分も協力することを厭わない。まあ、自分のやることは、知っていることを表情に出さないという、その一点に尽きるだろう。
end.
++++
春風の料理の支障が殿だけど、殿の相談役がりっちゃんなので実質りっちゃんが最強か?
ジャック宅で1年生がわちゃわちゃしてる話は最初の頃にあったけど久々にやりたい
(phase3)
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「殿ー、ただいまー」
「ああ」
ジャックの部屋を借りて、明日の仕込みをしている。明日で年内のサークル活動は最終日となる。そこで、カノン先輩からの提案で全員で食事でも、という話になっている。ただ、11人となるとひとまとまりに動くにはなかなかの大人数だ。店に行くにしても前もって予約をしておかなければ厳しい。
議事録を見ていると、一昨年はカレーパーティーやおでん大会など、下宿生の家でのパーティーが多く開かれていたことがわかる。去年は現役に誰も下宿生がいなかったから、この手のパーティーはあまり開かれていなかったようだ。だが、今年はジャックが1人暮らしをしていて、1年生はよくジャックの部屋に集まっている。その要領でどうかと。
「やァー、殿が直々に自分を呼んだってーのは、なかなかな大仕事スか?」
「すみません、律先輩。少し、味や調理についての相談をしたく」
「今回はおでんスよね?」
「そうです。メインは、大根かと思い、少し多めに用意してあるのですが」
「多いくらいでちょうどスよ。実は、カノンから自分らも呼ばれてるンすわ」
「えっ、そーなんすか?」
「そーなんスよ」
「へー、楽しくなりそーっすねー。4年生の先輩みんな来てくれる感じっすか?」
「ヒロも来るって言ってヤしたよ」
「マジすか!」
4年生の先輩にも声がかかっているのは、賑やかなのが好きなカノン先輩らしいと思う。ちなみに、サークル後に皆で食事というところまでは奈々先輩にも伝えてあるそうだが、会は奈々先輩の3年間を労うというものなので、内容は秘密にしておくよう言われている。
「確か、4年生の先輩は、皆さん結構な量を」
「食いヤすね、特に野坂が。アイツはおでんなんか食ったうちに入らないッつータイプの人間なンで、白飯を用意してもらえると黙らせるコトは出来ヤす」
「現役も、多分とりぃ先輩がそーゆータイプの人なんすよねー」
「まあ……自分やジュンも、人並み以上には、食べる」
「殿とジュンは体が大きいスからね」
「でもジュンは細いっすよ? でけーにはでけーっすけど」
「……白飯と言えば。ジャック、あれはどうした」
「あるよ。まだ手付かず。はいどっこいしょー。5キロの新米ー」
「ジャックの私財スか?」
「こないだ購買のガラポン抽選会でツッツが当てたんすよ。せっかくだからみんなでメシ食う時にでもって言って俺が預かることになったんすけど、これを開けるとすればここっすよね」
「今年もMMPの一団が米を獲得したンすね。いやァーめでたい」
白飯は、先日ツッツが当ててくれた米を使わせてもらうことに。炊飯器は会場にもあると書いてあったが、5合炊きだと1人1膳計算でも足りないので、ジャックの炊飯器を搬入することになった。現役11人に4年生が4人で15人だ。炊飯器も、鍋も2、3セットあるくらいでちょうどいいだろう。
今回はジャックの部屋ではなく、豊葦市街にある貸し部屋がパーティー会場だ。時間単位でマンションやアパートのような部屋をレンタルでき、家電なども一通り揃っているので下手な店よりも思い思いに過ごすことが出来るそうだ。料金も、人数が増えれば増えた分だけ一人当たりの負担は少なくなる。
「殿、その大根の葉は使う予定はありヤすか?」
「いえ、今のところありません」
「じャ使っていースか?」
「どうぞ。ところで、何を」
「菜月先輩から教えてもらった最強のごはんのおともがあるンすわ」
「大根の葉で」
「他の葉っぱでも出来るンすけど、大根の葉が一番いいらしース。作り方を大雑把に言うと、湯がいて細かく切ったモンの味噌炒めス」
「自分にも、教えてもらっても」
「自分もうろ覚えスけど、それでも良ければ」
大根の葉の味噌炒めをごはんに乗せて、さらに温泉卵。これが菜月先輩の最強コンボであると、律先輩は言う。卵と言えば、おでんの具としても茹でてある。4人増えたことで、さらに用意した方がいいのではないかとも、少し。自分とジュン、そして春風先輩が食べるだろうと量自体は多く用意してあったが、……いや、余るよりは足りないくらいの方がいい。
結局、調理した物よりは、材料を持ち込んだ方がいいという結論に達した。材料であれば、最悪触らなければそのまま持ち帰ることも出来るし、現場の状況や気分に応じて臨機応変に対応出来るのが強みであると言えるだろう。いつもやっていることがジャックの家から貸し部屋の台所になるだけだ。
「現役生らはフツーにサークルが終わってから会場入りスよね?」
「そうですね」
「シたら、自分らが先行して粗方支度しときヤすよ」
「4年生の先輩にやらすのはちょっと申し訳なさすぎるっす」
「時間を考えると、会場入りしてすぐメシにした方がいーッしょ。白飯を大量に炊く必要もありヤすし」
「まーそースけど」
「奈々に対するサプライズっていう体なら、現役生が怪しい動きをしてたらバレバレすからね」
「確かに!」
「律先輩、お願いしていいですか」
「もちろんスよ。ああ、でも1回ジャックの部屋に寄らせてもらうコトにはなりヤすね。こーたを引き摺ってくるンで、そこで必要なモンを積みヤしょう」
「えーっと、鍋と炊飯器と、あと何だろ。食器類はあるって書いてたしなー」
「どーせなら自分らが先行することはカノンにも伏せて軽くラブ&ピースをカマしやしょーぜ」
4年生を招集したカノン先輩を含めた全員をドッキリにかけるんすね! とジャックは楽しそうにしている。皆が楽しめるドッキリであれば、自分も協力することを厭わない。まあ、自分のやることは、知っていることを表情に出さないという、その一点に尽きるだろう。
end.
++++
春風の料理の支障が殿だけど、殿の相談役がりっちゃんなので実質りっちゃんが最強か?
ジャック宅で1年生がわちゃわちゃしてる話は最初の頃にあったけど久々にやりたい
(phase3)