2022(02)

■Which one shall we choose?

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「そしたら、何かお知らせのある人はいますか? 対策委員とか定例会とか。鳥ちゃん」
「対策委員は大きな行事がまだしばらく先なので、日程が近くなったらLINEなどで連絡をする形になると思います」
「まーァ、定例会もそんなよーなモンかな」

 12月に入り、今年もいよいよ終わりに近付いています。奈々先輩によれば、MMPというサークルの活動は基本的に年内いっぱいになるそうです。対策委員や定例会のお知らせに、サークル内で言えば昼放送の詰め、あとは年末特番という大きな番組について考えていくことになりますね。
 年末特番はジュンが主体となって先のロボット大戦を主軸とした映像作品を作っています。そちらは1年生たちが頑張っているようなので、2・3年生は正統派のラジオ番組を作ってみようという話は浮上しています。年末特番でのラジオ番組は例年サークルの10大ニュースというテーマで制作しているそうです。

「ジュン、年末特番の進捗はどう?」
「絵と音の素材は大まかに揃ったので、あとは実際の試合とその編集ですね」
「例によってアニメーションも駆使しているのですか?」
「ちょっと、やってみたい演出があって。せっかくのロボット大戦なので、見ていてワクワク出来るようにはしたいです」
「ジュンのレベル、ヤバい速度で上がってるよねッ!」
「本当にそうですよね。一番最初の可愛らしいアニメーションを思うと、技術の進歩が果てしないです」
「ま、映像編集ならともかく絵を自分で描くところから始めるアニメとなると、ジュンにしか出来ねーからなァ。ま、俺らは出来上がったモンを楽しみに待っとこーぜ」
「っつっても鳥ちゃんは作品が完成するより前に試合結果がわかっちまうんだよね?」
「それは戦う当事者ですからね。しかし、編集でどう盛り上げてくれるのかは楽しみですよ。ジュン、くれぐれも作業は休み休み頑張ってくださいね」
「はい」

 ジュンは勉強や作業を始めると一点集中でのめり込んでしまうようなので、こうしてみんなで話している時には誰かが息抜きの必要性を説く必要があるのです。1年生だけで作業をしているときは、殿がその役割を担っているようです。これはゼミ室でジュンから聞いたのですが、殿の差し入れてくれる手作りの干し芋が優しい甘みでとても美味しいんだそうです。私も気になります。

「あっ、奈々先輩、ちょっと気になることあるんで聞いていーすか?」
「どしたのジャック」
「今って昼放送やってるじゃないすか、昼放送って秋学期の間やってるような感じっすか?」
「昼放送は基本的に年内の活動だね」
「そーなんすね。テスト終わるまで1月もフツーの授業だし、昼放送やるんだなーって思ってたっすけど」
「えー、年内で終わりなーん? 奈々先輩、1月の通常放送が厳しいんならワンチャン短め放送やりません? お知らせ放送にトーク1つだけ入れるような感じの」
「15分番組くらいの尺でやりたいってこと?」
「そうっすそうっす!」
「みんなはどう? 1月も番組やる? って言うかもう代替わりしてるんだから2年生以下で話し合ってもらって」

 現状のMMPは、去年までのサークルのことを知っているのは奈々先輩と希くんしかいません。ですから、これまでの常識からは到底想像も付かなかった話がポンと出て来ることがあるようです。1月の昼放送という案も、奈々先輩からするとビックリするような話のようです。ですがほとんどの1、2年生はなるほどーと、悪くない顔をして考え始めているのです。

「ま、奈々さんは一応年内引退なんでいない体で考えてもまだミキサーは4人いるし、かっすーも入れりゃフツーに5人枠は埋まるわな」
「つかその方が人数バランスはいいもんな。そーいや昼放送でミキサーやんの初めてだな。楽しみになってきたぁ~!」
「ええと、奏多と希くんは前向きに考えているようですが、1年生はどうですか? あと、いろはも」
「冬には冬の季語や話題があるし、いいんじゃない?」
「つか俺が言い出しっぺっすし、やる気は人一倍っすよ!」
「お喋り袋が喋る場所を要らんとか言い出したらそれはキャラ崩壊なんやわ。ツッツ、お前はどーや? やるやろ?」
「あ、うん……短めの番組なら、テスト前でも、出来そうかな……」
「そうですよね、せっかくならテスト期間まではやりたいよね。殿、僕たちもやろうよ」
「ああ」
「で! 問題は公共の電波デビューをするジュンよ。忙しーやん?」
「いや、昼放送もラジオも週に1回だし、時間帯も違うからそれはそうとしてやれはするよ」
「あっそう」
「じゃあ、1月は短め昼放送をやっていくって感じで行きましょう!」
「おー!」

 ただ、1月の昼放送はこれまでに例がないことなので、食堂の店長にお願いして食堂の機材の利用許可は予め取っておくよう奈々先輩から注意が入りました。また、大学からのお知らせと食堂のフェア情報などの枠はきっちり取った上で番組を作ること、という点を改めて確認しました。

「そしたらさ、今みたいに週3でサークル室に来るのは年内いっぱいとしても、テスト前までは週1で集まるかー」
「そうですね。昼放送が続いているなら集まる機会があってもいいとは思います」
「ま、言って延長戦って感じだし、出席は任意っつー感じでそこまでガチガチじゃなくてもって感じにしとかね?」
「今もそこまで出席を強制されていたわけではないですし、いつも通りで問題ないとは思うけど。問題は、それを何曜日にするかですね」
「言って1、2年は授業もまだギチギチだろうしいつでも来てんだろ? さーて、どーやって決めるかね」
「松兄! コイツで決めましょう!」
「ケイトくん? コイツでどーすんだ、ジャック」
「ケイトくんの倒れた方向の曜日に集合っす! 話し合いで決まらないならMMPの神の言う通りにするっす!」
「ま、うだうだ話し合うよりは早いか。よーし、やるか。線引くぞー」


end.


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どちらにしようかな神様の言う通り。

(phase3)

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