2022
■バトンの行き先
++++
「やっぱり学祭が近くなると一段と忙しくなってくるねえ」
「ホントだべ」
秋学期が始まってからは授業にサークル、それから大学祭に向けた準備で忙しくなっていた。大学祭に関してはサークルとゼミ、2団体分の準備があるし、大祭実行さんのステージの手伝いにも駆り出される。大祭実行さんの手伝いに関しては、MBCCのブース場所に関わる契約上の話だから絶対なんだそうだ。
こんなとき、インターフェイスで技術交換会を開いていて良かったなと思う。俺たちは普段ラジオをメインにやっているから機材のセッティングなんかも屋内放送に適した形でやってるけど、大学祭のステージは外であることを前提に、音を響かせる距離感なんかも考えないといけないから。春先に聞いていたゲンゴローの話が今、凄く役に立っている。
「タカティ、来たよー」
「おっ、ミドリ来たべ」
「ゲンゴローはまだ?」
「ゲンゴローはちょっと遅くなるって言ってたよ。やっぱり大学祭前だし部長ともなると俺たちの想像以上に忙しいんじゃないかなあ」
「そうだよねー。星ヶ丘って50人も60人もいる大きな部活でしょ? その部長だもんね」
「100人組織の議長が何か言ってるべ」
「ねえ」
久々に集まろうかという話になって、今回は俺の部屋での会だから円卓会議とは呼べないけどメンツはいつもの円卓の会。星ヶ丘で部長をやっているゲンゴローは忙しいみたくて「先にやってて」と連絡をもらってた。今日は俺もエイジも忙しいから囲む食べ物もレンチンですぐ食べられる物を中心に。
「そう言えば、定例会の引き継ぎについては考えてる?」
「一応ね。ユキちゃんとハナちゃんともちょこちょこ話してるけど」
「議長候補っていくらか絞れてんのかっていう」
「すがやんかカノンのどっちかかなあとは。サキと松兄は引き続き機材・システムチームだからこの2人以外からって感じで」
「まあ、あんまり驚きはないっていう」
「そうだね」
「2人は対策委員の引き継ぎの話とかは聞いてる?」
「いや、俺は聞いてないべ」
「俺はシノからどう決めたらいいかって相談はされてるかな」
「マジか。どう考えてそうだった?」
「アナミキを揃えて出すのか、定例会との兼ね合いはどうか、外に出したときにどう作用するか、みたいなことは考えてるみたいだったよ」
去年の今頃は俺とエイジが考えていたことだけど、これが案外考えることが多いんだよね。例えば、ウチから2人出すとするなら2人とも佐藤ゼミに入った場合しんどいぞ、とか。結局その心配は結構的中したっぽくて、シノは学内でのことを結構ササからサポートされてたみたいだ。
今ミドリが考えている定例会の引き継ぎ問題はそれこそインターフェイスの方針にも影響が出かねないことだから、慎重にもなるよなあって。だけど日頃の定例会での様子だとか、そんなものを含めて考えた結果、安定の2択に落ち着いたっぽい。あと、システムチームに関しては口喧嘩が日常ながらもやることはちゃんとやってるって。
「それで、タカティとエージはそれぞれ自分の役職を誰に引き継ぐとかは。サークルの人事じゃないけどさ」
「まあ、俺はシノかなって思ってるよ」
「お、結局シノか」
「そうだね。ウチでも動画チャンネルをちょっと使い始めたし、くるみにはそっちで頑張ってもらうのと、サキは定例会とFMにしうみの方があるからサークルの全体を見られるのはやっぱりシノかなって。対策委員の議長として経験も十分積めたと思うし」
「緑ヶ丘のミキサー3人ってそれぞれの強さがあるよねえ」
「エイジは? こないだ聞いた時はまだちょっと考えてる風だったでしょ?」
「いや、ミドリの話を聞いて今決まった」
「え、俺の話で!?」
「すがやんが定例会議長の候補になってんなら、三役のどっかには絶対入るだろ。だったらウチの次期アナ部長はやっぱレナで行くべきだっていう結論に達した」
「すがやんは確かに三役になるとは思うよ。でも、ササではないんだね。すごくしっかりしてるのに」
「いやあ、しっかりしてるようで結構抜けてる子だよササは。ミドリは去年の夏の印象が強いと思うけどさ」
「うん、そのイメージで言ってたね」
「高木はササに厳しいっていう。でもササはササでコイツにすげー懐いてんだよな。その様子を見てるとアナ部長を任せるには正直ちょっと不安だべ。レナはメンタルにブレが無いしアナウンサーとしての技術にも目立った弱点もないっていう」
「レナは今の2年生の精神的支柱って感じだよね」
「あー、それだそれ」
すがくるサキの3人がやっぱり何だかんだ忙しく動き回ってて、ササシノレナの3人は比較的動きが少ないっていう印象がある。活動がMBCC内に留まっていると言うか。すがくるサキの言うことによれば、どんなことがあってもレナがいれば何とかなるって思わせる不思議な力があるんだそうだ。言葉の説得力とも言うのかな。だからサークル関係のことはレナに相談することが多いって。
「は~! 結局定例会議長をどっちにするかだよー!」
「何が問題なんだっていう」
「ユキちゃんてとりぃと仲が良くて結構いろいろ話してるみたいなんだけど、カノンのことだね。結構思いついたら即行動って感じで誰かに相談する前に突っ走る傾向にあるから力を持たせ過ぎない方がいい、みたいな情報があってね」
「確かにアイツの行動力は半端ないみたいなことはすがやんからも聞くべ」
「そう、松兄が言うにはすがやんとの雑談で何でも思いつく節があるみたくてね。インターフェイスの大事な話は絶対に2人でさせるなっていう風に結構キツく念を押されててね」
「つまり、カノンとすがやんの間に割って入れる人が必要なんだね」
「そういうこと。まあ、個人的にはサキと松兄で十分その役割は担えると思うけど、三役となるとね」
「あと誰が残ってるっけ?」
「千颯、エマ、彩人、雨竜だね」
「エマじゃね?」
「うん。エマだね」
「えっ、そうなんだ。俺はあんまりエマのことは知らないけど、2人がそう言うならそうなのかなあ」
「エマは骨のある奴だしあの2人に割って入った上で押されないだけの力も度量もある」
「周りの人の話を聞いてちゃんと話を理解する子だし、他の人にもちゃんと話を振れるはずだよ。ユキちゃんにも改めて聞いてみたらいいと思うよ」
「また今度ハナちゃんも交えて話してみるよ、ありがとう」
誰がどういう子で、ということを俺たちがしっかり見て、理解していないと次に繋ぐことが出来ないんだなあとその時が来て理解する。これまでの先輩たちもこんな風に考えていたのかな、とか。対策委員に関して言えば2年生が1年生を見てもう考えてるんだもんね。それと同時に、俺たちもそろそろなんだなあってちょっとしみじみしたりして。
「あっ、誰か来た。ゲンゴローかな。はーい」
『タカティごめーん、遅くなっちゃったー』
「今開けるよー。どうぞー」
end.
++++
タカエイとエマと言えばつばめ会での交友である。
MBCCの次期役職人事がこんな簡単にぽーんと決まるらしい。前々から考えてたからってのもあるんだろうけども
(phase3)
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「やっぱり学祭が近くなると一段と忙しくなってくるねえ」
「ホントだべ」
秋学期が始まってからは授業にサークル、それから大学祭に向けた準備で忙しくなっていた。大学祭に関してはサークルとゼミ、2団体分の準備があるし、大祭実行さんのステージの手伝いにも駆り出される。大祭実行さんの手伝いに関しては、MBCCのブース場所に関わる契約上の話だから絶対なんだそうだ。
こんなとき、インターフェイスで技術交換会を開いていて良かったなと思う。俺たちは普段ラジオをメインにやっているから機材のセッティングなんかも屋内放送に適した形でやってるけど、大学祭のステージは外であることを前提に、音を響かせる距離感なんかも考えないといけないから。春先に聞いていたゲンゴローの話が今、凄く役に立っている。
「タカティ、来たよー」
「おっ、ミドリ来たべ」
「ゲンゴローはまだ?」
「ゲンゴローはちょっと遅くなるって言ってたよ。やっぱり大学祭前だし部長ともなると俺たちの想像以上に忙しいんじゃないかなあ」
「そうだよねー。星ヶ丘って50人も60人もいる大きな部活でしょ? その部長だもんね」
「100人組織の議長が何か言ってるべ」
「ねえ」
久々に集まろうかという話になって、今回は俺の部屋での会だから円卓会議とは呼べないけどメンツはいつもの円卓の会。星ヶ丘で部長をやっているゲンゴローは忙しいみたくて「先にやってて」と連絡をもらってた。今日は俺もエイジも忙しいから囲む食べ物もレンチンですぐ食べられる物を中心に。
「そう言えば、定例会の引き継ぎについては考えてる?」
「一応ね。ユキちゃんとハナちゃんともちょこちょこ話してるけど」
「議長候補っていくらか絞れてんのかっていう」
「すがやんかカノンのどっちかかなあとは。サキと松兄は引き続き機材・システムチームだからこの2人以外からって感じで」
「まあ、あんまり驚きはないっていう」
「そうだね」
「2人は対策委員の引き継ぎの話とかは聞いてる?」
「いや、俺は聞いてないべ」
「俺はシノからどう決めたらいいかって相談はされてるかな」
「マジか。どう考えてそうだった?」
「アナミキを揃えて出すのか、定例会との兼ね合いはどうか、外に出したときにどう作用するか、みたいなことは考えてるみたいだったよ」
去年の今頃は俺とエイジが考えていたことだけど、これが案外考えることが多いんだよね。例えば、ウチから2人出すとするなら2人とも佐藤ゼミに入った場合しんどいぞ、とか。結局その心配は結構的中したっぽくて、シノは学内でのことを結構ササからサポートされてたみたいだ。
今ミドリが考えている定例会の引き継ぎ問題はそれこそインターフェイスの方針にも影響が出かねないことだから、慎重にもなるよなあって。だけど日頃の定例会での様子だとか、そんなものを含めて考えた結果、安定の2択に落ち着いたっぽい。あと、システムチームに関しては口喧嘩が日常ながらもやることはちゃんとやってるって。
「それで、タカティとエージはそれぞれ自分の役職を誰に引き継ぐとかは。サークルの人事じゃないけどさ」
「まあ、俺はシノかなって思ってるよ」
「お、結局シノか」
「そうだね。ウチでも動画チャンネルをちょっと使い始めたし、くるみにはそっちで頑張ってもらうのと、サキは定例会とFMにしうみの方があるからサークルの全体を見られるのはやっぱりシノかなって。対策委員の議長として経験も十分積めたと思うし」
「緑ヶ丘のミキサー3人ってそれぞれの強さがあるよねえ」
「エイジは? こないだ聞いた時はまだちょっと考えてる風だったでしょ?」
「いや、ミドリの話を聞いて今決まった」
「え、俺の話で!?」
「すがやんが定例会議長の候補になってんなら、三役のどっかには絶対入るだろ。だったらウチの次期アナ部長はやっぱレナで行くべきだっていう結論に達した」
「すがやんは確かに三役になるとは思うよ。でも、ササではないんだね。すごくしっかりしてるのに」
「いやあ、しっかりしてるようで結構抜けてる子だよササは。ミドリは去年の夏の印象が強いと思うけどさ」
「うん、そのイメージで言ってたね」
「高木はササに厳しいっていう。でもササはササでコイツにすげー懐いてんだよな。その様子を見てるとアナ部長を任せるには正直ちょっと不安だべ。レナはメンタルにブレが無いしアナウンサーとしての技術にも目立った弱点もないっていう」
「レナは今の2年生の精神的支柱って感じだよね」
「あー、それだそれ」
すがくるサキの3人がやっぱり何だかんだ忙しく動き回ってて、ササシノレナの3人は比較的動きが少ないっていう印象がある。活動がMBCC内に留まっていると言うか。すがくるサキの言うことによれば、どんなことがあってもレナがいれば何とかなるって思わせる不思議な力があるんだそうだ。言葉の説得力とも言うのかな。だからサークル関係のことはレナに相談することが多いって。
「は~! 結局定例会議長をどっちにするかだよー!」
「何が問題なんだっていう」
「ユキちゃんてとりぃと仲が良くて結構いろいろ話してるみたいなんだけど、カノンのことだね。結構思いついたら即行動って感じで誰かに相談する前に突っ走る傾向にあるから力を持たせ過ぎない方がいい、みたいな情報があってね」
「確かにアイツの行動力は半端ないみたいなことはすがやんからも聞くべ」
「そう、松兄が言うにはすがやんとの雑談で何でも思いつく節があるみたくてね。インターフェイスの大事な話は絶対に2人でさせるなっていう風に結構キツく念を押されててね」
「つまり、カノンとすがやんの間に割って入れる人が必要なんだね」
「そういうこと。まあ、個人的にはサキと松兄で十分その役割は担えると思うけど、三役となるとね」
「あと誰が残ってるっけ?」
「千颯、エマ、彩人、雨竜だね」
「エマじゃね?」
「うん。エマだね」
「えっ、そうなんだ。俺はあんまりエマのことは知らないけど、2人がそう言うならそうなのかなあ」
「エマは骨のある奴だしあの2人に割って入った上で押されないだけの力も度量もある」
「周りの人の話を聞いてちゃんと話を理解する子だし、他の人にもちゃんと話を振れるはずだよ。ユキちゃんにも改めて聞いてみたらいいと思うよ」
「また今度ハナちゃんも交えて話してみるよ、ありがとう」
誰がどういう子で、ということを俺たちがしっかり見て、理解していないと次に繋ぐことが出来ないんだなあとその時が来て理解する。これまでの先輩たちもこんな風に考えていたのかな、とか。対策委員に関して言えば2年生が1年生を見てもう考えてるんだもんね。それと同時に、俺たちもそろそろなんだなあってちょっとしみじみしたりして。
「あっ、誰か来た。ゲンゴローかな。はーい」
『タカティごめーん、遅くなっちゃったー』
「今開けるよー。どうぞー」
end.
++++
タカエイとエマと言えばつばめ会での交友である。
MBCCの次期役職人事がこんな簡単にぽーんと決まるらしい。前々から考えてたからってのもあるんだろうけども
(phase3)
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