2022

■second impression

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「鳥ちゃん、困った。会議しよう会議」
「どうしたのですか?」
「MMPって学祭を境に代替わりするサークルなんだけど、対策委員もそれと同時に選出されるのな。活動自体は3月いっぱいまでなんだけど」
「そうなのですね。あれっ、それでは次の対策委員を決めないといけないのですか?」
「そーなんだよ。あと、定例会に出る奴も選ばなきゃいけないし」

 全然考えてなかったわーと希くんは少々焦りを見せているようです。対策委員の活動が本格的に引き継がれるのは年度が替わってからですが、それまでの間に先輩の姿を見て学ぶ時間というのがあるようなのです。一方、定例会は11月ですっぱりきっぱり代が替わるとのこと。
 インターフェイスの組織に向島大学の代表として出て行くわけですから、それなりにちゃんとしている……と言うと抽象的ですが、しっかりとした立ち振る舞いが求められます。今年の1年生6人の適性などを見ながら私たちがちゃんと選ばないといけないのです。

「対策委員はやはり2人出す物なのですか?」
「絶対2人出さなきゃいけないってことはないみたいよ。ウチから対策委員にも定例会にも2人出てるのって言っちまえばイレギュラーみたいなモンだし」
「希くんが掛け持ちをしているからという事情も含めてでしたね」
「そうそう。まーやってみて思ったのは確かに掛け持ちはまあまあしんどい。でも掛け持ってることでどっちの最新情報も持てるし人脈も広がるから、しんどい相応のバックはあったと思う」

 定例会の任期は2年なので、希くんは来期も向島の代表として定例会に出続けます。定例会としては奈々先輩と入れ替わりになる人を選ばなければならないようです。
 2人出すとすれば対策委員で、定例会は1人で十分じゃないかなと希くんは言います。奏多ともそのような話をしていると聞きましたが、奏多はシステム開発と保守の観点から、情報系の子の必要性を考えているようです。

「対策委員の適性って何だろって考えててさ」
「私が自分の経験や希くんや奏多から聞く定例会の話から考えると、対策委員にはより瞬発力が求められると思います。それから、定例会と比べると先輩から学べる時間が少ないので、その辺りで個々人の考えという物が問われそうです」
「あー、言いたいことは何となくわかる。定例会って、サキとか奏多みたいに特殊な仕事でもしてなきゃ2年は大体3年生が喋ってんの聞いてるだけになりがちだし。俺は一応対策委員との兼ね合いもあるから結構発言させてもらってたけど、そうじゃなかったらすげー退屈してたと思う」
「ただ、対策委員でも均等に話を振らなければ話を聞くだけにはなりそうですけどね。役割のウェイトや存在感で空気になりかねないと言うか」
「実は委員長だったことを忘れられがちな七海現象な」
「そう言っては七海さんには申し訳なくはあるのですが……」
「この場では当麻がしっかりしすぎてんのが悪いとしておこう」
「それは実際そうですね」

 対策委員は技術向上を目的とした行事を主に主催するので、私たちが今まで通りしっかりと活動をしていれば向島大学から出ている代表が存在感の薄さから忘れられるということは余程のことがない限りないとは思うけど、と希くんは苦笑します。
 夏にシノさんが病気でしばらく休んでいたときも、議長の代理として会議を進めていたのは委員長の七海さんではなく機材管理担当の当麻さんでした。最初は七海さんが議事進行をしようとしていたのですが、重圧に耐えられず早々にバトンタッチしてしまったのです。
 このことから考えると、ある程度のプレッシャーには耐えられる人が代表になった方がいいような気がします。そして、向島大学から出ているということで求められるのはラジオの技術です。ですが6人ともきちんと練習をしているのでその辺りの心配は要りません。

「七海現象のことを思い出したら、ツッツはどっちかってーと定例会寄りだなって思った。あ、出すとするならな? 人見知り云々のことを度外視にして言ってるけど」
「ツッツは人見知りではありますが、夏合宿にも参加しましたし、インターフェイスの人にも少し慣れたのではありませんか?」
「だといいけどなー」
「向島が誇る収納班の大エースとして緑ヶ丘では一目置かれているようですし」
「つかそれ主にすがやんの所為じゃんな」
「そうですね。ツッツに作ってもらった本棚はしっかり皆さんに自慢したようですし」

 徹平くんに触発されたササさんがツッツにオーダーメイドの本棚の相談をしたがっている、という話はレナから聞きました。ササさんは読書家なのできっと数え切れないほどの本を持っているのでしょう。整理整頓が大変そうです。

「対策委員っぽいのは誰かなー」
「当麻さんを見ていて思ったのですが、やはり全体を広く捉えられる視野は必要だなと」
「それはそう。あと鳥ちゃんもそうだけど、俺らの代には少なかった落ち着いてて慎重なタイプだったからマジで貴重だった」
「落ち着いていて慎重で、広い視野に気配りという意味では、私は殿も悪くないなと思うのです」
「殿かー…! でも大丈夫かな?」
「夏合宿に出た人には厳つい風貌を含めて強く印象づけられたはずですから、今更驚きませんよ」
「でも、ジュンも似たタイプなんじゃないの?」
「少し一緒に活動をしていてわかったのですが、ジュンは少し悲観的な面が強いのです。うっしーや緑ヶ丘の琉生さんのように人を焚きつけたり呑んでしまえる人がいれば彼もまた勢いで進んでいけるのですがね。一方で、殿は慎重でありながらも楽観的な性格ですよ。同じ性格のグループではありますが、奥底では真逆のように思えます」
「へー。俺全然そんなこと気付いてなかったなー。さすが鳥ちゃん、1年生の見方がきめ細やかだなー」
「サークルでは彼の言葉をパロが先に伝えてしまうので多く語る必要がさらになくなっているのだと思います。1対1なら、きちんと話してくれますよ」

 ただ、そんな彼らへの評価もあくまで現段階でのものですから、この先どうなっていくかわかりません。悲観的としたジュンにしても、FMにしうみでの活動で揉まれるうちに逞しくなるかもしれませんし。初期メンバーがなかなか強烈なようですからね。

「とりあえず、この件については殿を第一候補にしつつも奏多と奈々先輩とも相談しねーとなー」
「希くんの口から相談という単語が出ると感動してしまいます…!」
「いやいやいや、俺を何だと思ってんの鳥ちゃん!」
「ええと……意思決定力と行動力の塊であると、そのように思っていますよ」
「誉められてる感じがねー……」


end.


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春風と奏多はかつての菜圭的な雰囲気で回りがち。春風は菜月さん的で後輩のことをよく見ている
七海現象とかいう可哀想な名前を付けられた現象だけど、ナノスパ的には逆に七海キャラ立ちのいい機会かもしれない

(phase3)

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