2022
■先輩の威厳とかナントカ
++++
「高木せんぱーい、履修票でーす」
「はーい、ありがとう。えーと、凛斗と中とちむりーね。確かに受け取りました」
秋学期の昼放送の編成をするために、みんなの履修票を受け取る。これを見て俺とエイジが何曜日にどんなペアで番組をやるのかっていうのを決定していく。ただ、今年はちょっといつもとは違う試みをやってみようっていう話が向島さんとの間で上がっている。その関係もあって昼放送の編成もちょっと難しめ。
月に1回か、余裕があれば2回くらいの頻度でインターフェイスの動画チャンネルに合同で制作するラジオ動画を上げてみようっていう話が持ち上がった。映像の活動をやっていない俺たちがチャンネルを積極的に使って行くには、ということを考えたときにこういう案が上がったんだ。
向島さんの作品出展に着想を得たんだよね。とりぃが主体となって作ったっていう挿絵のあるラジオは絵も良かったし聞いていて楽しかった。それじゃあ合同番組だけじゃなくてMBCC単独での番組があってもいいよねって話になって、昼放送にこだわらなくていいよって人はそっちに回ってもらう話になっている。今年は人数が多いからって留学には出せないし。一応全員から履修票はもらうんだけどね。
「あっ、俺ら高木先輩に聞きたいことがあって一緒に来たんすよ」
「聞きたいこと? ゼミのこととか?」
「さ~っすが高木先輩。言わなくてもわかってますよ感があると、この人の言うことを信じようって気になるんすよねー」
「中、今は占いの話はいいんだって」
1年生の社会学部の3人が揃ってのお出まし。それで聞きたいことがあると言われて今の時期。だったらやっぱりゼミのことかなあって考えるのは自然だよね。去年のササとシノもちょくちょく俺にゼミのことを聞きに来てたし。今年の子たちもやっぱり気になるよねえ。
「もうしばらくしたらゼミの説明会ってのがあるんすよ!」
「そうだね。毎年やってるよね」
「それで俺たち佐藤ゼミに入りたいって話は前々からしてるじゃないすか。何か履修しておいた方がいい講義とかありますかね?」
「つか何でそれを履修登録した後に聞くんだって話でだな」
「佐藤先生のメディア論の履修が最低条件だって、前々から言われてたと思うけど~」
「一応だよ。ちゃんと取れてるか心配になっちまって」
「そうだね。メディア論Ⅰを取っておけば履修の心配は特にしなくて大丈夫」
「はーよかったぁー」
「ちむりーの言うことを聞いときゃちげーねーんだっつの」
「佐藤ゼミは学部の説明会の他に個別の面談っていうのがあって、そこで佐藤ゼミオリジナルのエントリーシートっていうのを書く必要があるんだよね」
「エントリーシートですか? 志望動機とか、自己PRとか書く感じの」
「大体そんな感じだね」
俺のエントリーシートが全く面白くなかったという話は後々になって果林先輩から聞かされたんだけど、MBCCのミキサーというだけの理由で何とか拾ってもらえた俺は多分運が良かった。MBCCのミキサーも今となってはシノもいるし、無条件で採用とは必ずしも言えない時代になっていてもおかしくはない。付加価値がないと厳しいかなとか。
例によって厳しいのはアナウンサーの凛斗だ。俺はササがアナウンサーの重要性を実力で示さないといけないと思ってるんだけど、2年生が作っている課題の番組が先生の好みそうな知的な番組になっているかどうかが分かるのは選考より後。しかも、ササの課題である生放送への対応に関して言えば、動画番組の方に回るこの秋学期は厳しそうだ。
「エントリーシートは書きたいように書いてもらえれば、後は俺やササシノがこの子はこういう子ですって感じで情報提供出来るからどうとでもなるんだよ」
「よかった~。私、エントリーシートにはあまり自信がなかったので~」
「俺は自信しかねーなァ」
「そりゃ中はな。あとは何をすればいいとかっていうのはありますか?」
「ところで、春学期の成績はみんなどうだった? 佐藤ゼミは一応成績のボーダーがあるから、あんまり成績が悪いと取ってもらえないんだよ」
「じゃあ今せーのでアプリ開きましょ。そんでアウトかセーフか高木先輩に判別してもらおうぜ」
「そうだな! それがわかりやすい」
「今開くね~」
で、3人分の成績を見せてもらいますよね。夏にシノと話してた心配が現実のものとなりそうで冷や冷やしてるよね。
「凛斗は何とも言えない普通の成績って感じで。エントリーシートで頑張ろうねえ」
「頑張りまーす……」
「中は……結構尖ってるねえ。頑張ったのとそうじゃないのがパキッと分かれてて」
「わかりますー? 履修票埋めるためだけに履修した興味ない講義ってどーもやる気出ないって言うか」
「ああ、まあ、それもわからないでもないけど。それで成績の数字的にはちょっと下がっちゃってるけど、中はエントリーシートが面白くなりそうだしそもそもがミキサーだから受かる確率は高そうだね」
「よっしゃ!」
「私はどうですか?」
「そーだ! 俺の事よりちむりーはどうすか!?」
「はっきり言わせてもらうと、体育以外S評価っていうのは非の打ちどころがないし、エントリーシートが無難でも成績優秀なミキサーっていう時点で期待値は高くなると思うよ」
「おー! さすちむ!」
「本当ですか!?」
「ただ、期待値が高くなる分ミキサーとしての腕にも過度に期待がかかり過ぎる可能性は出て来るんだよねえ。まあ、それは俺が今からどうにかすればいいだけのことだからちむりーは心配しないでもらって。ちむりーはミキサーの方を頑張ろうね」
「はーい」
ちむりーはスポーツは得意じゃないって言ってたし、多分実技テストが仇となって体育の成績はA評価。だけどそれ以外が全部S評価だったんだよなあ。俺とシノに無い物を持ったミキサーが佐藤ゼミの門を叩こうとしている。
ただ、ちむりーのミキサーとしての技術は現状平々凡々。ゼミに入るとするならもう少し伸ばしておきたいところだ。夏合宿を見ててもライブ対応はちょっと苦手なササタイプっぽいし。うーん、ちむりーは是が非でも昼放送に入れておきたいところだけど。
「そーだ高木先輩、何か教科書のお下がりとかありません?」
「教科書のお下がり? ああ、教科書って高いよねえ。俺もまたたくさん買わなきゃなあ」
「え、3年生の後期になってもまだたくさん教科書が要るんすか?」
「ああ、俺はあんまり単位取れてないからね。履修もまだそれなりにあるよ」
「佐藤ゼミって成績のボーダーがあるんじゃ」
「あるよ? 俺とかシノは特例で入れてもらってるってだけだから、1年生のみんなは学業とそれぞれの課題を頑張ってください」
end.
++++
佐藤ゼミを志望する3人にはそれぞれ課題がありそうな感じ。TKGの地位は一応安泰なんだろうか
今年はMMPも人数が余って来るレベルなので軽率に留学だの何だのと言って人の行き来はしにくいかなあと思っていたら
(phase3)
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「高木せんぱーい、履修票でーす」
「はーい、ありがとう。えーと、凛斗と中とちむりーね。確かに受け取りました」
秋学期の昼放送の編成をするために、みんなの履修票を受け取る。これを見て俺とエイジが何曜日にどんなペアで番組をやるのかっていうのを決定していく。ただ、今年はちょっといつもとは違う試みをやってみようっていう話が向島さんとの間で上がっている。その関係もあって昼放送の編成もちょっと難しめ。
月に1回か、余裕があれば2回くらいの頻度でインターフェイスの動画チャンネルに合同で制作するラジオ動画を上げてみようっていう話が持ち上がった。映像の活動をやっていない俺たちがチャンネルを積極的に使って行くには、ということを考えたときにこういう案が上がったんだ。
向島さんの作品出展に着想を得たんだよね。とりぃが主体となって作ったっていう挿絵のあるラジオは絵も良かったし聞いていて楽しかった。それじゃあ合同番組だけじゃなくてMBCC単独での番組があってもいいよねって話になって、昼放送にこだわらなくていいよって人はそっちに回ってもらう話になっている。今年は人数が多いからって留学には出せないし。一応全員から履修票はもらうんだけどね。
「あっ、俺ら高木先輩に聞きたいことがあって一緒に来たんすよ」
「聞きたいこと? ゼミのこととか?」
「さ~っすが高木先輩。言わなくてもわかってますよ感があると、この人の言うことを信じようって気になるんすよねー」
「中、今は占いの話はいいんだって」
1年生の社会学部の3人が揃ってのお出まし。それで聞きたいことがあると言われて今の時期。だったらやっぱりゼミのことかなあって考えるのは自然だよね。去年のササとシノもちょくちょく俺にゼミのことを聞きに来てたし。今年の子たちもやっぱり気になるよねえ。
「もうしばらくしたらゼミの説明会ってのがあるんすよ!」
「そうだね。毎年やってるよね」
「それで俺たち佐藤ゼミに入りたいって話は前々からしてるじゃないすか。何か履修しておいた方がいい講義とかありますかね?」
「つか何でそれを履修登録した後に聞くんだって話でだな」
「佐藤先生のメディア論の履修が最低条件だって、前々から言われてたと思うけど~」
「一応だよ。ちゃんと取れてるか心配になっちまって」
「そうだね。メディア論Ⅰを取っておけば履修の心配は特にしなくて大丈夫」
「はーよかったぁー」
「ちむりーの言うことを聞いときゃちげーねーんだっつの」
「佐藤ゼミは学部の説明会の他に個別の面談っていうのがあって、そこで佐藤ゼミオリジナルのエントリーシートっていうのを書く必要があるんだよね」
「エントリーシートですか? 志望動機とか、自己PRとか書く感じの」
「大体そんな感じだね」
俺のエントリーシートが全く面白くなかったという話は後々になって果林先輩から聞かされたんだけど、MBCCのミキサーというだけの理由で何とか拾ってもらえた俺は多分運が良かった。MBCCのミキサーも今となってはシノもいるし、無条件で採用とは必ずしも言えない時代になっていてもおかしくはない。付加価値がないと厳しいかなとか。
例によって厳しいのはアナウンサーの凛斗だ。俺はササがアナウンサーの重要性を実力で示さないといけないと思ってるんだけど、2年生が作っている課題の番組が先生の好みそうな知的な番組になっているかどうかが分かるのは選考より後。しかも、ササの課題である生放送への対応に関して言えば、動画番組の方に回るこの秋学期は厳しそうだ。
「エントリーシートは書きたいように書いてもらえれば、後は俺やササシノがこの子はこういう子ですって感じで情報提供出来るからどうとでもなるんだよ」
「よかった~。私、エントリーシートにはあまり自信がなかったので~」
「俺は自信しかねーなァ」
「そりゃ中はな。あとは何をすればいいとかっていうのはありますか?」
「ところで、春学期の成績はみんなどうだった? 佐藤ゼミは一応成績のボーダーがあるから、あんまり成績が悪いと取ってもらえないんだよ」
「じゃあ今せーのでアプリ開きましょ。そんでアウトかセーフか高木先輩に判別してもらおうぜ」
「そうだな! それがわかりやすい」
「今開くね~」
で、3人分の成績を見せてもらいますよね。夏にシノと話してた心配が現実のものとなりそうで冷や冷やしてるよね。
「凛斗は何とも言えない普通の成績って感じで。エントリーシートで頑張ろうねえ」
「頑張りまーす……」
「中は……結構尖ってるねえ。頑張ったのとそうじゃないのがパキッと分かれてて」
「わかりますー? 履修票埋めるためだけに履修した興味ない講義ってどーもやる気出ないって言うか」
「ああ、まあ、それもわからないでもないけど。それで成績の数字的にはちょっと下がっちゃってるけど、中はエントリーシートが面白くなりそうだしそもそもがミキサーだから受かる確率は高そうだね」
「よっしゃ!」
「私はどうですか?」
「そーだ! 俺の事よりちむりーはどうすか!?」
「はっきり言わせてもらうと、体育以外S評価っていうのは非の打ちどころがないし、エントリーシートが無難でも成績優秀なミキサーっていう時点で期待値は高くなると思うよ」
「おー! さすちむ!」
「本当ですか!?」
「ただ、期待値が高くなる分ミキサーとしての腕にも過度に期待がかかり過ぎる可能性は出て来るんだよねえ。まあ、それは俺が今からどうにかすればいいだけのことだからちむりーは心配しないでもらって。ちむりーはミキサーの方を頑張ろうね」
「はーい」
ちむりーはスポーツは得意じゃないって言ってたし、多分実技テストが仇となって体育の成績はA評価。だけどそれ以外が全部S評価だったんだよなあ。俺とシノに無い物を持ったミキサーが佐藤ゼミの門を叩こうとしている。
ただ、ちむりーのミキサーとしての技術は現状平々凡々。ゼミに入るとするならもう少し伸ばしておきたいところだ。夏合宿を見ててもライブ対応はちょっと苦手なササタイプっぽいし。うーん、ちむりーは是が非でも昼放送に入れておきたいところだけど。
「そーだ高木先輩、何か教科書のお下がりとかありません?」
「教科書のお下がり? ああ、教科書って高いよねえ。俺もまたたくさん買わなきゃなあ」
「え、3年生の後期になってもまだたくさん教科書が要るんすか?」
「ああ、俺はあんまり単位取れてないからね。履修もまだそれなりにあるよ」
「佐藤ゼミって成績のボーダーがあるんじゃ」
「あるよ? 俺とかシノは特例で入れてもらってるってだけだから、1年生のみんなは学業とそれぞれの課題を頑張ってください」
end.
++++
佐藤ゼミを志望する3人にはそれぞれ課題がありそうな感じ。TKGの地位は一応安泰なんだろうか
今年はMMPも人数が余って来るレベルなので軽率に留学だの何だのと言って人の行き来はしにくいかなあと思っていたら
(phase3)
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