2022
■残業残業もっと残業
++++
「はー……やってもやっても終わる感じがねーな」
「だけどやんないと終わらないし、明日には次が来ちゃうから今日片付けないと」
「明日もそこそこ来るしそこそこ出てくからな。まだまだこんなモンじゃねえぞ」
現在時刻は午後7時前。向西倉庫は取り扱い製品の販売元会社が中間決算を迎えるということもあって出荷量がドンと増えている。その上、これから出荷する製品もどんどん入庫してきていて朝は早出、夜は残業、土曜祝日関係なしという日々だ。
働き方改革の波がウチの会社に押し寄せる前のことを知っている俺や塩見さんはこんな物だよねえと感じでやってるんだけど、今年から社員になった越野はこんなのがまだ続くのかとたまにげんなりしている様子。これでも残業時間は前よりウンと短いんだけどね。
ただ、今日は状況がちょっと違った。台風シーズンになると船の都合だったりトラックの都合だったり、場合によっては災害による道路交通状況なんかの都合で荷物が遅れるなんてことはザラ。そうやってズレ込んだ荷物が一気にわーっと押し寄せてきたんだ。
出荷もそれなりにあるけどそれどころじゃないって言って、俺や塩見さん、それから越野は出荷作業そっちのけでずーっと入荷作業と新倉庫の整理をしてて。それが全っ然終わらなくて今に至ってる。出荷作業をしてた他の人たちがお先にーって言って帰って行ってるし。
「大石君越野君それいつからやってんの?」
「あっ長岡君。出荷はもう終わってるんだよね」
「俺とかは最後空箱切って、次の箱まで作って終わりだね。在庫補充もやりつつだけど」
「7時でキリ良しって感じかな」
「そんな感じだね」
「パートさんとかはもっと早い時間に帰ってくの見たけど、こっちは朝から始めて全然終わんねーわ」
「明日も早出だよな?」
「そーだよ。お前も予定表もらってんだろ」
「もらってるけど、俺入荷作業はケースを積むだけだしそこまで細かく見てないもん」
「見ろよ」
「おーこわっ。じゃ、お疲れでーす」
「お疲れー」
出荷作業に回っていた人たちは目途がついて帰ってるけど、こっちはまだまだ。俺と塩見さんが延々とフォークリフトで物の片付けをして、越野は現物とデータの確認だとか、検品票の手配にパソコンの上での作業にとそれぞれに忙しい。
「千景、越野、今日は飯頼むってよ。そのうち圭佑が注文取りに来るし何食いたいか考えとけ」
「はーい」
「え、飯頼むって、晩飯?」
「そうだよ。ご飯を食べてもうちょっと働くんだよ。で、夕飯は近くの店が出前をやってるから、そのメニューだね。俺はだいたい丼物を特盛りにしてもらってるんだけど」
「飯食ってさらに延長って何だよ……つか食いたい物考えろって言われてもメニューわかんねーし」
「心配すんな。今日は残っても最大22時までだしメニューは圭佑が持ってる」
「えー、10時までですかー?」
「あからさまに残念そうにすんな千景。心配しなくても当分早出だ」
「つかお前どんだけ働くの好きなんだよ」
「働くのが好きと言うより、働いた結果もらえる賃金がありがたいってだけだよ。お金は生活の質に直結するからね」
短い時間でたくさんお金がもらえるならそれに越したことはないけど、なかなかそんな風には行かないからね。出来る早出と残業はしてお金をこつこつ貯めていきたい。急に大きな出費がないとも限らないからね。家にお金も入れなきゃいけないし。
「夕飯の注文でーす。大石君、今日は何丼?」
「えっと、親子丼にします」
「親子丼の特盛りね。万里は何にする?」
「圭佑君、メニューありますか?」
「あるよ。出前で時間がかかんないのは赤丸ついてるから」
「あ、そーゆーのがあるんだ。えっと、そしたら丸付いてるヤツから選んだ方がいいってことかな。何にしよ」
「俺もあらためてメニュー見ようかなあ」
「お前は別に見なくても知ってるんじゃないのかよ」
「たくさんメニューがあるのは知ってるけど、ちゃんと見たことはないんだよ。いつも丼のローテーションだから」
塩見さんは大体牛丼か焼き肉丼だし、俺は親子丼とか他の丼も選ぶけど大体丼に落ち着くんだよね。で、裏メニュー的に大盛りの上の特盛りにさせてもらってて。丼以外のメニューはあんまりよく知らないから眺めてるのも楽しいけどお腹空いちゃうなあ。
「あ、確かねえ、チャーハンとかはスープも付いてきたと思う。畠山さんが食べてるの見たことある」
「へー、スープ付きなんだ」
「あんかけうどんも見たことあるし、やっぱ出前だと麺類とか丼物が主になるけど餃子とか唐揚げの定食とかもあるんだー」
「じゃあ、とりあえずチャーハンにしようかな」
「万里、何盛りにする?」
「普通で大丈夫っす。え、この店大盛りが基本みたいな感じです?」
「店がって言うか塩見さんと大石君が?」
「あー。俺はそこまでガツガツ体動かしてるワケでもないし普通くらいがちょうどいいと思う」
「え、体動かしてなくても大盛りくらいがちょうどよくない?」
「それはおめーだからだ。俺はお前ほど食わねーから」
夕飯を頼んだら、出前が届くまでもう一踏ん張りだ。出前が届いたらそれを食べてさらにもう一踏ん張り。明日も仕事が山積みだから、今日のうちに出来るだけ片付けたい。制限時間がある以上、終われないとは思うんだけど。
「千景、お前のリフトまだ動くか?」
「一応まだ動いてますね」
「飯食ってる間はリフト充電繋いどけよ」
「わかりました。塩見さんのリフトは充電中ですか?」
「ああ。飯食った後はハタケさんのリフトでもパチるかな」
「畠山さんは今日はもうおしまいなんですか?」
「早出の時間に来ときながら荷下ろしをブッチして在庫補充すんのがあの人の常套手段だからな。何ならさっきまで長岡に補充させて自分は事務所でコーヒー飲んでただろ」
「あー、あの人それよくやりますよねー。つか何なら長岡も割と帰るの遅い方だったかもしれない」
「確かにそうだね。自分のことでいっぱいいっぱいで全然わかんなかったけど」
「お前は周りに気を使い過ぎなんだ。自分のことでいっぱいいっぱいなくらいでちょうどだ」
「ホンそれ。入荷終わってたら長岡のポジションにいたの絶対お前だぞ」
「あはは……そうかもねえ……」
自分のことでいっぱいいっぱいなくらいでちょうど、かあ。あれっ、そう言えばB棟の在庫ってどうなってたっけ? 明日にでも確認しとかなきゃ。
「おーい、大石くーん!」
「はーい!」
「悪い、そこの伝票貼ったパレット、荷受に持ってきてくれー」
「はーい、今行きまーす」
「よし。千景は所長の仕事が入ったし、飯が来るまで俺と越野は地上で出来る仕事を片付けるか」
「あっ、はい!」
end.
++++
フェーズ1の残業の話を読んだ結果、フェーズ3だとどうなる?と思った結果。安定の早出アンド残業。
塩見さんがこうってことはUSDXも安定のツミツミ動画ラッシュだしわかる人には「始まったな」となっているはず
さすがのこっしーも早出と残業が続くとげんなりしてしまうらしい。まだもうしばらく続くよ
(phase3)
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「はー……やってもやっても終わる感じがねーな」
「だけどやんないと終わらないし、明日には次が来ちゃうから今日片付けないと」
「明日もそこそこ来るしそこそこ出てくからな。まだまだこんなモンじゃねえぞ」
現在時刻は午後7時前。向西倉庫は取り扱い製品の販売元会社が中間決算を迎えるということもあって出荷量がドンと増えている。その上、これから出荷する製品もどんどん入庫してきていて朝は早出、夜は残業、土曜祝日関係なしという日々だ。
働き方改革の波がウチの会社に押し寄せる前のことを知っている俺や塩見さんはこんな物だよねえと感じでやってるんだけど、今年から社員になった越野はこんなのがまだ続くのかとたまにげんなりしている様子。これでも残業時間は前よりウンと短いんだけどね。
ただ、今日は状況がちょっと違った。台風シーズンになると船の都合だったりトラックの都合だったり、場合によっては災害による道路交通状況なんかの都合で荷物が遅れるなんてことはザラ。そうやってズレ込んだ荷物が一気にわーっと押し寄せてきたんだ。
出荷もそれなりにあるけどそれどころじゃないって言って、俺や塩見さん、それから越野は出荷作業そっちのけでずーっと入荷作業と新倉庫の整理をしてて。それが全っ然終わらなくて今に至ってる。出荷作業をしてた他の人たちがお先にーって言って帰って行ってるし。
「大石君越野君それいつからやってんの?」
「あっ長岡君。出荷はもう終わってるんだよね」
「俺とかは最後空箱切って、次の箱まで作って終わりだね。在庫補充もやりつつだけど」
「7時でキリ良しって感じかな」
「そんな感じだね」
「パートさんとかはもっと早い時間に帰ってくの見たけど、こっちは朝から始めて全然終わんねーわ」
「明日も早出だよな?」
「そーだよ。お前も予定表もらってんだろ」
「もらってるけど、俺入荷作業はケースを積むだけだしそこまで細かく見てないもん」
「見ろよ」
「おーこわっ。じゃ、お疲れでーす」
「お疲れー」
出荷作業に回っていた人たちは目途がついて帰ってるけど、こっちはまだまだ。俺と塩見さんが延々とフォークリフトで物の片付けをして、越野は現物とデータの確認だとか、検品票の手配にパソコンの上での作業にとそれぞれに忙しい。
「千景、越野、今日は飯頼むってよ。そのうち圭佑が注文取りに来るし何食いたいか考えとけ」
「はーい」
「え、飯頼むって、晩飯?」
「そうだよ。ご飯を食べてもうちょっと働くんだよ。で、夕飯は近くの店が出前をやってるから、そのメニューだね。俺はだいたい丼物を特盛りにしてもらってるんだけど」
「飯食ってさらに延長って何だよ……つか食いたい物考えろって言われてもメニューわかんねーし」
「心配すんな。今日は残っても最大22時までだしメニューは圭佑が持ってる」
「えー、10時までですかー?」
「あからさまに残念そうにすんな千景。心配しなくても当分早出だ」
「つかお前どんだけ働くの好きなんだよ」
「働くのが好きと言うより、働いた結果もらえる賃金がありがたいってだけだよ。お金は生活の質に直結するからね」
短い時間でたくさんお金がもらえるならそれに越したことはないけど、なかなかそんな風には行かないからね。出来る早出と残業はしてお金をこつこつ貯めていきたい。急に大きな出費がないとも限らないからね。家にお金も入れなきゃいけないし。
「夕飯の注文でーす。大石君、今日は何丼?」
「えっと、親子丼にします」
「親子丼の特盛りね。万里は何にする?」
「圭佑君、メニューありますか?」
「あるよ。出前で時間がかかんないのは赤丸ついてるから」
「あ、そーゆーのがあるんだ。えっと、そしたら丸付いてるヤツから選んだ方がいいってことかな。何にしよ」
「俺もあらためてメニュー見ようかなあ」
「お前は別に見なくても知ってるんじゃないのかよ」
「たくさんメニューがあるのは知ってるけど、ちゃんと見たことはないんだよ。いつも丼のローテーションだから」
塩見さんは大体牛丼か焼き肉丼だし、俺は親子丼とか他の丼も選ぶけど大体丼に落ち着くんだよね。で、裏メニュー的に大盛りの上の特盛りにさせてもらってて。丼以外のメニューはあんまりよく知らないから眺めてるのも楽しいけどお腹空いちゃうなあ。
「あ、確かねえ、チャーハンとかはスープも付いてきたと思う。畠山さんが食べてるの見たことある」
「へー、スープ付きなんだ」
「あんかけうどんも見たことあるし、やっぱ出前だと麺類とか丼物が主になるけど餃子とか唐揚げの定食とかもあるんだー」
「じゃあ、とりあえずチャーハンにしようかな」
「万里、何盛りにする?」
「普通で大丈夫っす。え、この店大盛りが基本みたいな感じです?」
「店がって言うか塩見さんと大石君が?」
「あー。俺はそこまでガツガツ体動かしてるワケでもないし普通くらいがちょうどいいと思う」
「え、体動かしてなくても大盛りくらいがちょうどよくない?」
「それはおめーだからだ。俺はお前ほど食わねーから」
夕飯を頼んだら、出前が届くまでもう一踏ん張りだ。出前が届いたらそれを食べてさらにもう一踏ん張り。明日も仕事が山積みだから、今日のうちに出来るだけ片付けたい。制限時間がある以上、終われないとは思うんだけど。
「千景、お前のリフトまだ動くか?」
「一応まだ動いてますね」
「飯食ってる間はリフト充電繋いどけよ」
「わかりました。塩見さんのリフトは充電中ですか?」
「ああ。飯食った後はハタケさんのリフトでもパチるかな」
「畠山さんは今日はもうおしまいなんですか?」
「早出の時間に来ときながら荷下ろしをブッチして在庫補充すんのがあの人の常套手段だからな。何ならさっきまで長岡に補充させて自分は事務所でコーヒー飲んでただろ」
「あー、あの人それよくやりますよねー。つか何なら長岡も割と帰るの遅い方だったかもしれない」
「確かにそうだね。自分のことでいっぱいいっぱいで全然わかんなかったけど」
「お前は周りに気を使い過ぎなんだ。自分のことでいっぱいいっぱいなくらいでちょうどだ」
「ホンそれ。入荷終わってたら長岡のポジションにいたの絶対お前だぞ」
「あはは……そうかもねえ……」
自分のことでいっぱいいっぱいなくらいでちょうど、かあ。あれっ、そう言えばB棟の在庫ってどうなってたっけ? 明日にでも確認しとかなきゃ。
「おーい、大石くーん!」
「はーい!」
「悪い、そこの伝票貼ったパレット、荷受に持ってきてくれー」
「はーい、今行きまーす」
「よし。千景は所長の仕事が入ったし、飯が来るまで俺と越野は地上で出来る仕事を片付けるか」
「あっ、はい!」
end.
++++
フェーズ1の残業の話を読んだ結果、フェーズ3だとどうなる?と思った結果。安定の早出アンド残業。
塩見さんがこうってことはUSDXも安定のツミツミ動画ラッシュだしわかる人には「始まったな」となっているはず
さすがのこっしーも早出と残業が続くとげんなりしてしまうらしい。まだもうしばらく続くよ
(phase3)
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