2022

■Study Results

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「おはー。ジュン、成績見たー?」
「成績? もう出てたんだ」
「意外やなー。お前なんか成績開示された瞬間確認してそーやけどまだ見てなかったんやな」
「ああ、作品出展の挿絵を描いたり、そのために絵と宇宙関係の勉強とかしてて」
「結局真面目か!」

 うっしーとは同じ情報科学部情報科学科だから、実は結構履修も似たり寄ったりだったりする。うっしーがサークルに入って来てからはその辺りのことも情報交換しながら初めての大学での勉強に精を出していた。春学期のテストの成績が開示されたのも、昨日今日ではなくもう少し前のこと。本当に全然気にしてなかった。

「お前テスト前とかケイトくんに拝んどったもんな」
「やれることはやった上で神頼みでもしておこうと思って。そう言えば、成績はどうだったんだろう。思い出したら緊張してきた」
「スマホと繋いだらそこのパソコンで学内システムにログイン出来んかな?」
「まさかここから成績を見る気か?」
「ちょちょいのちょいや!」

 そう言って本当にやってしまうところがうっしーだなと思う。通信量かさむからさっさと見ろと言われてしまえば、見るしかないだろう。せっかくやってくれたのに断るのも何だか申し訳ない。

「あー、えーと、ここのページでいいのかな?」
「そーやね、そこそこ。はー、やっぱジュン成績ええなー。SとAばっかやん」
「うん、何か、ちょっと安心した。うっしーはどうだった?」
「俺? ジュンよりはさすがに良くないて。授業サボって棚作ったりとかしとったしな」
「ああ……そう言えばそうだったっけ」
「うーしーやーまーしょーおーたっと。ほらな? 口ではそんなにやよーとか言っときながら実はSばっかりとかやないっていう証明! まっくろジュンジュンに殴られたくないからな!」
「殴らないって。でも、それなりにサボっててこれってことは、ちゃんとやればもっと行くんじゃないか」
「ちゃんともするけど授業サボって遊んだりもしたい! そのために俺は大学に入ってんから」

 うっしーが去年見て来た社会で植え付けられた大学生への偏ったイメージの通り、春学期は程よく遊んでいたようだ。たまに休んでいた講義のノートを見せてくれと言われることもあったし。だけど、資格試験の話とかを聞くとしっかりとアドバイスしてくれるところがやっぱり実務経験の分の差なんだろうなと思う。

「そーいやジュンってオーキャンやなくて作品出展の方の番組作るんやろ?」
「そうだよ」
「絵とか宇宙とかの勉強の成果って出とるんか?」
「うーん、わからない。千颯先輩から教えてもらった練習法とか、絵が上達するみたいな動画とか見ながらいろいろやってみてはいるんだけど」
「そんなモンあれやん。常に見られることを意識したらええって言わん? SNSに1日1枚絵をアップする的な練習方法」
「聞いたことはあるけどやる度胸がない。上げれるクオリティかなって躊躇すると言うか」
「そんなコトゆーとったら永久に何もならんやん! お前今日からMMPの1年グループに1日1枚絵上げーや」
「ええ…?」
「うーん、せやなあ。ただ上げるんやなしに、宇宙のことでも大学の講義でも何でもとにかく勉強したことを絵にして俺らに教える風にしよ。そしたら絵も上手くなるし人に伝えるためにはどういう構図にすればいいかとか考えるし、勉強したことを噛み砕くことも出来るしジュンには得しかなくないか? 俺らもちょっと頭よーなるかもしれんし」
「うーん、そうなのかなあ」
「騙されたと思ってやってみよ! な!」
「じゃあ、とりあえず1週間やってみる」
「よし! そうとなったら後戻り出来んようにしとくな!」

 すると俺のスマホからピンポンと通知の音。まさかと思って見てみると、うっしーからのLINEだ。本文には、俺が今日から1日1枚絵を上げるから見てやってくれという内容だった。と言うかわざわざLINEで送らなくてもここにみんな集まって来るんだからその時に言えば良かったんじゃないのか。
 もちろん作品出展の挿絵に支障が出ない範囲でやらないといけないんだけど、うーん、勉強したことを絵にする、か。日々のちょっとした気付きとかでもいいのかな。でも、どっちにしても勉強はするんだし俺の備忘録にもなりそうだ。いや、せっかくみんなに見てもらうんだし、みんなの興味がありそうなことを調べてみてもいいかもしれない。そうなると「もう知ってます」ってなるのかなあ。

「絵はどんだけ上手くなったん? 試しにホワイトボードにケイトくん描いてみやあ。ほら、御朱印帳的な感じで」
「御朱印帳って。えーと……結構バランスが難しいな。ケイトくんて重心をどこに置いていいかわからないんだよな」
「頭デカいからすーぐ転がってくんよな、わかるわー!」
「うっしーはケイトくんに恋愛運と金運の願掛けをしてるみたいだけど、そっちの御利益は出そうか?」
「今んトコさっぱりやわ」
「結局のところ何にしても努力なんだもんな」
「マジレスすんなやー」
「はい、ケイトくん」
「おー、さすがやなあ。つかここのサークル室、写真もめっちゃあるし模写練の素材なんか選びたい放題やん!」
「ああ、確かに。いくつか模写かデフォルメで描かせてもらおうかなあ。……重っ」
「そーいや今ってあんま写真とか撮っとらんよなあ。俺もちょこちょこ撮ってみようかなあ」
「うん、いいと思う。こんな時代があったよなって、振り返りやすくなるし」
「よーし、俺は写真を始めるぞー!」


end.


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割といいコンビの1年生年長組。
一旦就職したのにやっぱ大学行くわって進路を切り替えたことにしてもうっしーは結構スパッとした行動力をしているらしい。
菜月さんが隙あらば撮っていた写真が模写用の素材になるとは。時代だねえ

(phase3)

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