2022
■Unfinished works
++++
「野坂先輩、おはようございます」
「おはよー」
「調子はいかがですか?」
「ぼちぼちってトコかな。春風は? 対策委員の2年生はめちゃくちゃ忙しかっただろうし、あんまり作業する時間もなかったんじゃないか?」
「そうなんですよね。ですが、夜の時間を割いて少しずつコードを書いていましたし、細かな調整はこれからですが何とかやっています」
秋から正式に所属することになっている野島ゼミのゼミ室にお邪魔して、これからやる作業の準備をします。一体何を進めているのかと言うと、大学祭と同時開催される向島ロボット大戦に向けたマシンメンテナンスです。参加者は各々既定の範囲でロボットを改造し、自分で書いたプログラミングコードで動かして戦います。私は今から本格的にこの準備にかかります。
野坂先輩も今年のロボット大戦に出場されるとのことで、日頃から準備を進めているようです。就活を終えた4年生ともなると、卒研があるとは言え時間を贅沢に使えるのだなと思います。それは私が対策委員としてこの夏はバタバタしていたから余計にそう見えるのかもしれないのですが。
「結局夏合宿はどうだった? トラブルとか」
「今年は暴力沙汰であったり、体調を崩した人が出るなどのトラブルはありませんでした」
「そっか、よかった。こないだ聞くの忘れたけどちなミキサーテストは誰がトップだったとか」
「サキさんでしたね。89点で」
「89? 低くないか?」
「ダイさんも仰っていましたが、問題の難易度が高かったのか、今年は去年と比較すると平均点が低めだったそうです」
「言うほど難しかったかな? まあいいや。他には」
「野坂先輩はモニター会にもお越しくださったのでご存知だとは思いますが、コミュニティラジオ局のFMにしうみの方がいらっしゃったのが変わったことだったように思います」
「インターフェイスで番組をっていう件だよな」
「興味のある人がいれば10月を目途に始まるという話ですが、どうなりますかね」
「ウチで誰か興味のある奴はいないの?」
「どうでしょうか。ジャックとうっしーは本当にやれれば凄いなあとは言っていましたが、場所が西海だというのがネックだとも言っていましたので」
「その2人は豊葦だっけ?」
「そうですね」
「豊葦から西海は確かにしんどいよなー」
他の大学には何人か興味のある人もいるという話なので、距離や時間の都合さえクリアできれば番組の計画が具体的になっていくのでしょう。その辺りはラジオ局でアルバイトをしているサキさんが事情通ですが、サキさん自身も無条件通過ではないから頑張らなければと言っていました。サキさんでも無条件では通れないというのが、要求されるレベルの高さを感じます。
「って言うか春風、こないだのラジドラの脚本の件は何だった?」
「ええとですね、ジュンからの頼みだったのです」
「ジュンが?」
「ジュンには絵を描く趣味があるようで、それをきっかけにインターフェイスにも何人か友達が出来たようなのです。長い休みを利用して少し絵や漫画を描く時間を取りたくなったそうなのですが、自分ではストーリーが思いつかないのでMMPのサークル室に保管されていたラジオドラマの脚本をコミカライズさせてもらえないかという話でした。それで野坂先輩に私が代理で許可取りを」
「ナ、ナンダッテー……」
「ジュンの絵は可愛らしいんですよ。見てくださいこれを」
「確かにかわいい」
「それと、コミカライズ出来た作品をひとつ送ってもらったんですよ。野坂先輩もぜひご覧になって下さい」
「それじゃあ見せてもらおうかな」
私は過去のラジオドラマの脚本を見たことがなかったのですが、こういう話があったのだなあとジュンの作品のおかげで知ることが出来ました。これらが実際に収録された音声作品もあると思うのですが、それがどこに保存されているのかは私にはわかりません。奈々先輩か奏多ならわかるでしょうか。
「春風、これは一体何の作品だ!?」
「作品タイトルなどは最終頁にあったと思いますが」
「や、そうじゃない。このラジドラの原作はもちろん俺も知ってるんだ。菜月先輩と律のラブ&ピースをとことん煮詰めて猛毒にしたヤツのはずだけど、絵柄だとかコマ割りだとか、そういう効果で圭斗先輩やこーたの検閲がなくともまろやかに出来るのかと俺は感動を覚えているんだ」
「ジュンは凄いですよね!」
「凄すぎだろ……って言うかただただ学業の成績がいいだけよりも、手に職じゃないけど、こういう特技がある方が圧倒的にいいと思うのだが?」
「サキさんに対する徹平くんではありませんが、私もジュンはこんなにも凄いんですよと他の人にアピールしたい気持ちでいっぱいなのです。そしてこれを見てください野坂先輩」
「何それ。ラバーキーボルダー?」
「はい! ジュンのオリジナルキャラクターなのですが、あまりにかわいいので頼み込んで作ってもらいました」
せっかく作ってもらったキーホルダーなので、車の鍵に付けています。車の鍵に付けていますよとジュンに報告をしたら何でそんなところに付けるんだと驚いた様子でしたが、付けますよね。私はすでにイラストレーター・ジュンのファンなのです。ですが期待をかけすぎるのも良くないので、今後は程々にしなければいけませんね。
「ところで野坂先輩、このラジオドラマはどのディスクに保存されているかなどはご存知ですか? 実際の作品を聞いてみたいのですが」
「いや……当時のMMPはラジドラの脚本を作るだけ作って実際の作品が完成しなかったっていうことはザラなんだ。この作品も例に漏れず完成しなかった作品のうちのひとつでだな」
「そうなのですか? それは残念です」
「俺たちが現役だった頃のMMPがいかにいい加減だったのかという話で。菜月先輩と律の執筆能力に収録が追い付かなかったんだ」
「さすが菜月先輩……ラジオドラマの脚本もお書きになられていたのですね」
「まあ、もしジュンが他の脚本もコミカライズしたいようなら好きにやってくれと伝えてください。その方が作品も浮かばれる。あとこのファイル、律とこーたにも見せていい?」
「どうぞ。あと、脚本の件は了解しました」
end.
++++
まーた本人の知らんところでファイルが一人歩きするヤツ。ドンマイジュン。あと春風は車買ってもらったのね
ミキサーテストの結果が発表されて小さくグッてしてるサキの話はまたいつの日か。平均点低めなのはノサカが悪い
(phase3)
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「野坂先輩、おはようございます」
「おはよー」
「調子はいかがですか?」
「ぼちぼちってトコかな。春風は? 対策委員の2年生はめちゃくちゃ忙しかっただろうし、あんまり作業する時間もなかったんじゃないか?」
「そうなんですよね。ですが、夜の時間を割いて少しずつコードを書いていましたし、細かな調整はこれからですが何とかやっています」
秋から正式に所属することになっている野島ゼミのゼミ室にお邪魔して、これからやる作業の準備をします。一体何を進めているのかと言うと、大学祭と同時開催される向島ロボット大戦に向けたマシンメンテナンスです。参加者は各々既定の範囲でロボットを改造し、自分で書いたプログラミングコードで動かして戦います。私は今から本格的にこの準備にかかります。
野坂先輩も今年のロボット大戦に出場されるとのことで、日頃から準備を進めているようです。就活を終えた4年生ともなると、卒研があるとは言え時間を贅沢に使えるのだなと思います。それは私が対策委員としてこの夏はバタバタしていたから余計にそう見えるのかもしれないのですが。
「結局夏合宿はどうだった? トラブルとか」
「今年は暴力沙汰であったり、体調を崩した人が出るなどのトラブルはありませんでした」
「そっか、よかった。こないだ聞くの忘れたけどちなミキサーテストは誰がトップだったとか」
「サキさんでしたね。89点で」
「89? 低くないか?」
「ダイさんも仰っていましたが、問題の難易度が高かったのか、今年は去年と比較すると平均点が低めだったそうです」
「言うほど難しかったかな? まあいいや。他には」
「野坂先輩はモニター会にもお越しくださったのでご存知だとは思いますが、コミュニティラジオ局のFMにしうみの方がいらっしゃったのが変わったことだったように思います」
「インターフェイスで番組をっていう件だよな」
「興味のある人がいれば10月を目途に始まるという話ですが、どうなりますかね」
「ウチで誰か興味のある奴はいないの?」
「どうでしょうか。ジャックとうっしーは本当にやれれば凄いなあとは言っていましたが、場所が西海だというのがネックだとも言っていましたので」
「その2人は豊葦だっけ?」
「そうですね」
「豊葦から西海は確かにしんどいよなー」
他の大学には何人か興味のある人もいるという話なので、距離や時間の都合さえクリアできれば番組の計画が具体的になっていくのでしょう。その辺りはラジオ局でアルバイトをしているサキさんが事情通ですが、サキさん自身も無条件通過ではないから頑張らなければと言っていました。サキさんでも無条件では通れないというのが、要求されるレベルの高さを感じます。
「って言うか春風、こないだのラジドラの脚本の件は何だった?」
「ええとですね、ジュンからの頼みだったのです」
「ジュンが?」
「ジュンには絵を描く趣味があるようで、それをきっかけにインターフェイスにも何人か友達が出来たようなのです。長い休みを利用して少し絵や漫画を描く時間を取りたくなったそうなのですが、自分ではストーリーが思いつかないのでMMPのサークル室に保管されていたラジオドラマの脚本をコミカライズさせてもらえないかという話でした。それで野坂先輩に私が代理で許可取りを」
「ナ、ナンダッテー……」
「ジュンの絵は可愛らしいんですよ。見てくださいこれを」
「確かにかわいい」
「それと、コミカライズ出来た作品をひとつ送ってもらったんですよ。野坂先輩もぜひご覧になって下さい」
「それじゃあ見せてもらおうかな」
私は過去のラジオドラマの脚本を見たことがなかったのですが、こういう話があったのだなあとジュンの作品のおかげで知ることが出来ました。これらが実際に収録された音声作品もあると思うのですが、それがどこに保存されているのかは私にはわかりません。奈々先輩か奏多ならわかるでしょうか。
「春風、これは一体何の作品だ!?」
「作品タイトルなどは最終頁にあったと思いますが」
「や、そうじゃない。このラジドラの原作はもちろん俺も知ってるんだ。菜月先輩と律のラブ&ピースをとことん煮詰めて猛毒にしたヤツのはずだけど、絵柄だとかコマ割りだとか、そういう効果で圭斗先輩やこーたの検閲がなくともまろやかに出来るのかと俺は感動を覚えているんだ」
「ジュンは凄いですよね!」
「凄すぎだろ……って言うかただただ学業の成績がいいだけよりも、手に職じゃないけど、こういう特技がある方が圧倒的にいいと思うのだが?」
「サキさんに対する徹平くんではありませんが、私もジュンはこんなにも凄いんですよと他の人にアピールしたい気持ちでいっぱいなのです。そしてこれを見てください野坂先輩」
「何それ。ラバーキーボルダー?」
「はい! ジュンのオリジナルキャラクターなのですが、あまりにかわいいので頼み込んで作ってもらいました」
せっかく作ってもらったキーホルダーなので、車の鍵に付けています。車の鍵に付けていますよとジュンに報告をしたら何でそんなところに付けるんだと驚いた様子でしたが、付けますよね。私はすでにイラストレーター・ジュンのファンなのです。ですが期待をかけすぎるのも良くないので、今後は程々にしなければいけませんね。
「ところで野坂先輩、このラジオドラマはどのディスクに保存されているかなどはご存知ですか? 実際の作品を聞いてみたいのですが」
「いや……当時のMMPはラジドラの脚本を作るだけ作って実際の作品が完成しなかったっていうことはザラなんだ。この作品も例に漏れず完成しなかった作品のうちのひとつでだな」
「そうなのですか? それは残念です」
「俺たちが現役だった頃のMMPがいかにいい加減だったのかという話で。菜月先輩と律の執筆能力に収録が追い付かなかったんだ」
「さすが菜月先輩……ラジオドラマの脚本もお書きになられていたのですね」
「まあ、もしジュンが他の脚本もコミカライズしたいようなら好きにやってくれと伝えてください。その方が作品も浮かばれる。あとこのファイル、律とこーたにも見せていい?」
「どうぞ。あと、脚本の件は了解しました」
end.
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まーた本人の知らんところでファイルが一人歩きするヤツ。ドンマイジュン。あと春風は車買ってもらったのね
ミキサーテストの結果が発表されて小さくグッてしてるサキの話はまたいつの日か。平均点低めなのはノサカが悪い
(phase3)
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