2022
■下見からご安全に
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前々から夏休み頃を目処にと言っていた私の車が無事に納車され、自分の意思で動かせる状態になりました。まずは家の周りから慣らしの運転をして、もう少し足を延ばして近所のドラッグストアまで、という感じで少しずつ運転する範囲を広げていました。
「それでは、今日はよろしくお願いします」
「安全運転で行きましょう」
今日は徹平くんを助手席に乗せ、夏合宿当日のルートを下見することにしました。対策委員の会議で自分の車が動かせると言ったものの、そこまで長い距離を、それも人を乗せて運転するのは初めてになるので練習をした方がいいなと思いました。
スタート地点は私の家です。家から対策委員のメンバーを拾いながら星港市青年自然の家に向かうのですが、その道中で青年の家の最寄り駅に寄って会計のくららさんを降ろさなければなりません。なので各経由地を回りながら、一番いいルートを模索する行程でもあります。
「とりあえず素直にナビに従うのがいいとは思うけど、曜日や時間帯によって交通量が段違いだから時間には余裕を持つように」
「はい」
「友達を乗せてると絶対会話が始まるけど、自分に話が振られても視線は前な」
「はい」
徹平くんはドライバーとしての経験が豊富なので、人を乗せて走るときにどういったことに気を付ければいいのかということを細かく教えてくれます。これまでの経験を踏まえた現実的な助言はとても為になります。
家を出る前には兄さんからも気を付けるようくどくどと言われていたのですが、どうも兄さんの話となるとはいはいと受け流したくなってしまうのです。大事な話であるとはわかっているのですが。
「当日は誰を拾ってく感じ?」
「くるみと七海さん、ちとせさん、くららさんですね」
「他のメンバーが当麻号な」
「ですね。当麻さんの車に機材を乗せているので、到着と同時に機材の搬入や組立が出来るよう男手であったりミキサーが固められているのです。あと、施設や講師の方とも話が出来るような布陣になっています」
「ミキサーが固められてるっていう割に、くるみはこっちなんだ」
「くるみは私の車に乗りたいと希望を出したのでこちらに」
「あー、それは想像つく」
「こんな時、希くんがインターフェイス的にはアナウンサーでありながら機材を扱えるのは結構な強みなんですよ」
「確かに。カノンは俺らの学年でも唯一無二って感じの強みがあるよな。アナミキの二刀流だったり、定例会と対策委員の掛け持ちだったり」
「本当にそう思います。ですがダイさんのお話を聞いていると、ダイさんが現役でいらした頃の、かつてのMMPでは普通にアナウンサーが機材を触っていたそうなのです」
「へー。そしたらミキサーもトークやってたのかな」
「それはあまりなかったようです」
「じゃこーた先輩は歴代の中でも結構レアな人だったんだ」
「そういうことになりますね」
「あ、そろそろみんなを拾う頃合いかな」
集合場所に指定した駅のロータリーに車を滑らせ、今回は誰を乗せたり降ろしたりすることはないので通過するだけですが、感覚は掴めたように思います。当日はここで4人を乗せて、サッと次に向かうことになるのですね。
「駅に差し掛かった時点で人数足りないと思ったら、そこの30分駐車場に待避。ロータリーにずっとは停めらんないから」
「はい。駐車場の存在とその場所を確認できたのは成果ですね」
「乗り物酔いしやすい子がいれば助手席に。あとくららは次で降りるから後部座席の真ん中以外に座ってもらう感じかな」
「なるほど」
「くるみちとせは小柄だから後部座席が3人になっても多分全然余裕だとは思うんだけど」
「体の大きさのことも考慮するのですね」
「春風の車はそこまで気にしなくていいと思うけど、俺の車って最後列は結構狭いじゃん」
「そうですね」
「例えばMBCCの2年で出かけると仮定すると、一番後ろはササとシノにはキツいからくるみとかレナに回ってもらうことになるのかな、的な。誰から拾うかとかも考えながらだけど」
「いろいろ考えることがあるのですね。難しいです」
「それはその時になってから考えたらいいよ。今はみんないっぺんに集合するんだし」
「そうですね」
「そしたら全員拾った体で次はくららを降ろす駅か」
「はい」
「どう? 運転は慣れてきた? 最初すっごい緊張してる感じだったけど」
「今もそれなりに緊張はしてるんですよ。慣れてはきましたけど」
「程良い緊張感は大事なんだけどね。常に気を張ってなきゃいけないことには違いないから」
「そう思うと、徹平くんは車に人を乗せて走る機会も多いですし、この間のようにエリアを越えて運転をすることもあるじゃないですか。本当に凄いなあと実感します」
「みんなでいろいろ遠出するのは楽しいしドライバーをやるのは全然いいんだけど、走行距離がかさむと次の車のことを考えなきゃいけなくなるのも早くなるよなあと思って」
「ああ、そうですよね」
さすがに次の車は自分で買わなきゃいけないだろうし。そう言って徹平くんはまだ見ぬ次の車に思いを馳せているようです。私の車は買ってもらったばかりですけど、自分のお金で買うことになれば、オプションなどはもっと厳選することになるでしょうか。
そんなことを話していると、次の経由地が見えてきました。駅でくららさんを降ろしたと仮定して、最終目的地の青年自然の家へ向かいます。施設は小高い丘の上。ですが何となく見慣れた風景のように感じるのは向島大学近辺と雰囲気が近いからでしょうか。
「着きましたー」
「お疲れさま」
「当日は人の乗り降りがあるのでもう少し時間がかかりそうですね」
「道路状況もあるしね。この後どうする? ここで少し休む?」
「そうですね、少し休憩を挟ませてください。この後は、帰りがあるんですよね」
「せっかくだから、この辺でご飯でも食べてこうか。いい感じの時間だし」
「そうですね。あまり来ることのない場所ですし」
「そしたら店は俺が調べとくよ」
「ありがとうございます。あっ、洋食で攻めてもらっていいですか?」
「オッケー了解」
end.
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春風は車を運転するに当たって練習とかしてそうだと思った。助手席にはもちろんすがやん。
(phase3)
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前々から夏休み頃を目処にと言っていた私の車が無事に納車され、自分の意思で動かせる状態になりました。まずは家の周りから慣らしの運転をして、もう少し足を延ばして近所のドラッグストアまで、という感じで少しずつ運転する範囲を広げていました。
「それでは、今日はよろしくお願いします」
「安全運転で行きましょう」
今日は徹平くんを助手席に乗せ、夏合宿当日のルートを下見することにしました。対策委員の会議で自分の車が動かせると言ったものの、そこまで長い距離を、それも人を乗せて運転するのは初めてになるので練習をした方がいいなと思いました。
スタート地点は私の家です。家から対策委員のメンバーを拾いながら星港市青年自然の家に向かうのですが、その道中で青年の家の最寄り駅に寄って会計のくららさんを降ろさなければなりません。なので各経由地を回りながら、一番いいルートを模索する行程でもあります。
「とりあえず素直にナビに従うのがいいとは思うけど、曜日や時間帯によって交通量が段違いだから時間には余裕を持つように」
「はい」
「友達を乗せてると絶対会話が始まるけど、自分に話が振られても視線は前な」
「はい」
徹平くんはドライバーとしての経験が豊富なので、人を乗せて走るときにどういったことに気を付ければいいのかということを細かく教えてくれます。これまでの経験を踏まえた現実的な助言はとても為になります。
家を出る前には兄さんからも気を付けるようくどくどと言われていたのですが、どうも兄さんの話となるとはいはいと受け流したくなってしまうのです。大事な話であるとはわかっているのですが。
「当日は誰を拾ってく感じ?」
「くるみと七海さん、ちとせさん、くららさんですね」
「他のメンバーが当麻号な」
「ですね。当麻さんの車に機材を乗せているので、到着と同時に機材の搬入や組立が出来るよう男手であったりミキサーが固められているのです。あと、施設や講師の方とも話が出来るような布陣になっています」
「ミキサーが固められてるっていう割に、くるみはこっちなんだ」
「くるみは私の車に乗りたいと希望を出したのでこちらに」
「あー、それは想像つく」
「こんな時、希くんがインターフェイス的にはアナウンサーでありながら機材を扱えるのは結構な強みなんですよ」
「確かに。カノンは俺らの学年でも唯一無二って感じの強みがあるよな。アナミキの二刀流だったり、定例会と対策委員の掛け持ちだったり」
「本当にそう思います。ですがダイさんのお話を聞いていると、ダイさんが現役でいらした頃の、かつてのMMPでは普通にアナウンサーが機材を触っていたそうなのです」
「へー。そしたらミキサーもトークやってたのかな」
「それはあまりなかったようです」
「じゃこーた先輩は歴代の中でも結構レアな人だったんだ」
「そういうことになりますね」
「あ、そろそろみんなを拾う頃合いかな」
集合場所に指定した駅のロータリーに車を滑らせ、今回は誰を乗せたり降ろしたりすることはないので通過するだけですが、感覚は掴めたように思います。当日はここで4人を乗せて、サッと次に向かうことになるのですね。
「駅に差し掛かった時点で人数足りないと思ったら、そこの30分駐車場に待避。ロータリーにずっとは停めらんないから」
「はい。駐車場の存在とその場所を確認できたのは成果ですね」
「乗り物酔いしやすい子がいれば助手席に。あとくららは次で降りるから後部座席の真ん中以外に座ってもらう感じかな」
「なるほど」
「くるみちとせは小柄だから後部座席が3人になっても多分全然余裕だとは思うんだけど」
「体の大きさのことも考慮するのですね」
「春風の車はそこまで気にしなくていいと思うけど、俺の車って最後列は結構狭いじゃん」
「そうですね」
「例えばMBCCの2年で出かけると仮定すると、一番後ろはササとシノにはキツいからくるみとかレナに回ってもらうことになるのかな、的な。誰から拾うかとかも考えながらだけど」
「いろいろ考えることがあるのですね。難しいです」
「それはその時になってから考えたらいいよ。今はみんないっぺんに集合するんだし」
「そうですね」
「そしたら全員拾った体で次はくららを降ろす駅か」
「はい」
「どう? 運転は慣れてきた? 最初すっごい緊張してる感じだったけど」
「今もそれなりに緊張はしてるんですよ。慣れてはきましたけど」
「程良い緊張感は大事なんだけどね。常に気を張ってなきゃいけないことには違いないから」
「そう思うと、徹平くんは車に人を乗せて走る機会も多いですし、この間のようにエリアを越えて運転をすることもあるじゃないですか。本当に凄いなあと実感します」
「みんなでいろいろ遠出するのは楽しいしドライバーをやるのは全然いいんだけど、走行距離がかさむと次の車のことを考えなきゃいけなくなるのも早くなるよなあと思って」
「ああ、そうですよね」
さすがに次の車は自分で買わなきゃいけないだろうし。そう言って徹平くんはまだ見ぬ次の車に思いを馳せているようです。私の車は買ってもらったばかりですけど、自分のお金で買うことになれば、オプションなどはもっと厳選することになるでしょうか。
そんなことを話していると、次の経由地が見えてきました。駅でくららさんを降ろしたと仮定して、最終目的地の青年自然の家へ向かいます。施設は小高い丘の上。ですが何となく見慣れた風景のように感じるのは向島大学近辺と雰囲気が近いからでしょうか。
「着きましたー」
「お疲れさま」
「当日は人の乗り降りがあるのでもう少し時間がかかりそうですね」
「道路状況もあるしね。この後どうする? ここで少し休む?」
「そうですね、少し休憩を挟ませてください。この後は、帰りがあるんですよね」
「せっかくだから、この辺でご飯でも食べてこうか。いい感じの時間だし」
「そうですね。あまり来ることのない場所ですし」
「そしたら店は俺が調べとくよ」
「ありがとうございます。あっ、洋食で攻めてもらっていいですか?」
「オッケー了解」
end.
++++
春風は車を運転するに当たって練習とかしてそうだと思った。助手席にはもちろんすがやん。
(phase3)
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