2022
■直前準備は大丈夫?
++++
「対策委員っす。えっと、合宿まで1週間切って来たんで、そろそろ俺たち自身の当日までの動きを確認しとこうかと思うんだけど、今日はそれでいいか?」
「いいでーす」
合宿に向けてそれぞれの班で動きながら対策委員は細かい調整を続けていた。ダイさんや下山さんといった講師陣との打ち合わせや、合宿当日のスケジュールの確認はこれまでもやっていた。これから話すのは買い出ししなければならない物は何があるのか、インターフェイスの機材はどうなっているのか、などなど。
買い出しに必要な物は合宿全体の流れを考えながら数えていけばいいし、インターフェイスの機材については機材管理担当の俺が中心となって確認することになりそうだ。今回の合宿では映像を本格的に扱う上での講習は行われないけど、合宿全体の記録に使うためにカメラを持って行くことになっている。それも忘れないようにしなければならない。
「改めて買い出しする物は主に消耗品になるかな。それから、リクエスト用紙とモニター用紙を刷っとかないといけない」
「番組とかがファイル形式に出来るんだったらさ、このモニター用紙もアンケートフォームとかを使って簡略化出来ないかなあ?」
「出来るとは思いますが、さすがに合宿まで1週間を切った今からだと少し時間が足りなくなると思います」
「そっかー。もっと早く思い付いてればよかったー」
「ところで、モニター用紙というのはどういう物ですか?」
「番組の感想を書く紙だよ。いいトコだったり改善点だったりが書かれた紙が人数分手元に集まって来る。それを見る時はすげー胃がヒリヒリするんだよなー」
「そうなんですね」
紙だと筆跡とかで個人を特定されちゃいそうだし、膝の上で字を書くのもめんどうなんだよねーとくるちゃんがモニター用紙のアンケートフォーム化を提案したけどこれは来年度以降に検討してもらうことになりそうだ。こういう案がありましたというのは書記のちとせが記録をしてくれている。
「そう言えば、パソコンも持ってかなきゃいけないのか」
「当麻、MDストックってどうなってる?」
「高木さんによれば粗方変換は終わってるそうだから、現物を持って行く必要は少ないと思う。ストックリストも更新済みという風には聞いてるけど、自分でもチェックしとかないとなとは」
「すげー……結構な量あったはずだけど、いつの間に変換作業やってくれてたんだよあの人」
「いや、本当に。軽く15年分、音源で言えばもっとたくさんあったはずなのに」
「このメンバーで強いてシステム系に強い人って誰かな。良ければパソコンの方の確認を手伝って欲しいんだけど」
「システム系だったらやっぱ鳥ちゃんになるんじゃないかな」
「うん、とりぃだと思うよ! 他の子たちってみーんな文系だしプログラムとかの勉強はしてないはず。趣味でやってるって話も聞いたことないし!」
「そしたらとりぃにシステムの確認を手伝ってもらう方向で大丈夫?」
「はい、私で良ければ。その前にインターフェイスのシステムの仕様をサキさんと奏多に確認しておきますね」
「それは心強い」
どうせ機材の確認をしにフィネスタの倉庫には行かなきゃいけないんなら、その時に機材の搬出も出来ればいいような気がする。それはさすがに欲張り過ぎか。機材搬出にはある程度の頭数が必要になってくるだろうし、俺ととりぃと、北星は引き摺って来るとして、他のメンバーの手は借りられるかな。
「そうだシノ、機材の搬出についても確認しておきたいんだけど」
「そーだな。ビルの前に車を停めるなら路駐にならないように誰か1人を車に残しておかないといけないっつー話を聞いた気がする」
「今回は機材のチェックとかも兼ねるから短時間では終わらないだろうし、ちゃんと近くの駐車場に停めることになると思うけど」
「そしたら駐車料金は海月に処理してもらうとして」
「オッケー」
「あれっ、つか当麻の車に機材積むだろ。そしたら対策委員って当日どうやって集合するんだ? 昔の議事録とか見てると対策委員は機材と一緒に車で現地集合してたって風に書いてるけど」
「俺の車は普通乗用車だから乗れて5人までだし、機材とみんなの合宿の荷物を載せるとなると4人までしか乗れない可能性も」
「誰が当麻と一緒に行くかだな」
「シノは当麻と一緒に行くべきだよ!」
「あの、すみません。その件で少しお話が」
「お、どうしたとりぃ」
「実はですね、先週私の車が納車されまして。動かせる状態にはなっているので私込みで5人までなら一緒に行けるかと思うのですが」
「おー! ここに来て救世主が!」
「えー! あたしとりぃの車に乗りたーい!」
「ええと……車割は一応家の方角や現地での役割などを加味して決めた方がいいと思うのですが」
とりぃの新車が滑り込みで納車されたことで対策委員の移動問題は解決したってことでいいのかな。
「当麻の車に機材を載せるなら、現地に着いてすぐ組めるようにミキサーが多くいた方がいいんじゃね? シノは施設側とか講師の人らとの最終確認とかもあるだろうしそんなことやってるヒマはないと見て」
「講師の人らっつーなら青敬勢もいた方がいいし、北星は当麻号で確定だな」
「わかった~」
「あと当麻号に乗る候補はくるみかカノンかってトコだけど」
「えっ俺?」
「やっぱダイさん相手だと向島がいた方が話しやすいかなっつーのと、アナウンサーカウントだけど機材も扱えるっていう強みだとか」
「じゃ俺が当麻号に乗ってくかあ」
「すみません、確か一般の参加者は最寄駅からタクシーのピストン運行で送迎してもらうんですよね」
「そうそう。駅で1000円渡してとにかく5人詰め込むって感じで」
「でしたら、くららさんを駅で下ろす必要があるんですね」
「あ、そうなる。確かに」
「とりぃ号に乗るみんながどこに集合すべきかってのも考えないと」
どの車に乗った誰がどんな風に動けばスムーズに事が進むのか。効率っていうのはとても大事なことだから、しっかり考えて行かないと。現場で何が起こっても対応出来るようにもしておかないといけないし、起こりうる事態への想定も忘れてはいけない。……何が起こっても、か。さすがに今年はああいうことが起こらないといいけど。そうなったら誰が体を張るんだ。
「そしたら次、買い出しだけど。くるみ、買い物術をいかんなく発揮してくれ」
「まっかせといてよ!」
end.
++++
夏休みの間にとは言われていた春風の車がとうとう納車されたらしい。くるちゃんは新車に乗りたい。
ダイさんのノリと言えば先代の対策委員はアオが付いていけてなかったけど、今年のメンバーはどうなんだろう
(phase3)
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「対策委員っす。えっと、合宿まで1週間切って来たんで、そろそろ俺たち自身の当日までの動きを確認しとこうかと思うんだけど、今日はそれでいいか?」
「いいでーす」
合宿に向けてそれぞれの班で動きながら対策委員は細かい調整を続けていた。ダイさんや下山さんといった講師陣との打ち合わせや、合宿当日のスケジュールの確認はこれまでもやっていた。これから話すのは買い出ししなければならない物は何があるのか、インターフェイスの機材はどうなっているのか、などなど。
買い出しに必要な物は合宿全体の流れを考えながら数えていけばいいし、インターフェイスの機材については機材管理担当の俺が中心となって確認することになりそうだ。今回の合宿では映像を本格的に扱う上での講習は行われないけど、合宿全体の記録に使うためにカメラを持って行くことになっている。それも忘れないようにしなければならない。
「改めて買い出しする物は主に消耗品になるかな。それから、リクエスト用紙とモニター用紙を刷っとかないといけない」
「番組とかがファイル形式に出来るんだったらさ、このモニター用紙もアンケートフォームとかを使って簡略化出来ないかなあ?」
「出来るとは思いますが、さすがに合宿まで1週間を切った今からだと少し時間が足りなくなると思います」
「そっかー。もっと早く思い付いてればよかったー」
「ところで、モニター用紙というのはどういう物ですか?」
「番組の感想を書く紙だよ。いいトコだったり改善点だったりが書かれた紙が人数分手元に集まって来る。それを見る時はすげー胃がヒリヒリするんだよなー」
「そうなんですね」
紙だと筆跡とかで個人を特定されちゃいそうだし、膝の上で字を書くのもめんどうなんだよねーとくるちゃんがモニター用紙のアンケートフォーム化を提案したけどこれは来年度以降に検討してもらうことになりそうだ。こういう案がありましたというのは書記のちとせが記録をしてくれている。
「そう言えば、パソコンも持ってかなきゃいけないのか」
「当麻、MDストックってどうなってる?」
「高木さんによれば粗方変換は終わってるそうだから、現物を持って行く必要は少ないと思う。ストックリストも更新済みという風には聞いてるけど、自分でもチェックしとかないとなとは」
「すげー……結構な量あったはずだけど、いつの間に変換作業やってくれてたんだよあの人」
「いや、本当に。軽く15年分、音源で言えばもっとたくさんあったはずなのに」
「このメンバーで強いてシステム系に強い人って誰かな。良ければパソコンの方の確認を手伝って欲しいんだけど」
「システム系だったらやっぱ鳥ちゃんになるんじゃないかな」
「うん、とりぃだと思うよ! 他の子たちってみーんな文系だしプログラムとかの勉強はしてないはず。趣味でやってるって話も聞いたことないし!」
「そしたらとりぃにシステムの確認を手伝ってもらう方向で大丈夫?」
「はい、私で良ければ。その前にインターフェイスのシステムの仕様をサキさんと奏多に確認しておきますね」
「それは心強い」
どうせ機材の確認をしにフィネスタの倉庫には行かなきゃいけないんなら、その時に機材の搬出も出来ればいいような気がする。それはさすがに欲張り過ぎか。機材搬出にはある程度の頭数が必要になってくるだろうし、俺ととりぃと、北星は引き摺って来るとして、他のメンバーの手は借りられるかな。
「そうだシノ、機材の搬出についても確認しておきたいんだけど」
「そーだな。ビルの前に車を停めるなら路駐にならないように誰か1人を車に残しておかないといけないっつー話を聞いた気がする」
「今回は機材のチェックとかも兼ねるから短時間では終わらないだろうし、ちゃんと近くの駐車場に停めることになると思うけど」
「そしたら駐車料金は海月に処理してもらうとして」
「オッケー」
「あれっ、つか当麻の車に機材積むだろ。そしたら対策委員って当日どうやって集合するんだ? 昔の議事録とか見てると対策委員は機材と一緒に車で現地集合してたって風に書いてるけど」
「俺の車は普通乗用車だから乗れて5人までだし、機材とみんなの合宿の荷物を載せるとなると4人までしか乗れない可能性も」
「誰が当麻と一緒に行くかだな」
「シノは当麻と一緒に行くべきだよ!」
「あの、すみません。その件で少しお話が」
「お、どうしたとりぃ」
「実はですね、先週私の車が納車されまして。動かせる状態にはなっているので私込みで5人までなら一緒に行けるかと思うのですが」
「おー! ここに来て救世主が!」
「えー! あたしとりぃの車に乗りたーい!」
「ええと……車割は一応家の方角や現地での役割などを加味して決めた方がいいと思うのですが」
とりぃの新車が滑り込みで納車されたことで対策委員の移動問題は解決したってことでいいのかな。
「当麻の車に機材を載せるなら、現地に着いてすぐ組めるようにミキサーが多くいた方がいいんじゃね? シノは施設側とか講師の人らとの最終確認とかもあるだろうしそんなことやってるヒマはないと見て」
「講師の人らっつーなら青敬勢もいた方がいいし、北星は当麻号で確定だな」
「わかった~」
「あと当麻号に乗る候補はくるみかカノンかってトコだけど」
「えっ俺?」
「やっぱダイさん相手だと向島がいた方が話しやすいかなっつーのと、アナウンサーカウントだけど機材も扱えるっていう強みだとか」
「じゃ俺が当麻号に乗ってくかあ」
「すみません、確か一般の参加者は最寄駅からタクシーのピストン運行で送迎してもらうんですよね」
「そうそう。駅で1000円渡してとにかく5人詰め込むって感じで」
「でしたら、くららさんを駅で下ろす必要があるんですね」
「あ、そうなる。確かに」
「とりぃ号に乗るみんながどこに集合すべきかってのも考えないと」
どの車に乗った誰がどんな風に動けばスムーズに事が進むのか。効率っていうのはとても大事なことだから、しっかり考えて行かないと。現場で何が起こっても対応出来るようにもしておかないといけないし、起こりうる事態への想定も忘れてはいけない。……何が起こっても、か。さすがに今年はああいうことが起こらないといいけど。そうなったら誰が体を張るんだ。
「そしたら次、買い出しだけど。くるみ、買い物術をいかんなく発揮してくれ」
「まっかせといてよ!」
end.
++++
夏休みの間にとは言われていた春風の車がとうとう納車されたらしい。くるちゃんは新車に乗りたい。
ダイさんのノリと言えば先代の対策委員はアオが付いていけてなかったけど、今年のメンバーはどうなんだろう
(phase3)
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