2022
■肉と金銭感覚
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「――というワケで、星港市内でちょっといい肉が食える店ってのを探してるんですけど、ご存知ないですか?」
「それにしても派手にやったモンだねえレイ君」
「お前、雑にユーヤの家に上がっといてよく命があったな」
やらかしに対するリカバリーは早い方がいい。ということでさっそく京川さんと塩見さんに相談を。と言うかこの人たちって本当に盆正月とか関係ないな。京川さんはともかく塩見さんは一応会社が盆休み中なのか。言って俺もあんまり盆とか正月とか関係ない仕事だし、実家に帰る予定はないんだけども。
これこれこういう……とこの間の経緯を説明すると、2人とも軽く引いてるから、普通の人からすればもっとドン引きするようなことなんだろうなとは。酒癖の悪さは自覚してるし前よりはちゃんと自制出来るようにはなっているはずだけど、どうにもこうにもタメばっかの飲みで楽しくなりすぎるとこうなっちまうみたいだな。
「ちょっといい肉なあ」
「拓馬なら知ってるでしょ」
「一応な。でも、お前はともかくユーヤの食う量を考えた場合に、予算は大事な要素になるぞ」
「え~、予算とかいちいち考えてたらせっかくのお肉を楽しめなくない? お金はじゃぶじゃぶ使ってこそでしょ?」
「お前とコイツの金銭感覚を一緒にするな。新卒の社会人が持ってる金なんか高が知れてる」
「え? レイ君を普通の新卒社会人と一緒にしちゃダメじゃない? 拓馬、この間レイ君が誕生日にやった配信でいくら飛んで来たか知ってる? レイ君にはね、「お肉食べたい!」って言えば食べさせてくれる人がたっくさんいるの」
塩見さん曰く実家がクッソ金持ちで本人も(稼ぎ方はどうあれ)お金を持っている京川さんは、金は使ってこそという考え方だ。俺もある金はまあまあ使う方だけど、桁が違うんだろうなということは容易に想像出来るワケで。つーか京川さんはじゃぶじゃぶ使ってもそれ以上に稼げるからこその感覚なんだろう。
一介の新卒社会人の俺はと言えば、自分の給料だけで言えばそれこそごくごく普通の四大卒っていう感じの給料で、夏のボーナスという名の寸志はもらったけどわーっと使えるようなモンでもなかったし。伊東さんは印刷代って言って喜んでたけど、俺にはそういう使い道もないし、気になってたゲームを何本か買ったくらいだ。
「だってこの間の誕生日配信の投げ銭、軽く給料以上だったでしょ?」
「まあ、正直に言えば」
「そのおかげでポンとデジタルメモが買えたんだもんねえ」
「ですね、はい」
「とは言えプライベートのやらかしの謝罪でユーヤと肉食いに行くために配信で稼ぐっつーのはどうなんだ」
「え、ダメ?」
「ダメとは言わねえが、他メンバーとの兼ね合いも出て来るだろ」
「他のメンバーも配信すればいいんじゃないかなって思うけどねえ。まあ、不平等感が出て来るんだったらレイ君の個チャン立てれば文句なくない? グループのサブチャンと違って個チャンならレイ君目当てで見る人がレイ君のために投げるお金になるんだから」
「ええと、話の腰を折るようですみません。個チャンというのは?」
「個人チャンネル。グループ実況者のメンバーが個人で持ってるチャンネルのことだね。本当に個人で好きなことが出来るのがメリットではあるね。レイ君の場合なら1人でじっくりシミュゲーやったり作業やギター配信やったり。あとカンヂさんとかと遊んでる動画は個チャンにって感じで棲み分けが出来る」
「なるほど。サブチャンネルを私物化してる感が少なくなりそうで今まで以上に好き勝手出来ますね」
「うーん、レイ君そしたら個チャン立てる?」
「前向きに考えておきますけど、動画編集技術とかはないのでそれが問題ですね」
「まあ、そんなのは俺に投げるか編集スタッフ雇えばいいだけのことだから深刻に考えないで」
思いがけずレイ個人チャンネルの設立という方向の話が出て来たけど、話の本題は高崎への謝罪に使えるちょっといい肉を食える店。アイツの食う量を考えれば予算問題は確かに発生する。コースの一般的な量で満足する奴でもないだろう。と言うか俺も単品で好き勝手に頼みたい派だし。
「って言うか謝罪相手がユーヤ君なんでしょ?」
「ですね」
「そしたらギター配信やって、そこで飛んできたお金は予算に組み込んでいいよ」
「マジすか!」
「クラファンはUSDXの音楽コラボ相手だしね。ただし、クラファンとコラボした時の曲を重点的にやること。それなら拓馬も文句はないんじゃない?」
「まあ、それならいいんじゃねえか」
「ありがとうございます!」
The Cloudberry Funclubとコラボした時の曲を配信で重点的にやることでコラボ曲の動画再生数にもちょっとは貢献できるんじゃないか、的なことかな? どっちにしてもいつまた壮馬が思い付きで暴れ出すかわからない以上、壮馬絡みの曲はやれるようにしておいた方がいい。
「で、ここという店な」
「そうですね」
「お前の家からもユーヤの家からもまあまあ近い所にいい店がある。超高級ってほどでもないが大衆焼肉ほど安すぎない、コースで1万5千円ほどの店だな」
「それくらいなら俺の財力でも何とか行けますね」
「もちろん単品で食う方が満足度は高いけどな」
「そうですよね」
「肉云々よりお前に刺さりそうなのは、トリュフ卵かけごはんだな」
「何すかそれ! 興味しかないんですけど! え、トリュフ…? トリュフなんかトリュフ風味ポテチとかでしか知らない……」
「一度食ってみる価値はある。ま、お前はどんなに美味い卵かけごはんを食ってもあの店のじゃこ卵かけごはんに戻るだろうけどな」
玄のじゃこたまごかけごはんに関しては実際にめちゃくちゃ美味いには美味いけど、山口補正もある程度あった上での頂点ではある。結局戻ることには変わりないけど、卵かけごはんの探求という意味では食っておくべきものだろう。
「その店教えてもらっていいですか?」
「ここな」
「あー、確かに近いし、頑張れば行けそうなグレードの店ですね」
「1日1組限定の特別コースってのもあるし、配信がモノになればそれを視野に入れてもいいんじゃねえかとは」
「それを目指して頑張ります! あとトリュフ卵かけごはんも」
「レイ君頑張ってね。うーん、でも、改めてレイ君が飲酒配信とかやらない理由がわかったねえ。もしカンヂさんに飲みに誘われてもホント、ほどほどにしといてよ」
「はい。一応飲む相手を見てやった結果です」
end.
++++
USDXの年長組は盆とか正月とか関係ない人たち。ただ塩見さんはここから怒涛のツミツミ動画ラッシュに入る。訳:繁忙期入り
樹理ちゃんはノサカを焼肉に誘ったりもしてたしいろんなお店を知ってるしお金はとにかくじゃぶじゃぶ使う。どうせ入るから。
(phase3)
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「――というワケで、星港市内でちょっといい肉が食える店ってのを探してるんですけど、ご存知ないですか?」
「それにしても派手にやったモンだねえレイ君」
「お前、雑にユーヤの家に上がっといてよく命があったな」
やらかしに対するリカバリーは早い方がいい。ということでさっそく京川さんと塩見さんに相談を。と言うかこの人たちって本当に盆正月とか関係ないな。京川さんはともかく塩見さんは一応会社が盆休み中なのか。言って俺もあんまり盆とか正月とか関係ない仕事だし、実家に帰る予定はないんだけども。
これこれこういう……とこの間の経緯を説明すると、2人とも軽く引いてるから、普通の人からすればもっとドン引きするようなことなんだろうなとは。酒癖の悪さは自覚してるし前よりはちゃんと自制出来るようにはなっているはずだけど、どうにもこうにもタメばっかの飲みで楽しくなりすぎるとこうなっちまうみたいだな。
「ちょっといい肉なあ」
「拓馬なら知ってるでしょ」
「一応な。でも、お前はともかくユーヤの食う量を考えた場合に、予算は大事な要素になるぞ」
「え~、予算とかいちいち考えてたらせっかくのお肉を楽しめなくない? お金はじゃぶじゃぶ使ってこそでしょ?」
「お前とコイツの金銭感覚を一緒にするな。新卒の社会人が持ってる金なんか高が知れてる」
「え? レイ君を普通の新卒社会人と一緒にしちゃダメじゃない? 拓馬、この間レイ君が誕生日にやった配信でいくら飛んで来たか知ってる? レイ君にはね、「お肉食べたい!」って言えば食べさせてくれる人がたっくさんいるの」
塩見さん曰く実家がクッソ金持ちで本人も(稼ぎ方はどうあれ)お金を持っている京川さんは、金は使ってこそという考え方だ。俺もある金はまあまあ使う方だけど、桁が違うんだろうなということは容易に想像出来るワケで。つーか京川さんはじゃぶじゃぶ使ってもそれ以上に稼げるからこその感覚なんだろう。
一介の新卒社会人の俺はと言えば、自分の給料だけで言えばそれこそごくごく普通の四大卒っていう感じの給料で、夏のボーナスという名の寸志はもらったけどわーっと使えるようなモンでもなかったし。伊東さんは印刷代って言って喜んでたけど、俺にはそういう使い道もないし、気になってたゲームを何本か買ったくらいだ。
「だってこの間の誕生日配信の投げ銭、軽く給料以上だったでしょ?」
「まあ、正直に言えば」
「そのおかげでポンとデジタルメモが買えたんだもんねえ」
「ですね、はい」
「とは言えプライベートのやらかしの謝罪でユーヤと肉食いに行くために配信で稼ぐっつーのはどうなんだ」
「え、ダメ?」
「ダメとは言わねえが、他メンバーとの兼ね合いも出て来るだろ」
「他のメンバーも配信すればいいんじゃないかなって思うけどねえ。まあ、不平等感が出て来るんだったらレイ君の個チャン立てれば文句なくない? グループのサブチャンと違って個チャンならレイ君目当てで見る人がレイ君のために投げるお金になるんだから」
「ええと、話の腰を折るようですみません。個チャンというのは?」
「個人チャンネル。グループ実況者のメンバーが個人で持ってるチャンネルのことだね。本当に個人で好きなことが出来るのがメリットではあるね。レイ君の場合なら1人でじっくりシミュゲーやったり作業やギター配信やったり。あとカンヂさんとかと遊んでる動画は個チャンにって感じで棲み分けが出来る」
「なるほど。サブチャンネルを私物化してる感が少なくなりそうで今まで以上に好き勝手出来ますね」
「うーん、レイ君そしたら個チャン立てる?」
「前向きに考えておきますけど、動画編集技術とかはないのでそれが問題ですね」
「まあ、そんなのは俺に投げるか編集スタッフ雇えばいいだけのことだから深刻に考えないで」
思いがけずレイ個人チャンネルの設立という方向の話が出て来たけど、話の本題は高崎への謝罪に使えるちょっといい肉を食える店。アイツの食う量を考えれば予算問題は確かに発生する。コースの一般的な量で満足する奴でもないだろう。と言うか俺も単品で好き勝手に頼みたい派だし。
「って言うか謝罪相手がユーヤ君なんでしょ?」
「ですね」
「そしたらギター配信やって、そこで飛んできたお金は予算に組み込んでいいよ」
「マジすか!」
「クラファンはUSDXの音楽コラボ相手だしね。ただし、クラファンとコラボした時の曲を重点的にやること。それなら拓馬も文句はないんじゃない?」
「まあ、それならいいんじゃねえか」
「ありがとうございます!」
The Cloudberry Funclubとコラボした時の曲を配信で重点的にやることでコラボ曲の動画再生数にもちょっとは貢献できるんじゃないか、的なことかな? どっちにしてもいつまた壮馬が思い付きで暴れ出すかわからない以上、壮馬絡みの曲はやれるようにしておいた方がいい。
「で、ここという店な」
「そうですね」
「お前の家からもユーヤの家からもまあまあ近い所にいい店がある。超高級ってほどでもないが大衆焼肉ほど安すぎない、コースで1万5千円ほどの店だな」
「それくらいなら俺の財力でも何とか行けますね」
「もちろん単品で食う方が満足度は高いけどな」
「そうですよね」
「肉云々よりお前に刺さりそうなのは、トリュフ卵かけごはんだな」
「何すかそれ! 興味しかないんですけど! え、トリュフ…? トリュフなんかトリュフ風味ポテチとかでしか知らない……」
「一度食ってみる価値はある。ま、お前はどんなに美味い卵かけごはんを食ってもあの店のじゃこ卵かけごはんに戻るだろうけどな」
玄のじゃこたまごかけごはんに関しては実際にめちゃくちゃ美味いには美味いけど、山口補正もある程度あった上での頂点ではある。結局戻ることには変わりないけど、卵かけごはんの探求という意味では食っておくべきものだろう。
「その店教えてもらっていいですか?」
「ここな」
「あー、確かに近いし、頑張れば行けそうなグレードの店ですね」
「1日1組限定の特別コースってのもあるし、配信がモノになればそれを視野に入れてもいいんじゃねえかとは」
「それを目指して頑張ります! あとトリュフ卵かけごはんも」
「レイ君頑張ってね。うーん、でも、改めてレイ君が飲酒配信とかやらない理由がわかったねえ。もしカンヂさんに飲みに誘われてもホント、ほどほどにしといてよ」
「はい。一応飲む相手を見てやった結果です」
end.
++++
USDXの年長組は盆とか正月とか関係ない人たち。ただ塩見さんはここから怒涛のツミツミ動画ラッシュに入る。訳:繁忙期入り
樹理ちゃんはノサカを焼肉に誘ったりもしてたしいろんなお店を知ってるしお金はとにかくじゃぶじゃぶ使う。どうせ入るから。
(phase3)
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