2022
■もうひとつの山へ行こう
++++
「そしたらみんな、ステージお疲れさまでした。当日はバタバタして全然みんなを労うことも出来なかったけど、今日の打ち上げを楽しんでください! かんぱーい」
「かんぱーい!」
丸の池ステージが終わってすぐ、源班の打ち上げが開かれた。場所は毎度おなじみの玄。洋平さんももういなくなってしまったし、戸田さんも4年生で引退済みだけど、班で集まるときはここっていう流れになってんだよな。普通にメシが美味いし満足度は高い。
去年はカメラ係だった俺も今年はプロデューサーとしてステージの下を動き回りながら積極的に参加出来たって感じで、次に向けてのモチベーションもバリ上がってる。やっぱこうじゃねーと。いや、もちろんステージ以外の活動があるのもわかってんだけど。
「マリンと彩人は今から定例会の方で向舞祭に向けて動いていくんだよね。彩人、大丈夫? 帰省とか」
「全然大丈夫っす。所詮山羽なんで。難なら帰省自体9月のつもりっした。夏合宿もありますからね」
「所詮って言うけど湖西とかじゃなければ特別近くもないですよ山羽と言えども」
「マリンさんよく知ってますね」
「エリアを越える機会が何回かあれば地図上の距離感も何となく掴めるですよ」
マリンさんは向舞祭が終わってから墓参りで長篠に行くんだそうだ。親の再婚で出来た新しい母親の元々いた家が長篠で、そっちの墓は移したりしていないとのこと。で、盆には家族で旅行ついでに里帰りをするようになったとか。
「海月は対策委員で、ここからが本当の勝負だね。自分の班のこともあるし」
「も~う! 本当にそうなんですよ!」
「そう言えば、班の子たちとの会話は成り立つようになってきた?」
「本当に少~しずつですけど、何とか」
「海月さんの班ってそんな曲者みたいな人ばっかりなんですか?」
「曲者かあ。曲者って言ってもいいかもね。基本的にみんな口数が少なくて、表情が変わらないような子もいるし何考えてるのかさっぱりわかんないんだよ。あと1人くらいきぬみたく表情がころころ変わる子がいればもうちょっとやりやすかったんだろうけど。こればっかりは何とも」
ちなみに、源班には現時点で4人の1年が入ったことになっている。ファンフェスの直後にやってきたミキサーの守谷みずき、人懐こくてハキハキとしたアナウンサーの大井沢きぬ。周りをよく見るし注意力があるなって印象なのが、ディレクターの高野将門。そして今もだっばだばとビールを煽っているプロデューサーの大野朝日だ。
「海月さーん、お困りならきぬがぴゅーっと飛んできますよー。誰とチェンジしますかー?」
「えーっとねえ。……っとっと。具体名を挙げたらトラブルになるよねさすがに」
「定例会案件にはすんなよ海月」
「わかってるってば! みんな悪い子でもないのもわかってる! でも癖が強すぎて手に余るんだってー! 助けてマリンさん!」
「そーゆーのは私じゃなくてゲンゴローの方が得意だと思うですよ」
「あー、えーっと、きぬは班でどう? 楽しくやれてる?」
「ゴローさんが話そらした!」
「どうどう」
「楽しいですよ! ノリのいい先輩がわちゃわちゃしてて」
「2年生って誰がいたっけ?」
「青女のちとせさんが班長でー、あとやんさんと松兄でーす」
「やんでわかるんだけどそこを略すかよ。すがやんって言ったれよ」
「松兄はそもそもがああいうノリだし、すがやんは誰がどんな空気でいるかで立ち振る舞いをガラッと変えるカメレオン系の子だから、きぬに合わせてくれたのかもねえ」
「っぱすがやんなんだわ」
すがやんと奏多とかいう陽キャ2人が源班で一番アッパーな奴と組み合わされば、そりゃーもうアレよ。俺やサキ君だったら最初にドン引きしてるかもしれない。何なら班長のちとせにちょっと同情するレベルだ。海月とは別のベクトルで班員が操縦出来ないだろ。
「そう言えばみちるは今年どんな感じ?」
「なかなか愉快な班ですよ」
「みちるが言うと大した意味がなくても意味深に聞こえんだよなー」
「ううん、本当に愉快なだけ。班長が北星だよ。面白くならないわけがないじゃん」
「あ、北星の班か! 何だっけ、リクが天然を発動させたらお前が北星をシバけっていう物騒な指令を受けて派遣されたとかいう」
「ええ……今年の対策委員はなかなか激しい会議をしてるみたいだね」
「ちなみに、北星をシバけっていうのは当麻が言ってることなんで本当にシバいてもセーフですよね」
「その言い方だと現状まだシバいてないみたいでよかったよ」
「シバく必要がないんですよまだ」
「班では北星の言動が面白いみたいなこと?」
「北星と言うより、北星に振り回されてる1年生を眺めるのが楽しいっていう感じですね」
「それはそれで悪趣味だな」
「何とかして北星に顔と名前を覚えてもらわないとって一生懸命になってる感じがかわいくて」
如何せん北星はああなので、映像制作に関わりのない班員はどうにかして顔と名前を覚えてもらう必要があって。似たようなことをリクも言っていた。だからお前は自分が映像を作る方で攻めるんじゃなくて映像とは違うメディアの観点から話を広げればいいんだっつーのに。
「朝日はどう?」
「野球を見ながら飲むビールが美味いという話をわかってくれる人がたくさんいて、いい環境だなと思います」
「それはよかった。野球好きな人もいたんだね」
「そうですね。緑ヶ丘の子が結構な野球好きで、あと副班長さんが野球経験者だそうで」
「朝日お前誰の班だっけ?」
「とりぃさんですね、向島の」
「副班誰だっけ」
「青女のまつりさんです」
「野球経験者って、まさかの女子か! あ、いや、そーいやエマが言ってたな、バッセン通いの後の牛丼が美味かったとか何とか」
将門は将門で当麻・レナ班とかいう悟りみたいなところにいて合ってるみたいだし、モリ子はモリ子でそれなりに上手くやれているらしい。いや、いくら班で上手くやれていても合宿の現場でトラブルが起こらないとも限らないと2年生以上は身を持って知っている。
「今年は参加者も多いし映像のことも入ってくるでしょ。去年までとは比にならないくらい大変だと思うけど、海月、頑張ってね」
「がんばります~……」
「あ! あと、会計はここが一番大事だからね! きっちりね!」
「もちろんです!」
end.
++++
しばらく見ていない間に星ヶ丘の一番大事な行事がナレベでスルーされていったし、源班に1年生は4人入っていた。
現状フェーズ3で出張ってるキャラと一緒の班になった人から人格がはっきりしてくるいつものヤツ
(phase3)
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「そしたらみんな、ステージお疲れさまでした。当日はバタバタして全然みんなを労うことも出来なかったけど、今日の打ち上げを楽しんでください! かんぱーい」
「かんぱーい!」
丸の池ステージが終わってすぐ、源班の打ち上げが開かれた。場所は毎度おなじみの玄。洋平さんももういなくなってしまったし、戸田さんも4年生で引退済みだけど、班で集まるときはここっていう流れになってんだよな。普通にメシが美味いし満足度は高い。
去年はカメラ係だった俺も今年はプロデューサーとしてステージの下を動き回りながら積極的に参加出来たって感じで、次に向けてのモチベーションもバリ上がってる。やっぱこうじゃねーと。いや、もちろんステージ以外の活動があるのもわかってんだけど。
「マリンと彩人は今から定例会の方で向舞祭に向けて動いていくんだよね。彩人、大丈夫? 帰省とか」
「全然大丈夫っす。所詮山羽なんで。難なら帰省自体9月のつもりっした。夏合宿もありますからね」
「所詮って言うけど湖西とかじゃなければ特別近くもないですよ山羽と言えども」
「マリンさんよく知ってますね」
「エリアを越える機会が何回かあれば地図上の距離感も何となく掴めるですよ」
マリンさんは向舞祭が終わってから墓参りで長篠に行くんだそうだ。親の再婚で出来た新しい母親の元々いた家が長篠で、そっちの墓は移したりしていないとのこと。で、盆には家族で旅行ついでに里帰りをするようになったとか。
「海月は対策委員で、ここからが本当の勝負だね。自分の班のこともあるし」
「も~う! 本当にそうなんですよ!」
「そう言えば、班の子たちとの会話は成り立つようになってきた?」
「本当に少~しずつですけど、何とか」
「海月さんの班ってそんな曲者みたいな人ばっかりなんですか?」
「曲者かあ。曲者って言ってもいいかもね。基本的にみんな口数が少なくて、表情が変わらないような子もいるし何考えてるのかさっぱりわかんないんだよ。あと1人くらいきぬみたく表情がころころ変わる子がいればもうちょっとやりやすかったんだろうけど。こればっかりは何とも」
ちなみに、源班には現時点で4人の1年が入ったことになっている。ファンフェスの直後にやってきたミキサーの守谷みずき、人懐こくてハキハキとしたアナウンサーの大井沢きぬ。周りをよく見るし注意力があるなって印象なのが、ディレクターの高野将門。そして今もだっばだばとビールを煽っているプロデューサーの大野朝日だ。
「海月さーん、お困りならきぬがぴゅーっと飛んできますよー。誰とチェンジしますかー?」
「えーっとねえ。……っとっと。具体名を挙げたらトラブルになるよねさすがに」
「定例会案件にはすんなよ海月」
「わかってるってば! みんな悪い子でもないのもわかってる! でも癖が強すぎて手に余るんだってー! 助けてマリンさん!」
「そーゆーのは私じゃなくてゲンゴローの方が得意だと思うですよ」
「あー、えーっと、きぬは班でどう? 楽しくやれてる?」
「ゴローさんが話そらした!」
「どうどう」
「楽しいですよ! ノリのいい先輩がわちゃわちゃしてて」
「2年生って誰がいたっけ?」
「青女のちとせさんが班長でー、あとやんさんと松兄でーす」
「やんでわかるんだけどそこを略すかよ。すがやんって言ったれよ」
「松兄はそもそもがああいうノリだし、すがやんは誰がどんな空気でいるかで立ち振る舞いをガラッと変えるカメレオン系の子だから、きぬに合わせてくれたのかもねえ」
「っぱすがやんなんだわ」
すがやんと奏多とかいう陽キャ2人が源班で一番アッパーな奴と組み合わされば、そりゃーもうアレよ。俺やサキ君だったら最初にドン引きしてるかもしれない。何なら班長のちとせにちょっと同情するレベルだ。海月とは別のベクトルで班員が操縦出来ないだろ。
「そう言えばみちるは今年どんな感じ?」
「なかなか愉快な班ですよ」
「みちるが言うと大した意味がなくても意味深に聞こえんだよなー」
「ううん、本当に愉快なだけ。班長が北星だよ。面白くならないわけがないじゃん」
「あ、北星の班か! 何だっけ、リクが天然を発動させたらお前が北星をシバけっていう物騒な指令を受けて派遣されたとかいう」
「ええ……今年の対策委員はなかなか激しい会議をしてるみたいだね」
「ちなみに、北星をシバけっていうのは当麻が言ってることなんで本当にシバいてもセーフですよね」
「その言い方だと現状まだシバいてないみたいでよかったよ」
「シバく必要がないんですよまだ」
「班では北星の言動が面白いみたいなこと?」
「北星と言うより、北星に振り回されてる1年生を眺めるのが楽しいっていう感じですね」
「それはそれで悪趣味だな」
「何とかして北星に顔と名前を覚えてもらわないとって一生懸命になってる感じがかわいくて」
如何せん北星はああなので、映像制作に関わりのない班員はどうにかして顔と名前を覚えてもらう必要があって。似たようなことをリクも言っていた。だからお前は自分が映像を作る方で攻めるんじゃなくて映像とは違うメディアの観点から話を広げればいいんだっつーのに。
「朝日はどう?」
「野球を見ながら飲むビールが美味いという話をわかってくれる人がたくさんいて、いい環境だなと思います」
「それはよかった。野球好きな人もいたんだね」
「そうですね。緑ヶ丘の子が結構な野球好きで、あと副班長さんが野球経験者だそうで」
「朝日お前誰の班だっけ?」
「とりぃさんですね、向島の」
「副班誰だっけ」
「青女のまつりさんです」
「野球経験者って、まさかの女子か! あ、いや、そーいやエマが言ってたな、バッセン通いの後の牛丼が美味かったとか何とか」
将門は将門で当麻・レナ班とかいう悟りみたいなところにいて合ってるみたいだし、モリ子はモリ子でそれなりに上手くやれているらしい。いや、いくら班で上手くやれていても合宿の現場でトラブルが起こらないとも限らないと2年生以上は身を持って知っている。
「今年は参加者も多いし映像のことも入ってくるでしょ。去年までとは比にならないくらい大変だと思うけど、海月、頑張ってね」
「がんばります~……」
「あ! あと、会計はここが一番大事だからね! きっちりね!」
「もちろんです!」
end.
++++
しばらく見ていない間に星ヶ丘の一番大事な行事がナレベでスルーされていったし、源班に1年生は4人入っていた。
現状フェーズ3で出張ってるキャラと一緒の班になった人から人格がはっきりしてくるいつものヤツ
(phase3)
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