2022
■Self-Branding Methods
++++
「おはよーございまーす。あっ、奈々先輩こないだの片付けですか? 手伝いますよ」
「俺も手伝います」
「ありがとうッ! とりあえずゴミはまとめたし、発声練習の時にでも出しに行くとしてっと。問題は先輩たちが置いてった残りのうまい棒だけど。これは何かつまみたい人につまんでもらう感じで減らしていくしかないかなあ」
「あーもー俺当分うまい棒は見たないっすわ!」
先週の金曜日、突如遊びに来た4年生によってもたらされたうまい棒レースという、ちょっとした災害めいた遊びはMMPの洗礼を1年生と別途呼び出されていたすがやん先輩に浴びせるには十分すぎた。
大食いレースと我慢大会を兼ね合わせたようなルールの大会だったんだけど、やっている側も辛そうなら見ているこっちも結構しんどかった。基本的に水分摂取を禁止されているというのが特に。
1年からはジャックとうっしーが参加してたんだけど健闘虚しく勝利することはならず、この2人にうまい棒へのトラウマを植え付けるだけの行事となった。ちなみに優勝したのはレジェンド枠として参戦させられた野坂先輩で、次点は春風先輩だ。
「ところで、夏合宿の打ち合わせにもみんなぼちぼち行ってるんだよね?」
「そーすね!」
「どんな感じ? 上手くやれそう? 特にジュンは文系の完璧超人を見て来いって言われて北星の班に送り出されてたけど」
「ササ先輩は感じの良さそうな人だなとは思いますけど、みちる先輩が去年の夏合宿で何をやったんだっていうのと、北星先輩にどうやって俺のことを覚えてもらったらいいのかなっていうのが難しくて」
「みちるの話はちゃんとすると長くなるしカノンが来ちゃったらいろいろ大変だからまた今度ね。北星に覚えてもらうのは~……頑張れとしか」
「今からでも何か日常の記録を映像で付ければいいんですかね?」
どうやらみちる先輩の話はカノン先輩NGみたいな制約があるとかないとか。2人の間に因縁でもあるのか? でもそんなような素振りはなかったし、忠告みたいなことも受けてないし。ますますわからない。また今度個人的に聞かせてもらおう。
「ジュンの班長、人の顔と名前一致させるん苦手な人なん?」
「青敬の先輩なんだけど、映像制作に絡めないと人の特徴を覚えられないっていうタイプの人なんだって」
「はあ」
「映像の話をするときはこれ以上ないほど頼りになるんだけどね。普段は結構のんびりしてるから。うちもピー子ちゃん動画を見せて覚えてもらったみたいなところはあるし。あの北星が班長をやってると思ったらうちも感慨深いよ」
「一応北星先輩が班長ですけど、副班長のササ先輩が北星先輩の補助輪的な感じでやってますね。打ち合わせの進行だったり、俺たち1年生に合宿はこんな感じなんだよって教えてくれてるのは大体ササ先輩で」
「ササはしっかりしてるしその役割を期待して北星と一緒になってるんじゃないかなッ」
「でもササ先輩もまだ自分は北星先輩に覚えてもらってないしどうしようって悩んでる風でした」
「2年でしかも副班長を覚えてないとかお前の班長実は結構ヤベー奴なんちゃうん!」
「うっしー、気付いてても言っちゃダメなヤツ。北星を知ってる人が見たら対策委員やってるとか合宿の班長をやってるってだけでも感動するレベルなんだから」
「社会の歩き方を実地で学ぶヤツやん」
確かに北星先輩はちょっと緩いところのある人ではあるけど、実際に社会に出る前に社会の歩き方を学べているならうっしーの言うところの無能の大卒からは遠ざかるんじゃないかと思う。実際映像制作に関しては物凄いとは2年生以上の先輩はみんな言ってるし。
「うっしーの班はどう?」
「ウチはあれっすよ。2年生2人班なんすけど班長も副班長もバリクールっすわ」
「誰の班だっけ」
「青敬の当麻さんと緑ヶ丘のレナさんすね」
「あ~、確かに2年生屈指のクールな2人だわ」
当麻先輩は対策委員でもカノン先輩や春風先輩が頼りにしてる印象がとても強いししっかりした人なんだなと思う。レナ先輩に関しては、春風先輩の親友というのがMMP内での共通認識じゃないかな。物凄い美人だとも聞いたことがあるけど。
「そんなクールな先輩らの班に放り込まれたイキり隠キャのお喋り袋がどうなるか!」
「でもうっしーに限ってそんな雰囲気に押されることはないと思うけどな」
「さぁっすが奈々先輩! 自分はいつも通りやらせてもらってますー」
「何だかんだ素でやってる方がよかったりするからね。うっしーはお喋り袋だって対策委員内でも情報共有されてると思うし」
「情報共有!? えっ、誰がどんなヤツやーみたいな話が対策委員の中で回っとるみたいなコトなんす!?」
「そうだねえ。あんまり尖りすぎてる子だとか、慎重に接しなきゃいけない子だとか。そういう子がいたら班長には知っててもらっとかないと班運営に支障が出たりもするからね」
「はえー。問題児扱いされとるかもしれんのですね」
「うっしーくらいなら全然大丈夫だよ」
「はー!? 凡人扱いとかそれはそれでちょっとイヤなんですけどー!?」
「まあまあ。問題がないっていう評価ならいいじゃないか。俺なんか完璧超人を妬む人間として認知されてると思うと……」
「カノンととりぃがそんな風に言うとは思わないけどねッ。大丈夫大丈夫ッ」
「はあっ……」
「アカン奈々先輩! ジュンが沈んでもーた!」
今ここで沈んでもどうしようもないのはわかってるけど、どうにもこうにも俺は努力が実を結ぶのにめちゃくちゃ時間がかかる方だし、最悪結果が出ないとかもザラだから。努力をすればした分結果が出る人が本当に羨ましい。
「おはようございます」
「おっ、殿のお出ましや! あれっ、パロは?」
「補講だ」
「そーなんや。殿は一緒に補講やなかったんやな」
「奈々先輩。そういうことなので、パロは遅れます」
「わかったよーッ」
「そーいや殿、夏合宿の打ち合わせ行っとるんやろ? どんな感じなんや?」
「どんな、とは」
「班の雰囲気とか、あるやろ」
「あっそうだ、殿、班の人とコミュニケーション取れてる?」
「俺の班は、班長以外皆口数が少ない。会話をする時間より、話を聞いている時間の方が、長い」
「班長以外みんな殿みたいな感じなんか……それはそれで静かすぎてどう空気読んだらええかわからんわ」
「いや、皆、それぞれタイプは違う」
殿自身俺たちといてもすごく静かだし、比較的話してるかなって思うパロとの会話でもほとんどパロに相槌を打ってるようにしか見えない。だからコミュニケーションの点で奈々先輩が心配するのはまあわかる。
だけどどうだ、班長以外みんな口数が少ないって? 沈黙の時間が長いとか、班の打ち合わせとしてはどうなんだ。そんな話を聞いていると、常に北星先輩へのツッコミが発生するウチの班はかなり賑やかなんじゃないかと思えてきた。
「ちなみに班長って?」
「星ヶ丘の、くらら先輩です」
「あーはいはい。他の2年生は?」
「副班長が、緑ヶ丘のサキ先輩。あと、星大の千颯先輩がいます」
「確かにこれは静かになるわー。1年生も静かなんだもんね?」
「そう、ですね」
「でも、班の中での意志疎通とかは、大丈夫?」
「サキ先輩は、とても話しやすい人だと。1年生それぞれの沈黙を、的確に理解して接してくれている、かと」
「うーん。サキは自分が静かだから口数の少ない人が何考えてるかとかがわかるのかなあ? 何にせよ、ちゃんとやれてるなら良かったよ」
「そーいやツッツはちゃんとやれとるんか? あの人見知り」
「でもツッツは奏多先輩と同じ班だろ。身内がいるんだから人見知りと言っても多少は楽なんじゃないのか」
「ツッツは、先日、すがやん先輩の本棚作りを手伝ったと聞いている」
「さすがツッツ神! 収納班の大エースや! いやいや、つか殿はそういう情報をどこから仕入れるん?」
「サキ先輩が、言っていた」
「はえー。奈々先輩、俺らが思うより殿は外で喋ってますよ!」
「サキとの波長が合ったのかな? 何にせよ良かったーッ! 何て言うかすがやんもさすが過ぎるわ」
「カノン先輩風に言えば半分MMPっすからね」
みんなそれぞれの班で何となくやれているようだ。そしてみんながそれぞれ班長から言われているのが向島の子はもう実戦でやってるし、この合宿でも期待してるよということ。去年は緑ヶ丘の先輩がそう言われて番組を引っ張る立場だったそうだ。
俺はまず班長に顔と名前を覚えてもらうところからではあるけど、番組ではしっかりと存在感を出していきたいなと思う。いっそ悲観的なところも自分の色として、ただ真面目でしっかりしているというだけの印象からは脱したいところだ。
「うっしー、俺の色って何だと思う」
「そりゃお前、まっくろジュンジュンちゃうん」
「そんなの番組で使えるか」
「使えるやろ!」
「殿、俺の個性って何かあるかな?」
「……辛抱強く、弛まぬ努力を積めるところだろうか」
「それは個性じゃなくて長所やん」
「ああ。そう言えば、最近、サークル室の、物の整頓をしているのは大体ジュンだと思っているが」
「収納班の活動を始めてから、物が出しっぱなしなのとかが気になるようになって」
「それは番組に生きる個性なんか?」
「……わからん」
「やったらまっくろジュンジュンの鋭利な一言の方がキャラ付けにはちょうどええんよ」
「確かに、一言で場を制圧し得る、力のある言葉は、武器となる」
「つまり、刺さる一言を磨けってことか。必要なのは語彙力だな」
「ジュン、だったら過去の雑記帳とか読んでみるといいよッ! りっちゃん先輩とか菜月先輩の日記はラブ&ピースな語彙のオンパレードだよ」
「確かに、人の言葉に触れるというのは効果的な気がしますね。それでは少しずつ読み進めてみようと思います」
end.
++++
ムライズムな行事の復活から、ラブ&ピースの継承まで余念がないフェーズ1からのオリジンキャラクターたちである。
まっくろジュンジュンとか言われてる時点でジュンがラブピの継承者になるというのは既定路線だったのかもしれない。
(phase3)
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「おはよーございまーす。あっ、奈々先輩こないだの片付けですか? 手伝いますよ」
「俺も手伝います」
「ありがとうッ! とりあえずゴミはまとめたし、発声練習の時にでも出しに行くとしてっと。問題は先輩たちが置いてった残りのうまい棒だけど。これは何かつまみたい人につまんでもらう感じで減らしていくしかないかなあ」
「あーもー俺当分うまい棒は見たないっすわ!」
先週の金曜日、突如遊びに来た4年生によってもたらされたうまい棒レースという、ちょっとした災害めいた遊びはMMPの洗礼を1年生と別途呼び出されていたすがやん先輩に浴びせるには十分すぎた。
大食いレースと我慢大会を兼ね合わせたようなルールの大会だったんだけど、やっている側も辛そうなら見ているこっちも結構しんどかった。基本的に水分摂取を禁止されているというのが特に。
1年からはジャックとうっしーが参加してたんだけど健闘虚しく勝利することはならず、この2人にうまい棒へのトラウマを植え付けるだけの行事となった。ちなみに優勝したのはレジェンド枠として参戦させられた野坂先輩で、次点は春風先輩だ。
「ところで、夏合宿の打ち合わせにもみんなぼちぼち行ってるんだよね?」
「そーすね!」
「どんな感じ? 上手くやれそう? 特にジュンは文系の完璧超人を見て来いって言われて北星の班に送り出されてたけど」
「ササ先輩は感じの良さそうな人だなとは思いますけど、みちる先輩が去年の夏合宿で何をやったんだっていうのと、北星先輩にどうやって俺のことを覚えてもらったらいいのかなっていうのが難しくて」
「みちるの話はちゃんとすると長くなるしカノンが来ちゃったらいろいろ大変だからまた今度ね。北星に覚えてもらうのは~……頑張れとしか」
「今からでも何か日常の記録を映像で付ければいいんですかね?」
どうやらみちる先輩の話はカノン先輩NGみたいな制約があるとかないとか。2人の間に因縁でもあるのか? でもそんなような素振りはなかったし、忠告みたいなことも受けてないし。ますますわからない。また今度個人的に聞かせてもらおう。
「ジュンの班長、人の顔と名前一致させるん苦手な人なん?」
「青敬の先輩なんだけど、映像制作に絡めないと人の特徴を覚えられないっていうタイプの人なんだって」
「はあ」
「映像の話をするときはこれ以上ないほど頼りになるんだけどね。普段は結構のんびりしてるから。うちもピー子ちゃん動画を見せて覚えてもらったみたいなところはあるし。あの北星が班長をやってると思ったらうちも感慨深いよ」
「一応北星先輩が班長ですけど、副班長のササ先輩が北星先輩の補助輪的な感じでやってますね。打ち合わせの進行だったり、俺たち1年生に合宿はこんな感じなんだよって教えてくれてるのは大体ササ先輩で」
「ササはしっかりしてるしその役割を期待して北星と一緒になってるんじゃないかなッ」
「でもササ先輩もまだ自分は北星先輩に覚えてもらってないしどうしようって悩んでる風でした」
「2年でしかも副班長を覚えてないとかお前の班長実は結構ヤベー奴なんちゃうん!」
「うっしー、気付いてても言っちゃダメなヤツ。北星を知ってる人が見たら対策委員やってるとか合宿の班長をやってるってだけでも感動するレベルなんだから」
「社会の歩き方を実地で学ぶヤツやん」
確かに北星先輩はちょっと緩いところのある人ではあるけど、実際に社会に出る前に社会の歩き方を学べているならうっしーの言うところの無能の大卒からは遠ざかるんじゃないかと思う。実際映像制作に関しては物凄いとは2年生以上の先輩はみんな言ってるし。
「うっしーの班はどう?」
「ウチはあれっすよ。2年生2人班なんすけど班長も副班長もバリクールっすわ」
「誰の班だっけ」
「青敬の当麻さんと緑ヶ丘のレナさんすね」
「あ~、確かに2年生屈指のクールな2人だわ」
当麻先輩は対策委員でもカノン先輩や春風先輩が頼りにしてる印象がとても強いししっかりした人なんだなと思う。レナ先輩に関しては、春風先輩の親友というのがMMP内での共通認識じゃないかな。物凄い美人だとも聞いたことがあるけど。
「そんなクールな先輩らの班に放り込まれたイキり隠キャのお喋り袋がどうなるか!」
「でもうっしーに限ってそんな雰囲気に押されることはないと思うけどな」
「さぁっすが奈々先輩! 自分はいつも通りやらせてもらってますー」
「何だかんだ素でやってる方がよかったりするからね。うっしーはお喋り袋だって対策委員内でも情報共有されてると思うし」
「情報共有!? えっ、誰がどんなヤツやーみたいな話が対策委員の中で回っとるみたいなコトなんす!?」
「そうだねえ。あんまり尖りすぎてる子だとか、慎重に接しなきゃいけない子だとか。そういう子がいたら班長には知っててもらっとかないと班運営に支障が出たりもするからね」
「はえー。問題児扱いされとるかもしれんのですね」
「うっしーくらいなら全然大丈夫だよ」
「はー!? 凡人扱いとかそれはそれでちょっとイヤなんですけどー!?」
「まあまあ。問題がないっていう評価ならいいじゃないか。俺なんか完璧超人を妬む人間として認知されてると思うと……」
「カノンととりぃがそんな風に言うとは思わないけどねッ。大丈夫大丈夫ッ」
「はあっ……」
「アカン奈々先輩! ジュンが沈んでもーた!」
今ここで沈んでもどうしようもないのはわかってるけど、どうにもこうにも俺は努力が実を結ぶのにめちゃくちゃ時間がかかる方だし、最悪結果が出ないとかもザラだから。努力をすればした分結果が出る人が本当に羨ましい。
「おはようございます」
「おっ、殿のお出ましや! あれっ、パロは?」
「補講だ」
「そーなんや。殿は一緒に補講やなかったんやな」
「奈々先輩。そういうことなので、パロは遅れます」
「わかったよーッ」
「そーいや殿、夏合宿の打ち合わせ行っとるんやろ? どんな感じなんや?」
「どんな、とは」
「班の雰囲気とか、あるやろ」
「あっそうだ、殿、班の人とコミュニケーション取れてる?」
「俺の班は、班長以外皆口数が少ない。会話をする時間より、話を聞いている時間の方が、長い」
「班長以外みんな殿みたいな感じなんか……それはそれで静かすぎてどう空気読んだらええかわからんわ」
「いや、皆、それぞれタイプは違う」
殿自身俺たちといてもすごく静かだし、比較的話してるかなって思うパロとの会話でもほとんどパロに相槌を打ってるようにしか見えない。だからコミュニケーションの点で奈々先輩が心配するのはまあわかる。
だけどどうだ、班長以外みんな口数が少ないって? 沈黙の時間が長いとか、班の打ち合わせとしてはどうなんだ。そんな話を聞いていると、常に北星先輩へのツッコミが発生するウチの班はかなり賑やかなんじゃないかと思えてきた。
「ちなみに班長って?」
「星ヶ丘の、くらら先輩です」
「あーはいはい。他の2年生は?」
「副班長が、緑ヶ丘のサキ先輩。あと、星大の千颯先輩がいます」
「確かにこれは静かになるわー。1年生も静かなんだもんね?」
「そう、ですね」
「でも、班の中での意志疎通とかは、大丈夫?」
「サキ先輩は、とても話しやすい人だと。1年生それぞれの沈黙を、的確に理解して接してくれている、かと」
「うーん。サキは自分が静かだから口数の少ない人が何考えてるかとかがわかるのかなあ? 何にせよ、ちゃんとやれてるなら良かったよ」
「そーいやツッツはちゃんとやれとるんか? あの人見知り」
「でもツッツは奏多先輩と同じ班だろ。身内がいるんだから人見知りと言っても多少は楽なんじゃないのか」
「ツッツは、先日、すがやん先輩の本棚作りを手伝ったと聞いている」
「さすがツッツ神! 収納班の大エースや! いやいや、つか殿はそういう情報をどこから仕入れるん?」
「サキ先輩が、言っていた」
「はえー。奈々先輩、俺らが思うより殿は外で喋ってますよ!」
「サキとの波長が合ったのかな? 何にせよ良かったーッ! 何て言うかすがやんもさすが過ぎるわ」
「カノン先輩風に言えば半分MMPっすからね」
みんなそれぞれの班で何となくやれているようだ。そしてみんながそれぞれ班長から言われているのが向島の子はもう実戦でやってるし、この合宿でも期待してるよということ。去年は緑ヶ丘の先輩がそう言われて番組を引っ張る立場だったそうだ。
俺はまず班長に顔と名前を覚えてもらうところからではあるけど、番組ではしっかりと存在感を出していきたいなと思う。いっそ悲観的なところも自分の色として、ただ真面目でしっかりしているというだけの印象からは脱したいところだ。
「うっしー、俺の色って何だと思う」
「そりゃお前、まっくろジュンジュンちゃうん」
「そんなの番組で使えるか」
「使えるやろ!」
「殿、俺の個性って何かあるかな?」
「……辛抱強く、弛まぬ努力を積めるところだろうか」
「それは個性じゃなくて長所やん」
「ああ。そう言えば、最近、サークル室の、物の整頓をしているのは大体ジュンだと思っているが」
「収納班の活動を始めてから、物が出しっぱなしなのとかが気になるようになって」
「それは番組に生きる個性なんか?」
「……わからん」
「やったらまっくろジュンジュンの鋭利な一言の方がキャラ付けにはちょうどええんよ」
「確かに、一言で場を制圧し得る、力のある言葉は、武器となる」
「つまり、刺さる一言を磨けってことか。必要なのは語彙力だな」
「ジュン、だったら過去の雑記帳とか読んでみるといいよッ! りっちゃん先輩とか菜月先輩の日記はラブ&ピースな語彙のオンパレードだよ」
「確かに、人の言葉に触れるというのは効果的な気がしますね。それでは少しずつ読み進めてみようと思います」
end.
++++
ムライズムな行事の復活から、ラブ&ピースの継承まで余念がないフェーズ1からのオリジンキャラクターたちである。
まっくろジュンジュンとか言われてる時点でジュンがラブピの継承者になるというのは既定路線だったのかもしれない。
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