2022
■みんなの代表
++++
「対策委員です? ……ごめん、やっぱり俺が仕切るなんて無理だよ。当麻、代わってもらっていい?」
「ええー……委員長がその仕事投げたら他に何するんだ…? まあいいや、対策委員です」
対策委員の委員長が七海ってことも実はちょっと忘れちゃうくらいには、普段の会議でも当麻の存在感が大きくなってる気がする。今日の対策委員の会議はシノがお休み。緑ヶ丘の代表としてはあたしがいるけど、対策委員的には議長不在の大ピンチ。
「えっと……くるちゃん、シノは?」
「何か具合悪いっぽくて今日はお休みさせてくださいだって。でも症状がただの風邪って感じでもなさそうだったからちょっと心配で」
「まさか未知の感染症とかじゃないだろうな?」
「シノさんはどんな症状なのですか?」
「すごい熱が出て体の節々が痛いんだって。筋肉痛っぽい症状もあるしって」
「俺たちが知ってる病気だとインフルエンザっぽいけど、今は夏だろ? インフルって冬のモンじゃねーのか?」
「生活リズムが乱れたり、ストレスなどで免疫が落ちていたりすると、季節に問わずかかる物ではありますよ」
「へー、そうなんだ。そんでくるみ、シノは病院行ったん?」
「町に出るのもしんどいから大学の保健センターで診てもらうって言ってたよ。内科と整形外科だったら普通のお医者さんと変わらないから」
「大学に病院があるとかどんだけだよ緑ヶ丘大学」
そんな風に話していると、シノからのLINEが入った。さっそく内容を確認すると、インフルエンザで確定だったみたくって、しばらく休みますってことだった。
「みんな、シノから検査結果来たけど、インフルエンザだって」
「じゃあ1週間くらいは休みってことだね。了解。こっちは大丈夫だからちゃんと休むように伝えてください」
「わかったよ」
「シノって地味に体弱いみたいなことは聞いたことあるけど、まさかここまでだとは思わなかった」
「あたし全然聞いたことなかった! くらら、誰から聞いたの?」
「彩人が言ってた。彩人はササから聞いたんじゃないかな」
「あ~、そのルートかー」
「バイトも深夜だし、授業もまだ朝から普通にあるのに対策委員とかゼミでバタバタ走り回ってて体調は大丈夫なのかー、的な心配をササがしてたって彩人から聞いてるけど」
「シノさんの体が弱る要因はしっかり揃っていたようですね」
「まあ、いないものは仕方ないししばらくは俺たちで頑張りましょう」
そう、こんなときこそあたしが頑張らないとね! シノがゆっくり休んでくれないと今度はササが心配で倒れちゃってもいけないし。ササがそんなことになったらレナも大変だし~って、巡り巡ってみんなバタバタしちゃっても良くない。
「講師の方々との打ち合わせに関しては、この間報告した通りダイさんと、映像関係の話をしてくれる下山さんとの間で進めてます。映像関係の話は主に俺と北星で打ち合わせてて、普段映像をやってない人により映像制作を身近に感じてもらえるような感じでお願いしますとは話してます。北星、まだ何かある?」
「一応、希望があれば質問にも答えてもらえるそうなので~、映像をやってる人なら専門的なことを聞いてもいいし、やってない人にもちょっとしたことを聞いてもらえたら嬉しいってことです」
「えっ、あたしが何でも聞いてもいいってこと!?」
「そういうことだね。ああ、それで、そういう話があるよってことを班や大学で周知してもらっていいかな? プロの人に直接話を聞く機会なんてそうそう滅多にあることじゃないし。もし事前に質問をもらえれば俺と北星で下山さんに渡しに行けるから」
映像の仕事をしてる人の話を聞けるなんてすっごい楽しみ! 普段北星と話しててもすっごいなって思うし何喋ってるかちんぷんかんぷんなこともあるけど、あたしも今から質問まとめておこう。どうしよう、何を聞いたらいいか逆にわかんないな~っ!
「くるちゃん、楽しそうだね~」
「北星、わかる?」
「わかる~」
「下山さんに何聞こうかなって考えてたら自然と顔が緩んじゃってさ。でも失礼にならないような内容にしないとね」
「あ~、そ~だ~。俺と当麻~、くるちゃんに謝らないといけなかったんだった~」
「えっ、何!? 当麻、何したの!?」
「下山さんと話をするときに、青敬と桜貝さん以外で映像のことをやってる人がいるのかって話になって、個人ではこういうことをやってる子がいますってくるちゃんのブログを紹介させてもらって」
「えーっ!? 一言ちょうだいよ! 何で事後報告!? プロの人にあたしの趣味の映像を紹介したってこと!?」
「でも~、ほめられてたよ~?」
「そういうことじゃない! って言うか北星も手伝ってくれてるんだからある程度見られる物になってるのはわかってるの! いつもありがとう! でもそうじゃないの~!」
「でも、実際青敬桜貝以外で映像やってる奴の代表と言えばくるみみたいなところはあるし、自分ら以外のサンプルとしてくるみのブログを出した当麻と北星は責められねーよ」
「そうですね。他に映像制作を個人でやっている人もいるのかもしれませんが、くるみほど自分からアピールしている人は多くありませんし。実際、くるみのスイーツ動画は美味しそうですから」
「ねーっ、向島勢が援護に回ったらあたしもう絶対勝てない!」
「ごめんくるちゃん、今日この後俺と北星で食後のデザート奢るから許して」
「許して~」
「もーっ、仕方ないなあ!」
一応どんな反応だったのかは気になるから北星に聞いてみたら、最初の頃から今に至るまでの成長がはっきりと見て取れるし、スイーツの断面っていう一貫したテーマで定期的に撮り続けられるのはすごいことだからこれからも続けて欲しいって。
実際いろんな人にこんなことやってますって自分から言ってると、応援してもらえることもあるんだよね。たくさん買いすぎて自分だけで消費できないクリスマスケーキを一緒に食べてもらったりとか。もちろん技術協力をしてくれてる北星には足を向けて寝られないし。
「とりあえず、下山さんとの打ち合わせはこんな感じ。カノン、ダイさんとの打ち合わせに何か進展があったなら聞かせてもらえると」
「りょうかーい。ダイさんとの打ち合わせは――」
end.
++++
シノがこの時期にインフルをやらかすことで対策委員がバタつくかと思いきや、今のところはまだ大丈夫そう。
どっちかと言えばゼミの方が大変な感じだけど、ササやまいみぃにすら連絡を忘れて倒れるように寝てしまったのだろうか
(phase3)
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「対策委員です? ……ごめん、やっぱり俺が仕切るなんて無理だよ。当麻、代わってもらっていい?」
「ええー……委員長がその仕事投げたら他に何するんだ…? まあいいや、対策委員です」
対策委員の委員長が七海ってことも実はちょっと忘れちゃうくらいには、普段の会議でも当麻の存在感が大きくなってる気がする。今日の対策委員の会議はシノがお休み。緑ヶ丘の代表としてはあたしがいるけど、対策委員的には議長不在の大ピンチ。
「えっと……くるちゃん、シノは?」
「何か具合悪いっぽくて今日はお休みさせてくださいだって。でも症状がただの風邪って感じでもなさそうだったからちょっと心配で」
「まさか未知の感染症とかじゃないだろうな?」
「シノさんはどんな症状なのですか?」
「すごい熱が出て体の節々が痛いんだって。筋肉痛っぽい症状もあるしって」
「俺たちが知ってる病気だとインフルエンザっぽいけど、今は夏だろ? インフルって冬のモンじゃねーのか?」
「生活リズムが乱れたり、ストレスなどで免疫が落ちていたりすると、季節に問わずかかる物ではありますよ」
「へー、そうなんだ。そんでくるみ、シノは病院行ったん?」
「町に出るのもしんどいから大学の保健センターで診てもらうって言ってたよ。内科と整形外科だったら普通のお医者さんと変わらないから」
「大学に病院があるとかどんだけだよ緑ヶ丘大学」
そんな風に話していると、シノからのLINEが入った。さっそく内容を確認すると、インフルエンザで確定だったみたくって、しばらく休みますってことだった。
「みんな、シノから検査結果来たけど、インフルエンザだって」
「じゃあ1週間くらいは休みってことだね。了解。こっちは大丈夫だからちゃんと休むように伝えてください」
「わかったよ」
「シノって地味に体弱いみたいなことは聞いたことあるけど、まさかここまでだとは思わなかった」
「あたし全然聞いたことなかった! くらら、誰から聞いたの?」
「彩人が言ってた。彩人はササから聞いたんじゃないかな」
「あ~、そのルートかー」
「バイトも深夜だし、授業もまだ朝から普通にあるのに対策委員とかゼミでバタバタ走り回ってて体調は大丈夫なのかー、的な心配をササがしてたって彩人から聞いてるけど」
「シノさんの体が弱る要因はしっかり揃っていたようですね」
「まあ、いないものは仕方ないししばらくは俺たちで頑張りましょう」
そう、こんなときこそあたしが頑張らないとね! シノがゆっくり休んでくれないと今度はササが心配で倒れちゃってもいけないし。ササがそんなことになったらレナも大変だし~って、巡り巡ってみんなバタバタしちゃっても良くない。
「講師の方々との打ち合わせに関しては、この間報告した通りダイさんと、映像関係の話をしてくれる下山さんとの間で進めてます。映像関係の話は主に俺と北星で打ち合わせてて、普段映像をやってない人により映像制作を身近に感じてもらえるような感じでお願いしますとは話してます。北星、まだ何かある?」
「一応、希望があれば質問にも答えてもらえるそうなので~、映像をやってる人なら専門的なことを聞いてもいいし、やってない人にもちょっとしたことを聞いてもらえたら嬉しいってことです」
「えっ、あたしが何でも聞いてもいいってこと!?」
「そういうことだね。ああ、それで、そういう話があるよってことを班や大学で周知してもらっていいかな? プロの人に直接話を聞く機会なんてそうそう滅多にあることじゃないし。もし事前に質問をもらえれば俺と北星で下山さんに渡しに行けるから」
映像の仕事をしてる人の話を聞けるなんてすっごい楽しみ! 普段北星と話しててもすっごいなって思うし何喋ってるかちんぷんかんぷんなこともあるけど、あたしも今から質問まとめておこう。どうしよう、何を聞いたらいいか逆にわかんないな~っ!
「くるちゃん、楽しそうだね~」
「北星、わかる?」
「わかる~」
「下山さんに何聞こうかなって考えてたら自然と顔が緩んじゃってさ。でも失礼にならないような内容にしないとね」
「あ~、そ~だ~。俺と当麻~、くるちゃんに謝らないといけなかったんだった~」
「えっ、何!? 当麻、何したの!?」
「下山さんと話をするときに、青敬と桜貝さん以外で映像のことをやってる人がいるのかって話になって、個人ではこういうことをやってる子がいますってくるちゃんのブログを紹介させてもらって」
「えーっ!? 一言ちょうだいよ! 何で事後報告!? プロの人にあたしの趣味の映像を紹介したってこと!?」
「でも~、ほめられてたよ~?」
「そういうことじゃない! って言うか北星も手伝ってくれてるんだからある程度見られる物になってるのはわかってるの! いつもありがとう! でもそうじゃないの~!」
「でも、実際青敬桜貝以外で映像やってる奴の代表と言えばくるみみたいなところはあるし、自分ら以外のサンプルとしてくるみのブログを出した当麻と北星は責められねーよ」
「そうですね。他に映像制作を個人でやっている人もいるのかもしれませんが、くるみほど自分からアピールしている人は多くありませんし。実際、くるみのスイーツ動画は美味しそうですから」
「ねーっ、向島勢が援護に回ったらあたしもう絶対勝てない!」
「ごめんくるちゃん、今日この後俺と北星で食後のデザート奢るから許して」
「許して~」
「もーっ、仕方ないなあ!」
一応どんな反応だったのかは気になるから北星に聞いてみたら、最初の頃から今に至るまでの成長がはっきりと見て取れるし、スイーツの断面っていう一貫したテーマで定期的に撮り続けられるのはすごいことだからこれからも続けて欲しいって。
実際いろんな人にこんなことやってますって自分から言ってると、応援してもらえることもあるんだよね。たくさん買いすぎて自分だけで消費できないクリスマスケーキを一緒に食べてもらったりとか。もちろん技術協力をしてくれてる北星には足を向けて寝られないし。
「とりあえず、下山さんとの打ち合わせはこんな感じ。カノン、ダイさんとの打ち合わせに何か進展があったなら聞かせてもらえると」
「りょうかーい。ダイさんとの打ち合わせは――」
end.
++++
シノがこの時期にインフルをやらかすことで対策委員がバタつくかと思いきや、今のところはまだ大丈夫そう。
どっちかと言えばゼミの方が大変な感じだけど、ササやまいみぃにすら連絡を忘れて倒れるように寝てしまったのだろうか
(phase3)
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