2022
■Amazing multifunction
++++
「おー! 殿ー! ええトコに来たー!」
「……何を、しているんだ」
「見てのとーり! ツッツ神が収納棚作ってくれたんよ! そんでな? 見て驚け! 引き出しの下の段はこ~やって! キャスター付きの移動式ベンチとしても使えるし、ここの天板はこ~やって! スライド式になっとって、引っ張り出したら机としても使える優れモンや!」
「これは、凄いな。ツッツが、DIYで作ったのか」
「お、俺の独断でどんどん追加機能を付けちゃったけど、大丈夫だったかなって……それで、殿を待ってたのは、この、ベンチの耐久性をチェックしたくて……」
「一応100キロちょっとくらいなら大丈夫らしいんだけど、ウチのサークルで一番重そうなのは殿だし、殿が来たら実際に座ってもらって使い勝手を確かめようかって話をしてて」
「そーゆーコトやから荷物置いて座ってくれ!」
「では、失礼する」
俺は4限の授業で出た課題を早く終わらせてサークル室に来たんだけど、ツッツは朝からこの作業をやっているみたかったし、うっしーに至っては授業をサボってツッツに付き合っていた。いないなとは思ったけど。後でノート見せてくれって言われてちょっと呆れたのは内緒だ。
だけど作っている物は本当に凄い。多分これから他の同期や先輩たちも続々やってくると思うけど、みんな驚くと思う。最初収納の話をしてた時、俺とうっしーは本当にカラーボックスを並べるくらいのことしか考えてなかったけど、出来上がった物は高級家具なんだから。
隠しキャスター式のベンチ収納にさっそく殿が座ると、いつもの教育用椅子に座っている時よりも貫禄が増したように見える。ツッツは小柄な人が2人くらい並んで座れるように設計したそうだけど、殿には1人でちょうどいいサイズ感のようだ。
「殿、座ったままベンチを動かしてみてくれる?」
「こうか」
「うん、動きもスムーズだね。それから、前側のキャスターにはロックもかけられて……ちょっとごめん。こうすると」
「……なるほど」
「ロックもちゃんとかかるね。殿、ついでに、棚の天板を横にスライドして机にしてみてくれる?」
「この、マガジンラックのような方が外側か」
「うん、そう。そっち側に引っ張ってもらえれば広がるから」
「これは、いいな」
「腕を付いたりして、普通に机として使うように使ってみてもらっていいかな」
「わかった」
殿が使って大丈夫なら余程乱暴に扱わなければ壊れることもないだろう。ツッツも心なしかいつもより溌剌としているようだし、殿もツッツと収納棚に感心しきりだ。木製テーブルの表面を撫でて手触りを確かめる様からも、気に入ったのかなというのが分かる。
「みんなおはようッ」
「あっ、奈々先輩見てくださいよこれー! 我らがツッツ神が収納班の大エースとしてやってくれたんすよ!」
「えっ何これ!? 何か凄い高級感のある棚だけど、もしかして買ってきたの!?」
「ちゃいますて! 作ったんすよ!」
「えーッ!? すごーいッ! えっ、本当の本当に木材を用意するところから!?」
「木材は、ホームセンターや、そういう店を当たって……一応、予算内には収めたので……」
「そんで今MMPの最重量級である殿に使用感のチェックをしてもらっとったっつーワケですわ!」
「えーッ、いいないいなーッ、うちも座りたいッ」
「どーぞどーぞ。殿、代わったってー」
奈々先輩がベンチに座るとしっかりともう1人くらいは座れそうなスペースがあるので、やっぱり殿が特別大きいんだと再確認する。奈々先輩が女性としても小柄な方ではあるんだけど。
「凄いねーッ、収納も捗るねッ!」
「ベンチだけじゃなくて机としての機能もあるんすよ!」
「え、えっと……机が1台増えたとは言え、12人までしか対応出来ないので、4年生の先輩がまたたくさん遊びに来たときなんかに、緊急用の席として使えたらな、と思って……」
「4年生襲来に対する気配りまで出来てる…! すごいねーッ、本当にありがとねーッ」
「い、いえ……俺も、楽しく作らせてもらいました」
「ツッツは本当にDIYが好きなんだねッ! 多分サークルに来てから一番いい顔してるように見えるよ」
「そ、そうですか…?」
「また何か必要になったらお願いしていいかな? もちろんうちが言わなくてもこうしたらサークル室がいい環境になるんじゃないかなって思いついたら相談してもらって」
「はい」
人見知りがどうしたこうしたと荒療治をされていたときよりは、確かにちょっとしっかりとした……と言うか、自信があるような顔にも見える。やっぱり、付き合っていくと少しずつ何が得意で、何に関心があって、みたいなことがわかってくるのかもしれない。
「おはようございます」
「おはよ~ございま~す」
「あっ、とりぃ松兄見て見てッ! ツッツが作ってくれた棚だよッ!」
「わあ、凄いですね! 本当にこれをツッツが作ったのですか!?」
「なーんか、棚って言うには多機能過ぎじゃね? あ、いや、貶してるワケじゃねーけど、収納棚って言うからもっとカラーボックス並べましたとか田んぼの田の字みたいなラックを想像してたからよ」
「これが隠しキャスター式のベンチラックで、この天板をこうしてスライドして広げると机にもなるっていう仕組みなんだってッ! 4年生の先輩が遊びに来たりして席がなくなることも考えられてるんだよ~ッ! ツッツ凄すぎない!?」
「確認しますが、これは家具サイトで取り寄せたのではなく、作った、んですよね?」
「アイディアは少しもらいましたけど、作ったのは、自分です」
「これは本当に凄いですね」
「で、ベンチはベンチとしての耐久性とかは問題ない感じなのか?」
「我らが殿が確認済みっす!」
「あー、殿が座って大丈夫なら大丈夫なんだろうな」
「殿は1人でちょうどいい感じでしたけど、奈々先輩と春風先輩なら2人で座ってもらっても大丈夫そうですよ」
「確かに2人掛けが出来そうな幅ですね。ツッツ、座ってみてもいいですか?」
「ど、どうぞ」
「奈々先輩、一緒に座ってみませんか?」
「よっと。うちさっき1人で座ったけど、とりぃとなら2人でも余裕だねッ!」
「まー多分俺とか殿とかだとキツくなってくるんでしょうけど、かっすーくらいまでなら2人掛けでも全然イケるんじゃないすかね?」
「廊下側の床もすっかり片付いたし、窓側の片付けについてもちょっとずつ考えたいねーッ」
「そうっすねー」
「収納班、窓側のこともちょっと考えてみてもらっていい?」
「もちろんっす!」
「あっでもあんまり予算は割けないからね」
思いがけず収納班としての活動はまだ続くことになり、今度は音源や季節家電などが置かれた窓側の収納をどうするかを考えることになったらしい。ただ、今回作ってもらった棚に入れられる物は入れてもいいかもしれないし、少ない予算でどう回していくかだな。
end.
++++
MMP1年生の収納班がチームとしてのまとまりを見せて来たか? ジュンはうっしーにノートを見せるのが仕事。
使用感をチェックするときにはとりあえず重そうとかデカい奴って発想になるのかな。でも殿はあんまり激しいタイプじゃないからどうかな
(phase3)
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「おー! 殿ー! ええトコに来たー!」
「……何を、しているんだ」
「見てのとーり! ツッツ神が収納棚作ってくれたんよ! そんでな? 見て驚け! 引き出しの下の段はこ~やって! キャスター付きの移動式ベンチとしても使えるし、ここの天板はこ~やって! スライド式になっとって、引っ張り出したら机としても使える優れモンや!」
「これは、凄いな。ツッツが、DIYで作ったのか」
「お、俺の独断でどんどん追加機能を付けちゃったけど、大丈夫だったかなって……それで、殿を待ってたのは、この、ベンチの耐久性をチェックしたくて……」
「一応100キロちょっとくらいなら大丈夫らしいんだけど、ウチのサークルで一番重そうなのは殿だし、殿が来たら実際に座ってもらって使い勝手を確かめようかって話をしてて」
「そーゆーコトやから荷物置いて座ってくれ!」
「では、失礼する」
俺は4限の授業で出た課題を早く終わらせてサークル室に来たんだけど、ツッツは朝からこの作業をやっているみたかったし、うっしーに至っては授業をサボってツッツに付き合っていた。いないなとは思ったけど。後でノート見せてくれって言われてちょっと呆れたのは内緒だ。
だけど作っている物は本当に凄い。多分これから他の同期や先輩たちも続々やってくると思うけど、みんな驚くと思う。最初収納の話をしてた時、俺とうっしーは本当にカラーボックスを並べるくらいのことしか考えてなかったけど、出来上がった物は高級家具なんだから。
隠しキャスター式のベンチ収納にさっそく殿が座ると、いつもの教育用椅子に座っている時よりも貫禄が増したように見える。ツッツは小柄な人が2人くらい並んで座れるように設計したそうだけど、殿には1人でちょうどいいサイズ感のようだ。
「殿、座ったままベンチを動かしてみてくれる?」
「こうか」
「うん、動きもスムーズだね。それから、前側のキャスターにはロックもかけられて……ちょっとごめん。こうすると」
「……なるほど」
「ロックもちゃんとかかるね。殿、ついでに、棚の天板を横にスライドして机にしてみてくれる?」
「この、マガジンラックのような方が外側か」
「うん、そう。そっち側に引っ張ってもらえれば広がるから」
「これは、いいな」
「腕を付いたりして、普通に机として使うように使ってみてもらっていいかな」
「わかった」
殿が使って大丈夫なら余程乱暴に扱わなければ壊れることもないだろう。ツッツも心なしかいつもより溌剌としているようだし、殿もツッツと収納棚に感心しきりだ。木製テーブルの表面を撫でて手触りを確かめる様からも、気に入ったのかなというのが分かる。
「みんなおはようッ」
「あっ、奈々先輩見てくださいよこれー! 我らがツッツ神が収納班の大エースとしてやってくれたんすよ!」
「えっ何これ!? 何か凄い高級感のある棚だけど、もしかして買ってきたの!?」
「ちゃいますて! 作ったんすよ!」
「えーッ!? すごーいッ! えっ、本当の本当に木材を用意するところから!?」
「木材は、ホームセンターや、そういう店を当たって……一応、予算内には収めたので……」
「そんで今MMPの最重量級である殿に使用感のチェックをしてもらっとったっつーワケですわ!」
「えーッ、いいないいなーッ、うちも座りたいッ」
「どーぞどーぞ。殿、代わったってー」
奈々先輩がベンチに座るとしっかりともう1人くらいは座れそうなスペースがあるので、やっぱり殿が特別大きいんだと再確認する。奈々先輩が女性としても小柄な方ではあるんだけど。
「凄いねーッ、収納も捗るねッ!」
「ベンチだけじゃなくて机としての機能もあるんすよ!」
「え、えっと……机が1台増えたとは言え、12人までしか対応出来ないので、4年生の先輩がまたたくさん遊びに来たときなんかに、緊急用の席として使えたらな、と思って……」
「4年生襲来に対する気配りまで出来てる…! すごいねーッ、本当にありがとねーッ」
「い、いえ……俺も、楽しく作らせてもらいました」
「ツッツは本当にDIYが好きなんだねッ! 多分サークルに来てから一番いい顔してるように見えるよ」
「そ、そうですか…?」
「また何か必要になったらお願いしていいかな? もちろんうちが言わなくてもこうしたらサークル室がいい環境になるんじゃないかなって思いついたら相談してもらって」
「はい」
人見知りがどうしたこうしたと荒療治をされていたときよりは、確かにちょっとしっかりとした……と言うか、自信があるような顔にも見える。やっぱり、付き合っていくと少しずつ何が得意で、何に関心があって、みたいなことがわかってくるのかもしれない。
「おはようございます」
「おはよ~ございま~す」
「あっ、とりぃ松兄見て見てッ! ツッツが作ってくれた棚だよッ!」
「わあ、凄いですね! 本当にこれをツッツが作ったのですか!?」
「なーんか、棚って言うには多機能過ぎじゃね? あ、いや、貶してるワケじゃねーけど、収納棚って言うからもっとカラーボックス並べましたとか田んぼの田の字みたいなラックを想像してたからよ」
「これが隠しキャスター式のベンチラックで、この天板をこうしてスライドして広げると机にもなるっていう仕組みなんだってッ! 4年生の先輩が遊びに来たりして席がなくなることも考えられてるんだよ~ッ! ツッツ凄すぎない!?」
「確認しますが、これは家具サイトで取り寄せたのではなく、作った、んですよね?」
「アイディアは少しもらいましたけど、作ったのは、自分です」
「これは本当に凄いですね」
「で、ベンチはベンチとしての耐久性とかは問題ない感じなのか?」
「我らが殿が確認済みっす!」
「あー、殿が座って大丈夫なら大丈夫なんだろうな」
「殿は1人でちょうどいい感じでしたけど、奈々先輩と春風先輩なら2人で座ってもらっても大丈夫そうですよ」
「確かに2人掛けが出来そうな幅ですね。ツッツ、座ってみてもいいですか?」
「ど、どうぞ」
「奈々先輩、一緒に座ってみませんか?」
「よっと。うちさっき1人で座ったけど、とりぃとなら2人でも余裕だねッ!」
「まー多分俺とか殿とかだとキツくなってくるんでしょうけど、かっすーくらいまでなら2人掛けでも全然イケるんじゃないすかね?」
「廊下側の床もすっかり片付いたし、窓側の片付けについてもちょっとずつ考えたいねーッ」
「そうっすねー」
「収納班、窓側のこともちょっと考えてみてもらっていい?」
「もちろんっす!」
「あっでもあんまり予算は割けないからね」
思いがけず収納班としての活動はまだ続くことになり、今度は音源や季節家電などが置かれた窓側の収納をどうするかを考えることになったらしい。ただ、今回作ってもらった棚に入れられる物は入れてもいいかもしれないし、少ない予算でどう回していくかだな。
end.
++++
MMP1年生の収納班がチームとしてのまとまりを見せて来たか? ジュンはうっしーにノートを見せるのが仕事。
使用感をチェックするときにはとりあえず重そうとかデカい奴って発想になるのかな。でも殿はあんまり激しいタイプじゃないからどうかな
(phase3)
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