2022
■Now and Then
++++
新歓コンパというものを開いてもらえるらしい金曜日、それでも会が始まるまでには時間があるからサークル室へ。するとミキサー席には首を傾げて難しい顔をしたうっしー。スピーカーからは今年の物ではなさそうな番組が流れているように思える。
「うーん」
「おはよううっしー。どうしたんだ、らしくもない神妙な顔して」
「おはー。でもジュン、らしくないは余計よ」
「悪い。でもそれこそイキッてるのはキャラ作りで実は真面目なんですって言われてもおかしくない顔だったから」
「ほら、こないだ4年生の先輩ら来てったやん?」
「そうだな」
「その先輩らがやっとった番組っつーのを聞ける環境にしてもらったんで、ちょっと聞いてみたんよ」
過去のMMP昼放送は基本的に番組を担当したミキサーが録音したディスクを管理していたそうだけど、それを出来る限りかき集めたのはカノン先輩だと言われている。あの人はここでの活動に熱い熱血漢だという印象がある。特に、春風先輩と奏多先輩が落ち着いていたり、スマートだったりするからその熱さが際立つ。
音楽や効果音集のような音源の他には昼放送専用のディスク保管箱というものがあって、かき集められたディスクはそこに保管されている。いつ、誰の番組であるのかというのをしっかり記載するのはなかなか手間だったらしい。番組の概要については過去のアナノートやミキノートを見れば書いてあるという話だ。
「どうだった?」
「師匠がマジでハンパない!」
「師匠というと、こーた先輩か」
「こないだ来た先輩らみんなミキサーやって言っとったやん」
「ああ、確かに」
「でも今聞いとる去年の今頃の番組では師匠がアナウンサーとして番組やっとるんやよ。それだけでもビックリなんやけど、毎回違う人格のキャラクターを用意して架空の番組みたいなことやっとって、アドリブラジオドラマみたいな感じなんよ! ジュンも聞ーて! 好きかどうかは知らんけど衝撃は受けるから!」
「わかった。でも、やっぱりウチのサークルはアナウンサーだからトークだけとか、ミキサーだから機材だけとかって感じではないんだな。カノン先輩も二刀流としてどっちの練習もやってるし」
「去年の今頃は人がいなさ過ぎて昼放送回すのもやっとやったらしいけど。まあ、あれやわ。お知らせじゃないホンマの番組をやる頃には自分が何を出来るか考えとかんとなあ」
「ホントだな」
去年の秋学期には“文化交流”という名目で緑ヶ丘からすがやん先輩が週1でウチに来ていて、その場で昼放送を収録していたそうだ。2校の思惑が合致した結果だという話ではあるけど、そうでもしないと本当に回らなかったのだと。そこに至るまでの経緯はさぞ壮絶だったんだろうとは想像が出来る。
「はい、真面目な話ヤメ! 焼き鳥楽しみやわー」
「ホント急に話を変えたな。まあ、俺も楽しみではあるけど」
「しごおわの一杯とはまた別の楽しいタイプの飲み会やん?」
「そう言えば、社会人時代には飲み会には行ってたのか?」
「行ったり行かんかったり。行ってもどーせまだハタチやないし飲ませてもらえん上に上司らに注いで回って学生のノリでわーわー酔って暴れる連中の面倒見たりせんといかんっていう。めんどくさない? そんなんに巻き込まれるなら帰ってアニメ見たいわ」
「未だにあるんだなそういうの」
「あるある」
時々垣間見るうっしーの社会人時代の話が絵に描いたようなアレな社会の様相なんだよな。そういう会社で1年頑張ったからこそ次の就職は精神衛生を保てる会社に入って相応の報酬をもらえるようになりたいのだろう。
「そーいやウチのサークルってどんな感じの飲みなんやろ」
「奈々先輩は「お酒のある食事会みたいな感じでそこまで激しくはない」って言ってたかな」
「平和的やん! ええわー、模範的やわー」
「でも俺たちがどんな感じかわからないからこれまでのことは当てにならないとも」
「そーいや俺らの同期ってどーなんやろーな酒の強さとか。ジュンは? 一応俺らの中で唯一ちゃんとハタチなっとるし、飲んだことくらいはあるやろ?」
「呑んだことはあるけど美味しさはよくわからなくて、ジョッキ2杯のチューハイを飲んで後は食事にシフトしてたレベル」
「中の下とか下の上くらいか」
「うっしーは? 仕事終わりとかに飲んでたみたいだし、さては強い?」
「飲むんは好きやけどそんな強くないんよ。1杯飲んで気持ちよくなる」
「じゃあ自分も下の上なんじゃないか」
「実はね。他のメンバーはどうやろ。ジャックはあんま飲んだことないっつっとったし。個人的にはパロとかツッツがザルやったらおもろいと思う」
「ああ、顔やキャラに似合わずっていう感じで?」
「そうそう」
「それで行くと殿なんかはそれこそ一人静かに盃を傾けてそうだけど。月見酒みたいな」
「それは本物すぎるんよ」
奈々先輩とカノン先輩はそんなに強くないという話だし、春風先輩と奏多先輩はまあまあ飲めるらしいけど分別を付けることの出来る人たちだから酒のある食事会と呼ぶ域を抜けない飲み会なんだそうだ。4年生の先輩たちがいた頃は、酒よりも食事の方に気を配らないと食いっぱぐれる危険性があったとかなかったとか。
「ジュン焼き鳥やったら何好き? ももとか皮とかつくねとか」
「ねぎまかな」
「あ~、ええね」
「自分は?」
「やっぱベタにタレでももかな!」
「それもいいな」
end.
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MMP1年生の年長組(?)の話。誰がお酒強い弱いの話は純正のMMPメンバーは例に漏れず弱め。春風奏多は例外。
(phase3)
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新歓コンパというものを開いてもらえるらしい金曜日、それでも会が始まるまでには時間があるからサークル室へ。するとミキサー席には首を傾げて難しい顔をしたうっしー。スピーカーからは今年の物ではなさそうな番組が流れているように思える。
「うーん」
「おはよううっしー。どうしたんだ、らしくもない神妙な顔して」
「おはー。でもジュン、らしくないは余計よ」
「悪い。でもそれこそイキッてるのはキャラ作りで実は真面目なんですって言われてもおかしくない顔だったから」
「ほら、こないだ4年生の先輩ら来てったやん?」
「そうだな」
「その先輩らがやっとった番組っつーのを聞ける環境にしてもらったんで、ちょっと聞いてみたんよ」
過去のMMP昼放送は基本的に番組を担当したミキサーが録音したディスクを管理していたそうだけど、それを出来る限りかき集めたのはカノン先輩だと言われている。あの人はここでの活動に熱い熱血漢だという印象がある。特に、春風先輩と奏多先輩が落ち着いていたり、スマートだったりするからその熱さが際立つ。
音楽や効果音集のような音源の他には昼放送専用のディスク保管箱というものがあって、かき集められたディスクはそこに保管されている。いつ、誰の番組であるのかというのをしっかり記載するのはなかなか手間だったらしい。番組の概要については過去のアナノートやミキノートを見れば書いてあるという話だ。
「どうだった?」
「師匠がマジでハンパない!」
「師匠というと、こーた先輩か」
「こないだ来た先輩らみんなミキサーやって言っとったやん」
「ああ、確かに」
「でも今聞いとる去年の今頃の番組では師匠がアナウンサーとして番組やっとるんやよ。それだけでもビックリなんやけど、毎回違う人格のキャラクターを用意して架空の番組みたいなことやっとって、アドリブラジオドラマみたいな感じなんよ! ジュンも聞ーて! 好きかどうかは知らんけど衝撃は受けるから!」
「わかった。でも、やっぱりウチのサークルはアナウンサーだからトークだけとか、ミキサーだから機材だけとかって感じではないんだな。カノン先輩も二刀流としてどっちの練習もやってるし」
「去年の今頃は人がいなさ過ぎて昼放送回すのもやっとやったらしいけど。まあ、あれやわ。お知らせじゃないホンマの番組をやる頃には自分が何を出来るか考えとかんとなあ」
「ホントだな」
去年の秋学期には“文化交流”という名目で緑ヶ丘からすがやん先輩が週1でウチに来ていて、その場で昼放送を収録していたそうだ。2校の思惑が合致した結果だという話ではあるけど、そうでもしないと本当に回らなかったのだと。そこに至るまでの経緯はさぞ壮絶だったんだろうとは想像が出来る。
「はい、真面目な話ヤメ! 焼き鳥楽しみやわー」
「ホント急に話を変えたな。まあ、俺も楽しみではあるけど」
「しごおわの一杯とはまた別の楽しいタイプの飲み会やん?」
「そう言えば、社会人時代には飲み会には行ってたのか?」
「行ったり行かんかったり。行ってもどーせまだハタチやないし飲ませてもらえん上に上司らに注いで回って学生のノリでわーわー酔って暴れる連中の面倒見たりせんといかんっていう。めんどくさない? そんなんに巻き込まれるなら帰ってアニメ見たいわ」
「未だにあるんだなそういうの」
「あるある」
時々垣間見るうっしーの社会人時代の話が絵に描いたようなアレな社会の様相なんだよな。そういう会社で1年頑張ったからこそ次の就職は精神衛生を保てる会社に入って相応の報酬をもらえるようになりたいのだろう。
「そーいやウチのサークルってどんな感じの飲みなんやろ」
「奈々先輩は「お酒のある食事会みたいな感じでそこまで激しくはない」って言ってたかな」
「平和的やん! ええわー、模範的やわー」
「でも俺たちがどんな感じかわからないからこれまでのことは当てにならないとも」
「そーいや俺らの同期ってどーなんやろーな酒の強さとか。ジュンは? 一応俺らの中で唯一ちゃんとハタチなっとるし、飲んだことくらいはあるやろ?」
「呑んだことはあるけど美味しさはよくわからなくて、ジョッキ2杯のチューハイを飲んで後は食事にシフトしてたレベル」
「中の下とか下の上くらいか」
「うっしーは? 仕事終わりとかに飲んでたみたいだし、さては強い?」
「飲むんは好きやけどそんな強くないんよ。1杯飲んで気持ちよくなる」
「じゃあ自分も下の上なんじゃないか」
「実はね。他のメンバーはどうやろ。ジャックはあんま飲んだことないっつっとったし。個人的にはパロとかツッツがザルやったらおもろいと思う」
「ああ、顔やキャラに似合わずっていう感じで?」
「そうそう」
「それで行くと殿なんかはそれこそ一人静かに盃を傾けてそうだけど。月見酒みたいな」
「それは本物すぎるんよ」
奈々先輩とカノン先輩はそんなに強くないという話だし、春風先輩と奏多先輩はまあまあ飲めるらしいけど分別を付けることの出来る人たちだから酒のある食事会と呼ぶ域を抜けない飲み会なんだそうだ。4年生の先輩たちがいた頃は、酒よりも食事の方に気を配らないと食いっぱぐれる危険性があったとかなかったとか。
「ジュン焼き鳥やったら何好き? ももとか皮とかつくねとか」
「ねぎまかな」
「あ~、ええね」
「自分は?」
「やっぱベタにタレでももかな!」
「それもいいな」
end.
++++
MMP1年生の年長組(?)の話。誰がお酒強い弱いの話は純正のMMPメンバーは例に漏れず弱め。春風奏多は例外。
(phase3)
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