2022

■character congestion

++++

「っつーワケで、今日は4年生の先輩に来てもらいましたー」
「いらっしゃいませー」

 情報棟で会った奏多から「4年生もたまにはサークルに顔を出せ」的なことを言われて、律とこーたに声をかけた。元々期待してなかったけどヒロは旅行に行ってるとかで論外だったが。で、久々にやってきましたMMPサークル室。
 確か春先に新歓のブースで話したときには4人入ったと聞いてたけど、それからも人が入ったらしい。どんな確変が起こったんだと正直目を疑った。現在は1年が6人と2年が3人、それから奈々の10人で活動しているようだ。

「やァー、すっかり大所帯スねェー」
「本当ですね。座る場所もないくらいなのは初めてじゃないですか?」
「あっ、すみません! とりあえず私の席へどうぞ」
「ヤ、自分は大丈夫スよ。とりぃが座っててもらッて」
「さすが土田さん、紳士ですねえ」
「こーた、そこに膝と肘を付けやコラ」
「私の上に座る気マンマンじゃないですか!」
「いいか1年生、これがMMPの誇るラブ&ピースだぞ」

 奈々が俺たちの紹介を入れてくれるのだけどこれがまーあツッコミどころが多い多い。律が紳士でどーやらこーやらとか、俺がクズでこーたがウザ……いや、こーたに関しては事実だったな。自覚はしてても人から言われると反論したくなる辺りがクズであった。

「で、これが1年らっす。はい、入った順に自己紹介」
「環境科学部1年朝宮健人、ジャックっす! パートはアナウンサーで、現在料理の修行中です! よろしくお願いします!」
「ジャックは青尋エリア出身で、一人暮らしをしているのです」
「一人暮らしの人なんて久し振りじゃないですか?」
「この間卒業された先輩方以来だな」
「じゃ、次」
「はい。鷹来純平、DJネームはジュンです。情報科学部で、星大がダメで二浪しました。パートはアナウンサーです。よろしくお願いします」
「ジュンは浪人こそしていますが、勉学に対する真面目な姿勢を私は尊敬しています」
「苦労したんだなあ」
「野坂が言っても煽りにしか聞こえないスよ」

 サークルに滅多に来ない4年より、いつもいる2年の完璧超人の方が煽りじゃねーかと思うんだけどな。奏多はさらにコミュ強で運動神経抜群のバリイケメンって辺りが俺とは全然違うワケで

「じゃ、次」
「勝川要。社会学部、環境コース。ミキサーです」
「DJネームを伺っても?」
「殿と」
「ほー、いースねー! まず名前が縁起いースからネ」
「そーっしょ? さすがりっちゃんさん、わかってんな~」
「殿は植物を愛し心優しく、料理がとても上手なのです。私の料理の師匠でもあります」
「ますますいーじャないスかァー。どんな料理をするンすか?」
「律、まだあと3人残ってんだぞ。料理の話は後からにしてくれ」
「ちェー」
「じゃ、次」
「玉野千歳です。僕も殿と同じ社会学部の環境コースで、育てているサボテンの品種、パロディアから取ってDJネームはパロです。パートはミキサーです。よろしくお願いします」
「パロも料理が好きなようで、香辛料に詳しいのです。それから、植物全般に詳しいんですよ」

 この2人は学科も同じだし植物と料理繋がりで仲良くしていると補足が入る。まあそうなるだろうなあとこれには全員が納得。殿が寡黙だけどパロがまあまあ喋るから会話にはなるんだろうな。

「じゃ、次なー」
「……えっと、内津由紘です。生命科学部です。D、DJネームは、ツッツで、ミキサーです。よ、ろしくお願いします」
「ツッツは人見知りで物静かですが、ミキサーとしての音の扱い方は荒削りながらまあまあ大胆だとは奈々先輩評です」
「ミキサー3人の中では機材に一番強いですし、向島のタカティになれる逸材っす、うっすうっす」
「ほー、俄然興味深い」
「は、ハードルを上げないでくださぃ……」
「ごめんごめんッ、でも期待してるのは本当だからねッ」
「じゃ、ラストー」
「はーい! 誰が呼んだかイキリ隠キャのお喋り袋、うっしーこと牛山翔太、情報科学部で青春中、ぴっちぴちの19歳でーす、いえーい」
「いえーい!」
「こーた先輩ノリがいい! いっえーい!」
「いっえーい!」
「セイほーう」
「ほーう」
「セイほっほっほー」
「ほっほっほー」
「セイべろ~ん」
「べろりんちょ」
「ぷっ…! あっはっはっは! さすが4年生の先輩っすわー! 変顔まで追加されたらそら負けますわ!」
「うっしー、これが第9代MMPの誇るウザドルだぞ」
「師匠と呼ばせてください!」
「辞めた方がいースよ」
「全くだ。悪影響しかない」
「こんなノリではありますが、うっしーは高卒でプログラマーとして1年働いた経験があるのです。その経験からなる視点は私たちにはない物ですし、MMP比で大人ですね」
「擦れてるだけのイキリ野郎ですよー。アンチ無能でーす。いえーい」

 俺も来春にはプログラマーとして就職することになっている身として、うっしーには社会の何たるかをぜひ聞いておきたい。うっしーがアンチ無能と言った経緯を聞いたら何かもうすっごい心臓がキュッてなったし卒業するまでにもっともっと勉強しなければ。


「っつーワケで1年の紹介は以上っす。4年生の先輩を呼んだのはツッツの人見知りを治す荒療治の一環っすね。りっちゃんさんとこーたさんタイプは俺らじゃカバー出来ねーんで」
「やーいキワモノ認定~。俺は平々凡々なただの人~」
「野坂さんのどこが平々凡々なんですかねえ」
「卒業してった先輩がいないからただのクズに成り下がっただけの完璧超人でしかないスからねェ」
「いいかい1年生のみんな~。この野坂さんて人はねえ、眉目秀麗頭脳明晰運動神経抜群と一見完璧超人だけどね、人格がクズだからね~。イケメン詐欺なんだよ~」
「はっはっは。今の1年にとっちゃ奏多こそが完璧超人だからな。俺ごときただのクズでしかないんだぞ。残念だったな!」
「俺もまあまあスペック高い方だとは自負してますけど、さすがに成績がオールSとかじゃないんで野坂さんのがヤベーすよ。俺は初心者講習会とかで講習出来るタマでもないっすし」
「みんなー! 野坂さんは3年まで終わって成績がオールSなんだよ~! GPAは4.0! すっごーい!」
「すっごーい! えっ、冗談じゃなく凄ない!?」
「いやいやいや、情報系の資格なら奏多の方がたくさん持ってる! 俺は雑魚!」
「いやぁ~、さすがに野坂さんには敵いませんて!」
「完璧超人同士の謙遜し合いとか誰も得しないんだよなあ」
「ジュン!?」
「すみません、ついうっかり。自己研鑽に励みます」
「私にはジュンの気持ちがわかりますよ。一緒に頑張りましょう」
「えっと、いつも松兄が「俺って出来るからな~」とか言ってるの、ジュン的には」
「謙遜や卑下されるより断然気持ちいいです」
「今の野坂先輩との件は? ぶっちゃけ」
「先輩ですけど、ぶん殴ってやろうかと」
「怖っ」
「これを受けて野坂先輩、自分の成績について一言!」
「普通にやればこれくらい出来るだろ。騒ぐ意味がわからない」
「キター! これでこそ野坂さんですね!」
「ヒロがいればもっと早く聞けた物を! いやァー、回り道しヤした」

 結論として、やっぱりMMPに来る奴らは総じてキャラが濃いというところに落ち着いた。最後のアレでジュンもただただクールなしっかり者だけじゃないとわかってみんな嬉しそうだったし。人間の醜い一面すらキャラとして昇華する謎の空間だぞ。

「とりあえず1年6人の怒らせたら怖いランキング暫定1位はジュンだな!」
「何のランキングだよ」
「だって俺とジャックはわーわー言っても所詮わーわー止まりやし、殿は些細なことじゃ怒らんし、パロとツッツは怒るイメージないもんなあ。ちなみに4年生で怒ると怖いのは誰ですか?」
「これは間違いなく野坂スわ」
「そうですねえ。間違いありません」
「は!? 人畜無害な俺が怖いだって? 意味が分からない」


end.


++++

思いがけずツッツがMMP1年ミキサーの急先鋒みたいな感じになった。設定なんてモンはいつどうなるかわからん
やっぱり4年生のいつメンもわちゃわちゃさせたい。りっちゃんは殿がお気に入りだし神崎はうっしーを弟子にするのか?

(phase3)

.
40/100ページ