2022

■pattern of character

++++

「初心者講習会お疲れさまでしたッ! 今後は夏合宿の話に入ってくるし、それに向けてまた練習頑張っていきましょうッ!」
「はーい」
「で、ツッツとうっしーも来週からね。お知らせ番組の方、デビューだから今からしっかり準備しといてねッ」
「はい」
「おお~、よーやっと俺もデビュー出来るんですね~! 今か今かと待ち侘びましたよ~!」
「あ、えっと、まだ短いお知らせ番組だから、強烈な個性付けとかはほどほどでお願いね」
「ささやかなスパイスくらいにしときますよ~!」

 1年6人の中で後から入ってきたツッツとうっしーも無事にお知らせ番組デビューが出来そうだと判断され、1年生だけで3ペアを作ることが出来るようになった。2、3年生の2ペアで通常の昼放送を担当して、1年生の3ペアで残りの曜日を埋めることが出来る計算だ。
 何つーか、自前のペアだけで全曜日を埋めることが出来るとか、革命じゃね!? 半年前には人がいなさすぎるから緑ヶ丘からすがやんを借りてきてやっとやっと昼放送を回してたことを思うと劇的な進歩に涙がちょちょ切れそうだ。

「えっと、ツッツ、うっしーとのペアになるけど大丈夫そう? 勢いに押されそうだったら他の子と変わっても大丈夫だからね」
「奈々先輩そんなヒドいこと言わんでくださいよー! 俺別にツッツのことイジメたりしませんしー!」
「イジメるとかじゃなくて勢いに圧倒されるんじゃないかってこと」
「あ、えっと、大丈夫です」
「そう? じゃあそのままペアで行くね。うっしー、番組を作るときはミキサーの意向もちゃんと尊重するんだよ。MMP比いいオトナなんだから、イキリ方は自分で調整してね」
「了解でーす」

 如何せんうっしーは1年6人の中でも勢いが凄い。ジャックもまあまあガンガン行く方だと思うけど、またちょっとタイプが違うのかな。如何せん一度社会に出たことのある経験値がデカすぎるし、本人のキャラなのか先輩にも口が減らないのなんの。
 一方でツッツは入ってきたときから静かで、どういう感じの子なのかっていうのも分かりにくかった。別に馴染んでないってワケでもなさそうなんだけど、如何せん静かすぎて。ジュンのクールさとか、殿の貫禄とも違う静かさと言うか。

「えっと、対策委員は何かお知らせとかあるかな?」
「対策委員はこれから夏合宿の話し合いに入るところです。詳細は決まり次第適宜報告します」
「はーい」
「とりぃ先輩、夏合宿ってどんな感じの行事なんすか?」
「ええと、初心者講習会が入り口だとするなら、合宿では何歩か進んだ講習をしていただける予定です。それから、実際に他校の人と班を組んで、番組を作るそうですよ。すみません、私も参加したことはないので聞いた話でしかお答えすることが出来ないのです」
「でもとりぃの説明で大体合ってるよッ! 大丈夫大丈夫」
「良かったです」
「他校の人と一緒にやるのかー、楽しみだなー!」
「ホンマやなあ!」

 ジャックとうっしーの反応については予想通り過ぎてこっちも安心感があるよな。うっしーはイキリ方次第だけど、この2人は割とコミュ強と言うか物怖じしない方だからさほど心配はなさそうだ。あと何やかんやパロもこっち側かな。
 一方、静かなチームだ。ジュンは俺らの学年で言うところのササとか当麻的ポジションだなってイメージが俺の中で出来上がってる。クールでしっかり者的な。殿はデカくて怖そうっていう第一印象をどう越えるかが勝負だろう。

「他校の人ですか……俺、初心者講習会でも他校の人がこんなにたくさんいるんだって、少し怖かったんですよね」
「ああ、確かにツッツ、パロの側から離れなかったもんな」
「おいおいツッツ、そんなんで大丈夫だったんかよ」
「人見知りで。あと、人の多いところが苦手なんです」
「まーそんな感じはするわなあ」
「殿が近くにいてくれれば安心するんだけど、殿、早々に後ろに行っちゃうから」
「俺が前にいては、他の人の迷惑になる」
「そやぞー。殿は漢なんやぞー」

 インターフェイスってキャラが濃い人が多いよなーという話は対策委員の間でも盛り上がってたし、今年の1年も既に個性が強烈っぽそうだとは言ってたんだよな。人見知りじゃなくたって圧倒されそうだったし。怖かったっていうツッツの気持ちはわからないでもない。

「よし! おいうっしー、お前、ツッツにどんどんイキった絡み方してけ」
「奏多、あなた何を言っているの?」
「まーまー。荒療治も必要だって。実際外に出る前に耐性を付けんだよ。そしたらもし他校のガンガン系イキリ野郎と一緒になっても「このパターンは知ってる」っつー感じで対応出来るじゃん?」
「松兄、言ってることは分かるけど、他校の子がうっしーみたいな子ばっかりとは限らないんじゃない?」
「6人、つかあと5人か。5人もいりゃ大体のパターンには対応出来るだろ。2、3年も含めりゃ9人だ」
「でも松兄、うっしーって実はめちゃくちゃマジメでムリにイキってんじゃないか疑惑が俺ら同期の中で上がってるんですよ」
「ジャックやめー! 営業妨害やぞー! 安心してくださいよ松兄、うっしーはイキリ隠キャのお喋り袋ですよ~ワハハハハ」
「つかそれ笑い袋じゃね?」
「今のはジャックが悪い。営業妨害は大罪だぞ」
「そーゆーコトなんで俺に任しといてくださいよ松兄」
「よーし、ツッツの人見知りをちょっとでも軽くする作戦、始動だ」
「おー!」

 何かとんでもない作戦が始まったなと思うけど、本当に大丈夫なのかな? まあ、これからインターフェイスの活動に出て行くなら人見知りをしない方がラクなのはラクなんだけど。

「……ツッツ、ダメそうだったらうちに言うんだよ」
「えっと、今のところ大丈夫です、多分。それよりすみません俺のことで」
「いーのいーのッ! もし人見知りが治らなくてもそれはそれでそういう子なんだって理解してくれる人もたくさんいるから安心してねッ」
「ありがとうございます」


end.


++++

入ってからもずっと存在感の無かったツッツがとうとう喋った! 現段階では人見知りで静かなようです
今年の向島はあのデカい子が特徴的なので、何なら他の子は目立たない可能性も全然ある。

(phase3)

.
39/100ページ