2022
■ごはんのお悩み
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ファンフェス終わりから本腰を入れ始めた対策委員の会議は、今度の6月にある初心者講習会に向けて一直線! 議長のシノに機材管理担当の当麻、それから定例会との兼任で人脈や情報のあるカノンの3人を中心に会議が回ってるって感じ。
今年からは初心者講習会の講習内容も少し見直して行かないとなあという話になっていて、ラジオだけじゃなくてステージや映像っていった部分でどうしていくのかって事も話し合ってる。後は会場だとか講師は誰にお願いするかとかそういうこと。
「ちとせちゃーん、ごはんいこー」
「いいよー。北星はどうする?」
「今回はごめんね~。仕事が山積みで~。また誘って~」
「そっかー、じゃあまた今度ね」
「くるみちとせ北星って夏合宿で一緒の班になってからこんな感じなんだろ? めちゃ仲いいよな」
「ふっふーん、すごいでしょシノ!」
「まあ、すげーなとは思う」
「でも北星が積んでる仕事のいくつかはあたしのヤツだと思うとあたしだけ普通にごはん食べに行く事に対する罪悪感が」
「あ、くるちゃんがお願いしてる仕事もあるんだ。シノ君は一緒にごはんどう?」
「悪い、俺これから豊葦に戻ってバイトなんだわ。仮眠取らないと」
「あ、そうなんだ。頑張ってね」
シノは大学近くにあるガソリンスタンドと併設のコーヒーショップでバイトを始めて、無事時給の高い深夜帯のスタッフとして定着した。っていうか会議で使ってるのと同じチェーンだからちょっとした割引が利いてるとか利いてないとか。さすがの倹約術は健在だね。
「とりぃ、よかったらこれから一緒にごはんどう!?」
「ご飯ですか? いいですよ」
「やったあ! 何食べる?」
「くるみとちとせさんの間で決まっていたのであれば、私はそれに従いますよ」
「全然決まってないし、とりぃが食べたい物をこれだって出してくれればそれで即決する可能性もあるよ」
「夕飯を決める際には、その日の昼食のメニューを出し合って、それ以外の候補を出すという手法が結構使えますよ」
「頭いい! あたしパスタ食べたよ」
「あたしはサンドイッチだったよ。とりぃは?」
「私はカツ丼を食べました」
「それ以外って何だろう?」
そんなことを話しながら、何を食べようねーと歩きながら店を探すことに。ここは花栄だから何でもあるもんね。あたしとちとせちゃんが洋っぽいし、とりぃは和食だから中華かな? なんて何となくの方向性がまとまって、いざお手頃価格の中華屋さん!
「何だか、女子だけでテーブルを囲むというのが新鮮です」
「これってもしかしなくても女子会!?」
「女子会でいいと思うよ。あたしも、他の大学の子だけの女子会は初めてかも」
「そう言えば、ちとせさんは女子大ですもんね」
「向島は男子の比率の方が高いんだっけ?」
「そうですね。大学全体としても男子の方がやや多いですし、情報科学部となるとさらにその傾向が強くなりますね。サークルだともっとで。それでなくても私はあまりコミュニケーションの得意な方ではないので、こうして友人として食事に誘っていただけるということが嬉しいのです」
「とりぃの喜びがささやかでかわいい」
「ねーっ」
「あの、すみません。とてもおなかが空いているので普通に食事をしたいのですが、大丈夫ですか? ご飯を大盛りにしたりしても」
「もちろん! 何でもいくらでも食べちゃって!」
「あたしも何食べるか決めよう」
せっかくの女子会なのでみんな好きなように頼みましょう、ということであたしは久々にギョーザが食べたいっていう衝動でダブルで頼んじゃったし、ちとせちゃんは酢豚。それからとりぃがレバニラ炒めに春巻き、それから大盛りご飯と卵スープ。
「ちとせちゃんは千颯とデートのときとか、食事内容で見栄じゃないけど、セーブしてたりとかしてるの?」
「私も気になります」
「千颯とは水族館とか熱帯魚のお店とか、魚のいる場所に行くことが多くて、それに引きずられて魚が美味しそうだなーってなって魚介類を食べることが多いんだよね」
「えっ、きれいだなーって見た物を美味しそうだなーって食べるの?」
「そうだよ。だからあたし今日はお肉食べたいって思って」
「へー……えっ、鰯がぐるぐる回ってるのとか見て、イワシ美味しそう! イワシ食べに行こう! みたいな?」
「本当にそんな感じ。イカがスミ吐いたから、イカスミパスタかなーとか」
「それもなかなか面白いですね」
「面白いには面白いんだけど、たまにはお肉も食べたいよ」
千颯は水彩画が趣味で、水族館の年パスを買うくらい水の生き物や空間が好きだって話は聞いたことがあったけど、そんなところにまで影響してくるとはって感じ。あたしは魚ばっかり続いたらちょっとイヤかな。とりぃはお魚も美味しいですよねってあんまり否定的じゃないみたい。
「とりぃはすがやんとはどういう感じでごはんとか」
「それがですね……私は人一倍食事の量が多いので、大盛りメニューなどは当たり前ですし、今日のようにあれもこれもと注文するのが日常なのです」
「彼氏と一緒だといっぱい食べる子って思われたくないみたいな話も聞いたことあるけど、そういう感じではないんだね」
「はい」
「MBCCだと食べたいように食べるのが正義みたいなところがあるしね」
「そうですよね。なのでそれはいいのですが、問題は食事をする私を見る徹平くんの目なのです……」
「えっ、何が問題なの?」
「何を言っているのだと思われるかもしれませんが、徹平くんは食事の度に私に可愛い可愛いと。そんな風に言われてしまうとあまりの恥ずかしさで」
「1ノロケポイント入りまーす」
「それで食事が喉を通らなくなる的な?」
「いえ、食事はしっかり食べます。ですが食べる姿が好きだと言われてその機会を多く設けられてしまうと、体型を維持するのが難しいのです。たくさん食べないと具合が悪いのかと心配されてしまいますし」
「あ~」
「くるみ、絶対に言わないでくださいね」
どっちかと言えばすがやんが何を言ってるのって感じ。確かにとりぃは可愛いよ!? でもごはんの度にそんなこと言って困らせるのはダメだわ~。見られてるってわかってて好きなように好きな物を食べるのもなかなかね。視線の圧ってヤツだよ。
「でもとりぃは普段から運動してるし、アクティブな方だから全然大丈夫だよ! あたしを見てよ! 美味しそうなスイーツ断面動画を撮る代償がこのお肉!」
「レナが「くるみはやわらかくてもちもちしているのが可愛い」と言っていましたが」
「もちもちの度合いを越えてるの! 大学にジムが無かったら今頃パツパツのぶよぶよで見るも耐えないことに! みちるちゃんも程良い肉付きがなきゃくるみじゃないからあんまり痩せすぎないでって言うけど気になるの! ホントはとりぃみたいにシュッとしたいの!」
「くるちゃんは今のままで十分なのに」
「罠だよ! ちとせちゃんまで!」
「でもですね、くるみの頬には不思議と吸い寄せられる引力があるのです。失礼だと思ってなかなか言い出せなかったのですが、ひとつ、女子会記念ということで聞いてもらえませんか?」
「えっ、なに?」
「もし良ければ、頬をつつかせてもらえませんか?」
「あっ、そのくらいなら全然いいよ! はいどーぞ」
「では失礼します。……わあ、とても気持ちいいですね! お肌もすべすべで」
「えー、くるちゃんあたしもー」
「えっ、両サイドから!? いいけどー」
2人からほっぺたをつんつんされてるってどういう状況!? なんかこんな風にされてたら去年高崎先輩に延々とほっぺをむにむにされてたのを思い出しちゃった。もしかして高崎先輩もあたしのほっぺで遊んでたってこと!?
「くるみの頬がとても柔らかかったとレナに報告したいです!」
「えー! やめてよ恥ずかしいー!」
「とりぃってレナと仲がいいの?」
「はい。趣味が合って仲良くしています」
「すっごいね。あたしたちの学年の最強美女コンビじゃない?」
「ホントだね!」
「レナと言えば、ササ君とは順調な感じ?」
「あそこはもう安定だよ。熟練の風格を感じる」
「私もよくレナにはいろいろ相談をしますし、頼れる存在です」
「あっ! そー言えばこないだすがやんの誕生日だったけどデートとか行ってきたの!?」
「えー、誕生日だったんだー、いいねー」
「ええと……とりあえず、話は食事をしてからにしませんか…?」
「いいねー、すがやんの大好きなとりぃの食事風景を見ながらスタンバイするような感じねー」
「くるみ、そろそろ怒りますよ」
「いひゃい。ごめんなひゃい」
「いえ。こちらこそ強く頬をつまんでしまいすみませんでした」
「あっ、これくらいなら全然平気だし今後はもっとやってもらっても大丈夫だよ! なんか友達としての距離が近くなった感があってむしろ嬉しかったよ今の!」
「そう言ってもらえて恐縮です」
「さあ食べよう!」
「いただきまーす」
end.
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収拾がつかないフェーズ3対策3人娘のガールズトーク。
基本的にくるみがわあわあと話を回してるような感じだけど、案外ちとせもノリノリ。
(phase3)
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ファンフェス終わりから本腰を入れ始めた対策委員の会議は、今度の6月にある初心者講習会に向けて一直線! 議長のシノに機材管理担当の当麻、それから定例会との兼任で人脈や情報のあるカノンの3人を中心に会議が回ってるって感じ。
今年からは初心者講習会の講習内容も少し見直して行かないとなあという話になっていて、ラジオだけじゃなくてステージや映像っていった部分でどうしていくのかって事も話し合ってる。後は会場だとか講師は誰にお願いするかとかそういうこと。
「ちとせちゃーん、ごはんいこー」
「いいよー。北星はどうする?」
「今回はごめんね~。仕事が山積みで~。また誘って~」
「そっかー、じゃあまた今度ね」
「くるみちとせ北星って夏合宿で一緒の班になってからこんな感じなんだろ? めちゃ仲いいよな」
「ふっふーん、すごいでしょシノ!」
「まあ、すげーなとは思う」
「でも北星が積んでる仕事のいくつかはあたしのヤツだと思うとあたしだけ普通にごはん食べに行く事に対する罪悪感が」
「あ、くるちゃんがお願いしてる仕事もあるんだ。シノ君は一緒にごはんどう?」
「悪い、俺これから豊葦に戻ってバイトなんだわ。仮眠取らないと」
「あ、そうなんだ。頑張ってね」
シノは大学近くにあるガソリンスタンドと併設のコーヒーショップでバイトを始めて、無事時給の高い深夜帯のスタッフとして定着した。っていうか会議で使ってるのと同じチェーンだからちょっとした割引が利いてるとか利いてないとか。さすがの倹約術は健在だね。
「とりぃ、よかったらこれから一緒にごはんどう!?」
「ご飯ですか? いいですよ」
「やったあ! 何食べる?」
「くるみとちとせさんの間で決まっていたのであれば、私はそれに従いますよ」
「全然決まってないし、とりぃが食べたい物をこれだって出してくれればそれで即決する可能性もあるよ」
「夕飯を決める際には、その日の昼食のメニューを出し合って、それ以外の候補を出すという手法が結構使えますよ」
「頭いい! あたしパスタ食べたよ」
「あたしはサンドイッチだったよ。とりぃは?」
「私はカツ丼を食べました」
「それ以外って何だろう?」
そんなことを話しながら、何を食べようねーと歩きながら店を探すことに。ここは花栄だから何でもあるもんね。あたしとちとせちゃんが洋っぽいし、とりぃは和食だから中華かな? なんて何となくの方向性がまとまって、いざお手頃価格の中華屋さん!
「何だか、女子だけでテーブルを囲むというのが新鮮です」
「これってもしかしなくても女子会!?」
「女子会でいいと思うよ。あたしも、他の大学の子だけの女子会は初めてかも」
「そう言えば、ちとせさんは女子大ですもんね」
「向島は男子の比率の方が高いんだっけ?」
「そうですね。大学全体としても男子の方がやや多いですし、情報科学部となるとさらにその傾向が強くなりますね。サークルだともっとで。それでなくても私はあまりコミュニケーションの得意な方ではないので、こうして友人として食事に誘っていただけるということが嬉しいのです」
「とりぃの喜びがささやかでかわいい」
「ねーっ」
「あの、すみません。とてもおなかが空いているので普通に食事をしたいのですが、大丈夫ですか? ご飯を大盛りにしたりしても」
「もちろん! 何でもいくらでも食べちゃって!」
「あたしも何食べるか決めよう」
せっかくの女子会なのでみんな好きなように頼みましょう、ということであたしは久々にギョーザが食べたいっていう衝動でダブルで頼んじゃったし、ちとせちゃんは酢豚。それからとりぃがレバニラ炒めに春巻き、それから大盛りご飯と卵スープ。
「ちとせちゃんは千颯とデートのときとか、食事内容で見栄じゃないけど、セーブしてたりとかしてるの?」
「私も気になります」
「千颯とは水族館とか熱帯魚のお店とか、魚のいる場所に行くことが多くて、それに引きずられて魚が美味しそうだなーってなって魚介類を食べることが多いんだよね」
「えっ、きれいだなーって見た物を美味しそうだなーって食べるの?」
「そうだよ。だからあたし今日はお肉食べたいって思って」
「へー……えっ、鰯がぐるぐる回ってるのとか見て、イワシ美味しそう! イワシ食べに行こう! みたいな?」
「本当にそんな感じ。イカがスミ吐いたから、イカスミパスタかなーとか」
「それもなかなか面白いですね」
「面白いには面白いんだけど、たまにはお肉も食べたいよ」
千颯は水彩画が趣味で、水族館の年パスを買うくらい水の生き物や空間が好きだって話は聞いたことがあったけど、そんなところにまで影響してくるとはって感じ。あたしは魚ばっかり続いたらちょっとイヤかな。とりぃはお魚も美味しいですよねってあんまり否定的じゃないみたい。
「とりぃはすがやんとはどういう感じでごはんとか」
「それがですね……私は人一倍食事の量が多いので、大盛りメニューなどは当たり前ですし、今日のようにあれもこれもと注文するのが日常なのです」
「彼氏と一緒だといっぱい食べる子って思われたくないみたいな話も聞いたことあるけど、そういう感じではないんだね」
「はい」
「MBCCだと食べたいように食べるのが正義みたいなところがあるしね」
「そうですよね。なのでそれはいいのですが、問題は食事をする私を見る徹平くんの目なのです……」
「えっ、何が問題なの?」
「何を言っているのだと思われるかもしれませんが、徹平くんは食事の度に私に可愛い可愛いと。そんな風に言われてしまうとあまりの恥ずかしさで」
「1ノロケポイント入りまーす」
「それで食事が喉を通らなくなる的な?」
「いえ、食事はしっかり食べます。ですが食べる姿が好きだと言われてその機会を多く設けられてしまうと、体型を維持するのが難しいのです。たくさん食べないと具合が悪いのかと心配されてしまいますし」
「あ~」
「くるみ、絶対に言わないでくださいね」
どっちかと言えばすがやんが何を言ってるのって感じ。確かにとりぃは可愛いよ!? でもごはんの度にそんなこと言って困らせるのはダメだわ~。見られてるってわかってて好きなように好きな物を食べるのもなかなかね。視線の圧ってヤツだよ。
「でもとりぃは普段から運動してるし、アクティブな方だから全然大丈夫だよ! あたしを見てよ! 美味しそうなスイーツ断面動画を撮る代償がこのお肉!」
「レナが「くるみはやわらかくてもちもちしているのが可愛い」と言っていましたが」
「もちもちの度合いを越えてるの! 大学にジムが無かったら今頃パツパツのぶよぶよで見るも耐えないことに! みちるちゃんも程良い肉付きがなきゃくるみじゃないからあんまり痩せすぎないでって言うけど気になるの! ホントはとりぃみたいにシュッとしたいの!」
「くるちゃんは今のままで十分なのに」
「罠だよ! ちとせちゃんまで!」
「でもですね、くるみの頬には不思議と吸い寄せられる引力があるのです。失礼だと思ってなかなか言い出せなかったのですが、ひとつ、女子会記念ということで聞いてもらえませんか?」
「えっ、なに?」
「もし良ければ、頬をつつかせてもらえませんか?」
「あっ、そのくらいなら全然いいよ! はいどーぞ」
「では失礼します。……わあ、とても気持ちいいですね! お肌もすべすべで」
「えー、くるちゃんあたしもー」
「えっ、両サイドから!? いいけどー」
2人からほっぺたをつんつんされてるってどういう状況!? なんかこんな風にされてたら去年高崎先輩に延々とほっぺをむにむにされてたのを思い出しちゃった。もしかして高崎先輩もあたしのほっぺで遊んでたってこと!?
「くるみの頬がとても柔らかかったとレナに報告したいです!」
「えー! やめてよ恥ずかしいー!」
「とりぃってレナと仲がいいの?」
「はい。趣味が合って仲良くしています」
「すっごいね。あたしたちの学年の最強美女コンビじゃない?」
「ホントだね!」
「レナと言えば、ササ君とは順調な感じ?」
「あそこはもう安定だよ。熟練の風格を感じる」
「私もよくレナにはいろいろ相談をしますし、頼れる存在です」
「あっ! そー言えばこないだすがやんの誕生日だったけどデートとか行ってきたの!?」
「えー、誕生日だったんだー、いいねー」
「ええと……とりあえず、話は食事をしてからにしませんか…?」
「いいねー、すがやんの大好きなとりぃの食事風景を見ながらスタンバイするような感じねー」
「くるみ、そろそろ怒りますよ」
「いひゃい。ごめんなひゃい」
「いえ。こちらこそ強く頬をつまんでしまいすみませんでした」
「あっ、これくらいなら全然平気だし今後はもっとやってもらっても大丈夫だよ! なんか友達としての距離が近くなった感があってむしろ嬉しかったよ今の!」
「そう言ってもらえて恐縮です」
「さあ食べよう!」
「いただきまーす」
end.
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収拾がつかないフェーズ3対策3人娘のガールズトーク。
基本的にくるみがわあわあと話を回してるような感じだけど、案外ちとせもノリノリ。
(phase3)
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