2022
■続・文化交流の試練
++++
「くるちゃぁーんッ!」
「奈々せんぱぁーいっ! わー、向島さんも1年生がたくさん入りましたねー!」
「凄いっしょ」
「凄いです!」
「えっと、カノンと練習するんだよねッ! 邪魔しちゃ悪いし早速本題に入ってもらって」
「はーい」
ファンフェスのペア打ち合わせをしたいから向島まで乗せてって欲しいとくるみに頼まれて、久々にサークルをやっている最中のMMPサークル室にやってきた。しばらく見ないうちに本当に賑やかになったなと思う。
1年生が順調に入っているという話は春風から聞いていたし、それぞれがとても個性的だとも聞いている。春風と付き合っていることで俺も噂の人になりつつあったそうで、今日は見せ物になることも覚悟の上で。
「カノンとくるちゃんの邪魔をしない方がいいだろうし、発声練習でも行く?」
「あっ、俺たちのことにはお構いなく」
「でも実際練習は必要だから行ってくるよ。こういう感じでインターフェイスの活動や打ち合わせをすることがあるよっていうのは後で見てもらうし。せっかく来たんだし久々にすがやんもやってく?」
「そしたら、お邪魔します」
「春風先輩、スケッチブックです」
「ありがとうございます」
発声練習で使っている自販機前の植え込みも、全員が並ぶと結構みちみちで狭くなったなーと思う。そりゃあ1年生が5人もいればそうなるか。抜けてった4年生の数より多いもんな。一昨日にも1人来たとかで絶好調だなって思う。
今日はカノンが発声練習から離脱しているということで春風が前で仕切っている。昨年度末の新メンバー練習を経て、MMPの発声練習では軽い準備運動が正式に採用されたそうだ。実際声を出す前には体をほぐした方が良かったんだろう。
MMPの発声練習は五十音、長音、短音、舌の運動、早口言葉の順番にやっていく。春風が順に回って腹で声を出しているかを確認するのが様になっている。ちゃんと腹筋使ってるかを近くでチェックしてんもんな。
「それでは早口言葉に入ります。今日のお題はどれにしましょうか。案のある方はいますか? 無ければランダム選出でやりますが」
「はーいっ! せっかく今日は緑ヶ丘からすがやん先輩が来てるんで、緑ヶ丘の人がどんだけ上手いのか見せてもらうのに難しいヤツがいいと思うっす!」
「ジャック、俺たちも同じのをやるんだけど」
「ジュン、わかってねーなー。同じのをやるからどんだけ上手いのかがわかるんじゃんか」
と言うか、俺はそこまで上手いと言われるアナウンサーだった覚えはないんだけど、MMPではどういう扱いになっているのか。ウチで早口言葉が上手いっつったらやっぱエージ先輩とハナ先輩の二大巨頭。何ならササとレナも滑舌がいいし俺が一番噛み噛みまであるのに。
奏多はすげー馬鹿笑いして完全に面白がってるし、春風もせっかくですから1年生に緑ヶ丘仕込みの技術を見せてもらいましょうなんて言って味方ではない。マジで今すぐカノンをサークル室から引きずり下ろして来たい。
「打者走者勝者走者一掃とか」
「うちその早口言葉あんま好きじゃない。絶対野球知らないっしょ」
「奈々さん、早口言葉に意味なんか求めるもんじゃないんすよ」
「でもおかしくないッ!? 打者と走者まではわかるのに何でそこでいきなり勝者が出てくるのかッ!」
「どうどう。野球の話はまた今度聞きますよ」
「でもあんまり支離滅裂な言葉だと滑舌以前に覚えられなくてつっかえるのはつっかえますね」
「じゃあ無難に炙りカルビとか神アニメとかにしとく?」
「ちなみに緑ヶ丘でやる早口言葉ってどんなのがあるの?」
「ウチは早口言葉だけをやると言うよりは外郎売りを通す中でやるっていう感じなんで、大体外郎売りの中身って感じですね」
「では今日は炙りカルビと神アニメにしましょう」
そう言うと春風は手にしていたスケッチブックを開いてこちらへと向けた。そのページには炙りカルビと書いてある。カンニングペーパーを用意したのは、人が記憶を辿るときに無意識に首を傾げたりすることで声や滑舌に与える影響を少なくするためだそうだ。
いつもは並び順に右手側の人から言っていくんだけど、今日は俺の力が試されているということでお前からやれという雰囲気だ。仕方がないから腹は括るけど、これで俺がミスると「緑ヶ丘って大したことないじゃん」ってことになるのかと思うと責任重大だ。
「では徹平くん、お願いします」
「3回だよね?」
「短い言葉の場合、アナウンサーは5回です」
「そんなルールあったっけ!?」
「年度が替わってから新設されました」
「5回かー…! まあいいや、いきまーす」
「お願いします」
「炙りカルビ炙りカルビ炙りカルビ炙りカルビ炙りカルビっ! どーだ!?」
「おおー、文句なしのノーミスだな」
「さすがですね。では続けて神アニメも行きましょう。同じく5回です。どうぞ」
「間髪入れずにかー」
いつになく春風が厳しいような気がするけど、そーいやファンフェスの打ち合わせでユキ先輩が言ってたんだよな。インストラクターとしての春風は優しい雰囲気の中にも厳しさが垣間見えるって。多分今もそんな感じなんだろうな。
「いきまーす。神アニメ神アニメ神アニメ神アニメ、神アニメ! どっすか!」
「5回目の前に少しつっかえた感がありますが、MMPの基準ではノーミス判定で問題ないと思います。1抜けです。ありがとうございました」
「やったー! これで無事にMBCCに帰れるー!」
「かっすーがいたら帰らなくていいくらいのことは言いそうだな~」
「ホントにッ」
「それでは、残るMMPの皆さんも徹平くんに負けないように頑張っていきましょう。ここからは普段通り並び順で、奈々先輩からお願いします」
「はいッ!」
合格した人から植え込みのレンガから降りて向こう側から挑戦者を見守るシステムに変わりはない。今までは仕切る側だった春風は列の最後尾について、スケッチブックは俺が引き継いだ。
「炙りカルビあるびかぶり炙りかぶりッ!」
「はーい、奈々さんアウトー」
「うちこれ苦手なんだよーッ! もーッ」
「じゃ、次行きまーす。炙りカルビ炙りカルビ炙りカルビ神アニメ神アニメ神アニメ~」
「腹は立つけど出来てるのよね」
「奏多って早口言葉まで完璧なのかよ。春風、次から奏多もアナウンサーと同じ条件で良くないか?」
「いいと思います」
「――っておい! 俺はミキサーだっつーの! かっすー! 助けてくれー!」
end.
++++
野球関係できゃいきゃいしてる奈々に奏多という話し相手が出来て良かったねえ
インストラクター春風のシャンとしてる感じはユキちゃん相手でも今後チラチラやりたい。徐々にスパルタになると良い
エイハナは大学に入る前からそれぞれの部活で発声や早口言葉などの練習をしてたのでめちゃくちゃ上手い。という設定。
(phase3)
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「くるちゃぁーんッ!」
「奈々せんぱぁーいっ! わー、向島さんも1年生がたくさん入りましたねー!」
「凄いっしょ」
「凄いです!」
「えっと、カノンと練習するんだよねッ! 邪魔しちゃ悪いし早速本題に入ってもらって」
「はーい」
ファンフェスのペア打ち合わせをしたいから向島まで乗せてって欲しいとくるみに頼まれて、久々にサークルをやっている最中のMMPサークル室にやってきた。しばらく見ないうちに本当に賑やかになったなと思う。
1年生が順調に入っているという話は春風から聞いていたし、それぞれがとても個性的だとも聞いている。春風と付き合っていることで俺も噂の人になりつつあったそうで、今日は見せ物になることも覚悟の上で。
「カノンとくるちゃんの邪魔をしない方がいいだろうし、発声練習でも行く?」
「あっ、俺たちのことにはお構いなく」
「でも実際練習は必要だから行ってくるよ。こういう感じでインターフェイスの活動や打ち合わせをすることがあるよっていうのは後で見てもらうし。せっかく来たんだし久々にすがやんもやってく?」
「そしたら、お邪魔します」
「春風先輩、スケッチブックです」
「ありがとうございます」
発声練習で使っている自販機前の植え込みも、全員が並ぶと結構みちみちで狭くなったなーと思う。そりゃあ1年生が5人もいればそうなるか。抜けてった4年生の数より多いもんな。一昨日にも1人来たとかで絶好調だなって思う。
今日はカノンが発声練習から離脱しているということで春風が前で仕切っている。昨年度末の新メンバー練習を経て、MMPの発声練習では軽い準備運動が正式に採用されたそうだ。実際声を出す前には体をほぐした方が良かったんだろう。
MMPの発声練習は五十音、長音、短音、舌の運動、早口言葉の順番にやっていく。春風が順に回って腹で声を出しているかを確認するのが様になっている。ちゃんと腹筋使ってるかを近くでチェックしてんもんな。
「それでは早口言葉に入ります。今日のお題はどれにしましょうか。案のある方はいますか? 無ければランダム選出でやりますが」
「はーいっ! せっかく今日は緑ヶ丘からすがやん先輩が来てるんで、緑ヶ丘の人がどんだけ上手いのか見せてもらうのに難しいヤツがいいと思うっす!」
「ジャック、俺たちも同じのをやるんだけど」
「ジュン、わかってねーなー。同じのをやるからどんだけ上手いのかがわかるんじゃんか」
と言うか、俺はそこまで上手いと言われるアナウンサーだった覚えはないんだけど、MMPではどういう扱いになっているのか。ウチで早口言葉が上手いっつったらやっぱエージ先輩とハナ先輩の二大巨頭。何ならササとレナも滑舌がいいし俺が一番噛み噛みまであるのに。
奏多はすげー馬鹿笑いして完全に面白がってるし、春風もせっかくですから1年生に緑ヶ丘仕込みの技術を見せてもらいましょうなんて言って味方ではない。マジで今すぐカノンをサークル室から引きずり下ろして来たい。
「打者走者勝者走者一掃とか」
「うちその早口言葉あんま好きじゃない。絶対野球知らないっしょ」
「奈々さん、早口言葉に意味なんか求めるもんじゃないんすよ」
「でもおかしくないッ!? 打者と走者まではわかるのに何でそこでいきなり勝者が出てくるのかッ!」
「どうどう。野球の話はまた今度聞きますよ」
「でもあんまり支離滅裂な言葉だと滑舌以前に覚えられなくてつっかえるのはつっかえますね」
「じゃあ無難に炙りカルビとか神アニメとかにしとく?」
「ちなみに緑ヶ丘でやる早口言葉ってどんなのがあるの?」
「ウチは早口言葉だけをやると言うよりは外郎売りを通す中でやるっていう感じなんで、大体外郎売りの中身って感じですね」
「では今日は炙りカルビと神アニメにしましょう」
そう言うと春風は手にしていたスケッチブックを開いてこちらへと向けた。そのページには炙りカルビと書いてある。カンニングペーパーを用意したのは、人が記憶を辿るときに無意識に首を傾げたりすることで声や滑舌に与える影響を少なくするためだそうだ。
いつもは並び順に右手側の人から言っていくんだけど、今日は俺の力が試されているということでお前からやれという雰囲気だ。仕方がないから腹は括るけど、これで俺がミスると「緑ヶ丘って大したことないじゃん」ってことになるのかと思うと責任重大だ。
「では徹平くん、お願いします」
「3回だよね?」
「短い言葉の場合、アナウンサーは5回です」
「そんなルールあったっけ!?」
「年度が替わってから新設されました」
「5回かー…! まあいいや、いきまーす」
「お願いします」
「炙りカルビ炙りカルビ炙りカルビ炙りカルビ炙りカルビっ! どーだ!?」
「おおー、文句なしのノーミスだな」
「さすがですね。では続けて神アニメも行きましょう。同じく5回です。どうぞ」
「間髪入れずにかー」
いつになく春風が厳しいような気がするけど、そーいやファンフェスの打ち合わせでユキ先輩が言ってたんだよな。インストラクターとしての春風は優しい雰囲気の中にも厳しさが垣間見えるって。多分今もそんな感じなんだろうな。
「いきまーす。神アニメ神アニメ神アニメ神アニメ、神アニメ! どっすか!」
「5回目の前に少しつっかえた感がありますが、MMPの基準ではノーミス判定で問題ないと思います。1抜けです。ありがとうございました」
「やったー! これで無事にMBCCに帰れるー!」
「かっすーがいたら帰らなくていいくらいのことは言いそうだな~」
「ホントにッ」
「それでは、残るMMPの皆さんも徹平くんに負けないように頑張っていきましょう。ここからは普段通り並び順で、奈々先輩からお願いします」
「はいッ!」
合格した人から植え込みのレンガから降りて向こう側から挑戦者を見守るシステムに変わりはない。今までは仕切る側だった春風は列の最後尾について、スケッチブックは俺が引き継いだ。
「炙りカルビあるびかぶり炙りかぶりッ!」
「はーい、奈々さんアウトー」
「うちこれ苦手なんだよーッ! もーッ」
「じゃ、次行きまーす。炙りカルビ炙りカルビ炙りカルビ神アニメ神アニメ神アニメ~」
「腹は立つけど出来てるのよね」
「奏多って早口言葉まで完璧なのかよ。春風、次から奏多もアナウンサーと同じ条件で良くないか?」
「いいと思います」
「――っておい! 俺はミキサーだっつーの! かっすー! 助けてくれー!」
end.
++++
野球関係できゃいきゃいしてる奈々に奏多という話し相手が出来て良かったねえ
インストラクター春風のシャンとしてる感じはユキちゃん相手でも今後チラチラやりたい。徐々にスパルタになると良い
エイハナは大学に入る前からそれぞれの部活で発声や早口言葉などの練習をしてたのでめちゃくちゃ上手い。という設定。
(phase3)
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