2022

■心躍るアクティビティ

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「お待たせしました」
「それじゃあ行こうか。保冷バッグとかある?」
「はい。バッチリです」

 明日は工場の敷地でバーベキューをやることになっていて、そのための買い物に徹平くんと出掛けることになりました。工場の従業員さんや友達などに声をかけて賑やかにやりましょうという話になっていたのです。
 結構な人数が集まることになったので、買い物の規模もまあまあ大きくなりそうです。食材はまとめ買いをした方がいいので、今日はまず倉庫型の店へと出向いてお肉などをドンと買うという計画です。

「何をどれくらい買ってきてみたいな指示はあった?」
「とりあえず、お肉はどれだけあっても足りなくなるので際限なく買っていいという風には聞いています」
「際限なくってどれくらい際限ないんだろう。果林先輩何人分だと考えるのがいいのかな」
「さすがに私も兄さんも満腹感は覚えるので、無限でなくてもいいとは思います。ですが私も兄さんも一般の平均以上に食べるので、お肉はどれだけあってもいいですね。そのように予算も預かっているのでお肉に遠慮は要りません」
「肉以外の食材については何か聞いた? シーフードとか野菜とか。ウインナーに焼きそばに、いろいろ考えられるけど」
「それらに関しては一般的な量で問題ないそうです」

 鳥居家の感覚ではお肉に比重が偏るのですが、さすがに家族以外の人も招いてのバーベキューですから、一般的な食材も程良く用意した方がいいだろうという話にはなっていました。それに、ある物は何でも食べられますしね。

「あの、徹平くん。私はこのお店にはあまり来たことがないので、一通り見てみたいのですが大丈夫ですか?」
「何時までに帰って来いって言われてないならいいと思うよ」
「特にそんな風には言われていませんね」
「じゃあゆっくり見てこうか」
「ありがとうございます」

 テレビなどで見て一度来てみたかったのですが、会員になるにもお金がかかりますし、私はまだ車も持っていないので買い物をするのもあまり現実的でないなと思っていたのです。
 陳列もよく行く量販店と比べてスケールが大きいなという印象があります。それから、お菓子などの袋もそれこそ大人買いと言うのに相応しい大きさです。これにはお肉にも期待がかかります。

「徹平くん、チョコレートを買うんですか?」
「ああ、これは俺の買い物だから別会計で。母さんからコヌトコ行くならハイカカオチョコとロイヤルミルクティー買ってきてって頼まれてるんだよ」
「おつかいもあったのですね」
「こういうトコって平日昼の方が人も少ないじゃん。だから大学生で比較的柔軟に動ける俺がサッと行って必要な買い物だけするのが効率がいいんだよ」
「確かに、そう言われればそうですね。それでは徹平くんは歩き慣れているのですね」
「逆にゆっくり見て回ることはあんまりないんだけどね。だから生鮮食品とか冷凍食品の方はあんまりよく知らなくて、この間シノの買い物で来た時にちょっと見たくらい」

 私も少し摘む用に大きなボトルに入ったミックスナッツを買うことにしました。それはバーベキューとは別の自分の買い物なので徹平くんの会計とまとめてもらうことにして、精算はまた後ほどゆっくりしましょうということでまとまりました。
 そうこう見ている間にお肉や魚のコーナーに差し掛かってきました。とりあえず、お肉は際限なく買っていいということなので私の直感でこれというお肉をぽいぽいとカートの中に入れていきます。

「結構入れるじゃん」
「ですがうちの家族と従業員さんと、それぞれが声をかけた人を含めると軽く15人くらいにはなるので相応の準備は必要です」
「あ、そんなに来るんだ? じゃあ必要だなあ」
「1人1キロ計算でいいですかね? そのくらいなら皆さんぺろりと食べてしまうと思うのですが」
「レナにも声かかってんだろ? さすがにレナとサキは1キロも肉食わないと思うんだよ。あとうちの母さんも」
「……。そっ、そうですよね! あと、奏多も胃袋が軟弱なのでそんなに食べませんでした」
「奏多が今の聞いてたら絶対お前が食い過ぎなんだろって言うヤツだよな」
「あの、徹平くんは私が思うように食べることをどう思いますか?」
「すごくいいと思う。何なら食べてるところがすっごい可愛いし。肩肘張ってない感が、素なんだなーと思って。ずっと見てたい」
「えーと、改めて言われると少し恥ずかしいですね」

 厳密には少しでなくかなり恥ずかしいのですが。冷蔵や冷凍の製品が並ぶ場所で良かったと思います。室温がやや低いくらいの方が頬の熱を冷ますにはいいですからね。とりあえず、冷凍のエビやイカなどもカゴに入れます。

「あの、バーベキューからは少し話が変わるのですが、今度の15日の予定を教えて欲しいのです」
「15日? ファンフェスの次の日だよなー」
「そうです。日曜日ですね」
「今のところ何の予定もないよ。会う?」
「あのですね、釣りを教えて欲しいのです」
「釣り?」
「はい。徹平くんがたまに行っているという川釣りに行きたいのです」
「いいね、行こうか」
「ありがとうございます!」
「でも、急に釣りなんてどうした?」
「自然の中でのアクティビティにはちょうどいい季節ですし、興味があったので体験してみたいなと思い」
「そうだよなー。暑すぎず、梅雨でもなくちょうどいいもんなー。じゃあ、準備しとくわ。そう、釣った魚をその場で処理して焼いて食べるのが最高に美味しいんだよ。きっと春風は好きだと思うし、釣り自体も楽しいよ」

 俺も人に教えられるように復習しとかないとなーと徹平くんは軽く素振りをしています。何より、無事に約束を取り付けられて良かったです。誕生日のお祝いが本題であるということはまだ伏せつつ、その日までのカレンダーを1日ずつ数える度に心が躍るのをどう悟られないようにするかですね。

「そっか、春風は天体観測で外のアクティビティには慣れてるんだ」
「とは言え、お昼の活動はあまり経験がないのですが。今度のバーベキューも目が痛くならないかが心配で」
「え、そのレベル?」


end.


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果林何人分?に対して無限でなくてよいと言う春風が個人的に◎
夜更かしの翌日は特に昼の強い日差しが目にしんどいらしい春風。サングラスとか持ってるのかしら
軟弱扱いされた奏多の食べる量は実際どれくらいなのか。体は大きいけどその割にはって感じ? でも一般くらいは食べそうよね

(phase3)

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