2022
■深夜のオンライン会議
++++
「ふーっ、GG」
『GG』
『グッドゲームでした』
最近では趣味のゲームをレナだけじゃなくて向島の春風とも一緒にやる機会が増えている。春風と言えばすがやんの彼女だけど、レナと物凄く仲が良いという印象の方がもしかしたら強いかもしれない。
レナはともかく春風は結構な優等生だという話だから夜更かしなんか出来ない人かと思ったら、案外夜遅くまでの活動も苦じゃないらしい。何故かと聞けば、天体観測は夜がメインだからと。それなら夜行性なのも納得だ。
『サキ、連休中の予定は?』
「ファンフェスの打ち合わせとバイトくらいしかないよ。ああ、あと春風の家のバーベキューだね」
『誰と一緒の班だっけ』
「星ヶ丘のマリン先輩が班長で、ペアを組むのは青敬の雨竜。あと、星大のわかちゃんがいる」
『雨竜とサキが一緒にやってるイメージが全然つかない』
「実際ウルサイけど音の感覚は悪くないし、何よりちゃんと番組とは向き合ってるからやれるよ」
『ああ、サキは去年の夏が大変だったもんね』
『サキさんはインターフェイスの中で苦労をされた経験があるのですか? 良ければ私も粗相をしないように聞いておきたいのですが』
もしかしたら向島で何か聞いていたのかもしれないね。去年の夏合宿であったことを掻い摘んで説明すると、腑に落ちたような声でカノンが時折見せる険しい表情について話してくれた。
すがやんによればカノンは熱くて真っ直ぐな人間だから、ああいう人のことは本当に許せないそうだ。エマによれば、あの人のことを思い出したくもないから会話に上げるのもNGだとインターフェイスの飲み会で言っていたとも。
『そんなことがあったのですね……。希くんはその話になると決まって鳥ちゃんは知らなくていいんだよと話題を変えてしまうので、ここで聞けて良かったです。サキさん、話してくれてありがとうございました』
「カノンの前であの人のことを話すのは本当にNGだから、それだけは気を付けてね」
『わかりました』
「まあ、そういうことがあったんで、ちょっとウルサクて落ち着きがないくらいなら全然大丈夫」
『さすサキ』
「春風は誰と同じ班だっけ」
『私は桜貝のミソラ先輩と高木先輩の3人班なのです』
「ああ、そうだった。結構異色の番組になりそうだけど、どんな感じ?」
『私はあまり長い番組を作った経験がないので、異色の番組が異色であるということがわからないのです。高木先輩はその方が都合がいいと言っていました』
『高木先輩は基本の構成崩しに定評のあるミキサーだからね』
『そうなのですね』
「すがやんの話では、春風は野坂先輩の影響が強いんでしょ。だったら尚更今のうちに柔軟な番組作りを経験しておけばいいかもね」
ファンフェスの話としては、レナは奈々先輩と星大の千颯の3人班とのこと。自分とササのことや、青女のちとせと付き合っている千颯に恋バナをとにかく振って来る奈々先輩が可愛らしいそうだ。
『恋バナで思い出したけど春風、もうすぐすがやんの誕生日だよね』
『えっ、そうなのですか!? 誕生日の話をまだしていなかったのです…! え、もうすぐってどれくらいすぐですか!?』
『えっと、5月だとは知ってるけど。サキ、知ってる?』
「16日だね」
『ありがとうございます! 16日ですね。はい、しっかりメモしました』
『ちなみに、デートの予定は?』
『誕生日を聞いたのも今ですよ?』
『向こうからそれとなく』
「レナ、すがやんが自分の誕生日をアピールするタイプに見える?」
『ううん、全然。サキ、春風を邪魔しない程度に私たちもいつものヤツ、考えようか』
「そうだね。予算はいつも通り1人500円だね」
『緑ヶ丘の皆さんは誕生日のお祝いをする習慣があるのですか?』
『サキとくるみとすがやんの3人が陸の誕生日を祝ったのがきっかけでね。それからみんな順番に1人500円くらいの予算でお祝いを用意してて』
『そうなのですね。そうですね……贈り物もあるといいですよね。レナはササさんに贈り物をした経験もありますよね? どんなものがいいなど、ありますか?』
『私は陸の大体の趣味がわかってるからこれっていう物をピンポイントであげてるけど、すがやんは多趣味だから狙い撃つのは難しいと思うよ』
『そうなんですよね……まだまだ徹平くんの好きな物や事が把握しきれていないのです』
『サキなら何か知ってるんじゃない?』
「さすがにすがやんの欲しいものまでは知らないけど、すがやんがモノよりコトの方を重視する人だってことは知ってる」
どういうこと? と2人の声が揃ったので、前にくるみとすがやんと3人で話したことを掻い摘んで説明する。あれはクリスマスプレゼントに何をもらっていたかという話をしていたときのこと。すがやんはプレゼントを物ではなく、次にいついつどこどこである企画展に連れて行ってくれとか、こういう場所に遊びに行きたいと頼んでいたそうだという話をする。
『エジプト展に連れてってとかスキーに連れてってとか、子供の頃からすがやんのまんまだね』
『本当ですね。そう言えば菅谷先生も昔から息子さんのクリスマスプレゼントの名目で家族旅行をしていたと仰っていました』
『彼氏の母親が恩師っていう字面の力が相変わらず強いんだわ』
「それにすがやんは自分の趣味の持ち物はまあまあこだわるからね。にわか仕込みの知識で適当な物をあげるよりは、一緒に釣りに行くとか工芸体験をするとか、そういう方が好きな人ではあるとは」
『ぽい! さすサキ。そう言えばすがやんの釣りって釣った魚をその場で焼いて食べれる人工漁場みたいなところでやってるんだよね?』
「そうだね。釣り堀とかじゃなくて、自然の川に少し人の手を入れた漁場だって」
『自分で釣ったお魚をその場で焼いて食べられるんですか!? すごく興味があるのですが!』
「そしたら、すがやんに釣りに連れてってって頼んでみたら?」
『それで日付を誕生日近くに設定すれば完璧だね。平日はさすがに授業があるから厳しいでしょ』
『サキさんとレナには足を向けて寝られません! 本当にありがとうございます! 今日はもう遅いので、明日にでも聞いてみようと思います』
今日はもう遅いとは言いつつも、まだまだ寝るようなテンションじゃない俺たちだ。興奮冷めやらぬ中、勢いで始めるもう1ゲーム。
『春風のAIMが冴え渡ってる』
「ホントに」
『興奮しているはずなのですが、不思議と冷静に照準を合わせられるのです』
end.
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すがやんの知らないところでこんな風に話しているゲーマー3人衆。
MBCCのお祝いに関してはあと3人にもそのうち話があるんだろうなあ。みんな何をあげるかすごく悩みそう
(phase3)
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「ふーっ、GG」
『GG』
『グッドゲームでした』
最近では趣味のゲームをレナだけじゃなくて向島の春風とも一緒にやる機会が増えている。春風と言えばすがやんの彼女だけど、レナと物凄く仲が良いという印象の方がもしかしたら強いかもしれない。
レナはともかく春風は結構な優等生だという話だから夜更かしなんか出来ない人かと思ったら、案外夜遅くまでの活動も苦じゃないらしい。何故かと聞けば、天体観測は夜がメインだからと。それなら夜行性なのも納得だ。
『サキ、連休中の予定は?』
「ファンフェスの打ち合わせとバイトくらいしかないよ。ああ、あと春風の家のバーベキューだね」
『誰と一緒の班だっけ』
「星ヶ丘のマリン先輩が班長で、ペアを組むのは青敬の雨竜。あと、星大のわかちゃんがいる」
『雨竜とサキが一緒にやってるイメージが全然つかない』
「実際ウルサイけど音の感覚は悪くないし、何よりちゃんと番組とは向き合ってるからやれるよ」
『ああ、サキは去年の夏が大変だったもんね』
『サキさんはインターフェイスの中で苦労をされた経験があるのですか? 良ければ私も粗相をしないように聞いておきたいのですが』
もしかしたら向島で何か聞いていたのかもしれないね。去年の夏合宿であったことを掻い摘んで説明すると、腑に落ちたような声でカノンが時折見せる険しい表情について話してくれた。
すがやんによればカノンは熱くて真っ直ぐな人間だから、ああいう人のことは本当に許せないそうだ。エマによれば、あの人のことを思い出したくもないから会話に上げるのもNGだとインターフェイスの飲み会で言っていたとも。
『そんなことがあったのですね……。希くんはその話になると決まって鳥ちゃんは知らなくていいんだよと話題を変えてしまうので、ここで聞けて良かったです。サキさん、話してくれてありがとうございました』
「カノンの前であの人のことを話すのは本当にNGだから、それだけは気を付けてね」
『わかりました』
「まあ、そういうことがあったんで、ちょっとウルサクて落ち着きがないくらいなら全然大丈夫」
『さすサキ』
「春風は誰と同じ班だっけ」
『私は桜貝のミソラ先輩と高木先輩の3人班なのです』
「ああ、そうだった。結構異色の番組になりそうだけど、どんな感じ?」
『私はあまり長い番組を作った経験がないので、異色の番組が異色であるということがわからないのです。高木先輩はその方が都合がいいと言っていました』
『高木先輩は基本の構成崩しに定評のあるミキサーだからね』
『そうなのですね』
「すがやんの話では、春風は野坂先輩の影響が強いんでしょ。だったら尚更今のうちに柔軟な番組作りを経験しておけばいいかもね」
ファンフェスの話としては、レナは奈々先輩と星大の千颯の3人班とのこと。自分とササのことや、青女のちとせと付き合っている千颯に恋バナをとにかく振って来る奈々先輩が可愛らしいそうだ。
『恋バナで思い出したけど春風、もうすぐすがやんの誕生日だよね』
『えっ、そうなのですか!? 誕生日の話をまだしていなかったのです…! え、もうすぐってどれくらいすぐですか!?』
『えっと、5月だとは知ってるけど。サキ、知ってる?』
「16日だね」
『ありがとうございます! 16日ですね。はい、しっかりメモしました』
『ちなみに、デートの予定は?』
『誕生日を聞いたのも今ですよ?』
『向こうからそれとなく』
「レナ、すがやんが自分の誕生日をアピールするタイプに見える?」
『ううん、全然。サキ、春風を邪魔しない程度に私たちもいつものヤツ、考えようか』
「そうだね。予算はいつも通り1人500円だね」
『緑ヶ丘の皆さんは誕生日のお祝いをする習慣があるのですか?』
『サキとくるみとすがやんの3人が陸の誕生日を祝ったのがきっかけでね。それからみんな順番に1人500円くらいの予算でお祝いを用意してて』
『そうなのですね。そうですね……贈り物もあるといいですよね。レナはササさんに贈り物をした経験もありますよね? どんなものがいいなど、ありますか?』
『私は陸の大体の趣味がわかってるからこれっていう物をピンポイントであげてるけど、すがやんは多趣味だから狙い撃つのは難しいと思うよ』
『そうなんですよね……まだまだ徹平くんの好きな物や事が把握しきれていないのです』
『サキなら何か知ってるんじゃない?』
「さすがにすがやんの欲しいものまでは知らないけど、すがやんがモノよりコトの方を重視する人だってことは知ってる」
どういうこと? と2人の声が揃ったので、前にくるみとすがやんと3人で話したことを掻い摘んで説明する。あれはクリスマスプレゼントに何をもらっていたかという話をしていたときのこと。すがやんはプレゼントを物ではなく、次にいついつどこどこである企画展に連れて行ってくれとか、こういう場所に遊びに行きたいと頼んでいたそうだという話をする。
『エジプト展に連れてってとかスキーに連れてってとか、子供の頃からすがやんのまんまだね』
『本当ですね。そう言えば菅谷先生も昔から息子さんのクリスマスプレゼントの名目で家族旅行をしていたと仰っていました』
『彼氏の母親が恩師っていう字面の力が相変わらず強いんだわ』
「それにすがやんは自分の趣味の持ち物はまあまあこだわるからね。にわか仕込みの知識で適当な物をあげるよりは、一緒に釣りに行くとか工芸体験をするとか、そういう方が好きな人ではあるとは」
『ぽい! さすサキ。そう言えばすがやんの釣りって釣った魚をその場で焼いて食べれる人工漁場みたいなところでやってるんだよね?』
「そうだね。釣り堀とかじゃなくて、自然の川に少し人の手を入れた漁場だって」
『自分で釣ったお魚をその場で焼いて食べられるんですか!? すごく興味があるのですが!』
「そしたら、すがやんに釣りに連れてってって頼んでみたら?」
『それで日付を誕生日近くに設定すれば完璧だね。平日はさすがに授業があるから厳しいでしょ』
『サキさんとレナには足を向けて寝られません! 本当にありがとうございます! 今日はもう遅いので、明日にでも聞いてみようと思います』
今日はもう遅いとは言いつつも、まだまだ寝るようなテンションじゃない俺たちだ。興奮冷めやらぬ中、勢いで始めるもう1ゲーム。
『春風のAIMが冴え渡ってる』
「ホントに」
『興奮しているはずなのですが、不思議と冷静に照準を合わせられるのです』
end.
++++
すがやんの知らないところでこんな風に話しているゲーマー3人衆。
MBCCのお祝いに関してはあと3人にもそのうち話があるんだろうなあ。みんな何をあげるかすごく悩みそう
(phase3)
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