2022
■How well can you cook?
++++
「ジャックってこの辺で1人暮らしなんだよな」
「そうっすね。駅の方とは反対側なんすけど、周りは静かだし、結構築年数新しめのアパートなんすよ」
「出身って青尋だっけ? あの辺何が有名とかあんま知らないけど」
「そうっすね。有名な物だったら崖とか眼鏡とかっすかね」
奏多がさすがだなーって思うのは、持ち前のコミュニケーション能力で今いる1年4人とある程度会話が成り立っているところだなと思う。俺なんかはまだもうちょっと誰とどんな風に話せばいいのかっていうのを見てる段階だ。でもジャックなんかは松兄松兄ってすっごい懐いてる感があるし、他のメンバーにしても他の上級生より話しやすそうにしてて、さすがの兄貴分だ。
ジャックは地方出身者で、1人暮らしをしている。MMPで1人暮らしをしている人はこの間卒業していった先輩たち以来になるそうだから、結構珍しいなっていうのが率直な感想だ。大学祭シーズンには否応なく拠点にされると思うけど、それはまだ黙っておく。ちなみに、足は小さめの普通乗用車だ。
「1人暮らしだったら自炊とか大変じゃね?」
「まだ慣れないっすねー。でも今ってコンビニとかでもレンチンで十分美味いの食えますし、毎日無理して頑張らなくていいっていうのがマジで救いっす。松兄は料理とかするんすか?」
「ある程度は出来るぜ」
「マジすか! さすがっすね!」
「えっ、奏多お前料理出来んの?」
「病院出て自宅療養してるときとか、浪人中に食うモンは大体自分で作ってたからな」
「はえー。料理まで出来るとかマジモンの完璧超人じゃねーか」
「松兄料理教えてくださいよ! 今度今いる同期のメンバーがうちに遊びに来るって言ってて、その時にスッと料理を振る舞えたらかっこいーじゃないすか!」
「任せとけよ。急には上手くならないけど、これっていう一品は作れるようにしてやる」
「やったー! 兄貴一生ついてくっす!」
この光景を鳥ちゃんが見てたら間違いなく奏多に雷が落ちてただろうし、ジャックが奏多の舎弟みたいになってる光景に軽い絶望感すら抱いていたかもしれない。奏多が何でも出来るのは本当だけど、奏多をシメることが出来る鳥ちゃんの存在がMMPの空気全体を締めることになるっていうのはこないだ殿が言ってた通りだなってマジで思う。
「皆さんおはようございます」
「おはようございます」
「おっ、殿とパロは今日もセットか」
「殿とは学科が同じですから、似た動き方になるんです」
「ジャック、野菜に需要はないか」
「野菜?」
そう言って殿が持っていた袋を机の上に置く。口からチラッと覗き見えるのは、何だか緑色をした物だ。
「これは俺のバイト先で採れた野菜だ。必要であれば、貰ってくれ」
「えっ、マジで? いいの?」
「製品にするには規格外だが、普通に食える物だ」
「すげー、いろいろ入ってるじゃん。サンキュー、ありがたく食わしてもらうわー」
「え、バイト先で野菜が採れるって、殿って畑とかでバイトしてんの?」
「畑やハウスで収穫や積荷、梱包の仕事を」
殿が持って来た袋の中にはキャベツやブロッコリー、ナスにイチゴまでいろいろな野菜が入っている。1人暮らしには嬉しい差し入れになったんじゃないかと思う。季節が進んでいくとまた採れる野菜が違うそうだ。殿は畑でバイトをしているし、パロは観葉植物店でバイトをしているから、植物繋がりで仲良くなったっぽい。
でも、殿っつったらとにかくガタイがタテにもヨコにもすげーデカいんだよな。身長は194だっていうし(180以上ある奏多ですら見上げてるとか相当だ)、メチャクチャがっちりしてるから絶対体育会系かと思いきや高校の時は園芸部だったとか。鳥ちゃんや奈々先輩は心が優しいんだねって言って凄い好感触だし。でも農学部とかではないんだなっていうのが意外だ。
「よーし、そしたら殿からもらった野菜で料理の練習をするぜー!」
「ジャック、すごいやる気だね」
「松兄が料理を教えてくれることになったんだよ」
「奏多先輩も料理が好きなんですか?」
「おっ、同意を求めて来るっつーことはパロ、お前もそこそこやり手だな?」
「僕は上手いかどうかは措いといて、料理が好きなんです」
「何系が得意とかある?」
「そうですねえ……僕は調味料や香辛料が好きで、いろいろ試したりします」
「あー、テレビでもいろいろ見るもんな、世界の調味料とか」
「国内にも美味しいご当地調味料はいろいろありますよ。殿とは料理の話もよくするんですけど、僕の課題は調味料で素材の味をいかに引き立てるかということで」
「殿、お前料理もすんのか」
「料理は、好きです」
「つかMMP料理出来る奴多すぎじゃね!? 出来ないのって俺くらいなんじゃねーの? 奈々先輩はもちろん出来る側だし」
「カノン先輩、ジュンに賭けましょう」
「安心しろかっすー、春風が自分で料理するなんて話聞いたことねーから」
結局1年生たちはジャックの家に遊びに行ったときにみんなで料理をする計画を立て始めたし、そういうパーティーめいた行事が行われるのが単純に羨ましさしかない。緑ヶ丘もシノの部屋に遊びに行けるようになってるらしいから。
「おはようございます」
「あっジュン来た! なあジュン、お前料理出来る!?」
「え、料理、ですか? ええと……あまりやったことはないですが」
「っしゃあ! 同士よ!」
「カノン先輩?」
「かっすー、ジュンはあんまやったことはないってだけで、出来ないとは一言も言ってねーぞ」
「奏多お前ー! 鳥ちゃぁーん! 助けてくれー!」
end.
++++
奏多は基本的に完璧超人であってほしいので、料理もある程度は出来ると楽しい
そう言えば春風の料理スキルってどんな感じなんだろう。でも特別上手と言うよりは最低限っていう感じかな?
(phase3)
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「ジャックってこの辺で1人暮らしなんだよな」
「そうっすね。駅の方とは反対側なんすけど、周りは静かだし、結構築年数新しめのアパートなんすよ」
「出身って青尋だっけ? あの辺何が有名とかあんま知らないけど」
「そうっすね。有名な物だったら崖とか眼鏡とかっすかね」
奏多がさすがだなーって思うのは、持ち前のコミュニケーション能力で今いる1年4人とある程度会話が成り立っているところだなと思う。俺なんかはまだもうちょっと誰とどんな風に話せばいいのかっていうのを見てる段階だ。でもジャックなんかは松兄松兄ってすっごい懐いてる感があるし、他のメンバーにしても他の上級生より話しやすそうにしてて、さすがの兄貴分だ。
ジャックは地方出身者で、1人暮らしをしている。MMPで1人暮らしをしている人はこの間卒業していった先輩たち以来になるそうだから、結構珍しいなっていうのが率直な感想だ。大学祭シーズンには否応なく拠点にされると思うけど、それはまだ黙っておく。ちなみに、足は小さめの普通乗用車だ。
「1人暮らしだったら自炊とか大変じゃね?」
「まだ慣れないっすねー。でも今ってコンビニとかでもレンチンで十分美味いの食えますし、毎日無理して頑張らなくていいっていうのがマジで救いっす。松兄は料理とかするんすか?」
「ある程度は出来るぜ」
「マジすか! さすがっすね!」
「えっ、奏多お前料理出来んの?」
「病院出て自宅療養してるときとか、浪人中に食うモンは大体自分で作ってたからな」
「はえー。料理まで出来るとかマジモンの完璧超人じゃねーか」
「松兄料理教えてくださいよ! 今度今いる同期のメンバーがうちに遊びに来るって言ってて、その時にスッと料理を振る舞えたらかっこいーじゃないすか!」
「任せとけよ。急には上手くならないけど、これっていう一品は作れるようにしてやる」
「やったー! 兄貴一生ついてくっす!」
この光景を鳥ちゃんが見てたら間違いなく奏多に雷が落ちてただろうし、ジャックが奏多の舎弟みたいになってる光景に軽い絶望感すら抱いていたかもしれない。奏多が何でも出来るのは本当だけど、奏多をシメることが出来る鳥ちゃんの存在がMMPの空気全体を締めることになるっていうのはこないだ殿が言ってた通りだなってマジで思う。
「皆さんおはようございます」
「おはようございます」
「おっ、殿とパロは今日もセットか」
「殿とは学科が同じですから、似た動き方になるんです」
「ジャック、野菜に需要はないか」
「野菜?」
そう言って殿が持っていた袋を机の上に置く。口からチラッと覗き見えるのは、何だか緑色をした物だ。
「これは俺のバイト先で採れた野菜だ。必要であれば、貰ってくれ」
「えっ、マジで? いいの?」
「製品にするには規格外だが、普通に食える物だ」
「すげー、いろいろ入ってるじゃん。サンキュー、ありがたく食わしてもらうわー」
「え、バイト先で野菜が採れるって、殿って畑とかでバイトしてんの?」
「畑やハウスで収穫や積荷、梱包の仕事を」
殿が持って来た袋の中にはキャベツやブロッコリー、ナスにイチゴまでいろいろな野菜が入っている。1人暮らしには嬉しい差し入れになったんじゃないかと思う。季節が進んでいくとまた採れる野菜が違うそうだ。殿は畑でバイトをしているし、パロは観葉植物店でバイトをしているから、植物繋がりで仲良くなったっぽい。
でも、殿っつったらとにかくガタイがタテにもヨコにもすげーデカいんだよな。身長は194だっていうし(180以上ある奏多ですら見上げてるとか相当だ)、メチャクチャがっちりしてるから絶対体育会系かと思いきや高校の時は園芸部だったとか。鳥ちゃんや奈々先輩は心が優しいんだねって言って凄い好感触だし。でも農学部とかではないんだなっていうのが意外だ。
「よーし、そしたら殿からもらった野菜で料理の練習をするぜー!」
「ジャック、すごいやる気だね」
「松兄が料理を教えてくれることになったんだよ」
「奏多先輩も料理が好きなんですか?」
「おっ、同意を求めて来るっつーことはパロ、お前もそこそこやり手だな?」
「僕は上手いかどうかは措いといて、料理が好きなんです」
「何系が得意とかある?」
「そうですねえ……僕は調味料や香辛料が好きで、いろいろ試したりします」
「あー、テレビでもいろいろ見るもんな、世界の調味料とか」
「国内にも美味しいご当地調味料はいろいろありますよ。殿とは料理の話もよくするんですけど、僕の課題は調味料で素材の味をいかに引き立てるかということで」
「殿、お前料理もすんのか」
「料理は、好きです」
「つかMMP料理出来る奴多すぎじゃね!? 出来ないのって俺くらいなんじゃねーの? 奈々先輩はもちろん出来る側だし」
「カノン先輩、ジュンに賭けましょう」
「安心しろかっすー、春風が自分で料理するなんて話聞いたことねーから」
結局1年生たちはジャックの家に遊びに行ったときにみんなで料理をする計画を立て始めたし、そういうパーティーめいた行事が行われるのが単純に羨ましさしかない。緑ヶ丘もシノの部屋に遊びに行けるようになってるらしいから。
「おはようございます」
「あっジュン来た! なあジュン、お前料理出来る!?」
「え、料理、ですか? ええと……あまりやったことはないですが」
「っしゃあ! 同士よ!」
「カノン先輩?」
「かっすー、ジュンはあんまやったことはないってだけで、出来ないとは一言も言ってねーぞ」
「奏多お前ー! 鳥ちゃぁーん! 助けてくれー!」
end.
++++
奏多は基本的に完璧超人であってほしいので、料理もある程度は出来ると楽しい
そう言えば春風の料理スキルってどんな感じなんだろう。でも特別上手と言うよりは最低限っていう感じかな?
(phase3)
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