2022
■Light and Easy Conversation
++++
「ブースはこれで良しッと! 誰か来てくれるかなー」
「そっすねー、どっすかねー」
近くの教室から借りてきた机とイスで作った簡単なブースがいくつか並んでる。これっていうのは部活の勧誘ブースなんだけど、MMPは大学認可サークルっていうちょっと強いサークルだからやれるっぽい。
机の縁にはMMPですって書いたポスターを貼って、サークルがあれをやっていいのかっていう目に負けないために大学認可サークルとも少し大きく書いてあるしハンコももらってある。信用出来るサークルですよ~。
今回は菜月先輩リスペクトのゲッティング☆ガールプロジェクトは封印中。男の子でも女の子でも人の形をした物をとにかく引きずり込んでいくというスタンス。来る物は拒まず去る物は適度に追っていく感じで。
ブース設置初日はうちと松兄のペアでお迎え。MMPは活動を見学するにも徒歩15分あるサークル棟まで行かなきゃいけないのが派手にめんどくさいんだよね。だからここで話が出来るなら本当にラクだわ~。
「奈々さん、サンダースめっちゃ負けてますけど笑顔で頼んますよ」
「松兄がそれをほじくり返さなきゃ忘れてたのにッ!」
多分これが菜月先輩と野坂先輩のペアだったとしてもサンダースがチェアーズに変わっただけの似たようなことを言ってるんだろうなーっていう想像が出来るよね。チェアーズはまだ勝ってるっていう点でサンダースとは違うんだけど。
「奈々さんが野球好きだって聞いて、俺もちょっと見始めたんすよね」
「あ、そうなんだ。どう? 面白い?」
「個人的には守備の連携みたいなモンが面白いなーと」
「シブいね松兄」
「俗に言う6-4-3ってヤツすか? よくあるダブルプレーの。流れるようにアレが決まるとカッコいーっすよね」
「そーなんだよッ!」
松兄と野球はあんまりイメージが結びつかなかったけど、面白いって言ってもらえてちょっと嬉しい。そこまでガツガツ見るタイプではないだろうけどね。
ブース開設数分じゃさすがにまだ人は来ない。放送サークルであることをもっと簡単にわかりやすくアピールした方が良かったかなー。カノンとりぃチームに改善点として伝えよう。
「何かウチのブース、地味だよね」
「これ、ポスター貼るのもいいっすけど、紙1枚に1文字ずつラ・ジ・オっつって書いてパッと見でわかりやすい方がいいんじゃないすか?」
「確かに!」
「あと、スケッチブックを机の上に立てて看板的な使い方をするっつーのも出来そーっすね」
「天才!」
「テキトーなスピーカー繋げてこの辺にだけサンプル番組流したり」
「それだわ!」
「いやー、奈々さん俺をすげーホメてくれるからもっと頑張ろーって気になるわー。ガミガミうるさい春風とは大違いだわー」
「とりぃはとりぃで松兄を親身に感じてるからああなってるんだとは思うけどね。どうでもいい人には叱ったりしないじゃん」
「まーそーなんすけどね。でも常日頃から怒られてるよりホメられる方が嬉しくないすか?」
「嬉しい」
「っすよね。これを言うと春風がまーたうるさいんで内緒にしといてくださいよ? ほら、俺って何やってもまあまあ平均以上になっちまうんで、ちょっとしたことじゃ今更誰もホメてくれないんすよ。松居ならそれくらい出来て当然みたいな感じで」
「えー、松兄は確かに何でも出来そうだけど、さすがに当たり前じゃないよねッ」
「だからね、しょーもないコトでホメてくれる奈々さん大好き」
出来る人ならではの悩みなのかなあって思う。うちは特別優秀ってワケじゃないからそういう感覚はちょっとよくわかんないんだけど、MMPの完璧超人枠の野坂先輩ならわかるのかな?
うちが松兄を簡単にホメたのだって本当にアイディアに感心したからだったけど、そういうちょっとしたことでも本当に嬉しいって思ってるんだったら、今までどれだけ頑張ってきたのかなって思う。まあ、口が達者だからどこまで本当かはわかんないんだけど。
「バドの時にも姉御肌の先輩に世話になってたんすけどね、その人ともまた違う良さがあるんすよね奈々さんて」
「そんなに持ち上げても何も出ないからねッ! いたいけなハタチを騙そうとしても、そ~うは」
「いやいやいや、ホントに言ってんだって!」
「ごめんごめん」
「はー、人来ねーなー」
「来ないねえ」
「メシ食っていいです?」
「いいよ。そういうときに限って人って来るし」
「風呂・トイレ時宅配理論ね」
「それ」
すぐに応対出来ないときに限って来客がある。ゲン担ぎみたいにうちと松兄はパンの袋を開いてランチタイム。食堂の方のオンエアはどうなってるかな、大丈夫かな。まあ、大丈夫だよねッ。
「奏多、やってる?」
「おー、佑人! 冷やかしか?」
「うん、冷やかし。って言うか、MMPってラジオのサークルだよね? サークルが通りに机置いていいの?」
「それがよ、大学認可サークルっていうただのサークルより強いサークルだったらしくて、オッケー出てるんだわ」
「へー、そうなんだ」
「ほら、許可証」
「ホントだ。どう? 人来そう?」
「やー、これからだわ。初日だから様子見しつつ、他のブースのいいトコパクるための情報収集とも言う」
「よく言うなあ」
「元はかっすーのヤツだからこれ」
「松兄、友達?」
「バドサーの先輩で、俺のディフェンスの師っすね」
「え、先輩で師匠にめっちゃタメ口利いてるじゃん」
「歳はタメだし、バドは体育会系の割にそーゆーの気にしない人もまあまあいたんで。佑人もその部類っす」
「あ、そうなんだ。そっか、松兄って今の4年生とタメだったね」
「そーだ佑人、ウチの代表で3年の奈々さん」
「MMP代表の岡島奈々です」
「バドサー4年の北島佑人です。多分奈々さんも最初は奏多の扱いに苦労すると思うけど、根は凄い真面目な練習の虫なんでしつこいくらい食らいついてくると思う。何とぞよろしくお願いします」
「何だよ俺の扱いに苦労するって。つか奈々さん既に俺のこと攻略してんぜ? そこらの凡人とはちげーんだよ」
「へえ、凄いな。それじゃあ頑張って」
「ありがとうございまーす」
多分佑人さんが立ち寄ったのが良かったのか、それからは人がいるぞって感じで少しずつだけど立ち止まってくれる人も増えてきた。座ってもらうのが遠いけど、まだまだこれから。とりあえずスケッチブックを買ってくることから。
「松兄、やっぱ実はすごい真面目なんじゃん」
「余計なコト言いやがってあの野郎。あ、それ他の人に言うの営業妨害っすからね奈々さん」
「はいはい。そーいうことにしといてあげるよ」
end.
++++
奈々と奏多には軽妙な掛け合いをさせたい。年下の先輩と年上の後輩だからこその絶妙なバランスがある
それを受けて春風には怒るなり呆れたりとかしてもらいたいし、今後来るであろう1年生にも先輩たちのノリとして根付くといいね
(phase3)
.
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「ブースはこれで良しッと! 誰か来てくれるかなー」
「そっすねー、どっすかねー」
近くの教室から借りてきた机とイスで作った簡単なブースがいくつか並んでる。これっていうのは部活の勧誘ブースなんだけど、MMPは大学認可サークルっていうちょっと強いサークルだからやれるっぽい。
机の縁にはMMPですって書いたポスターを貼って、サークルがあれをやっていいのかっていう目に負けないために大学認可サークルとも少し大きく書いてあるしハンコももらってある。信用出来るサークルですよ~。
今回は菜月先輩リスペクトのゲッティング☆ガールプロジェクトは封印中。男の子でも女の子でも人の形をした物をとにかく引きずり込んでいくというスタンス。来る物は拒まず去る物は適度に追っていく感じで。
ブース設置初日はうちと松兄のペアでお迎え。MMPは活動を見学するにも徒歩15分あるサークル棟まで行かなきゃいけないのが派手にめんどくさいんだよね。だからここで話が出来るなら本当にラクだわ~。
「奈々さん、サンダースめっちゃ負けてますけど笑顔で頼んますよ」
「松兄がそれをほじくり返さなきゃ忘れてたのにッ!」
多分これが菜月先輩と野坂先輩のペアだったとしてもサンダースがチェアーズに変わっただけの似たようなことを言ってるんだろうなーっていう想像が出来るよね。チェアーズはまだ勝ってるっていう点でサンダースとは違うんだけど。
「奈々さんが野球好きだって聞いて、俺もちょっと見始めたんすよね」
「あ、そうなんだ。どう? 面白い?」
「個人的には守備の連携みたいなモンが面白いなーと」
「シブいね松兄」
「俗に言う6-4-3ってヤツすか? よくあるダブルプレーの。流れるようにアレが決まるとカッコいーっすよね」
「そーなんだよッ!」
松兄と野球はあんまりイメージが結びつかなかったけど、面白いって言ってもらえてちょっと嬉しい。そこまでガツガツ見るタイプではないだろうけどね。
ブース開設数分じゃさすがにまだ人は来ない。放送サークルであることをもっと簡単にわかりやすくアピールした方が良かったかなー。カノンとりぃチームに改善点として伝えよう。
「何かウチのブース、地味だよね」
「これ、ポスター貼るのもいいっすけど、紙1枚に1文字ずつラ・ジ・オっつって書いてパッと見でわかりやすい方がいいんじゃないすか?」
「確かに!」
「あと、スケッチブックを机の上に立てて看板的な使い方をするっつーのも出来そーっすね」
「天才!」
「テキトーなスピーカー繋げてこの辺にだけサンプル番組流したり」
「それだわ!」
「いやー、奈々さん俺をすげーホメてくれるからもっと頑張ろーって気になるわー。ガミガミうるさい春風とは大違いだわー」
「とりぃはとりぃで松兄を親身に感じてるからああなってるんだとは思うけどね。どうでもいい人には叱ったりしないじゃん」
「まーそーなんすけどね。でも常日頃から怒られてるよりホメられる方が嬉しくないすか?」
「嬉しい」
「っすよね。これを言うと春風がまーたうるさいんで内緒にしといてくださいよ? ほら、俺って何やってもまあまあ平均以上になっちまうんで、ちょっとしたことじゃ今更誰もホメてくれないんすよ。松居ならそれくらい出来て当然みたいな感じで」
「えー、松兄は確かに何でも出来そうだけど、さすがに当たり前じゃないよねッ」
「だからね、しょーもないコトでホメてくれる奈々さん大好き」
出来る人ならではの悩みなのかなあって思う。うちは特別優秀ってワケじゃないからそういう感覚はちょっとよくわかんないんだけど、MMPの完璧超人枠の野坂先輩ならわかるのかな?
うちが松兄を簡単にホメたのだって本当にアイディアに感心したからだったけど、そういうちょっとしたことでも本当に嬉しいって思ってるんだったら、今までどれだけ頑張ってきたのかなって思う。まあ、口が達者だからどこまで本当かはわかんないんだけど。
「バドの時にも姉御肌の先輩に世話になってたんすけどね、その人ともまた違う良さがあるんすよね奈々さんて」
「そんなに持ち上げても何も出ないからねッ! いたいけなハタチを騙そうとしても、そ~うは」
「いやいやいや、ホントに言ってんだって!」
「ごめんごめん」
「はー、人来ねーなー」
「来ないねえ」
「メシ食っていいです?」
「いいよ。そういうときに限って人って来るし」
「風呂・トイレ時宅配理論ね」
「それ」
すぐに応対出来ないときに限って来客がある。ゲン担ぎみたいにうちと松兄はパンの袋を開いてランチタイム。食堂の方のオンエアはどうなってるかな、大丈夫かな。まあ、大丈夫だよねッ。
「奏多、やってる?」
「おー、佑人! 冷やかしか?」
「うん、冷やかし。って言うか、MMPってラジオのサークルだよね? サークルが通りに机置いていいの?」
「それがよ、大学認可サークルっていうただのサークルより強いサークルだったらしくて、オッケー出てるんだわ」
「へー、そうなんだ」
「ほら、許可証」
「ホントだ。どう? 人来そう?」
「やー、これからだわ。初日だから様子見しつつ、他のブースのいいトコパクるための情報収集とも言う」
「よく言うなあ」
「元はかっすーのヤツだからこれ」
「松兄、友達?」
「バドサーの先輩で、俺のディフェンスの師っすね」
「え、先輩で師匠にめっちゃタメ口利いてるじゃん」
「歳はタメだし、バドは体育会系の割にそーゆーの気にしない人もまあまあいたんで。佑人もその部類っす」
「あ、そうなんだ。そっか、松兄って今の4年生とタメだったね」
「そーだ佑人、ウチの代表で3年の奈々さん」
「MMP代表の岡島奈々です」
「バドサー4年の北島佑人です。多分奈々さんも最初は奏多の扱いに苦労すると思うけど、根は凄い真面目な練習の虫なんでしつこいくらい食らいついてくると思う。何とぞよろしくお願いします」
「何だよ俺の扱いに苦労するって。つか奈々さん既に俺のこと攻略してんぜ? そこらの凡人とはちげーんだよ」
「へえ、凄いな。それじゃあ頑張って」
「ありがとうございまーす」
多分佑人さんが立ち寄ったのが良かったのか、それからは人がいるぞって感じで少しずつだけど立ち止まってくれる人も増えてきた。座ってもらうのが遠いけど、まだまだこれから。とりあえずスケッチブックを買ってくることから。
「松兄、やっぱ実はすごい真面目なんじゃん」
「余計なコト言いやがってあの野郎。あ、それ他の人に言うの営業妨害っすからね奈々さん」
「はいはい。そーいうことにしといてあげるよ」
end.
++++
奈々と奏多には軽妙な掛け合いをさせたい。年下の先輩と年上の後輩だからこその絶妙なバランスがある
それを受けて春風には怒るなり呆れたりとかしてもらいたいし、今後来るであろう1年生にも先輩たちのノリとして根付くといいね
(phase3)
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