2022
■Forward activity
++++
「奈々先輩、昨日の話の続きをしていーすか」
「どの話?」
「新歓の作戦会議っす」
「どうぞ」
昨日が入学式で今日が学部ガイダンス、さすがに明日は休みだけどこの時期はやっぱ曜日関係なくバタバタすんなーっつー感じだ。どっちかっつーと今日の方がふらふら歩いてる1年が多いっぽいから、サークルのビラも何となく配りやすかったかな。
例によって学食で成果報告などをしていると、かっすーがこの先の作戦があると奈々さんに進言する。かっすーはこの先のMMPは自分に(も)かかってるんだーって前々から気合い入りまくってたもんな。空回りをバドの先輩たちからも心配されるくらいには。
「昨日すがやんと戦況報告なんかをしててひらめいたことがあって」
「つか本当にすがやんと情報交換してたのかよ」
「当ったり前よ! 文化交流の結果得られる物はガンガン取り入れて、MMPをもっともっと盛り上げるんだ!」
「それで何をひらめいたの?」
「そうそうそう、それなんすよ奈々先輩! 俺たちにはビラとポスター以外に使えるモンがあったんすよ!」
「え、何だろ。4年生の先輩?」
「自分たちで出来ることっす」
「ビラとポスター以外ですか? インターネットを利用するのでしょうか」
「そんな回りくどいことはしないんだよ鳥ちゃん。俺たちが使える物と言えば、学食のスピーカーだよ」
「カノン? 詳しい話をいいかなッ」
かっすーがすがやんから聞いた話を要約すると、緑ヶ丘はサークルの顧問の先生が緑大名物ともなっているラジオブースの管理者らしい。その先生を利用して、規則で決まっているビラやポスターの枚数を誤魔化したり、サークルの勧誘をしているそうだ。
例えば、学部ガイダンスで回ってくる連中にプリントと一緒にサークルのビラを配ったり。それから、普段はラジオブースのタイムテーブルなんかを貼っているコルクボードにもサークルのポスターを脱法的に掲示したりとやりたい放題暗躍しているとか。
「タカティだったら悪びれる様子もなくやりそう」
「すがやんが言うんですよ。一応は大学の仕事にもなってるから黙認状態になるのかなって。それで思いついたんすよ! 新入生にとって役立つ情報や学食のフェア情報だけをやる10分間くらいの番組を帯で流すんす! それでラジオのサークルがあるぞってアピールするんすよ!」
「新入生にとって役立つ情報かあ」
「一応学生課に行って許可はもらったっす! 大学ホームページに載ってる学生課や教務課からのお知らせやニュースはアナウンスしていいそうっす」
「てかカノン動くのが早いよッ!」
「すんませんっす」
「でも、オッケーがもらえたのは大きいねッ」
「まあ実際いーんじゃないです? 今の時期が一番大学に人が多くなるんすし。特に1年なんか右も左もわからねー状態で飯にありつくためにはまず学食っすから」
「そうですね。学生課や教務課からのお知らせのアナウンスなどであれば、普段の番組とは違いこちらがトークをたくさん考える必要もないのでやりやすいかと思います」
かっすーの初動の早さには奈々さんと春風は軽くビビってたみたいだけど、かっすーってのはそれくらいはやる奴だ。俺はなーんにも驚かない。実際大学から許可が出たということで、奈々さんも学食の店長に挨拶を入れないとと早々に事務所に行ってしまった。
それはそうと、学生課や教務課がホームページにどんな情報を載せているのはほとんど見たことがない。掲示板を見れば事足りるからだ。まあ、掲示板を見ることを促す効果を狙ってもいいし、言ってしまえば慈善活動はポーズだからな。
「最近だと、成人年齢引き下げに伴う注意点のお知らせなども載っているのですね。それに、奨学金の申し込みのお知らせなど」
「あ、友達に奨学金受けてる奴いるんだけど、最初の説明会飛ばしそうになって焦ったっつってたなー。通常の昼放送になる前はそーゆーお知らせとかも入れてったら良さそうだな」
「つか、通常の昼放送になったら慈善活動辞めんのか?」
「さすがに、急には辞めない方がいいとは思うけど。と言うか慈善活動という言い方が何か嫌なんだけど」
「じゃ偽善か。やらぬ善よりやる偽善ってね」
「慈善活動でいいわよ」
「昼放送全体の時間を延ばすのか、インフォの枠を大きくして曲かトークを縮めるのかってトコかなあ。まあ、奈々先輩とも相談して、そのときにまた考えるって感じになってくんのかなあ」
昼放送は30分の枠でやってるらしいけど、今以上に広げると授業との兼ね合いがあって実際問題結構厳しいらしい。じゃあ30分の枠はそのままに、その他の構成で都合をつけるのがいいっぽい。俺としては昼の時間的ゆとりは多少欲しい。
「みんなお待たせーッ」
「店長さんいたっすか?」
「バッチリッ! ついでにフェア情報もらってきたし、月曜からやるんだったらもう録っちゃわないと後が大変じゃない?」
「それもそーだ」
「さっそくこれから収録っすね!」
「ですが、あまり先の放送を録り溜めしすぎると、最新情報が入れられなくなってしまいますね」
「だからこまめにやらないといけないんだけど、その辺のことは歩きながら考えよう」
飲み食いした物のトレイを食器返却口に戻して、裏口からそのまま抜けていこうとしたとき。またかっすーが大きな声を上げる。
「奈々先輩、ここっす! 学内のしょーもない場所に貼ったポスター、この掲示板に移動した方が良くないすか!?」
「ビックリしたあ。カノン、急な大声はミキサー泣かせだよ」
「すんません。でもせっかくここで番組やってるんすから、食器を戻してすぐのここにポスターがあると良くないすか?」
「いいとは思うよ」
「じゃ今からひとっ走りしてポスター取ってきます!」
「希くん!? 今行くんですか!?」
「じゃみんなちょっと待っててくださいっすー!」
「……行ってしまいました」
「カノンは一生懸命で元気だけど、ずっとこのペースでやってて大丈夫かなあ」
「大丈夫っすよ。後輩が出来たり、自分で動くことも増えてくると、自ずと落ち着いてくるモンす」
「さすが松兄、年の功」
「説得力がまるでないのよ」
end.
++++
カノンがめっちゃ元気なので奈々が落ち着かざるを得ない。でも唯一の3年だし全然アリ
MMPの昼放送は通常GW明けからなので、活動としてはかなり早く始まるよ。やる気十分だね
(phase3)
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「奈々先輩、昨日の話の続きをしていーすか」
「どの話?」
「新歓の作戦会議っす」
「どうぞ」
昨日が入学式で今日が学部ガイダンス、さすがに明日は休みだけどこの時期はやっぱ曜日関係なくバタバタすんなーっつー感じだ。どっちかっつーと今日の方がふらふら歩いてる1年が多いっぽいから、サークルのビラも何となく配りやすかったかな。
例によって学食で成果報告などをしていると、かっすーがこの先の作戦があると奈々さんに進言する。かっすーはこの先のMMPは自分に(も)かかってるんだーって前々から気合い入りまくってたもんな。空回りをバドの先輩たちからも心配されるくらいには。
「昨日すがやんと戦況報告なんかをしててひらめいたことがあって」
「つか本当にすがやんと情報交換してたのかよ」
「当ったり前よ! 文化交流の結果得られる物はガンガン取り入れて、MMPをもっともっと盛り上げるんだ!」
「それで何をひらめいたの?」
「そうそうそう、それなんすよ奈々先輩! 俺たちにはビラとポスター以外に使えるモンがあったんすよ!」
「え、何だろ。4年生の先輩?」
「自分たちで出来ることっす」
「ビラとポスター以外ですか? インターネットを利用するのでしょうか」
「そんな回りくどいことはしないんだよ鳥ちゃん。俺たちが使える物と言えば、学食のスピーカーだよ」
「カノン? 詳しい話をいいかなッ」
かっすーがすがやんから聞いた話を要約すると、緑ヶ丘はサークルの顧問の先生が緑大名物ともなっているラジオブースの管理者らしい。その先生を利用して、規則で決まっているビラやポスターの枚数を誤魔化したり、サークルの勧誘をしているそうだ。
例えば、学部ガイダンスで回ってくる連中にプリントと一緒にサークルのビラを配ったり。それから、普段はラジオブースのタイムテーブルなんかを貼っているコルクボードにもサークルのポスターを脱法的に掲示したりとやりたい放題暗躍しているとか。
「タカティだったら悪びれる様子もなくやりそう」
「すがやんが言うんですよ。一応は大学の仕事にもなってるから黙認状態になるのかなって。それで思いついたんすよ! 新入生にとって役立つ情報や学食のフェア情報だけをやる10分間くらいの番組を帯で流すんす! それでラジオのサークルがあるぞってアピールするんすよ!」
「新入生にとって役立つ情報かあ」
「一応学生課に行って許可はもらったっす! 大学ホームページに載ってる学生課や教務課からのお知らせやニュースはアナウンスしていいそうっす」
「てかカノン動くのが早いよッ!」
「すんませんっす」
「でも、オッケーがもらえたのは大きいねッ」
「まあ実際いーんじゃないです? 今の時期が一番大学に人が多くなるんすし。特に1年なんか右も左もわからねー状態で飯にありつくためにはまず学食っすから」
「そうですね。学生課や教務課からのお知らせのアナウンスなどであれば、普段の番組とは違いこちらがトークをたくさん考える必要もないのでやりやすいかと思います」
かっすーの初動の早さには奈々さんと春風は軽くビビってたみたいだけど、かっすーってのはそれくらいはやる奴だ。俺はなーんにも驚かない。実際大学から許可が出たということで、奈々さんも学食の店長に挨拶を入れないとと早々に事務所に行ってしまった。
それはそうと、学生課や教務課がホームページにどんな情報を載せているのはほとんど見たことがない。掲示板を見れば事足りるからだ。まあ、掲示板を見ることを促す効果を狙ってもいいし、言ってしまえば慈善活動はポーズだからな。
「最近だと、成人年齢引き下げに伴う注意点のお知らせなども載っているのですね。それに、奨学金の申し込みのお知らせなど」
「あ、友達に奨学金受けてる奴いるんだけど、最初の説明会飛ばしそうになって焦ったっつってたなー。通常の昼放送になる前はそーゆーお知らせとかも入れてったら良さそうだな」
「つか、通常の昼放送になったら慈善活動辞めんのか?」
「さすがに、急には辞めない方がいいとは思うけど。と言うか慈善活動という言い方が何か嫌なんだけど」
「じゃ偽善か。やらぬ善よりやる偽善ってね」
「慈善活動でいいわよ」
「昼放送全体の時間を延ばすのか、インフォの枠を大きくして曲かトークを縮めるのかってトコかなあ。まあ、奈々先輩とも相談して、そのときにまた考えるって感じになってくんのかなあ」
昼放送は30分の枠でやってるらしいけど、今以上に広げると授業との兼ね合いがあって実際問題結構厳しいらしい。じゃあ30分の枠はそのままに、その他の構成で都合をつけるのがいいっぽい。俺としては昼の時間的ゆとりは多少欲しい。
「みんなお待たせーッ」
「店長さんいたっすか?」
「バッチリッ! ついでにフェア情報もらってきたし、月曜からやるんだったらもう録っちゃわないと後が大変じゃない?」
「それもそーだ」
「さっそくこれから収録っすね!」
「ですが、あまり先の放送を録り溜めしすぎると、最新情報が入れられなくなってしまいますね」
「だからこまめにやらないといけないんだけど、その辺のことは歩きながら考えよう」
飲み食いした物のトレイを食器返却口に戻して、裏口からそのまま抜けていこうとしたとき。またかっすーが大きな声を上げる。
「奈々先輩、ここっす! 学内のしょーもない場所に貼ったポスター、この掲示板に移動した方が良くないすか!?」
「ビックリしたあ。カノン、急な大声はミキサー泣かせだよ」
「すんません。でもせっかくここで番組やってるんすから、食器を戻してすぐのここにポスターがあると良くないすか?」
「いいとは思うよ」
「じゃ今からひとっ走りしてポスター取ってきます!」
「希くん!? 今行くんですか!?」
「じゃみんなちょっと待っててくださいっすー!」
「……行ってしまいました」
「カノンは一生懸命で元気だけど、ずっとこのペースでやってて大丈夫かなあ」
「大丈夫っすよ。後輩が出来たり、自分で動くことも増えてくると、自ずと落ち着いてくるモンす」
「さすが松兄、年の功」
「説得力がまるでないのよ」
end.
++++
カノンがめっちゃ元気なので奈々が落ち着かざるを得ない。でも唯一の3年だし全然アリ
MMPの昼放送は通常GW明けからなので、活動としてはかなり早く始まるよ。やる気十分だね
(phase3)
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