2022
■How's everyone responding?
++++
「皆さん手応えはどうですかッ」
「とりあえず今日の分は全部捌けたっす!」
「今後はブースを構えて新入生と直に話す機会が重要になりますね」
向島大学の入学式が執り行われた後、在校生のすることはサークルへの勧誘活動になります。とは言え実際に出来ることはビラを配るくらいで、もっとじっくり話をするのは新学期が始まってからという風に決められています。
私は新しく加入した放送サークルMMPのビラを手に、来る人来る人にビラを配り続けました。1人でも多く一緒にラジオを楽しむ仲間が来てくれると嬉しいなという気持ちですが、本当に来てくれるのかという不安も少しあります。
「カノン、今後の作戦とかは何かある?」
「そっすね、明日が学部ガイダンスで、月曜日が健康診断と履修登録らしいんで、実際ブースを組めるのは火曜日以降になるっすね」
「そっかー」
ビラを配り終え今日の活動を終了したところで、学食にて作戦会議中です。こういう活動においては希くんが積極的にアイディアを出してくれるので、それに対して奈々先輩が手直しをしたりゴーサインを出したりするという感じで進めています。
今年から採用することになったのは、学内の通りにイスと机を並べた簡易ブースを設けてサークルの説明をするというものです。主に部活動が行う手法なのですが、MMPは大学認可サークルという部類のようで許可が下りたのです。
私も天文部のそれを少し見ただけなのですが、見学のためにサークル棟まで徒歩15分の道のりを来るのもなかなかハードルが高いので、こうしてすぐの場所で話を聞けるのはとてもいいのではないかと思います。山道を上りますから、慣れないうちは気が遠くなるんですよね。
「ブースのことだけど、うちとカノンのMMPをわかってる組と、とりぃと松兄の新メンバー組を分割して、男女ペアの方が何かと都合がいいんだよねッ。だからうちと松兄、カノンととりぃっていう感じで組むのでオッケーかな?」
「わかりました。希くん、よろしくお願いしますね」
「任しといて鳥ちゃん」
「奈々さんと組むなら説明とかは任せて大丈夫な感じっすね~」
「えっ、松兄もわかってる体でいてもらわないと困るんだけど」
「体でいいんだ」
「まあ、松兄だったらうちのテキトーな説明を何回か聞けば覚えて自己流でアレンジ出来るよねッ」
「俺、何だと思われてるんです? いくら俺がアタマ良くて口が達者でもそこまで器用じゃないっすよ」
「奏多あなた、自分で頭脳明晰眉目秀麗、運動神経抜群とか言っているそうだけど恥ずかしいからやめてちょうだい」
「は!? 何で知ってんだよ! ちっくしょすがやんマジで言いやがったな!?」
奏多が定例会終わりにそんな風に調子に乗っていたということは徹平くんからではなくゲームをやっているときにサキさんから聞いたのですが、聞いていて本当に幼馴染みをやめたくなるくらい恥ずかしかったです。頭が良くて運動神経がいいのは本当なのですが、この口さえなければと。
それはそうと、私は元々天文部で、奏多はバドミントンサークルに所属していました。MMPに入ったのも2月頃からなので、本来活動している春学期中や秋学期中のことはまだ何も知らないのです。その点では新入生と同じ条件になるわけです。
とは言え1年生からしてみれば上級生になるのでそれなりにサークルのこともわかっていて当然ですし、ラジオをやる上での技術めいたことなどもある程度身についていなければ示しがつきません。本格的に1年生が入ってくるまでにも鍛錬は欠かせません。
「奈々さん、今流れてるこれって何の音源っすか?」
「これは有線だね」
「あ~、有線すか」
「昼のラジオをやるときはこの有線の機械にMDプレイヤーを繋いで再生してるんだけど」
「今時MDすか!?」
「――というワケで、その辺のこともこれからどうしようかなーッて感じ。大学祭の利益だけで何とか出来ればいいんだけどね」
前々からある機材を大切に使っていると言えば聞こえがいいのですが、インターフェイスの機材も緑ヶ丘大学さんが余っている機材と入れ替えてくれたりして新しくなりつつある中で、いつまでも時代の流れに取り残されたままでいいのかという議論はされているようです。
緑ヶ丘大学の機材環境については先日対策委員の会議後にくるみと当麻くんが話していたのですが、社会学部のゼミで使われなくなった機材がサークルにお下がりで来るんだそうです。それが余りに余って他の大学さんに譲ってもまだ余裕があったとかで。凄まじい財力を感じます。
「つかMDはさすがにそろそろ非現実的なツールになりつつあると思うんすよね? MP3とか、とにかく音声ファイルとかにしてもらった方が圧倒的にやりやすいと思うんだけど」
「松兄、何か古い要らないパソコンとかない? 音声ファイル形式で録音だけ出来ればいいからそれが出来る機材があれば万事解決なんだよッ」
「いやー、さすがにないっすね」
「ないかー」
「中古でいいのであればリサイクルショップなどを巡ってもよさそうですね」
「音声ファイルとして録音するだけなら出来るしなー。奈々先輩、学祭の利益をここらでボーン! すよ!」
音声ファイルやパソコンのことについてはまた今度会議をすることにして、とりあえず新入生の勧誘に話を戻します。とは言え、明日以降も頑張りましょうと着地するのですが。
「すがやんに緑ヶ丘はどんな作戦で新歓やってんのか聞いてみて、パクれそうな作戦があったら即採用してこ」
「カノンのその泥臭いトコ結構いいと思うよ。頼もしい」
「言ってすがやんは半分MMPみたいなモンなんで情報提供の義務があるっす、うっすうっす」
end.
++++
いつの間にか奈々の口癖になっていた「うっすうっす」が結構汎用性高めで便利。
カノンも奈々パイセンの逞しさを見習ってガンガンやっていく路線でいくようだ。頼もしい。
(phase3)
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++++
「皆さん手応えはどうですかッ」
「とりあえず今日の分は全部捌けたっす!」
「今後はブースを構えて新入生と直に話す機会が重要になりますね」
向島大学の入学式が執り行われた後、在校生のすることはサークルへの勧誘活動になります。とは言え実際に出来ることはビラを配るくらいで、もっとじっくり話をするのは新学期が始まってからという風に決められています。
私は新しく加入した放送サークルMMPのビラを手に、来る人来る人にビラを配り続けました。1人でも多く一緒にラジオを楽しむ仲間が来てくれると嬉しいなという気持ちですが、本当に来てくれるのかという不安も少しあります。
「カノン、今後の作戦とかは何かある?」
「そっすね、明日が学部ガイダンスで、月曜日が健康診断と履修登録らしいんで、実際ブースを組めるのは火曜日以降になるっすね」
「そっかー」
ビラを配り終え今日の活動を終了したところで、学食にて作戦会議中です。こういう活動においては希くんが積極的にアイディアを出してくれるので、それに対して奈々先輩が手直しをしたりゴーサインを出したりするという感じで進めています。
今年から採用することになったのは、学内の通りにイスと机を並べた簡易ブースを設けてサークルの説明をするというものです。主に部活動が行う手法なのですが、MMPは大学認可サークルという部類のようで許可が下りたのです。
私も天文部のそれを少し見ただけなのですが、見学のためにサークル棟まで徒歩15分の道のりを来るのもなかなかハードルが高いので、こうしてすぐの場所で話を聞けるのはとてもいいのではないかと思います。山道を上りますから、慣れないうちは気が遠くなるんですよね。
「ブースのことだけど、うちとカノンのMMPをわかってる組と、とりぃと松兄の新メンバー組を分割して、男女ペアの方が何かと都合がいいんだよねッ。だからうちと松兄、カノンととりぃっていう感じで組むのでオッケーかな?」
「わかりました。希くん、よろしくお願いしますね」
「任しといて鳥ちゃん」
「奈々さんと組むなら説明とかは任せて大丈夫な感じっすね~」
「えっ、松兄もわかってる体でいてもらわないと困るんだけど」
「体でいいんだ」
「まあ、松兄だったらうちのテキトーな説明を何回か聞けば覚えて自己流でアレンジ出来るよねッ」
「俺、何だと思われてるんです? いくら俺がアタマ良くて口が達者でもそこまで器用じゃないっすよ」
「奏多あなた、自分で頭脳明晰眉目秀麗、運動神経抜群とか言っているそうだけど恥ずかしいからやめてちょうだい」
「は!? 何で知ってんだよ! ちっくしょすがやんマジで言いやがったな!?」
奏多が定例会終わりにそんな風に調子に乗っていたということは徹平くんからではなくゲームをやっているときにサキさんから聞いたのですが、聞いていて本当に幼馴染みをやめたくなるくらい恥ずかしかったです。頭が良くて運動神経がいいのは本当なのですが、この口さえなければと。
それはそうと、私は元々天文部で、奏多はバドミントンサークルに所属していました。MMPに入ったのも2月頃からなので、本来活動している春学期中や秋学期中のことはまだ何も知らないのです。その点では新入生と同じ条件になるわけです。
とは言え1年生からしてみれば上級生になるのでそれなりにサークルのこともわかっていて当然ですし、ラジオをやる上での技術めいたことなどもある程度身についていなければ示しがつきません。本格的に1年生が入ってくるまでにも鍛錬は欠かせません。
「奈々さん、今流れてるこれって何の音源っすか?」
「これは有線だね」
「あ~、有線すか」
「昼のラジオをやるときはこの有線の機械にMDプレイヤーを繋いで再生してるんだけど」
「今時MDすか!?」
「――というワケで、その辺のこともこれからどうしようかなーッて感じ。大学祭の利益だけで何とか出来ればいいんだけどね」
前々からある機材を大切に使っていると言えば聞こえがいいのですが、インターフェイスの機材も緑ヶ丘大学さんが余っている機材と入れ替えてくれたりして新しくなりつつある中で、いつまでも時代の流れに取り残されたままでいいのかという議論はされているようです。
緑ヶ丘大学の機材環境については先日対策委員の会議後にくるみと当麻くんが話していたのですが、社会学部のゼミで使われなくなった機材がサークルにお下がりで来るんだそうです。それが余りに余って他の大学さんに譲ってもまだ余裕があったとかで。凄まじい財力を感じます。
「つかMDはさすがにそろそろ非現実的なツールになりつつあると思うんすよね? MP3とか、とにかく音声ファイルとかにしてもらった方が圧倒的にやりやすいと思うんだけど」
「松兄、何か古い要らないパソコンとかない? 音声ファイル形式で録音だけ出来ればいいからそれが出来る機材があれば万事解決なんだよッ」
「いやー、さすがにないっすね」
「ないかー」
「中古でいいのであればリサイクルショップなどを巡ってもよさそうですね」
「音声ファイルとして録音するだけなら出来るしなー。奈々先輩、学祭の利益をここらでボーン! すよ!」
音声ファイルやパソコンのことについてはまた今度会議をすることにして、とりあえず新入生の勧誘に話を戻します。とは言え、明日以降も頑張りましょうと着地するのですが。
「すがやんに緑ヶ丘はどんな作戦で新歓やってんのか聞いてみて、パクれそうな作戦があったら即採用してこ」
「カノンのその泥臭いトコ結構いいと思うよ。頼もしい」
「言ってすがやんは半分MMPみたいなモンなんで情報提供の義務があるっす、うっすうっす」
end.
++++
いつの間にか奈々の口癖になっていた「うっすうっす」が結構汎用性高めで便利。
カノンも奈々パイセンの逞しさを見習ってガンガンやっていく路線でいくようだ。頼もしい。
(phase3)
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