2021(04)
■威厳と迫力のないリーダー
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「うっうっうっうっ……今時あんな人がいるなんて思わないじゃないですかあカナコさぁん!」
「ミドリくんお疲れさま。でもクレーム対応はバイトリーダーの仕事だからね、ミドリくんが頼りなんだよ」
「バイトリーダーの仕事っていうのもわかるんですけど、そこは所長の仕事じゃないですか?」
「所長さんが気紛れな人だっていうのは歴が一番長いミドリくんが一番よーくわかってるでしょ?」
「そうなんですけど~」
今日は新2年生の健康診断と履修登録日。学年が下がっていくにつれて履修登録にかかる時間は長くなる傾向にあって、情報センターも人でごった返す印象がある。履修コマも多いし待ち時間が長くなるんだよね。いくら文理で履修登録の教室が分かれたからと言って、ヒマでヒマでしょうがないということは全くない。
で、真桜が健康診断から戻って来て俺は事務所に一旦戻ることが出来たんだけど、慣れ親しんだ事務所が本当に落ち着く! やっぱり俺はA番の人間なんだと強く思いますよね! 確かに俺はバイトリーダーだからどんなことにも対処しなきゃいけないんだけど、荒くれ者の対応はやっぱり出来ないんですよ林原さん!
「でも、ミドリくんの話が本当なら、本当に今時そんな人がいるんだね」
「ホントですよね、ビックリしますよ。しかもそういう人に真正面から正論をぶつけるのがアオのスタイルじゃないですかあ。ああいう人にとってはそれってケンカを売ってるのと同義なんでも~う物騒で物騒で」
「蒼希ちゃんは本当に何ともなかった?」
「アオは本当にどんな人相手でもあの真顔を崩さないですし、荒っぽい人に詰め寄られても眉ひとつ動かさないんで本当に凄いですよ」
今日は学内システム以外の利用は原則禁止されていて、履修登録だけ済ませたら退室してくださいっていう日なんだ。だけどセンターのマシンに新しく入ったアドビのソフトで遊んでる人がいて、それを見つけたアオが注意しに行ったら逆切れしてっていう感じのよくあるヤツ。俺はそういう人への対応が苦手でずーっと林原さん頼みだったけど、完全にツケが回って来てるよね。
それで結局バイトリーダーとしてその人に注意はするんだけど、逆切れして興奮してる相手にやわやわ言ったところでまるで効果はないし、言っちゃえば情報センターのスタッフも一般の学生だから偉そうにしやがってみたいな感じでさらに暴れ回るし。じゃあ大学職員の那須田さんはどうしたって話なんだけど、例によっていたりいなかったりするから全然頼れないんだよね。
たまたま立ち寄った教務課の人に助けを求めた結果、その人には退場してもらった上でブラックリストに登録して、所属ゼミがあるようであれば担当教授に連絡を回す感じで着地した。履修登録が済んでいるのか済んでいないのかわからないけど、済んでいなかったところでさっさと登録をしないのが悪いとアオはまた淡々と仕事に戻っていった。頼もしい同期だなあ。
「失礼します。川北君、さっきの件だけど」
「はい」
「一応この春から所属するゼミの先生にはこちらからメールをしたんで、情報センターではこれ以上の手続きはしなくて大丈夫です」
「ありがとうございます」
「履修登録時に限らず、今後ああいうのが出たら本来は那須田さんに対応してもらうのが一番いいんだけど、いないときはすぐ教務課に内線をかけてください」
「えっと、伊指さん以外の人でも同じように対応してもらえるような感じですか?」
「そのように周知するから、同じように対応してもらえるはず。もしダメそうなら僕に直接連絡を下さい」
「わかりました、ありがとうございます」
履修登録期間は教務課の伊指さんに結構お世話になってるんだけど、どっちかと言わなくてもこの人の方がセンターの所長らしい働きをしてるんだよなあ。伊指さんは結構若い職員さんなんだけど、さっきの人の対応にしてもアオとは違うタイプのズバッと感があって凄かったよなあ。
「ちなみに、今までもああいうのはいたの?」
「そうですね。たまにいたんですけど、威厳のあるスタッフの先輩が迫力と目力で黙らせてきたっていう感じで」
「あはは、迫力と目力か。川北君はそういうタイプじゃなさそうだもんね。どっちかと言えば優しそうな」
「そうなんです。ちなみに理系の方ではトラブルはありませんか?」
「そういうことがあったっていう話は聞かないね」
「やっぱりそうなんですねー」
「そしたら僕は理系の会場に戻るから。あと、ついでに那須田さんにセンターにいるようチクッと刺しとくよ」
「本っ当に! よろしくお願いします!」
「それじゃあお疲れー」
「お疲れさまでーす」
こうやってセンターを気にかけてくれる大人の人がいることに対する安心感ったらないなって思いますよ! でも、春山さんも林原さんも、那須田さんはこっちからつつかないとダメだって言ってたし、俺も自分からつつきに行かないとダメなんだろうなあ。
「ミドリくん、威厳のあるスタッフの先輩の迫力と目力については他言し過ぎると怒られるよ」
「本当ですねー。でも、多少物騒でも味方の時の頼もしさは本当に凄まじかったなあと思います」
「春山さんと雄介さんがいたから教務課に通報するっていう選択肢が今まで思いつかなかったんだろうね」
「本当にそれなんですよ! だって大体何とかなるんですもんあの2人だと! 俺は大学職員の人がパッと見ただけでもわかる程度には目力でどうにか出来るタイプじゃないバイトリーダーなんですよ~…!」
end.
++++
繁忙期のバイトリーダー・ミドリ、どうやら荒くれ者の扱いには慣れない様子。リン様おらんししゃーない。
所長より頼れる大人も出て来たし、今後は自分で無理をしないで通報するようになるのかな? リン春が異常な目力やったんや
今回のカナコは甘々なだけでなくアメムチのちょっとしたムチも使えるいいお姉さんポジションのようです
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「うっうっうっうっ……今時あんな人がいるなんて思わないじゃないですかあカナコさぁん!」
「ミドリくんお疲れさま。でもクレーム対応はバイトリーダーの仕事だからね、ミドリくんが頼りなんだよ」
「バイトリーダーの仕事っていうのもわかるんですけど、そこは所長の仕事じゃないですか?」
「所長さんが気紛れな人だっていうのは歴が一番長いミドリくんが一番よーくわかってるでしょ?」
「そうなんですけど~」
今日は新2年生の健康診断と履修登録日。学年が下がっていくにつれて履修登録にかかる時間は長くなる傾向にあって、情報センターも人でごった返す印象がある。履修コマも多いし待ち時間が長くなるんだよね。いくら文理で履修登録の教室が分かれたからと言って、ヒマでヒマでしょうがないということは全くない。
で、真桜が健康診断から戻って来て俺は事務所に一旦戻ることが出来たんだけど、慣れ親しんだ事務所が本当に落ち着く! やっぱり俺はA番の人間なんだと強く思いますよね! 確かに俺はバイトリーダーだからどんなことにも対処しなきゃいけないんだけど、荒くれ者の対応はやっぱり出来ないんですよ林原さん!
「でも、ミドリくんの話が本当なら、本当に今時そんな人がいるんだね」
「ホントですよね、ビックリしますよ。しかもそういう人に真正面から正論をぶつけるのがアオのスタイルじゃないですかあ。ああいう人にとってはそれってケンカを売ってるのと同義なんでも~う物騒で物騒で」
「蒼希ちゃんは本当に何ともなかった?」
「アオは本当にどんな人相手でもあの真顔を崩さないですし、荒っぽい人に詰め寄られても眉ひとつ動かさないんで本当に凄いですよ」
今日は学内システム以外の利用は原則禁止されていて、履修登録だけ済ませたら退室してくださいっていう日なんだ。だけどセンターのマシンに新しく入ったアドビのソフトで遊んでる人がいて、それを見つけたアオが注意しに行ったら逆切れしてっていう感じのよくあるヤツ。俺はそういう人への対応が苦手でずーっと林原さん頼みだったけど、完全にツケが回って来てるよね。
それで結局バイトリーダーとしてその人に注意はするんだけど、逆切れして興奮してる相手にやわやわ言ったところでまるで効果はないし、言っちゃえば情報センターのスタッフも一般の学生だから偉そうにしやがってみたいな感じでさらに暴れ回るし。じゃあ大学職員の那須田さんはどうしたって話なんだけど、例によっていたりいなかったりするから全然頼れないんだよね。
たまたま立ち寄った教務課の人に助けを求めた結果、その人には退場してもらった上でブラックリストに登録して、所属ゼミがあるようであれば担当教授に連絡を回す感じで着地した。履修登録が済んでいるのか済んでいないのかわからないけど、済んでいなかったところでさっさと登録をしないのが悪いとアオはまた淡々と仕事に戻っていった。頼もしい同期だなあ。
「失礼します。川北君、さっきの件だけど」
「はい」
「一応この春から所属するゼミの先生にはこちらからメールをしたんで、情報センターではこれ以上の手続きはしなくて大丈夫です」
「ありがとうございます」
「履修登録時に限らず、今後ああいうのが出たら本来は那須田さんに対応してもらうのが一番いいんだけど、いないときはすぐ教務課に内線をかけてください」
「えっと、伊指さん以外の人でも同じように対応してもらえるような感じですか?」
「そのように周知するから、同じように対応してもらえるはず。もしダメそうなら僕に直接連絡を下さい」
「わかりました、ありがとうございます」
履修登録期間は教務課の伊指さんに結構お世話になってるんだけど、どっちかと言わなくてもこの人の方がセンターの所長らしい働きをしてるんだよなあ。伊指さんは結構若い職員さんなんだけど、さっきの人の対応にしてもアオとは違うタイプのズバッと感があって凄かったよなあ。
「ちなみに、今までもああいうのはいたの?」
「そうですね。たまにいたんですけど、威厳のあるスタッフの先輩が迫力と目力で黙らせてきたっていう感じで」
「あはは、迫力と目力か。川北君はそういうタイプじゃなさそうだもんね。どっちかと言えば優しそうな」
「そうなんです。ちなみに理系の方ではトラブルはありませんか?」
「そういうことがあったっていう話は聞かないね」
「やっぱりそうなんですねー」
「そしたら僕は理系の会場に戻るから。あと、ついでに那須田さんにセンターにいるようチクッと刺しとくよ」
「本っ当に! よろしくお願いします!」
「それじゃあお疲れー」
「お疲れさまでーす」
こうやってセンターを気にかけてくれる大人の人がいることに対する安心感ったらないなって思いますよ! でも、春山さんも林原さんも、那須田さんはこっちからつつかないとダメだって言ってたし、俺も自分からつつきに行かないとダメなんだろうなあ。
「ミドリくん、威厳のあるスタッフの先輩の迫力と目力については他言し過ぎると怒られるよ」
「本当ですねー。でも、多少物騒でも味方の時の頼もしさは本当に凄まじかったなあと思います」
「春山さんと雄介さんがいたから教務課に通報するっていう選択肢が今まで思いつかなかったんだろうね」
「本当にそれなんですよ! だって大体何とかなるんですもんあの2人だと! 俺は大学職員の人がパッと見ただけでもわかる程度には目力でどうにか出来るタイプじゃないバイトリーダーなんですよ~…!」
end.
++++
繁忙期のバイトリーダー・ミドリ、どうやら荒くれ者の扱いには慣れない様子。リン様おらんししゃーない。
所長より頼れる大人も出て来たし、今後は自分で無理をしないで通報するようになるのかな? リン春が異常な目力やったんや
今回のカナコは甘々なだけでなくアメムチのちょっとしたムチも使えるいいお姉さんポジションのようです
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