2021(04)
■俺たちのすがやん
++++
「えっじょい! あー……しんど」
「大丈夫かシノ」
「何かよー、最近やたらくしゃみ出るんだわ。真面目に引っ越し祝いでサキがくれた保湿ティッシュが役に立ちまくり」
「と言うかそれ、ひょっとしなくても花粉症なんじゃないのか?」
「やめろやめろ、季節の変わり目でちょっとブルってるだけだ! 断じて花粉症なんかじゃないぞ!」
時間があると何となくシノの家に遊びに来ることが増えたなとは自覚している。俺の家から大学までは原付で10分ほど。シノの住んでいるアパートまでもそれくらいの時間で着くから軽率に来がちなんだよな。玲那はとりぃと遊ぶのに忙しくしているし、彩人は星ヶ丘で今度新たに参加するファンフェスのステージに向けて忙しくなりつつあるし。
夕飯の材料を買いにスーパーに出たまではよかった。それで帰って来た途端にシノがくしゃみを連発する。聞くと、ちょっと前から鼻水やくしゃみが出るようになったとのこと。雨の日よりは晴れの日の方がしんどいとも。絶対花粉症じゃないかと思いつつも、得てして花粉症というのは自覚したがらない人間が多いように思える。諦めてさっさと認めて薬を飲めばいいものを。
保湿ティッシュという贅沢品も、引っ越し祝いでサキが用意してくれたものがあったので何とかやれているようだ。だけどこの調子だとそれもすぐになくなってしまうだろう。倹約の鬼のシノにはかなり痛い出費となるはずだ。晴れて1人暮らしを出来るようにはなったものの、まだまだお金は必要で、ないよりはあった方がいいから節約を続けている。
「外から持ち込まれた花粉が部屋中に舞って、みたいなこともCMとかでやってるよな」
「そうだな。だから伊東さんなんかは部屋に学生が持つレベルのじゃない空気清浄機を持ってたって話だし」
「あ、カズ先輩て花粉症なんか」
「あの人は相当酷い。多分俺が知ってる中で一番酷いんじゃないかな。調子悪い日は熱が出たりして寝込むレベルだとか」
「ヤッバ」
「だから洗濯物を外に干すなんて言語道断だし、なるべく外に出なくても生活できるように冷凍食品だとか保存食を作って備えてたって」
「花粉症云々を抜きにしても冷凍食品のいい使い方みたいなのをガチ勢に学びたい気持ちはある。ほら、テレビとか見てても業務系スーパーだとか倉庫型の店とかで爆買いしてナンタラカンタラとかあるだろ」
「あるな」
「あーゆーので上手くやれば節約も出来るんだろうけど、俺には足もないし腕もないし。1回行ってみたいけどなかなかなー」
「たくさん買うんなら原付よりは車の方がいいだろうしなあ」
「ワンチャン俺たちのすがやん様に交渉してみる価値はありそうだけどなぁー、どうかなぁー?」
「まあ、その辺はお礼をしっかりしとけば大丈夫だとは思うけど」
「じゃあ聞いてみるぜ!」
「でも倉庫型の店って確か会員制で、会員証1枚につき何人までみたいな入場制限なかったっけ」
「え、マジ? じゃあ誰かが会員じゃないとダメなヤツじゃん」
大きな店での爆買いに憧れる気持ちの前に立ちはだかるのは現実的な問題だ。如何せん物理的に大きな店となるとどこにでも建てられる物でもなく、郊外という意味では豊葦にもチャンスはありそうだけど新しく出来た店も豊葦からは絶妙に近くもなく遠くもないというレベルで離れた場所にある。まさに俺たちのすがやんに懸けるしかないという状況。
「つか既読付くの例によって早いな!? は!? しかも電話とか! はいもしもしー」
『あ、もしもしシノ? 買い物したいんだって?』
「そーなんだよ。今ササがうちに来ててさ、冷凍食品とかを上手く使って節約できねーかって話で盛り上がったんだよ」
『あーはいはいそれでなー。確かにデカい買い物するなら車があった方が断然いいもんなー』
「それですがやんと一緒に行けねーかなーと思って。でも俺も今知ったけどあの店って会員じゃないと入れねーんだってな?」
『それは俺が家族会員のカード持ってるから全然行けるけど』
「マジか! やっぱ俺たちのすがやんだぜ!」
『そしたらいつ行く? 行くんなら平日の方がいいんだろうけど、直近だと明日か明後日になるんだよなー。悪いんだけどそれ以外は割とギチギチなんだよ』
「俺は日中割とヒマだから、あーでも月曜の方がいいかな」
『そしたら明日の朝から行くかー。悪いけど、店の最寄り駅までは来てくれると助かる』
「りょうかーい」
『じゃ明日なー』
「はいはーい」
やけに話がトントン拍子で進むなと思ったし、さすが俺たちのすがやんだ。いつもいつもドライバーとして働いてもらって本当に足を向けて寝られない。しかも倉庫の店の会員カードも持ってるとかさすが過ぎないか。
「シノ、何を買うかとか、予算とかをしっかり考えて行った方がいいと思うぞ」
「そうだよな。くーっ、何を買おう! つか何があるんだろうな!?」
「これを買ったらいいみたいな動画とかまとめ記事とか見て下調べしたらいいんじゃないか?」
「それな。大体の目星を付けた上で、現地で見つけた俺のときめきを大事にしていこう。なあ、ササも来てくれよ」
「俺も行くのか?」
「俺の生活を何となく把握してるだろ」
「仕方ないな、わかったよ」
「何言ってんだよ、内心誘われたのめちゃくちゃ嬉しいクセに」
「バレてるなら仕方ない。俺も調べもの手伝う」
end.
++++
陸さんみんなの輪からハブられるのに敏感だからな! 忙しそうなイメージがあるらしいからね、仕方ないね
そして俺たちのすがやんは安定なのである。頼まれれば予定を合わすし多分暇な時間があるのが嫌なタイプ?
すがやんだったら何トコとかの会員カードも普通に持ってそうだなとは思いました、まる
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「えっじょい! あー……しんど」
「大丈夫かシノ」
「何かよー、最近やたらくしゃみ出るんだわ。真面目に引っ越し祝いでサキがくれた保湿ティッシュが役に立ちまくり」
「と言うかそれ、ひょっとしなくても花粉症なんじゃないのか?」
「やめろやめろ、季節の変わり目でちょっとブルってるだけだ! 断じて花粉症なんかじゃないぞ!」
時間があると何となくシノの家に遊びに来ることが増えたなとは自覚している。俺の家から大学までは原付で10分ほど。シノの住んでいるアパートまでもそれくらいの時間で着くから軽率に来がちなんだよな。玲那はとりぃと遊ぶのに忙しくしているし、彩人は星ヶ丘で今度新たに参加するファンフェスのステージに向けて忙しくなりつつあるし。
夕飯の材料を買いにスーパーに出たまではよかった。それで帰って来た途端にシノがくしゃみを連発する。聞くと、ちょっと前から鼻水やくしゃみが出るようになったとのこと。雨の日よりは晴れの日の方がしんどいとも。絶対花粉症じゃないかと思いつつも、得てして花粉症というのは自覚したがらない人間が多いように思える。諦めてさっさと認めて薬を飲めばいいものを。
保湿ティッシュという贅沢品も、引っ越し祝いでサキが用意してくれたものがあったので何とかやれているようだ。だけどこの調子だとそれもすぐになくなってしまうだろう。倹約の鬼のシノにはかなり痛い出費となるはずだ。晴れて1人暮らしを出来るようにはなったものの、まだまだお金は必要で、ないよりはあった方がいいから節約を続けている。
「外から持ち込まれた花粉が部屋中に舞って、みたいなこともCMとかでやってるよな」
「そうだな。だから伊東さんなんかは部屋に学生が持つレベルのじゃない空気清浄機を持ってたって話だし」
「あ、カズ先輩て花粉症なんか」
「あの人は相当酷い。多分俺が知ってる中で一番酷いんじゃないかな。調子悪い日は熱が出たりして寝込むレベルだとか」
「ヤッバ」
「だから洗濯物を外に干すなんて言語道断だし、なるべく外に出なくても生活できるように冷凍食品だとか保存食を作って備えてたって」
「花粉症云々を抜きにしても冷凍食品のいい使い方みたいなのをガチ勢に学びたい気持ちはある。ほら、テレビとか見てても業務系スーパーだとか倉庫型の店とかで爆買いしてナンタラカンタラとかあるだろ」
「あるな」
「あーゆーので上手くやれば節約も出来るんだろうけど、俺には足もないし腕もないし。1回行ってみたいけどなかなかなー」
「たくさん買うんなら原付よりは車の方がいいだろうしなあ」
「ワンチャン俺たちのすがやん様に交渉してみる価値はありそうだけどなぁー、どうかなぁー?」
「まあ、その辺はお礼をしっかりしとけば大丈夫だとは思うけど」
「じゃあ聞いてみるぜ!」
「でも倉庫型の店って確か会員制で、会員証1枚につき何人までみたいな入場制限なかったっけ」
「え、マジ? じゃあ誰かが会員じゃないとダメなヤツじゃん」
大きな店での爆買いに憧れる気持ちの前に立ちはだかるのは現実的な問題だ。如何せん物理的に大きな店となるとどこにでも建てられる物でもなく、郊外という意味では豊葦にもチャンスはありそうだけど新しく出来た店も豊葦からは絶妙に近くもなく遠くもないというレベルで離れた場所にある。まさに俺たちのすがやんに懸けるしかないという状況。
「つか既読付くの例によって早いな!? は!? しかも電話とか! はいもしもしー」
『あ、もしもしシノ? 買い物したいんだって?』
「そーなんだよ。今ササがうちに来ててさ、冷凍食品とかを上手く使って節約できねーかって話で盛り上がったんだよ」
『あーはいはいそれでなー。確かにデカい買い物するなら車があった方が断然いいもんなー』
「それですがやんと一緒に行けねーかなーと思って。でも俺も今知ったけどあの店って会員じゃないと入れねーんだってな?」
『それは俺が家族会員のカード持ってるから全然行けるけど』
「マジか! やっぱ俺たちのすがやんだぜ!」
『そしたらいつ行く? 行くんなら平日の方がいいんだろうけど、直近だと明日か明後日になるんだよなー。悪いんだけどそれ以外は割とギチギチなんだよ』
「俺は日中割とヒマだから、あーでも月曜の方がいいかな」
『そしたら明日の朝から行くかー。悪いけど、店の最寄り駅までは来てくれると助かる』
「りょうかーい」
『じゃ明日なー』
「はいはーい」
やけに話がトントン拍子で進むなと思ったし、さすが俺たちのすがやんだ。いつもいつもドライバーとして働いてもらって本当に足を向けて寝られない。しかも倉庫の店の会員カードも持ってるとかさすが過ぎないか。
「シノ、何を買うかとか、予算とかをしっかり考えて行った方がいいと思うぞ」
「そうだよな。くーっ、何を買おう! つか何があるんだろうな!?」
「これを買ったらいいみたいな動画とかまとめ記事とか見て下調べしたらいいんじゃないか?」
「それな。大体の目星を付けた上で、現地で見つけた俺のときめきを大事にしていこう。なあ、ササも来てくれよ」
「俺も行くのか?」
「俺の生活を何となく把握してるだろ」
「仕方ないな、わかったよ」
「何言ってんだよ、内心誘われたのめちゃくちゃ嬉しいクセに」
「バレてるなら仕方ない。俺も調べもの手伝う」
end.
++++
陸さんみんなの輪からハブられるのに敏感だからな! 忙しそうなイメージがあるらしいからね、仕方ないね
そして俺たちのすがやんは安定なのである。頼まれれば予定を合わすし多分暇な時間があるのが嫌なタイプ?
すがやんだったら何トコとかの会員カードも普通に持ってそうだなとは思いました、まる
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