2021(04)
■星の子きらきら
++++
「そしたら、今日は大体こんな感じでお疲れさんっしたー」
「お疲れさまでーす」
「とりぃ! ねえねえこの後何か予定ある?」
「この後ですか? 特にありませんが」
「だったらさ、一緒にお茶しない? 当麻と北星も一緒なんだけど」
「確かに、お茶をするにはいい時間ですね。わかりました。ぜひご一緒させてください」
「やったあ!」
今日の会議は新たに対策委員に加入した向島のとりぃこと鳥居春風さんの紹介と、初心者講習会に向けてこれからどう動いていくかということの確認が主だった。春休みのうちは昼時に行われている会議だけど、これから授業が始まってくると夜になって、お茶が夕飯になるんだろう。
俺と北星にくるちゃんという構図は割とよくあるんだけど、くるちゃんがとりぃに声をかけて4人での移動になる。会議をやってるのもカフェだからここでもいいんだけど、何となく移動して別のカフェに行くという感じになってる。
「なーんか、初心者講習会って一言で言っても去年と今年でやることも変わってくるのって難しいよねー」
「やることは変わってるけど、今まではラジオに特化してた内容を映像だとか、他のことにも間口を広げるっていう意味ではより取っつきやすくはなると思うけどね」
「当麻はしっかりしてるから難しい話にもついてけるけどさあ、あたしみたいなのんきな人間は1回言われただけじゃ理解出来ないんだよ」
俺たちが運営する初心者講習会は、インターフェイスでも映像の活動に力を入れていくということもあってラジオだけにこだわらない内容で行く流れになっている。映像作品制作の技術的な話ではなく、それこそ広く外に向けた作品作りのリテラシーを改めて問う感じだ。
くるちゃんは難しい話はわからないと言うけど、自分もブログや映像を外部に発信してるんだから、根っこの部分ではわかっているはずなんだ。もしそれを理解せずにやっているとするならあんなにきめ細やかなブログにはなっていない。
「まあ、その辺はまだまだこれからだから」
「俺も~、難しいのはちょっと~。インターフェイスはただでさえ覚えることが多いのに~」
「主に人の名前な。対策委員のみんなの顔と名前はもう一致するようになったか?」
「大体~」
「最悪定例会はいいから対策委員は覚えろ。これから1年やってくんだぞ」
「あたしとちとせちゃんがいてよかったね北星、覚えることが2つ少なくなって」
「ほんとに~」
「ええと、北星くんは人の顔と名前を覚えるのが苦手なのですか?」
「あー、何て言えばいいのかな。北星は俺たちAKBCの中でも映像編集技術が図抜けてるんだけど、その分日常生活が残念と言うか」
「映像に関わってるときはしっかりしてるしカッコいいんだけどね。普段は寝ぼけてコーヒーで溺れるくらいのんびりしてて。あたしもスイーツ断面動画やってなかったらここまで仲良くしてもらえてないもん」
「そうなのですね。一点集中という感じなのでしょうか」
「そう言えば聞こえはいいんだけど」
私は映像作品などはしっかり作ったことがないので覚えてもらえるかどうか不安ですね、ととりぃが呟く。ただ、前に高木さんと話していたときに「向島の新メンバー2人も軽く映像作品は作ってるみたいで」と興味は持っていたようだし、大丈夫だとは思いたいけど。
「ああ、そうだ。思い出しました。先日、緑ヶ丘の皆さんが薪ストーブの会で星空の撮影会を開いていたと聞きました」
「そうそう! あたしが先生みたいなことをしてたんだけど、その技術は全っ部! この北星の受け売りなんだよ」
「スマホカメラでの撮影までその技術が及んでいると聞いて、北星くんは本当に凄いんだなと。私も自分のカメラで天体の撮影は行うのですが、カメラの技術はまだまだで」
「それは、写真撮影?」
「そうですね。いつかは流星群の映像を撮影しながら観測をしてみたいとは思うのですが、それをやるには道具と技術がまだまだ足りません」
「とりぃは、星の撮影に興味のある人?」
「はい。星や宇宙が好きで、将来はプラネタリウムに携わりたいと思っているのです。上映中のアナウンスもしたいですし、プラネタリウムで上映される映像を作るのもいいなと思っていて」
「俺も前にくるちゃんに付き合ってもらってプラネタリウムを見たけど、映画館や普通のディスプレイとはまた違う見え方で面白いよね」
この分だと北星はちゃんととりぃの顔と名前は一致させられるかなと安心した。星の人という風に情報が結びついて覚えられるはずだ。でも、さすがインターフェイスだなと思うのは、案外北星のスイッチをオンに出来る人が多いんだ。
「でも、天体の撮影か。やったことのない分野だなあ」
「どうにかして良く撮りたいと思うのですが。徹平くんから送られてきた星空の写真がとても素敵でしたし」
「とりぃが使ってるカメラがわかればアドバイス出来るかも。よかったら教えてくれる? あと、俺も自分で調べていろいろ試してみるよ」
「カメラの機種については家に帰ってから調べますね。すみませんわざわざ」
「北星はね、優しくて真面目で誠実だから、こんな質問して大丈夫だったかなってことでも真剣に考えてくれるんだよ」
「そうなのですね」
優しくて真面目で誠実? それは誰のことだと思いつつも、北星に対するくるちゃんの評価がそうなっているっていうのはかなり好印象なんじゃないかと驚くばかりだ。でももうしばらくは動画の手伝いをしてるような感じなのかな。
「はい北星問題! この子の名前と大学は?」
「急だよ~。えっと~、向島のとりぃ~。星の子~」
「せいかーい」
「北星、フルネームは覚えてるか」
「それはまた今度ね~」
「でも、この短期間で大まかな情報を覚えられてるのは、成長の兆しが見られるな」
「とりぃ、北星に覚えてもらうのって本当に難しいから! 星の子で覚えられたのは凄いよ!」
「そういうことなら喜んでおきますね。ありがとうございます」
「いえ~」
「いえじゃないんだよお前は」
end.
++++
とは言え星の子で覚えられるのは春風的には満更でもないんじゃないかしら
北星の世話役としての役割も期待されている当麻だけに、生活指導(?)も仕事の内である。
写真撮影だったら青敬にはあやめもいるし、情報自体はいろいろ仕入れられそう。でもあやめも星は多分やってなさそう。
.
++++
「そしたら、今日は大体こんな感じでお疲れさんっしたー」
「お疲れさまでーす」
「とりぃ! ねえねえこの後何か予定ある?」
「この後ですか? 特にありませんが」
「だったらさ、一緒にお茶しない? 当麻と北星も一緒なんだけど」
「確かに、お茶をするにはいい時間ですね。わかりました。ぜひご一緒させてください」
「やったあ!」
今日の会議は新たに対策委員に加入した向島のとりぃこと鳥居春風さんの紹介と、初心者講習会に向けてこれからどう動いていくかということの確認が主だった。春休みのうちは昼時に行われている会議だけど、これから授業が始まってくると夜になって、お茶が夕飯になるんだろう。
俺と北星にくるちゃんという構図は割とよくあるんだけど、くるちゃんがとりぃに声をかけて4人での移動になる。会議をやってるのもカフェだからここでもいいんだけど、何となく移動して別のカフェに行くという感じになってる。
「なーんか、初心者講習会って一言で言っても去年と今年でやることも変わってくるのって難しいよねー」
「やることは変わってるけど、今まではラジオに特化してた内容を映像だとか、他のことにも間口を広げるっていう意味ではより取っつきやすくはなると思うけどね」
「当麻はしっかりしてるから難しい話にもついてけるけどさあ、あたしみたいなのんきな人間は1回言われただけじゃ理解出来ないんだよ」
俺たちが運営する初心者講習会は、インターフェイスでも映像の活動に力を入れていくということもあってラジオだけにこだわらない内容で行く流れになっている。映像作品制作の技術的な話ではなく、それこそ広く外に向けた作品作りのリテラシーを改めて問う感じだ。
くるちゃんは難しい話はわからないと言うけど、自分もブログや映像を外部に発信してるんだから、根っこの部分ではわかっているはずなんだ。もしそれを理解せずにやっているとするならあんなにきめ細やかなブログにはなっていない。
「まあ、その辺はまだまだこれからだから」
「俺も~、難しいのはちょっと~。インターフェイスはただでさえ覚えることが多いのに~」
「主に人の名前な。対策委員のみんなの顔と名前はもう一致するようになったか?」
「大体~」
「最悪定例会はいいから対策委員は覚えろ。これから1年やってくんだぞ」
「あたしとちとせちゃんがいてよかったね北星、覚えることが2つ少なくなって」
「ほんとに~」
「ええと、北星くんは人の顔と名前を覚えるのが苦手なのですか?」
「あー、何て言えばいいのかな。北星は俺たちAKBCの中でも映像編集技術が図抜けてるんだけど、その分日常生活が残念と言うか」
「映像に関わってるときはしっかりしてるしカッコいいんだけどね。普段は寝ぼけてコーヒーで溺れるくらいのんびりしてて。あたしもスイーツ断面動画やってなかったらここまで仲良くしてもらえてないもん」
「そうなのですね。一点集中という感じなのでしょうか」
「そう言えば聞こえはいいんだけど」
私は映像作品などはしっかり作ったことがないので覚えてもらえるかどうか不安ですね、ととりぃが呟く。ただ、前に高木さんと話していたときに「向島の新メンバー2人も軽く映像作品は作ってるみたいで」と興味は持っていたようだし、大丈夫だとは思いたいけど。
「ああ、そうだ。思い出しました。先日、緑ヶ丘の皆さんが薪ストーブの会で星空の撮影会を開いていたと聞きました」
「そうそう! あたしが先生みたいなことをしてたんだけど、その技術は全っ部! この北星の受け売りなんだよ」
「スマホカメラでの撮影までその技術が及んでいると聞いて、北星くんは本当に凄いんだなと。私も自分のカメラで天体の撮影は行うのですが、カメラの技術はまだまだで」
「それは、写真撮影?」
「そうですね。いつかは流星群の映像を撮影しながら観測をしてみたいとは思うのですが、それをやるには道具と技術がまだまだ足りません」
「とりぃは、星の撮影に興味のある人?」
「はい。星や宇宙が好きで、将来はプラネタリウムに携わりたいと思っているのです。上映中のアナウンスもしたいですし、プラネタリウムで上映される映像を作るのもいいなと思っていて」
「俺も前にくるちゃんに付き合ってもらってプラネタリウムを見たけど、映画館や普通のディスプレイとはまた違う見え方で面白いよね」
この分だと北星はちゃんととりぃの顔と名前は一致させられるかなと安心した。星の人という風に情報が結びついて覚えられるはずだ。でも、さすがインターフェイスだなと思うのは、案外北星のスイッチをオンに出来る人が多いんだ。
「でも、天体の撮影か。やったことのない分野だなあ」
「どうにかして良く撮りたいと思うのですが。徹平くんから送られてきた星空の写真がとても素敵でしたし」
「とりぃが使ってるカメラがわかればアドバイス出来るかも。よかったら教えてくれる? あと、俺も自分で調べていろいろ試してみるよ」
「カメラの機種については家に帰ってから調べますね。すみませんわざわざ」
「北星はね、優しくて真面目で誠実だから、こんな質問して大丈夫だったかなってことでも真剣に考えてくれるんだよ」
「そうなのですね」
優しくて真面目で誠実? それは誰のことだと思いつつも、北星に対するくるちゃんの評価がそうなっているっていうのはかなり好印象なんじゃないかと驚くばかりだ。でももうしばらくは動画の手伝いをしてるような感じなのかな。
「はい北星問題! この子の名前と大学は?」
「急だよ~。えっと~、向島のとりぃ~。星の子~」
「せいかーい」
「北星、フルネームは覚えてるか」
「それはまた今度ね~」
「でも、この短期間で大まかな情報を覚えられてるのは、成長の兆しが見られるな」
「とりぃ、北星に覚えてもらうのって本当に難しいから! 星の子で覚えられたのは凄いよ!」
「そういうことなら喜んでおきますね。ありがとうございます」
「いえ~」
「いえじゃないんだよお前は」
end.
++++
とは言え星の子で覚えられるのは春風的には満更でもないんじゃないかしら
北星の世話役としての役割も期待されている当麻だけに、生活指導(?)も仕事の内である。
写真撮影だったら青敬にはあやめもいるし、情報自体はいろいろ仕入れられそう。でもあやめも星は多分やってなさそう。
.