2021(04)
■新しい、知らない春が来た
++++
「わかってはいた、わかってはいたんだけど……」
「?」
「林原さんて本当にいなくなるんだ!」
去年の今頃もほとんど同じような件をやったけど、今度の衝撃は去年の比じゃないと言うか、去年のそれと今年のそれが合わさって、ひゃーって。より深刻感が増したと言うか。いやいや、一応俺だってバイトリーダーになってこれから頑張っていくんだとは思ってるけど、まだまだスタッフ歴の浅い新3年生なワケで。
この間、星港大学でも卒業式が執り行われた。それと同時に4年生だった林原さんと烏丸さんの籍がなくなって、情報センターのアクティブなスタッフは5人になった。まあ、5人ならまだいいかなとは思えるんだけど、抜けていった戦力が大きすぎてちょっと途方に暮れちゃうレベルなんだよなあ。春山さんと林原さんが2人ともいた時代を知っている俺だから、余計にそう思っちゃうのかも。
「ミドリ、バイトリーダーなんだからしっかりして」
「うう……頑張ります」
「ミドリくん、みんなで頑張ろうね。私たちにもどんどん仕事振ってくれていいんだから」
「そっすよドリミさん! なあレン!」
「はい」
ちなみに、今のスタッフの戦力図を見ると、ちょっとA番が得意な人に偏ってるかなって感じがしないでもない。と言うか、B番の主と呼ばれた実質B番専の林原さんは当然として、烏丸さんも8割から9割ほどB番の人だったし。残ってるのがA番専のカナコさんに、A番の方が得意な俺と有馬くん。真桜はどっちもイケるけど、アオにかかってるんだよな~。
「そしたら、これから新学期に向けたお知らせをいくつかします。来週から在校生の健康診断と履修登録が始まるということで、センターに利用者がひっきりなしに来ます」
「ドリミさん、それって星大生全員が来るんすか?」
「去年まではそうだったんだけど、今年からは理系の学部の人たちは情報系の教室で履修登録が出来るようになったそうです。だからセンターで捌く人数自体は少なくなるんだけど、多いことには変わりないしスタッフの人数も少ないので油断は出来ません」
「やることはいつもと同じっすか?」
「えっとね、A番は大体同じだけど、学生証の裏側にちゃんと新年度のシールが貼ってあるかどうかを確認しなきゃいけないよ」
「つか何なんすかこのシール?」
「俺もあんまり使ったことないからわかんないなあ。誰か知ってる?」
「これは、学割を使った記録をするためのシールです。例えば、帰省や就職活動などで公共交通機関を利用する際に証書を発行するのですが、その時に使います。年に10回まで使えます」
「おお、さすがレン、北辰出身だけあって使ってんだなちゃんと」
「飛行機の場合は学生証があればいいですし事前予約が出来ないのであまり使わないのですが、鉄道の場合は必要になりますね」
これにはあまり学割を使う機会のない面々がへーと感心して、受付業務に当たる人は改めて確認をしていきましょうということで落ち着く。俺も帰省は車だからあんまり学割みたいな物を使う機会がなかったんだよね。タカティみたく電車で帰省することがある人だったら使えるのかな。
それから、学生証のシールついでに健康診断の回り方についてもお知らせ。特に2人いる学年の人に対して。出来れば1人ずつ交代で健康診断に行ってほしいっていうのと、出来ればなる早で回って来て欲しいっていう2点。1人ずつ回ればセンターに4人は確保できるんだもんね。交代で休憩にだって入れちゃうのが素晴らしいよね!
「それから、皆さんには連絡してありますが、先月、センターのマシンにアドビのソフトが入りました。センターの利用者がそれらを本格的に使うのは多分これからになってくるので、その対応も出来るようにお願いしたいです。って言うかフォトショとか使える人ってどれくらいいますか? まずアオと」
「私はもう含まれてるんだ」
「写真屋で使ってるでしょ」
「まあね」
「私もある程度は使えるよ。コスプレに必要だから覚えたの」
「ですよねえ…! この分野に関してはカナコさんも大きな戦力になるという話は林原さんから聞いてますんで、よろしくお願いします。有馬くんと真桜は?」
「僕は型紙作りでIllustratorや洋裁CADを使いますね」
「自分は画像から音楽、映像まで何でもござれっすー! つかそーゆー学科なんで使えねーと話になんねっす」
「あああ~…! 真桜~! センターの命運は真桜にかかってると言っても過言じゃない~!」
「ちょっ、ドリミさん大袈裟っすよ」
「いやあ、俺がその辺からっきしだからさ。みんながそれなりに扱えるのが頼もしいし、これを機に俺も覚えた方がいいのかな?」
実務であったりプライベートで使う予定があるなら覚えて損はないけど、使う予定がないならどっちでもいいとアオがバッサリ行くんだもんなあ。でも、これが実務ってヤツなんじゃないのかなとはちょっと思う。まあ、1人でバイトしてる時に助けてって言われたら困るけど、誰かしらいてくれると思うし。
「そういう感じでこれから繁忙期に入って来るのでよろしくお願いします。それから、求人の書類もそこの掲示板と自習室の中に掲示するんで、新しいスタッフが入ってくれることも祈って下さい!」
「はーい」
「ところで、コピー用紙のストックは大丈夫ですか?」
「発注済みだよ」
「ありがとうございます! あ、そうだ。ブラックリストの整理もしないと。皆さんは事務所や自習室の掃除などをお願いしていいですか?」
「ミドリ、その仕事興味しかないから見ていい?」
「アオはダメ」
end.
++++
林原さんて本当にいなくなるんだ! 衝撃よねえ。春山さんとリン様が2人ともいない情報センターの穏やかたるや。
あとダイチもいなくなったんでパンチがなさすぎて牧歌的と言うか平穏と言うのがしっくりくる。奇人変人成分が少ない
果たしてミドリはこれからバイトリーダーとしてしっかりやっていけるのか
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「わかってはいた、わかってはいたんだけど……」
「?」
「林原さんて本当にいなくなるんだ!」
去年の今頃もほとんど同じような件をやったけど、今度の衝撃は去年の比じゃないと言うか、去年のそれと今年のそれが合わさって、ひゃーって。より深刻感が増したと言うか。いやいや、一応俺だってバイトリーダーになってこれから頑張っていくんだとは思ってるけど、まだまだスタッフ歴の浅い新3年生なワケで。
この間、星港大学でも卒業式が執り行われた。それと同時に4年生だった林原さんと烏丸さんの籍がなくなって、情報センターのアクティブなスタッフは5人になった。まあ、5人ならまだいいかなとは思えるんだけど、抜けていった戦力が大きすぎてちょっと途方に暮れちゃうレベルなんだよなあ。春山さんと林原さんが2人ともいた時代を知っている俺だから、余計にそう思っちゃうのかも。
「ミドリ、バイトリーダーなんだからしっかりして」
「うう……頑張ります」
「ミドリくん、みんなで頑張ろうね。私たちにもどんどん仕事振ってくれていいんだから」
「そっすよドリミさん! なあレン!」
「はい」
ちなみに、今のスタッフの戦力図を見ると、ちょっとA番が得意な人に偏ってるかなって感じがしないでもない。と言うか、B番の主と呼ばれた実質B番専の林原さんは当然として、烏丸さんも8割から9割ほどB番の人だったし。残ってるのがA番専のカナコさんに、A番の方が得意な俺と有馬くん。真桜はどっちもイケるけど、アオにかかってるんだよな~。
「そしたら、これから新学期に向けたお知らせをいくつかします。来週から在校生の健康診断と履修登録が始まるということで、センターに利用者がひっきりなしに来ます」
「ドリミさん、それって星大生全員が来るんすか?」
「去年まではそうだったんだけど、今年からは理系の学部の人たちは情報系の教室で履修登録が出来るようになったそうです。だからセンターで捌く人数自体は少なくなるんだけど、多いことには変わりないしスタッフの人数も少ないので油断は出来ません」
「やることはいつもと同じっすか?」
「えっとね、A番は大体同じだけど、学生証の裏側にちゃんと新年度のシールが貼ってあるかどうかを確認しなきゃいけないよ」
「つか何なんすかこのシール?」
「俺もあんまり使ったことないからわかんないなあ。誰か知ってる?」
「これは、学割を使った記録をするためのシールです。例えば、帰省や就職活動などで公共交通機関を利用する際に証書を発行するのですが、その時に使います。年に10回まで使えます」
「おお、さすがレン、北辰出身だけあって使ってんだなちゃんと」
「飛行機の場合は学生証があればいいですし事前予約が出来ないのであまり使わないのですが、鉄道の場合は必要になりますね」
これにはあまり学割を使う機会のない面々がへーと感心して、受付業務に当たる人は改めて確認をしていきましょうということで落ち着く。俺も帰省は車だからあんまり学割みたいな物を使う機会がなかったんだよね。タカティみたく電車で帰省することがある人だったら使えるのかな。
それから、学生証のシールついでに健康診断の回り方についてもお知らせ。特に2人いる学年の人に対して。出来れば1人ずつ交代で健康診断に行ってほしいっていうのと、出来ればなる早で回って来て欲しいっていう2点。1人ずつ回ればセンターに4人は確保できるんだもんね。交代で休憩にだって入れちゃうのが素晴らしいよね!
「それから、皆さんには連絡してありますが、先月、センターのマシンにアドビのソフトが入りました。センターの利用者がそれらを本格的に使うのは多分これからになってくるので、その対応も出来るようにお願いしたいです。って言うかフォトショとか使える人ってどれくらいいますか? まずアオと」
「私はもう含まれてるんだ」
「写真屋で使ってるでしょ」
「まあね」
「私もある程度は使えるよ。コスプレに必要だから覚えたの」
「ですよねえ…! この分野に関してはカナコさんも大きな戦力になるという話は林原さんから聞いてますんで、よろしくお願いします。有馬くんと真桜は?」
「僕は型紙作りでIllustratorや洋裁CADを使いますね」
「自分は画像から音楽、映像まで何でもござれっすー! つかそーゆー学科なんで使えねーと話になんねっす」
「あああ~…! 真桜~! センターの命運は真桜にかかってると言っても過言じゃない~!」
「ちょっ、ドリミさん大袈裟っすよ」
「いやあ、俺がその辺からっきしだからさ。みんながそれなりに扱えるのが頼もしいし、これを機に俺も覚えた方がいいのかな?」
実務であったりプライベートで使う予定があるなら覚えて損はないけど、使う予定がないならどっちでもいいとアオがバッサリ行くんだもんなあ。でも、これが実務ってヤツなんじゃないのかなとはちょっと思う。まあ、1人でバイトしてる時に助けてって言われたら困るけど、誰かしらいてくれると思うし。
「そういう感じでこれから繁忙期に入って来るのでよろしくお願いします。それから、求人の書類もそこの掲示板と自習室の中に掲示するんで、新しいスタッフが入ってくれることも祈って下さい!」
「はーい」
「ところで、コピー用紙のストックは大丈夫ですか?」
「発注済みだよ」
「ありがとうございます! あ、そうだ。ブラックリストの整理もしないと。皆さんは事務所や自習室の掃除などをお願いしていいですか?」
「ミドリ、その仕事興味しかないから見ていい?」
「アオはダメ」
end.
++++
林原さんて本当にいなくなるんだ! 衝撃よねえ。春山さんとリン様が2人ともいない情報センターの穏やかたるや。
あとダイチもいなくなったんでパンチがなさすぎて牧歌的と言うか平穏と言うのがしっくりくる。奇人変人成分が少ない
果たしてミドリはこれからバイトリーダーとしてしっかりやっていけるのか
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