2021(04)
■一番乗りをしていたい
++++
「春風、おはよう」
「徹平くん。おはようございます」
春休みのいいところはスケジュールを合わせやすいところだなと思う。大学が始まれば始まったで規則的になるからお互いの生活リズムがわかりやすくもなるんだけど、自由な時間はやっぱり休みの方が多いと思うから。
春風と付き合い始めてもうすぐ1ヶ月。今日はホワイトデーということでそれらしいことをしようとデートの約束をしていた。とは言えどこへ行くとか具体的なことはこれから考える。まだまだ会えるだけで嬉しくて仕方ない。
「こないだの番組制作会、どうだった?」
「とても勉強になりましたし、楽しかったです。まだまだ会ったことのない人もたくさんいましたし」
「春風って誰と一緒の班だったっけ。アナはレナだったよね」
「そうですね。アナウンサーがレナで、あとは星ヶ丘の彩人さんとみちるさんと一緒でした。やはり同じ大学、同じ班でやっているということで2人の掛け合いがとても面白かったですね。阿吽の呼吸と言いますか」
「多分それって俺が春風と奏多に感じてるようなことだと思うな。相手を知ってるからこその掛け合いっていうのは」
「奏多のことは幼い頃から知っていますから。それはそうと、私、あんな感じで大丈夫だったでしょうか。立ち振る舞いであったり、番組であったり」
「全然大丈夫だったよ。なんなら番組に関してはウチの先輩たちも褒めてたし。1ヶ月であれだけ出来るならこれからが楽しみだーって」
「そうですか。それなら良かったのですが。ですが、気を抜かずに鍛錬を続けなければなりませんね」
そう言って拳を握って小さくよしっと気合いを入れる様がまあ可愛いこと。俺もこの1ヶ月で復習したことを続けていかないとなと思う。割と真面目に春風と奏多の練習に呼んでくれたカノンには感謝してる。発声は逆に教えてもらってたし。
春風のトークに関しては、レナのリードが良かったという前提はありつつも、初めてとは思えないくらいにそつなくこなしていたというのが先輩たちの評価だ。落ち着きがあって聞きやすい声だし、滑舌もいいから後は場数を踏んで、と。
「レナと自動車博物館に行って、それからも何か遊ぶ約束とかはしてる感じ?」
「今度世音坂に行く話にはなっていますね」
「世音坂か。街歩きとか?」
「VRスポーツの出来るゲームセンターというのがあるそうで、それを体験しに行くんですよ」
「へー、VRスポーツか。それは知らないなあ。どんなの?」
「VRでよくあるあのヘッドセットを装着した状態で、弾を撃ったりシールドを張ったりしながら相手のライフを削ってポイントを稼ぐという感じのスポーツですね。感覚で言えばドッヂボールに近いかもしれません。他にもいろいろあるそうなのですが」
「えっ、めっちゃ面白そう」
「レナには私が話しますし、徹平くんも一緒にやりますか?」
「良ければぜひ」
そういう新しい物とかコトに敏感なのはウチの同期じゃやっぱレナになるのかな。俺も新しいことや楽しいことには興味はあるけど、大体が人から誘ってもらうばっかりだから。自分でもアンテナを張ってないとダメだなー。
「レナとは外でばかりではなく、インターネットでゲームなどもしていまして」
「あ、そうなんだ」
「サキさんとも一緒にチームを組んで遊んでいるんですよ。サキさんはどのゲームもレベルが凄く高くていろいろ教えてもらっています」
「え!? サキとも遊んでんの!?」
「レナの繋がりですね。3人一組でチームを組むゲームもあるので、そういったものを中心にやっているのですが」
「俺はパソコンのゲームはさっぱりだからなー」
「徹平くんはパソコンでないゲームはやるんですか?」
「そこまでガツガツやるって感じじゃないけど、ライトにね。最近だとポケモンとか」
「徹平くんはオープンワールド系のゲームが好きそうですよね」
春風がサキやレナとチームを組めるレベルで結構ガツガツゲームをやっているということは初めて聞いたので、やっぱり知らないことはまだまだたくさんあるなあと実感したワケで。
つかゲームもやって天文学もやってて定期的に体も動かしてって、どんなバイタリティしてんだって感じもちょっとある。俺も人にフットワーク軽すぎとはよく言われるけど、俺の比じゃないくらいタフじゃん。
「そうだ。今日はこのままドライブをして、最終的に海に行く?」
「海ですか?」
「うん。ちょっと遠いし、嫌なら別の場所に」
「いえ、ぜひ! 海でお願いします!」
「オッケ。それじゃあこのまま走らせようか」
「でも、どうして海へ?」
「何となく。レナとはまだ出来ないことをしておきたいなと」
「……嬉しいです。でも、レナとすることも、徹平くんとすることも、例え同じに見えたとしても私の中ではそれぞれが独立した素敵な思い出になっていますよ」
レナに妬いてるのも大人げないなと思いつつ、春風の気持ちに救われてる俺がいる。別に焦ることでもないとはわかってるんだけど。ゆっくりでいいんだよ。ミルクレープを1枚1枚重ねる時間のロマンを思い出せ。
「でも、ホントにレナとは仲がいいと言うか、意気投合したんだね」
「ありがたいことに仲良くさせてもらっています。ですが、問題もひとつあって」
「問題?」
「はい。私の兄のことで」
「奏多から聞いたけど、ちょっと過保護なお兄さんな」
「はい。私があまりにレナの話題を出すからか、最近では彼氏のことよりもレナの素性を気にしているようで……」
「奏多からはお兄さんが俺に1回顔出せって言ってるとは聞いたけど、もしかしてレナも呼び出し食らうヤツ?」
「兄さんは奏多にそんなことを言ったのですか!? あの、徹平くん、兄のことは気にしないでくださいね。本当に気にしないでください」
「でも、ずっとそうやって気にされてるよりは挨拶して安心してもらった方が得策だとは思うけどな」
「そうですか?」
「俺がお兄さんのお眼鏡に適うかはわかんないけど、いざそうなったら熱量で押し切るよ」
「はい。私も兄さんに立ち向かう覚悟は出来ています。それくらい本当に徹平くんは大切な人ですから」
end.
++++
すがやんの知らないうちにサキとも仲良くなっている春風である。さすがにオンラインまでは把握出来んわね
この感じだとそのうちササレナとすがはるのダブルデート的なこともありそうですね。レナはアグレッシブなんや
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「春風、おはよう」
「徹平くん。おはようございます」
春休みのいいところはスケジュールを合わせやすいところだなと思う。大学が始まれば始まったで規則的になるからお互いの生活リズムがわかりやすくもなるんだけど、自由な時間はやっぱり休みの方が多いと思うから。
春風と付き合い始めてもうすぐ1ヶ月。今日はホワイトデーということでそれらしいことをしようとデートの約束をしていた。とは言えどこへ行くとか具体的なことはこれから考える。まだまだ会えるだけで嬉しくて仕方ない。
「こないだの番組制作会、どうだった?」
「とても勉強になりましたし、楽しかったです。まだまだ会ったことのない人もたくさんいましたし」
「春風って誰と一緒の班だったっけ。アナはレナだったよね」
「そうですね。アナウンサーがレナで、あとは星ヶ丘の彩人さんとみちるさんと一緒でした。やはり同じ大学、同じ班でやっているということで2人の掛け合いがとても面白かったですね。阿吽の呼吸と言いますか」
「多分それって俺が春風と奏多に感じてるようなことだと思うな。相手を知ってるからこその掛け合いっていうのは」
「奏多のことは幼い頃から知っていますから。それはそうと、私、あんな感じで大丈夫だったでしょうか。立ち振る舞いであったり、番組であったり」
「全然大丈夫だったよ。なんなら番組に関してはウチの先輩たちも褒めてたし。1ヶ月であれだけ出来るならこれからが楽しみだーって」
「そうですか。それなら良かったのですが。ですが、気を抜かずに鍛錬を続けなければなりませんね」
そう言って拳を握って小さくよしっと気合いを入れる様がまあ可愛いこと。俺もこの1ヶ月で復習したことを続けていかないとなと思う。割と真面目に春風と奏多の練習に呼んでくれたカノンには感謝してる。発声は逆に教えてもらってたし。
春風のトークに関しては、レナのリードが良かったという前提はありつつも、初めてとは思えないくらいにそつなくこなしていたというのが先輩たちの評価だ。落ち着きがあって聞きやすい声だし、滑舌もいいから後は場数を踏んで、と。
「レナと自動車博物館に行って、それからも何か遊ぶ約束とかはしてる感じ?」
「今度世音坂に行く話にはなっていますね」
「世音坂か。街歩きとか?」
「VRスポーツの出来るゲームセンターというのがあるそうで、それを体験しに行くんですよ」
「へー、VRスポーツか。それは知らないなあ。どんなの?」
「VRでよくあるあのヘッドセットを装着した状態で、弾を撃ったりシールドを張ったりしながら相手のライフを削ってポイントを稼ぐという感じのスポーツですね。感覚で言えばドッヂボールに近いかもしれません。他にもいろいろあるそうなのですが」
「えっ、めっちゃ面白そう」
「レナには私が話しますし、徹平くんも一緒にやりますか?」
「良ければぜひ」
そういう新しい物とかコトに敏感なのはウチの同期じゃやっぱレナになるのかな。俺も新しいことや楽しいことには興味はあるけど、大体が人から誘ってもらうばっかりだから。自分でもアンテナを張ってないとダメだなー。
「レナとは外でばかりではなく、インターネットでゲームなどもしていまして」
「あ、そうなんだ」
「サキさんとも一緒にチームを組んで遊んでいるんですよ。サキさんはどのゲームもレベルが凄く高くていろいろ教えてもらっています」
「え!? サキとも遊んでんの!?」
「レナの繋がりですね。3人一組でチームを組むゲームもあるので、そういったものを中心にやっているのですが」
「俺はパソコンのゲームはさっぱりだからなー」
「徹平くんはパソコンでないゲームはやるんですか?」
「そこまでガツガツやるって感じじゃないけど、ライトにね。最近だとポケモンとか」
「徹平くんはオープンワールド系のゲームが好きそうですよね」
春風がサキやレナとチームを組めるレベルで結構ガツガツゲームをやっているということは初めて聞いたので、やっぱり知らないことはまだまだたくさんあるなあと実感したワケで。
つかゲームもやって天文学もやってて定期的に体も動かしてって、どんなバイタリティしてんだって感じもちょっとある。俺も人にフットワーク軽すぎとはよく言われるけど、俺の比じゃないくらいタフじゃん。
「そうだ。今日はこのままドライブをして、最終的に海に行く?」
「海ですか?」
「うん。ちょっと遠いし、嫌なら別の場所に」
「いえ、ぜひ! 海でお願いします!」
「オッケ。それじゃあこのまま走らせようか」
「でも、どうして海へ?」
「何となく。レナとはまだ出来ないことをしておきたいなと」
「……嬉しいです。でも、レナとすることも、徹平くんとすることも、例え同じに見えたとしても私の中ではそれぞれが独立した素敵な思い出になっていますよ」
レナに妬いてるのも大人げないなと思いつつ、春風の気持ちに救われてる俺がいる。別に焦ることでもないとはわかってるんだけど。ゆっくりでいいんだよ。ミルクレープを1枚1枚重ねる時間のロマンを思い出せ。
「でも、ホントにレナとは仲がいいと言うか、意気投合したんだね」
「ありがたいことに仲良くさせてもらっています。ですが、問題もひとつあって」
「問題?」
「はい。私の兄のことで」
「奏多から聞いたけど、ちょっと過保護なお兄さんな」
「はい。私があまりにレナの話題を出すからか、最近では彼氏のことよりもレナの素性を気にしているようで……」
「奏多からはお兄さんが俺に1回顔出せって言ってるとは聞いたけど、もしかしてレナも呼び出し食らうヤツ?」
「兄さんは奏多にそんなことを言ったのですか!? あの、徹平くん、兄のことは気にしないでくださいね。本当に気にしないでください」
「でも、ずっとそうやって気にされてるよりは挨拶して安心してもらった方が得策だとは思うけどな」
「そうですか?」
「俺がお兄さんのお眼鏡に適うかはわかんないけど、いざそうなったら熱量で押し切るよ」
「はい。私も兄さんに立ち向かう覚悟は出来ています。それくらい本当に徹平くんは大切な人ですから」
end.
++++
すがやんの知らないうちにサキとも仲良くなっている春風である。さすがにオンラインまでは把握出来んわね
この感じだとそのうちササレナとすがはるのダブルデート的なこともありそうですね。レナはアグレッシブなんや
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