2021(04)
■ワールドスイーツ
++++
「お疲れー。やってる?」
「彩人お疲れ。やってるから上がって」
「これ差し入れ。甘いのに飽きたら食う用」
「ありがとう」
冬が終わればすぐに春のスイーツが登場して、毎週毎週新商品が出るからスイーツブロガーとしてはなかなか忙しいよね。今日はひな祭り、桃の節句にちなんだスイーツをみちるちゃんの家で北星と彩人と食べる会。もちろん既に割られたヤツなんだけど。
バイト終わりの彩人がやってきて「どれが食べていいヤツ?」と聞かれたから、どれでも食べてと返す。と言うか食べてもらわないとなくならないから。北星とみちるちゃんは甘いのばっかりそんなにたくさん食べられないみたいだし。苦いコーヒーと一緒に食べてくれてるけど。
「彩人、パンとかパスタとか値上がりするって時なのに食パンの差し入れはちょっと申し訳ない」
「それは売りモンにするにはちょっと時間過ぎたヤツで、所謂おつとめ品。甘いのに飽きる……もとい、箸休め用のヤツだからすぐ食ってもらう前提」
「ああそう。それじゃあありがたく」
「小麦関係が値上がりすると、ケーキとかにもダイレクトに響くよね。経費削減のためには少ない手数で確実に割って上手く撮れるようにならないと!」
「そのうちくるみが割ってるようなスイーツもコンビニのプチプラとかじゃなくてちょっとした贅沢品になっちまうかもな」
「実際300円モノとかは既に贅沢だよ。でも、その分開発や原材料にお金がかかってるし、人件費のこともあるからちゃんと回収しないとなんだよね。スイーツに限らず量やお値段の据え置きって消費者的にはいいんだろうけどどこかで誰かが割りを食ってるはずだから嬉しいんだけど素直に喜べない」
「へえ。そんなこと考えながらスイーツぶった切ってたんだな」
「彩人、くるみは結構現実的な考え方をする子だから」
実際コンビニでスイーツを買おうとしても、100円とかだと安いって思うんだよね。150円からスタートって感じで。でも、ちゃんとした物に関しては「ちゃんとお金を取って!」って思うのは、ごく少数の考えだとはわかってる。
原材料費や燃料費はどうしてもかかってくるし、輸送コストだとかそういうことも考え始めるとね。ちょっとしたことで輸送がストップしちゃうと在庫がなくなっちゃって供給できませんってことにもなっちゃうし。いろいろ難しい問題だよね。
「くるちゃんて~、将来はスイーツの開発をしたいんでしょ~?」
「そうだよ」
「どんなスイーツを開発したいの~?」
「最近ちょっと思い始めたのは、最新のトレンドを追ったり作ったりするっていうのもいいんだけど、いろいろな人の生活様式だとか、世界に振り回されないでちゃんと安くて美味しいスイーツを作って行かなきゃなって」
「世界に振り回されないっていうのは、国内にある物で安定的に作れるみたいなことか?」
「そうだね。例えばなんだけど、あたしが見てる動画投稿者のまいみぃちゃんがやってる米粉パンとかがそうかな。お米を上手に使ってるなあと思って。しかもそのお米も自分で作ってるってすっごくない?」
「あのチャンネル、畑のタイムラプスが印象的だよね」
「俺もちゃんと調べたワケじゃないけど、食糧事情のあーだこーだで昆虫食が注目されてるとかって話だろ? タランチュラとかコオロギとか」
「うえ~。虫はさすがに食べられないよ~」
「抵抗あるよな。でも、食ってみると普通に美味いのもあるらしい」
「動物のお肉を食べないって人もいるし、トレーニングやダイエットでタンパク質や糖質量を気にする人もいるよね」
「アレルギーとか」
「そう。どんな人でも平等に、気軽に手に取れる、ちゃんと安くて美味しいスイーツを作りたい。簡単じゃないからこそやってみたいんだよね」
今まではただスイーツの開発をしたいって思ってて、それが「どんな?」って聞かれると漠然としてたんだけど、最近はちょっとずつ具体的になってきたかも。言ってることがワガママ過ぎるとは思うけどね。お金がいくらあっても足りなくなったら本末転倒だし。
「だとしたら、実際海外に行っていろいろ見てくることも必要かもしれないね。局地的な地域で愛されるスイーツが大ブームになるかもだし」
「それなんだよね! その現象は観測した! 郷土料理って言うか、郷土スイーツ? そんなのの勉強をしたい!」
「国内にもまだまだくるみの知らないスイーツがわんさかあるだろ。ちょっといい値段したスイーツから着想を得てコンビニスイーツに落とし込むことだって出てくるかもだ」
「ちょっと彩人! 恐ろしいこと言わないでよ! あーん、スイーツ探求はお金がどれだけあっても足りないんだよー!」
「彩人~、地元の美味しいのをくるちゃんに買ってきてあげなよ~」
「は!? 俺がかよ!」
「北星いいこと言った!」
「私もくるみのためなら美味しい物を買いに地元に帰れるかな」
「ええっ!? みちるちゃん本気にしないで!」
「みちるならマジでやりかねねーんだよ」
「向島民の北星はどうする?」
「え~、あ~、俺は~……くるちゃん、和菓子、とか~、好き~?」
「和菓子も好きだよ!」
「どら焼きとか~、モナカとか~」
「あー、確かに和菓子はあんまり割ったことない! でもその前に普通に食べたいかも。あんこも好きなんだよね」
そしたら、みちるちゃんは冷蔵庫にあんこがあるよって言うんだよね。彩人が持ってきたパンを焼いてあんこを乗っけたらって。絶対美味しいってわかってるからやるしかないよね!
「他に食パン食べたい人」
「は~い」
「彩人は?」
「俺はまだいいや」
「そう。それじゃあ私の分込みで3枚か」
end.
++++
甘いのに飽きたら食べる前提の食パンに甘いあんこを乗っける辺りがさすくる
みちるの地元は東都なので美味しい物なんかどれだけ買っても買い切れないし最新を知るならやっぱ東都よ
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「お疲れー。やってる?」
「彩人お疲れ。やってるから上がって」
「これ差し入れ。甘いのに飽きたら食う用」
「ありがとう」
冬が終わればすぐに春のスイーツが登場して、毎週毎週新商品が出るからスイーツブロガーとしてはなかなか忙しいよね。今日はひな祭り、桃の節句にちなんだスイーツをみちるちゃんの家で北星と彩人と食べる会。もちろん既に割られたヤツなんだけど。
バイト終わりの彩人がやってきて「どれが食べていいヤツ?」と聞かれたから、どれでも食べてと返す。と言うか食べてもらわないとなくならないから。北星とみちるちゃんは甘いのばっかりそんなにたくさん食べられないみたいだし。苦いコーヒーと一緒に食べてくれてるけど。
「彩人、パンとかパスタとか値上がりするって時なのに食パンの差し入れはちょっと申し訳ない」
「それは売りモンにするにはちょっと時間過ぎたヤツで、所謂おつとめ品。甘いのに飽きる……もとい、箸休め用のヤツだからすぐ食ってもらう前提」
「ああそう。それじゃあありがたく」
「小麦関係が値上がりすると、ケーキとかにもダイレクトに響くよね。経費削減のためには少ない手数で確実に割って上手く撮れるようにならないと!」
「そのうちくるみが割ってるようなスイーツもコンビニのプチプラとかじゃなくてちょっとした贅沢品になっちまうかもな」
「実際300円モノとかは既に贅沢だよ。でも、その分開発や原材料にお金がかかってるし、人件費のこともあるからちゃんと回収しないとなんだよね。スイーツに限らず量やお値段の据え置きって消費者的にはいいんだろうけどどこかで誰かが割りを食ってるはずだから嬉しいんだけど素直に喜べない」
「へえ。そんなこと考えながらスイーツぶった切ってたんだな」
「彩人、くるみは結構現実的な考え方をする子だから」
実際コンビニでスイーツを買おうとしても、100円とかだと安いって思うんだよね。150円からスタートって感じで。でも、ちゃんとした物に関しては「ちゃんとお金を取って!」って思うのは、ごく少数の考えだとはわかってる。
原材料費や燃料費はどうしてもかかってくるし、輸送コストだとかそういうことも考え始めるとね。ちょっとしたことで輸送がストップしちゃうと在庫がなくなっちゃって供給できませんってことにもなっちゃうし。いろいろ難しい問題だよね。
「くるちゃんて~、将来はスイーツの開発をしたいんでしょ~?」
「そうだよ」
「どんなスイーツを開発したいの~?」
「最近ちょっと思い始めたのは、最新のトレンドを追ったり作ったりするっていうのもいいんだけど、いろいろな人の生活様式だとか、世界に振り回されないでちゃんと安くて美味しいスイーツを作って行かなきゃなって」
「世界に振り回されないっていうのは、国内にある物で安定的に作れるみたいなことか?」
「そうだね。例えばなんだけど、あたしが見てる動画投稿者のまいみぃちゃんがやってる米粉パンとかがそうかな。お米を上手に使ってるなあと思って。しかもそのお米も自分で作ってるってすっごくない?」
「あのチャンネル、畑のタイムラプスが印象的だよね」
「俺もちゃんと調べたワケじゃないけど、食糧事情のあーだこーだで昆虫食が注目されてるとかって話だろ? タランチュラとかコオロギとか」
「うえ~。虫はさすがに食べられないよ~」
「抵抗あるよな。でも、食ってみると普通に美味いのもあるらしい」
「動物のお肉を食べないって人もいるし、トレーニングやダイエットでタンパク質や糖質量を気にする人もいるよね」
「アレルギーとか」
「そう。どんな人でも平等に、気軽に手に取れる、ちゃんと安くて美味しいスイーツを作りたい。簡単じゃないからこそやってみたいんだよね」
今まではただスイーツの開発をしたいって思ってて、それが「どんな?」って聞かれると漠然としてたんだけど、最近はちょっとずつ具体的になってきたかも。言ってることがワガママ過ぎるとは思うけどね。お金がいくらあっても足りなくなったら本末転倒だし。
「だとしたら、実際海外に行っていろいろ見てくることも必要かもしれないね。局地的な地域で愛されるスイーツが大ブームになるかもだし」
「それなんだよね! その現象は観測した! 郷土料理って言うか、郷土スイーツ? そんなのの勉強をしたい!」
「国内にもまだまだくるみの知らないスイーツがわんさかあるだろ。ちょっといい値段したスイーツから着想を得てコンビニスイーツに落とし込むことだって出てくるかもだ」
「ちょっと彩人! 恐ろしいこと言わないでよ! あーん、スイーツ探求はお金がどれだけあっても足りないんだよー!」
「彩人~、地元の美味しいのをくるちゃんに買ってきてあげなよ~」
「は!? 俺がかよ!」
「北星いいこと言った!」
「私もくるみのためなら美味しい物を買いに地元に帰れるかな」
「ええっ!? みちるちゃん本気にしないで!」
「みちるならマジでやりかねねーんだよ」
「向島民の北星はどうする?」
「え~、あ~、俺は~……くるちゃん、和菓子、とか~、好き~?」
「和菓子も好きだよ!」
「どら焼きとか~、モナカとか~」
「あー、確かに和菓子はあんまり割ったことない! でもその前に普通に食べたいかも。あんこも好きなんだよね」
そしたら、みちるちゃんは冷蔵庫にあんこがあるよって言うんだよね。彩人が持ってきたパンを焼いてあんこを乗っけたらって。絶対美味しいってわかってるからやるしかないよね!
「他に食パン食べたい人」
「は~い」
「彩人は?」
「俺はまだいいや」
「そう。それじゃあ私の分込みで3枚か」
end.
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甘いのに飽きたら食べる前提の食パンに甘いあんこを乗っける辺りがさすくる
みちるの地元は東都なので美味しい物なんかどれだけ買っても買い切れないし最新を知るならやっぱ東都よ
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