2021(04)
■家に帰るまでが旅行です
++++
「ただいま。本当に大丈夫だった? 急に連絡したけど」
「大丈夫ですよ。お帰りなさい」
2泊3日の日程で行われた薪ストーブの会も、メンバーを全員最寄りまで送ってドライバーとしての役目もおしまい。その足で向かったのは春風の最寄り。お土産を渡したかったのもあるし、何より顔が見たかった。デジタルデトックスということも目的のひとつに掲げられていた今回の会では、緊急連絡と最低限の写真撮影を除いてスマホはなるべく見ないっていうルールでやってたから。
まずササとシノを下ろして、くるみまで下ろしたらもういいかと思って春風に連絡をとった。今日これから会えませんかと。1時間くらいで良ければ時間は取れますと返信があったので、その1時間をもらうことに。本当にお土産を渡すくらいしか出来なさそうだけど、また今度ゆっくり会う約束をすればいい。
「これ、お土産」
「ありがとうございます。長篠だったんですよね」
「うん。それで、コテージに持ち込む用の食べ物とかを買い込むために入ったスーパーで見つけて、美味しそうだなって思って。春風ってジャムとか使う方?」
「使いますよ。りんごバターですね。今からパンに塗るのが楽しみです」
「あと、これが冷凍のおやき。サービスエリアで食べて美味しかったから」
「わあ。これ、美味しいですよね」
「あ、食べたことあった?」
「徹平くんは、星大の川北さんはご存知ですか?」
「ミドリ先輩? 知ってる知ってる。定例会の先輩だし」
「青女の美雪さん……インターフェイス的にはユキさんですね。美雪さんのお兄さんがうちの工場の従業員で、その縁で美雪さんには良くしてもらっているのです。川北さんも、長距離運転の後などには工場で車を見てもらっているのですが、先日工場の皆さんにとおやきを持って来て下さったんです。長篠出身でいらっしゃるとのことで」
「へー。それじゃあユキ先輩とミドリ先輩はもう顔見知りなんだ」
「そうですね」
ミドリ先輩はそうやって定期的に車を見てもらってんだな。俺も何だかんだ人を乗せる機会が多いしちゃんと見てもらった方がいいのかもしれない。オイル交換とかもちゃんとやった方がいいんだろうな。ミドリさんのお土産とカブってしまったおやきに関しては、いろいろな味があるし鳥居家でも好評だったのでみんな喜んでくれるだろうとのこと。良かった。
「あ、そうだ。この旅行の中で俺に彼女が出来たってことが俺の意図しないタイミングでウチの同期全員に知れ渡ってしまいまして」
「そういうことはありますよね。仕方ないです」
「やれどんな子だやれいつ会えるって尋問詰めで」
「お疲れさまでした」
「その話から発展して、向島の新メンバーと仲良くなりたいってウチのメンバーが言い出したんだよ」
「そうなんですか?」
「そうそう。それで、緑大近くのアパートに住んでる奴ン家でMBCCとMMPの1年が集まって親睦会めいたパーティーでもやりたいなって話になってて。一応こういう話があるよとはカノンにもLINEしてあるけど、返信は……さすがにまだかな。近々そういう話がカノンから回って来るかもだし、前向きに考えてもらえれば嬉しいです。奏多にも検討してもらって」
「わかりました」
パーティーやるんだったらこないだ引っ越し祝いでもらった電気鍋でたこ焼きパーティーとかが楽しそうだな、みたいな感じで帰りの車内で盛り上がっていた。俺とくるみで選んだ電気鍋が早々に活躍してくれそうで何より。こういう事態を想定して選んだしな。もし開催が決定すれば結構な大人数が集まることになるけど、シノには部屋の開放を快く了承してもらって感謝だな。
「あの、徹平くん」
「ん? どした?」
「一昨日送ってくれたあの写真なんですけど」
「星空の写真?」
「はい。あれはどんなカメラで撮影したんですか?」
「普通にスマホのカメラだよ」
「本当ですか!? スマホであんなに綺麗な星空が撮影出来るんですね……凄いです」
「ウチのメンバーにスマホでの動画撮影とかに詳しい子がいてさ。その子が青敬の子から聞いたらしいんだよな、夜間の写真撮影のテクニックみたいなのを。それを教えてもらってみんなで星空撮影会なんかをやってて」
「凄く羨ましいです…!」
「うん。春風は絶対に好きだろうなって思って写真を撮ってみたけど、あの星空を一緒に見たかった。いつかこういう場所に一緒に来たいって思った」
「行きましょう、一緒に」
「うん」
遮る物や余計な光が何もない星空。寒さを忘れて窓を開け放ち、みんなでひたすら写真を撮った時間は楽しかった。だけど俺はずっと春風のことを考えていた。プラネタリウムじゃない、本当の星空も2人で見たいと思いながら。
「ところで、ウチのメンバーの機械好きの子が、長篠は星空だけじゃなくて宇宙関係が熱いぞって教えてくれたんだけど、結構行ってたりする?」
「行きたいとは思っていますが、そこまで頻繁には行っていません。それより、緑ヶ丘にも宇宙関係のことが好きな人がいるんですか?」
「本命は宇宙じゃなくてロボットとか機械だなー。それが高じて宇宙開発関係のロボットの知識があるって感じで」
「そうなんですね。その人とお話ししてみたいです。私も、機械やロボットは好きですし」
「機械とかが好きなんだ」
「物心ついた時から工場の家で育っていますからね」
「そっか。そうだよなー。今度のパーティーが開催されればその時に話したらいいんじゃない? パーティーが無くても良ければ紹介するよ。その子女子だし仲良くなれるんじゃないかな」
「無事にパーティーが開催されることを祈りますね」
end.
++++
レナはるはナツミナに通じる何かがあるような気がすると言うか、世代が違うだけのナツミナ亜種。
ササシノがお風呂に入ってる間に撮影会が行われてる体で昨年度の話は進んでたけど、だとするならササはものっそい長風呂ね
MBCC×MMPのたこ焼きパーティーの様子なんかを今年はもうちょっと詳しく見たいしみんなきゃいきゃいさせたい
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「ただいま。本当に大丈夫だった? 急に連絡したけど」
「大丈夫ですよ。お帰りなさい」
2泊3日の日程で行われた薪ストーブの会も、メンバーを全員最寄りまで送ってドライバーとしての役目もおしまい。その足で向かったのは春風の最寄り。お土産を渡したかったのもあるし、何より顔が見たかった。デジタルデトックスということも目的のひとつに掲げられていた今回の会では、緊急連絡と最低限の写真撮影を除いてスマホはなるべく見ないっていうルールでやってたから。
まずササとシノを下ろして、くるみまで下ろしたらもういいかと思って春風に連絡をとった。今日これから会えませんかと。1時間くらいで良ければ時間は取れますと返信があったので、その1時間をもらうことに。本当にお土産を渡すくらいしか出来なさそうだけど、また今度ゆっくり会う約束をすればいい。
「これ、お土産」
「ありがとうございます。長篠だったんですよね」
「うん。それで、コテージに持ち込む用の食べ物とかを買い込むために入ったスーパーで見つけて、美味しそうだなって思って。春風ってジャムとか使う方?」
「使いますよ。りんごバターですね。今からパンに塗るのが楽しみです」
「あと、これが冷凍のおやき。サービスエリアで食べて美味しかったから」
「わあ。これ、美味しいですよね」
「あ、食べたことあった?」
「徹平くんは、星大の川北さんはご存知ですか?」
「ミドリ先輩? 知ってる知ってる。定例会の先輩だし」
「青女の美雪さん……インターフェイス的にはユキさんですね。美雪さんのお兄さんがうちの工場の従業員で、その縁で美雪さんには良くしてもらっているのです。川北さんも、長距離運転の後などには工場で車を見てもらっているのですが、先日工場の皆さんにとおやきを持って来て下さったんです。長篠出身でいらっしゃるとのことで」
「へー。それじゃあユキ先輩とミドリ先輩はもう顔見知りなんだ」
「そうですね」
ミドリ先輩はそうやって定期的に車を見てもらってんだな。俺も何だかんだ人を乗せる機会が多いしちゃんと見てもらった方がいいのかもしれない。オイル交換とかもちゃんとやった方がいいんだろうな。ミドリさんのお土産とカブってしまったおやきに関しては、いろいろな味があるし鳥居家でも好評だったのでみんな喜んでくれるだろうとのこと。良かった。
「あ、そうだ。この旅行の中で俺に彼女が出来たってことが俺の意図しないタイミングでウチの同期全員に知れ渡ってしまいまして」
「そういうことはありますよね。仕方ないです」
「やれどんな子だやれいつ会えるって尋問詰めで」
「お疲れさまでした」
「その話から発展して、向島の新メンバーと仲良くなりたいってウチのメンバーが言い出したんだよ」
「そうなんですか?」
「そうそう。それで、緑大近くのアパートに住んでる奴ン家でMBCCとMMPの1年が集まって親睦会めいたパーティーでもやりたいなって話になってて。一応こういう話があるよとはカノンにもLINEしてあるけど、返信は……さすがにまだかな。近々そういう話がカノンから回って来るかもだし、前向きに考えてもらえれば嬉しいです。奏多にも検討してもらって」
「わかりました」
パーティーやるんだったらこないだ引っ越し祝いでもらった電気鍋でたこ焼きパーティーとかが楽しそうだな、みたいな感じで帰りの車内で盛り上がっていた。俺とくるみで選んだ電気鍋が早々に活躍してくれそうで何より。こういう事態を想定して選んだしな。もし開催が決定すれば結構な大人数が集まることになるけど、シノには部屋の開放を快く了承してもらって感謝だな。
「あの、徹平くん」
「ん? どした?」
「一昨日送ってくれたあの写真なんですけど」
「星空の写真?」
「はい。あれはどんなカメラで撮影したんですか?」
「普通にスマホのカメラだよ」
「本当ですか!? スマホであんなに綺麗な星空が撮影出来るんですね……凄いです」
「ウチのメンバーにスマホでの動画撮影とかに詳しい子がいてさ。その子が青敬の子から聞いたらしいんだよな、夜間の写真撮影のテクニックみたいなのを。それを教えてもらってみんなで星空撮影会なんかをやってて」
「凄く羨ましいです…!」
「うん。春風は絶対に好きだろうなって思って写真を撮ってみたけど、あの星空を一緒に見たかった。いつかこういう場所に一緒に来たいって思った」
「行きましょう、一緒に」
「うん」
遮る物や余計な光が何もない星空。寒さを忘れて窓を開け放ち、みんなでひたすら写真を撮った時間は楽しかった。だけど俺はずっと春風のことを考えていた。プラネタリウムじゃない、本当の星空も2人で見たいと思いながら。
「ところで、ウチのメンバーの機械好きの子が、長篠は星空だけじゃなくて宇宙関係が熱いぞって教えてくれたんだけど、結構行ってたりする?」
「行きたいとは思っていますが、そこまで頻繁には行っていません。それより、緑ヶ丘にも宇宙関係のことが好きな人がいるんですか?」
「本命は宇宙じゃなくてロボットとか機械だなー。それが高じて宇宙開発関係のロボットの知識があるって感じで」
「そうなんですね。その人とお話ししてみたいです。私も、機械やロボットは好きですし」
「機械とかが好きなんだ」
「物心ついた時から工場の家で育っていますからね」
「そっか。そうだよなー。今度のパーティーが開催されればその時に話したらいいんじゃない? パーティーが無くても良ければ紹介するよ。その子女子だし仲良くなれるんじゃないかな」
「無事にパーティーが開催されることを祈りますね」
end.
++++
レナはるはナツミナに通じる何かがあるような気がすると言うか、世代が違うだけのナツミナ亜種。
ササシノがお風呂に入ってる間に撮影会が行われてる体で昨年度の話は進んでたけど、だとするならササはものっそい長風呂ね
MBCC×MMPのたこ焼きパーティーの様子なんかを今年はもうちょっと詳しく見たいしみんなきゃいきゃいさせたい
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