2021(04)
■助手席のマネージャー
++++
「おーすすがやん! みんなもおはよー」
「ササ、シノ、おはよー!」
「そしたら、お願いします」
「オッケー。これで全員合流したし、行くかー」
今日はササ主催で長篠にあるコテージのような施設に6人で行くことになった。ササは薪ストーブや暖炉に憧れを抱いているようで、それのある場所でゆっくりしたいというのと、みんなで遊びたいけど忙しいというイメージでなかなか誘われないので自分から声を掛けてやろうと今回の会を企画してくれたみたいだ。
例によってすがやんをドライバーに、初詣のときと同じ順番にみんなを拾いながら豊葦でササとシノを拾えば全員集合。ここから改めて目的地に向かって行くことになる。そのコテージではキッチンやその他の施設も大体は揃ってるんだけど、食糧なんかは自分たちで持ち込まないといけないらしい。途中で買い物の時間や休憩を挟みながら行く感じだ。
「みんなでお泊りとかすっごく楽しみ! あっ、でもあたし料理とかあんまり出来ないけど大丈夫かな」
「逆にこの中で料理が出来るのって誰だ? ちなみに俺は1人暮らしを始めるに当たって今から始めるトコだぞ! 期待すんなよな!」
「上手いのはサキじゃね? 焼きそばの試食のときとかソツなく作ってたし」
「あっそうだよね! サキは手際が良かったと思う!」
「俺は簡単なことしか出来ないよ。ササとレナは?」
「俺は正直あんまり」
「私も最低限って感じ。でも、薪ストーブを利用した料理をやるんだよね? 煮込みとか、焼くのがメインだと思うし6人いるから大丈夫だと思うよ」
「何を焼いたら美味いかな?」
「肉とかサツマイモとかじゃない?」
「うおー! 美味そー! 肉とサツマイモは絶対買おうぜ!」
「いいねー! 買おう買おう!」
「でも、今回基本スマホ禁止だし、日頃の経験や培った知識が物を言いそうだね。そうなると、やっぱりサキにかかる期待が大きいね」
「え。俺になるの」
ちなみに、せっかく人里離れた山奥のコテージに行くということで、極力スマホなどのデジタル機器を使わずに過ごしてみましょうということがコンセプトになっている。遊ぶのもアナログゲームなどがメインになりそうだし、料理のレシピなんかもその場で調べると言うよりは事前に調べてメモをするとか、そういうことが必要だ。
「スマホ禁止とは言うけど、カメラはオッケーだし、緊急連絡とかはオッケーなので安心してください」
「あっ、カメラオッケーはすっごく助かる! 雪景色とかの写真や動画も撮りたいし!」
「くるみは安定だな」
「もちろん最低限にしとくよ! せっかくの会だもんね!」
「まあ、すがやんは彼女とやり取りもしたいだろうけどそこはグッと堪えてもらって、帰って来てから楽しんでもらうことになると思うけど」
「えっ!? すがやんに彼女だと!?」
「えーっ!? いつの間に!? いついつ!? 何繋がりの子!?」
ササがうっかりこぼしてしまった“彼女”というワードに動揺したのか、すがやんは予定になかった目の前のコンビニに車を滑らせる。ちなみに俺はその話を聞いてたから知ってたんだけど、知らなかったっていうシノとくるみがわあわあと大盛り上がり。バックミラー越しに、ササが(しまった)という顔を、レナが(あっちゃー)とか(陸さんやりましたね)という顔をしているのが見えて面白い。
「ごめん、みんなちょっと買い物とか休憩して来てくれる?」
「えー!? すがやんの彼女の話聞きてーんだけど!」
「あたしもー!」
「いや、後で聞かれたことには出来る範囲で答えるけど、その前にササと話をしたい」
そう言うすがやんに何らかの圧を感じたのか、シノとくるみ、それから空気を読んだらしいレナはコンビニへと入っていく。俺は特にコンビニに用事もないし彼女の話も聞いてたから別にいっかと思ったので助手席で石ころをやっている。案の定始まったのはすがやんからササへの詰問。彼女の話は一応まだ公にはしないでくれという話だったみたいだ。
「陸さん、すがやんに絞られたみたいだね」
「やらかしました」
「すがやんドンマイ。陸さん天然ボケの気あるから今後内緒話はしない方がいいよ。特に恋愛関係はね。自分がオープンだから人のそれに関しても感覚がちょっとね」
「うん、よーくわかった。ちなみにレナはササから聞いてたとか? あんま驚いてなかったみたいだけど」
「ううん? 私も初めて聞いた。でもすがやんは交友関係が広いし私たちの知らないところで恋人がいても不思議じゃないから。はいすがやん。サキに預けとくし、適当な時につまんで」
「サンキュ」
小休止を経て、改めて目的地へと出発。すがやんに絞られたササは反省したのかちょっと大人しくなっているし、シノとくるみは何から聞こうかとウキウキしている様子。レナはいつもと変わらず落ち着いた様子だ。レナからの差し入れを渡された俺はと言えば、バックミラー越しにみんなの様子を見たり、折を見てすがやんにそれを渡したりと助手席ならではの楽しみ方をする予定だ。
「で? お前らは何から聞きたいんだ!」
「……すがやん、ドライバーなんだしあんまり自棄にならないでよ」
「覚悟は決めた。大丈夫だ。あと、何かあってもレナが何とかしてくれると信じて」
「え、私?」
「ああ、確かに。レナならどうにかしてくれるっていう、信頼感はあるよね」
「すがやん、俺はどうかな? 一部始終を知ってる人間として何かこう、出来ることなんかは」
「うーん」
「ササ、さっきからの件でどうやったらそうなるの。なんなら一番信用無いまであるよ」
「すみません……」
「あーあー、サキ、あんまキツく当たってやるな」
「くるみ、あんま常識ないこと聞いたらサキに怒られるぞ」
「ホントだね。すがやんの事務所の人みたい」
「マネージャーではないからね、一応言っとくけど」
end.
++++
ササは天然ボケだしすがやんは圧を覚えてしまったし、レナは器デカいしサキはマネージャー。シノくるは賑やかし。
サキがササに対してなかなかズバッと物を言っているのだけど、そのおかげで(?)シノくるも質問を選ぶことにした様子。
この6人だと誰が料理上手なんだろうか。でもシノは1人暮らしを始めてちょっと出来るようになる予定ではある。
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「おーすすがやん! みんなもおはよー」
「ササ、シノ、おはよー!」
「そしたら、お願いします」
「オッケー。これで全員合流したし、行くかー」
今日はササ主催で長篠にあるコテージのような施設に6人で行くことになった。ササは薪ストーブや暖炉に憧れを抱いているようで、それのある場所でゆっくりしたいというのと、みんなで遊びたいけど忙しいというイメージでなかなか誘われないので自分から声を掛けてやろうと今回の会を企画してくれたみたいだ。
例によってすがやんをドライバーに、初詣のときと同じ順番にみんなを拾いながら豊葦でササとシノを拾えば全員集合。ここから改めて目的地に向かって行くことになる。そのコテージではキッチンやその他の施設も大体は揃ってるんだけど、食糧なんかは自分たちで持ち込まないといけないらしい。途中で買い物の時間や休憩を挟みながら行く感じだ。
「みんなでお泊りとかすっごく楽しみ! あっ、でもあたし料理とかあんまり出来ないけど大丈夫かな」
「逆にこの中で料理が出来るのって誰だ? ちなみに俺は1人暮らしを始めるに当たって今から始めるトコだぞ! 期待すんなよな!」
「上手いのはサキじゃね? 焼きそばの試食のときとかソツなく作ってたし」
「あっそうだよね! サキは手際が良かったと思う!」
「俺は簡単なことしか出来ないよ。ササとレナは?」
「俺は正直あんまり」
「私も最低限って感じ。でも、薪ストーブを利用した料理をやるんだよね? 煮込みとか、焼くのがメインだと思うし6人いるから大丈夫だと思うよ」
「何を焼いたら美味いかな?」
「肉とかサツマイモとかじゃない?」
「うおー! 美味そー! 肉とサツマイモは絶対買おうぜ!」
「いいねー! 買おう買おう!」
「でも、今回基本スマホ禁止だし、日頃の経験や培った知識が物を言いそうだね。そうなると、やっぱりサキにかかる期待が大きいね」
「え。俺になるの」
ちなみに、せっかく人里離れた山奥のコテージに行くということで、極力スマホなどのデジタル機器を使わずに過ごしてみましょうということがコンセプトになっている。遊ぶのもアナログゲームなどがメインになりそうだし、料理のレシピなんかもその場で調べると言うよりは事前に調べてメモをするとか、そういうことが必要だ。
「スマホ禁止とは言うけど、カメラはオッケーだし、緊急連絡とかはオッケーなので安心してください」
「あっ、カメラオッケーはすっごく助かる! 雪景色とかの写真や動画も撮りたいし!」
「くるみは安定だな」
「もちろん最低限にしとくよ! せっかくの会だもんね!」
「まあ、すがやんは彼女とやり取りもしたいだろうけどそこはグッと堪えてもらって、帰って来てから楽しんでもらうことになると思うけど」
「えっ!? すがやんに彼女だと!?」
「えーっ!? いつの間に!? いついつ!? 何繋がりの子!?」
ササがうっかりこぼしてしまった“彼女”というワードに動揺したのか、すがやんは予定になかった目の前のコンビニに車を滑らせる。ちなみに俺はその話を聞いてたから知ってたんだけど、知らなかったっていうシノとくるみがわあわあと大盛り上がり。バックミラー越しに、ササが(しまった)という顔を、レナが(あっちゃー)とか(陸さんやりましたね)という顔をしているのが見えて面白い。
「ごめん、みんなちょっと買い物とか休憩して来てくれる?」
「えー!? すがやんの彼女の話聞きてーんだけど!」
「あたしもー!」
「いや、後で聞かれたことには出来る範囲で答えるけど、その前にササと話をしたい」
そう言うすがやんに何らかの圧を感じたのか、シノとくるみ、それから空気を読んだらしいレナはコンビニへと入っていく。俺は特にコンビニに用事もないし彼女の話も聞いてたから別にいっかと思ったので助手席で石ころをやっている。案の定始まったのはすがやんからササへの詰問。彼女の話は一応まだ公にはしないでくれという話だったみたいだ。
「陸さん、すがやんに絞られたみたいだね」
「やらかしました」
「すがやんドンマイ。陸さん天然ボケの気あるから今後内緒話はしない方がいいよ。特に恋愛関係はね。自分がオープンだから人のそれに関しても感覚がちょっとね」
「うん、よーくわかった。ちなみにレナはササから聞いてたとか? あんま驚いてなかったみたいだけど」
「ううん? 私も初めて聞いた。でもすがやんは交友関係が広いし私たちの知らないところで恋人がいても不思議じゃないから。はいすがやん。サキに預けとくし、適当な時につまんで」
「サンキュ」
小休止を経て、改めて目的地へと出発。すがやんに絞られたササは反省したのかちょっと大人しくなっているし、シノとくるみは何から聞こうかとウキウキしている様子。レナはいつもと変わらず落ち着いた様子だ。レナからの差し入れを渡された俺はと言えば、バックミラー越しにみんなの様子を見たり、折を見てすがやんにそれを渡したりと助手席ならではの楽しみ方をする予定だ。
「で? お前らは何から聞きたいんだ!」
「……すがやん、ドライバーなんだしあんまり自棄にならないでよ」
「覚悟は決めた。大丈夫だ。あと、何かあってもレナが何とかしてくれると信じて」
「え、私?」
「ああ、確かに。レナならどうにかしてくれるっていう、信頼感はあるよね」
「すがやん、俺はどうかな? 一部始終を知ってる人間として何かこう、出来ることなんかは」
「うーん」
「ササ、さっきからの件でどうやったらそうなるの。なんなら一番信用無いまであるよ」
「すみません……」
「あーあー、サキ、あんまキツく当たってやるな」
「くるみ、あんま常識ないこと聞いたらサキに怒られるぞ」
「ホントだね。すがやんの事務所の人みたい」
「マネージャーではないからね、一応言っとくけど」
end.
++++
ササは天然ボケだしすがやんは圧を覚えてしまったし、レナは器デカいしサキはマネージャー。シノくるは賑やかし。
サキがササに対してなかなかズバッと物を言っているのだけど、そのおかげで(?)シノくるも質問を選ぶことにした様子。
この6人だと誰が料理上手なんだろうか。でもシノは1人暮らしを始めてちょっと出来るようになる予定ではある。
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