2021(04)

■秘密兵器の投入

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「タカティ、あとどれくらい作業残ってるの」
「え、歴代の人が個人で持ち込んだ分のストックはほぼほぼ残ってるよ」
「って言うか、タカティが全部片付けなくてもシノたちに任せればいいんじゃないの?」
「それでもいいと思うんだけど、やっぱりある程度はやっとかないと」

 今年に入って機材の中にパソコンを導入したことで、これまではMDストックとして管理していたサークルの音源をミュージックライブラリとして音声ファイル化して保存することになった。その作業は機材管理担当だった俺が主として進めていて、各月ごとに増えていったストックや番組なんかを時間を見つけてはパソコンに取り込むことをただただ繰り返していた。
 ただ、MDストックと一言で言っても1ヶ月に1枚ずつ増えていくし、パソコンに取り込むだけではなく検索用にデータを打ち込まなければならない。結局のところ、検索して利用しやすくするためのファイル化なので、そういった手間を省くわけにはいかないのが時間のかかる理由でもある。もちろん、音楽だけではなく番組のファイルでも同じ作業が必要になる。
 実はMBCCだけではなくインターフェイスのそれも俺が同時進行でやっていた。どちらかと言えばインターフェイスの方が優先度が高くなるのでMBCCのちょっとした物なんかは後回しになりがちでとうとうここまで来てしまったという感じ。機材管理担当だった俺の役職も機材部長になり、これまではL先輩に師事を仰いでたのを自分の責任でやらないといけなくなった。なので、壮平を巻き込んで作業日を設けて現在に至る。

「逆に言えば、残ってる分以外は片付いたってのが俺からすると信じられないね」
「地道にやってたからね」
「俺には絶対無理だね、これだけの仕事をコツコツ続けるなんて」

 ファイル化だけならパソコンを複数台用意すればその分倍速で行うことが出来るので、壮平には自前のパソコンを持って来てもらってファイル化を手伝ってもらっている。ファイル化した音源はクラウド上にも放り込むことにしているので、壮平のパソコンでファイル化したものをこっちで引っ張って来ればサークルのパソコンにもファイルが積み重なっていくという算段。
 MBCCの2年生は最初は5人いたけど幹奈が元々掛け持っていた軽音の方で一本化することになって、現在はエイジとハナちゃんと俺と壮平の4人だ。壮平は俺たちの中では一番マイペースで、サークルにも来たり来なかったり、インターフェイスの活動にも出たり出なかったりととにかく自由だなっていう印象が強い。ただ、機材関係の仕事はある程度手伝ってもらわないとさすがに俺1人では回らないので、これからは程々によろしくと牽制だけはしておいた。

「って言うかこれデータを手打ちしてるのってわざわざそうしてるの?」
「え、手打ちしないでいい方法があるの?」
「MDストックだったらストックリストのデータがあるでしょExcelの。あれをCSVとかにしてアプリの方でインポートしたり出来ない?」
「もっと早く言って」
「言いようがないよ、この仕事するの初めてなんだし。それにタカティのことだから何か考えがあってやってるんだと思うでしょ」
「もっと簡略化出来るならそれでやりたいよ。データの打ち込みが手間なんだから」
「え、素だった?」
「素だよ。CSV形式のファイルとか、聞いたことはあるけど実際に使う場面になったことないし。言って俺は授業で簡単にパソコンを触ってる程度の文系だから、発想にも限界はあるよ」
「たまに忘れるけどタカティって文系だったねそう言えば。コードとか書かないんだ」
「書かないねえ。って言うか理系だったらもっとちゃんと大学に来てないとマズいでしょ、いろいろ」
「確かに。留年してるかも。文系でよかったね」

 壮平の言う時短術に関してはまずそっちで試してもらって手法を確立してもらうことにして、俺は従来通りの方法でデータを手打ちしていく。各月のストックは大体追いついてるし、番組も大体片付けた。ただ、個人の趣味で増えた類のストックに関しては、現役のメンバーもどんどん増やしていくから全然追いついてなくて。

「でも今年の個人ストックに関しては大体クラウドにぶち込んでもらえてるし、L先輩に至ってはデータ入力まで全部やってもらってるのがありがた過ぎる」
「L先輩のストックって洋楽多すぎてデータ見ただけじゃ全然わかんないよね」
「武藤先輩から譲り受けてる物が多いらしいから、俺たちじゃどこの国の曲かもわかんないと思う」
「国がわからないっていうのはある意味致命的じゃない?」
「言葉がわからないから放送禁止用語が混ざってたとしてもスルーしちゃいそうだしねえ。国際の人は大体MICの中にいるそうだけど、何かが間違ってわかる人の耳に入っちゃう可能性はあるしね。扱い方は難しいよね」
「そこまで深く気にしなくてもいいとは思うけどね」
「そうかな」
「うん。いいんじゃない。それかサブスクの方で調べてそれらしい表現をしてますマークが付いてたら措いとく的な」
「そういう調べ方も出来るんだね。MBCCのアプリの方でもそれをやり始めると仕事量が膨大になり過ぎるから個人の裁量に任せよう」
「うん、それでいいよ。タカティはちゃんとしようとし過ぎだよ。使って都合が悪ければアプデすればいいんだから」

 アプデすればいいんだから、とあまりに簡単に言うけど俺にはそれをするだけの技量がないからちゃんとしておかないとと思うんだ。今はサキがインターフェイスの方でシステム関係の仕事を始めるけど、よくよく考えたらL先輩から俺たちの学年をすっ飛ばして1年生のサキに行っているのもどうかと思うワケで、今からでも壮平にはこのシステムに絡んでもらいたいと思う。

「そこまで言うからには壮平がアプデ作業をやってくれたり」
「サキに進言するくらいじゃないかな」
「そこはやってあげてよ」
「いたりいなかったりする人間が放置してる作業をどう扱えばいいのかっていう話ね」
「ああ言えばこう言うなあ」


end.


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キャラを詰めるには書くのが一番。というワケで壮平の話。TKG以上にのらりくらりしたマイペースなキャラクターです。
MBCCだけでなくインターフェイスのストックに関する作業も同時にやるとなるとバカみたいな作業量だっただろうなあ
幹奈が軽音に一本化したので向島のカノンがカノンと名乗れるようになったとはいつかの話のこの枠で書いてたと思う

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