2021(04)
■カラダめぐる
++++
「そしたら、今日は発声練習をしようか。外行くぞー」
「え、このクソ寒いのに外に行くのか? つか俺ミキサーの体だけど俺も発声やんの?」
「MMPの発声練習はアナミキ関係なく全員だし、なんならミキサーでも普通に番組でトークする可能性はあるから」
「ふーん。ま、ここで放置されんのもアレだし行っとくかー」
今日も今日とて向島での活動だ。対策委員の方で企画運営する春の番組制作会という行事までに、春風と奏多の2人をそれらしい番組が出来るレベルに持って行くのが当面の目標とのことだ。くるみによればその制作会でやるのは5月のファンフェスを見据えたダブルトークなんだけど、まずは基本のピントークの練習をしていくことに。
ダブルトークの練習はやんなくて大丈夫なのかとカノンに聞いてみたら、「野坂先輩が「ダブルトークの練習は大体が制作会で初めてやるから無理しなくていい」って言ってた」と返答があった。確かに俺たちもMBCCでダブルトークの練習らしい練習はしたことがない。MBCCやMMPでやってないなら他の大学さんもそうそうやらないだろうと考えるのはわかる気がする。
「へー、ガチな発声練習はここでやんのな」
「外で思い切り声を出すのは気持ちがいいですね」
「そしたら鳥ちゃん、仕切ってみる?」
「私がですか!? いえ、そこは希くんか徹平くんがいいのではないでしょうか」
「現段階で発声が一番出来てるのは鳥ちゃんだし、来期の話になるけど俺が定例会とかで出掛けてたら鳥ちゃんがやらざるを得ない状況は出て来ると思うから」
「そうですか。定例会というのは、奈々先輩も出掛けられるということですよね」
「そうだね」
「では、留守を預かるという状況が出て来るのですね。わかりました。その時が来て狼狽えないように、ここで練習させてください」
「さすが鳥ちゃん!」
「あの、先日からサークル室で軽く発声をやっていたときに思ったことがあるのですが」
「うん、なになに?」
「声を出す場合には、ストレッチなどをして軽く体をほぐしたりリラックスさせることでより喉が開いたり、体の緊張が取れてより良い声が出ると思うのです。ですから、お試しついでに今日は発声練習の前に軽くストレッチをしましょう」
「いいね。やってみようか」
発声練習のやり方も、これまでのやり方に加えていいと思ったことは取り入れてみようというスタンスでの春季特別練習だ。俺もここでいいと思ったことは文化交流延長戦の成果としてMBCCに持ち帰ろうと思う。発声の前にストレッチというのも言わんとすることはわかる気がする。演劇部や音楽系の部活でも準備運動やトレーニングは体育会系に負けないほどやってるから、ラジオでも有用な運動はあるのかもしれない。
「準備運動かー。発声の場合って、やっぱ首とか肩とか」
「背筋を伸ばすんなら、腰より上じゃね? バドでやってる“ゆらゆら”がドンピシャだと思うけど」
「あー、確かにあれは気持ちいーもんなー」
「“ゆらゆら”? どうやんの?」
「じゃあすがやん鳥ちゃん見ててなー。奏多ー、やろうぜー」
「オッケー。やり方としては、足を結構大きく開いて相手と向かい合わせに立つ。で、2人ともおじぎするように上体を曲げて、相手の肩甲骨を持つんだよ。で、一緒に左右にゆらゆら揺らすと背中が伸びんだよ」
「春風、やってみる?」
「はい。お願いします」
カノンと奏多がやっているのを見よう見まねでやってみる。春風と向き合って、おじぎをするように上体を曲げる。で、肩甲骨を持ってゆらゆら。
「あ~」
「徹平くん、どうですか?」
「最近運動してないから、直に効く。春風は?」
「そうですね、これは確かに上半身が伸びて気持ちいいと思います。そろそろ上体を上げましょうか?」
「そうだね。あ~、運動しよ」
「屈伸ストレッチもやっとくか? ついでだし」
「そだなー」
そう言うとカノンと奏多はそのまま二人一組のストレッチを続けている。今度はお互いの足の裏を重ね合って大きく開き、手を取り合って交互にグーッと引っ張り合うような感じだ。さすがに棒立ちで見ている空気ではないと何となく思ったのか、俺も春風もどちらからともなく同じ動きを始めた。
「春風、行くよ」
「はい、どうぞ」
「えっ、めっちゃ柔らかいじゃん」
「はい、秋学期は体育でヨガを履修していたので、多少であれば」
「すげーじゃんヨガとか」
「徹平くん、行きますよ」
「あ、俺は春風ほど柔らかくないから、ヤバかったらストップって言うし」
「わかりました。では少しずつ引いて行きますね」
「あ、あ、あー」
「大丈夫ですか?」
「もうちょっと。ここ! ここで止めて!」
「はい」
「えっ、すがやん硬くね!?」
「いやー、体動かさないとそんなモンよ。かっすーもバドミントン辞めたしそのうちこうなるぜ」
「そっかー。体カタいと怪我とかしやすくなんのかな」
「それもあるし、血流が滞りやすくなるとか猫背になるとかいろいろあんじゃね?」
「じゃMMPの発声練習でもたまにストレッチを採用したいかもなー。奈々先輩に掛け合ってみよ」
そうだ、忘れかけていたけどこれは発声練習の前のストレッチだ。それでいっぱいいっぱいになってるけど、まさかストレッチをすることになるとは思ってなかったし。でも、やって思った。こういうのはたまにやんないとダメだ。
「何か、体を“巡ってる”感がある」
「俺とか春風は割と日頃から体動かしてる方だけど、すがやんがあんま運動しない方ならこれだけでも全然違って来るかもな」
「それでは、徹平くんの体が解れている間に改めて腹式呼吸の復習や発声練習をしましょう」
「はーい、お願いします」
end.
++++
何やかんやで春風と奏多は体育会系だし、ナノスパ屈指の運動量ではないかと。缶蹴りにおいても戦力の増強だなあ
すがやんは多趣味でいろいろ歩き回ってるけど、運動という運動をしてるイメージはそこまでなかった。精々釣りかなあ
すがやんと春風があの後で何事もなかったかのようにこの感じでやってたならそりゃお互い不安にもなるわなあ
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「そしたら、今日は発声練習をしようか。外行くぞー」
「え、このクソ寒いのに外に行くのか? つか俺ミキサーの体だけど俺も発声やんの?」
「MMPの発声練習はアナミキ関係なく全員だし、なんならミキサーでも普通に番組でトークする可能性はあるから」
「ふーん。ま、ここで放置されんのもアレだし行っとくかー」
今日も今日とて向島での活動だ。対策委員の方で企画運営する春の番組制作会という行事までに、春風と奏多の2人をそれらしい番組が出来るレベルに持って行くのが当面の目標とのことだ。くるみによればその制作会でやるのは5月のファンフェスを見据えたダブルトークなんだけど、まずは基本のピントークの練習をしていくことに。
ダブルトークの練習はやんなくて大丈夫なのかとカノンに聞いてみたら、「野坂先輩が「ダブルトークの練習は大体が制作会で初めてやるから無理しなくていい」って言ってた」と返答があった。確かに俺たちもMBCCでダブルトークの練習らしい練習はしたことがない。MBCCやMMPでやってないなら他の大学さんもそうそうやらないだろうと考えるのはわかる気がする。
「へー、ガチな発声練習はここでやんのな」
「外で思い切り声を出すのは気持ちがいいですね」
「そしたら鳥ちゃん、仕切ってみる?」
「私がですか!? いえ、そこは希くんか徹平くんがいいのではないでしょうか」
「現段階で発声が一番出来てるのは鳥ちゃんだし、来期の話になるけど俺が定例会とかで出掛けてたら鳥ちゃんがやらざるを得ない状況は出て来ると思うから」
「そうですか。定例会というのは、奈々先輩も出掛けられるということですよね」
「そうだね」
「では、留守を預かるという状況が出て来るのですね。わかりました。その時が来て狼狽えないように、ここで練習させてください」
「さすが鳥ちゃん!」
「あの、先日からサークル室で軽く発声をやっていたときに思ったことがあるのですが」
「うん、なになに?」
「声を出す場合には、ストレッチなどをして軽く体をほぐしたりリラックスさせることでより喉が開いたり、体の緊張が取れてより良い声が出ると思うのです。ですから、お試しついでに今日は発声練習の前に軽くストレッチをしましょう」
「いいね。やってみようか」
発声練習のやり方も、これまでのやり方に加えていいと思ったことは取り入れてみようというスタンスでの春季特別練習だ。俺もここでいいと思ったことは文化交流延長戦の成果としてMBCCに持ち帰ろうと思う。発声の前にストレッチというのも言わんとすることはわかる気がする。演劇部や音楽系の部活でも準備運動やトレーニングは体育会系に負けないほどやってるから、ラジオでも有用な運動はあるのかもしれない。
「準備運動かー。発声の場合って、やっぱ首とか肩とか」
「背筋を伸ばすんなら、腰より上じゃね? バドでやってる“ゆらゆら”がドンピシャだと思うけど」
「あー、確かにあれは気持ちいーもんなー」
「“ゆらゆら”? どうやんの?」
「じゃあすがやん鳥ちゃん見ててなー。奏多ー、やろうぜー」
「オッケー。やり方としては、足を結構大きく開いて相手と向かい合わせに立つ。で、2人ともおじぎするように上体を曲げて、相手の肩甲骨を持つんだよ。で、一緒に左右にゆらゆら揺らすと背中が伸びんだよ」
「春風、やってみる?」
「はい。お願いします」
カノンと奏多がやっているのを見よう見まねでやってみる。春風と向き合って、おじぎをするように上体を曲げる。で、肩甲骨を持ってゆらゆら。
「あ~」
「徹平くん、どうですか?」
「最近運動してないから、直に効く。春風は?」
「そうですね、これは確かに上半身が伸びて気持ちいいと思います。そろそろ上体を上げましょうか?」
「そうだね。あ~、運動しよ」
「屈伸ストレッチもやっとくか? ついでだし」
「そだなー」
そう言うとカノンと奏多はそのまま二人一組のストレッチを続けている。今度はお互いの足の裏を重ね合って大きく開き、手を取り合って交互にグーッと引っ張り合うような感じだ。さすがに棒立ちで見ている空気ではないと何となく思ったのか、俺も春風もどちらからともなく同じ動きを始めた。
「春風、行くよ」
「はい、どうぞ」
「えっ、めっちゃ柔らかいじゃん」
「はい、秋学期は体育でヨガを履修していたので、多少であれば」
「すげーじゃんヨガとか」
「徹平くん、行きますよ」
「あ、俺は春風ほど柔らかくないから、ヤバかったらストップって言うし」
「わかりました。では少しずつ引いて行きますね」
「あ、あ、あー」
「大丈夫ですか?」
「もうちょっと。ここ! ここで止めて!」
「はい」
「えっ、すがやん硬くね!?」
「いやー、体動かさないとそんなモンよ。かっすーもバドミントン辞めたしそのうちこうなるぜ」
「そっかー。体カタいと怪我とかしやすくなんのかな」
「それもあるし、血流が滞りやすくなるとか猫背になるとかいろいろあんじゃね?」
「じゃMMPの発声練習でもたまにストレッチを採用したいかもなー。奈々先輩に掛け合ってみよ」
そうだ、忘れかけていたけどこれは発声練習の前のストレッチだ。それでいっぱいいっぱいになってるけど、まさかストレッチをすることになるとは思ってなかったし。でも、やって思った。こういうのはたまにやんないとダメだ。
「何か、体を“巡ってる”感がある」
「俺とか春風は割と日頃から体動かしてる方だけど、すがやんがあんま運動しない方ならこれだけでも全然違って来るかもな」
「それでは、徹平くんの体が解れている間に改めて腹式呼吸の復習や発声練習をしましょう」
「はーい、お願いします」
end.
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何やかんやで春風と奏多は体育会系だし、ナノスパ屈指の運動量ではないかと。缶蹴りにおいても戦力の増強だなあ
すがやんは多趣味でいろいろ歩き回ってるけど、運動という運動をしてるイメージはそこまでなかった。精々釣りかなあ
すがやんと春風があの後で何事もなかったかのようにこの感じでやってたならそりゃお互い不安にもなるわなあ
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