2021(04)

■新領域のアドバイザー

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 対策委員では3月に春の番組制作会を予定しているんだけど、その前に技術交換会という行事を開いてはどうかという話になった。インターフェイスに名前だけ加盟していた桜貝大学さんが今度から実際の活動に復帰することになり、青敬さんとの映像2本柱として来年度からの活動にかかる期待が大きい。その中で、ラジオと映像、それぞれの基礎的な内容を教え合った方がいいよねって。
 定例会でも次の春からは映像の活動をやっていってもいいねという話になっていたそうだし、そうなるとこれまでラジオを中心に活動していた俺たちも映像のことを知っていないといけない。インターフェイスの動画チャンネルを作ることを条件に先生からかなりいいカメラをお下がりで引き取らせてもらえるということもあって、やった方がいいことではなくてやらなければいけないことになった。
 一方で、青敬さんもラジオの活動は夏合宿以来になるし、桜貝さんに至っては全くの初めてになるからラジオのことも聞いておかないと次のファンフェスが厳しいということで、向島さんの新メンバー(カノンの勧誘で2人入ったらしい)を対象に行われる野坂先輩の簡易講習会に混ぜてもらえないかということで話が進んだ。引退してるはずだけど、本当に野坂先輩様様だ。

「高木さんて、これからサークルで映像を始めるんですか?」
「サークルじゃなくてゼミだね」
「大学の勉強でですか」
「とは言っても俺は北星たちみたくバリバリ技術を学ぶと言うよりは、内容の方が重視されるのかな、学問的には。メディア表現技法としての音声作品であったり映像作品であったりするっていう感じで。ゼミ以外でも3年生になると映像系の授業も増えて来るし、勉強はしたいと思ってたんだよ」
「そうなんですね~。でも、高木さんほどラジオで面白い構成をやる人が、映像を作るとどうなるのかなって興味はあります」
「やれることを増やすためにも撮影の手法だとか、編集に使うソフトで何が出来るかを知ってなきゃね」
「CGとかはあまりやらないような感じですか?」
「多分あまりやらないんじゃないかな」
「CGとかだと星大の千颯が結構面白いことをやってて、あの子も水と光の表現が綺麗ないい映像を作るんですよ。あと、スマホを使うんであればくるちゃんも上手ですし、ドローンを使うなら当麻に聞くといいですよ」
「あはは、ありがとう。ドローンは確かに面白そうだね。先生に言ったら買ってもらえないかなあ」
「向島の新メンバーの2人も学部で映像には軽く触ってるみたいですし、ラジオ系の大学にも映像をやってる人は何人かいるみたいなんですね」

 北星は映像に絡むときは顔からして全然違ってカッコいいんだよ、というような話はくるみが話してるのを聞いたことがあるけどこれは本当にいつもの北星と同じ人なのかなと思うくらいには別人だ。俺の知ってる北星はのんびりとかぼやぼやしてるっていう印象で、コーヒーで溺れることもあるっていう話だけど。
 これまでインターフェイスで出会った中で映像に絡む人がどんな手法で映像を作って、何が得意でというようなこともきっちり把握してるんだよな。興味のある事柄だとこうまで強いんだなあ。……うーん、それこそゼミだと俺もそういうような見られ方をしてるんだろうなあ。あんまり北星のことは言えないし親近感すら覚えちゃうね。

「北星、何か俺のこと言った?」
「当麻はドローンの操縦が上手いから、高木さんが今後ドローンを使うなら相談したらいいですよって話」
「ああ、そういう。映像の話だろうなとは思ったけど」
「北星が褒めるくらいだし、当麻は本当にドローンが得意なんだね」
「俺も得意な方だと思ってたんですけど、ハマさんの方がもっと上手いです」
「あやめさんのタイムラプスも面白いですよ」
「あっ、そう言えばあやめが作ってる映像とかってちゃんと見たことないんだよね」
「そんな時はAKBCチャンネルですよ。彩人に協力してもらって作ったミュージックビデオとか、俺たちが個人やサークルで作った映像がアップされてるんで」
「当麻、教えてくれる?」
「はい、これです」
「ありがとう」
「緑ヶ丘はそういうチャンネルとかは持たないような感じですか?」
「映像をやってないし、話に上ったこともないかな」
「ラジオだとチャンネルを持つっていう概念がなかったりするんですね」
「朗読とかをやってもいいと思うんだけど」
「北星にしては凄く真っ当な案だな」
「え~、俺もたまにはちゃんとしてるし~」
「朗読かあ」

 北星の言った朗読というのはラジオを主とした放送サークルが動画チャンネルを持った場合の作品としては結構現実的だなと思うし、俺と言うよりそれはアナウンス部長であるエイジの管轄になるんだろうなとは。あと、それをやるにしても実際に一番前向きに考えそうなのも多分エイジなんだろうな。演劇部の出だし絶対好きなんだよね。

「あっ、そうだ。朗読って結構権利問題が難しかったりするんで実際にやるのは想像以上に面倒だったりしますよ」
「ああ、権利問題があるのか」
「彩人のミュージックビデオもそれで問題になるのを避けるためにわざわざ曲から作ってもらったりしたので」
「それは本当に凄いね」
「と言うか北星、今は緑ヶ丘とかラジオ系の大学さんがこっちに寄ってくれてるけど、俺らもラジオのことをやるのには変わりないんだからな」
「わかってるよ。だから、俺が映像のことを高木さんに教えて、ラジオのことは高木さんから教えてもらうっていう話になってるから」

 俺が? とは一瞬思ったけど、今後は対策委員として機材を扱っていくことになる北星だし、いろいろ教える機会があることには違いないんだよね。それに、俺も映像のことはいろいろ聞きたいしね。とりあえず、ゼミのパソコンに入ってる映像編集ソフトが何なのかは確認しとかないとね。


end.


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忘れかけてるけど、あやめはある界隈では東の朝霞西のあやめと言われるほど作品をめちゃくちゃ作ってるんでした
何でか知らんけど北星がTKGパイセンに懐いている。くるちゃんと当麻が凄いんだよ~って言ってるからかなあ
そして映像の話の時に覚醒する北星にゼミでの自分の姿を重ねるパイセンである。間違いなくあなたもそういうポジションです

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