2021(04)
■パーティー前の控え時間
++++
「朝霞って明日バイトある日だっけ?」
「いや、休みだな。そうそう、明日明後日と休みをいただいてます」
「わかったよー。朝早い用事とかじゃなければ、良かったら店に来ない?」
「何かあるのか?」
「あのねえ、FMにしうみにアルバイトで入った子が誕生日なんだって。その子の誕生日パーティーをやるって言って兄さんが張り切ってるんだよ」
「ラジオ局関係だからベティさんとも知り合いなのか」
「そうなるね」
例によってこの時期は向西倉庫の仕事を大石から口頭でもらって何とか食い繋ぐことになっている。そして例によって高木君にも声を掛け、大石に送り迎えをしてもらいながらどうにか働いている。去年は製品の吊り札付けの仕事をやってたんだけど、今年はそれ以外の仕事もちょこちょこ頼まれていて、毎日毎日新しいことの連続だ。
バイトを終え、帰りの車内でのこと。高木君を下ろした後に大石が切り出した。パーティーに来ないかと。ベティさんはどうせパーティーをやるなら盛大にというスタンスの人だし、数合わせとしての俺なのだろう。プチメゾンは割と久し振りだったし、今回はこのまま折り返す大石の車に乗っていればいいから交通費もかからない。これは行かない理由はない。
「でも、そのバイトの子って人との面識がないんだけど大丈夫か?」
「朝霞ってそういうの気にする方だった?」
「いや、全然」
「人見知りの人だとか、そういうのを気にする人だったら声を掛けてないよ」
「いや、俺はいいけど向こうだよ。誰だかわかんない奴がベティさんの飯が美味いからって理由で数合わせになってるとか引くだろ」
「うーん、大丈夫じゃないかな? 結構淡々としてる子だしそんな細かいことは多分気にしないと思う」
「まあ、今後会わない可能性の方が断然高いもんな」
祝われる対象の子というのが今日は普通にバイトをしているとのことで、パーティーの開始時刻は学生のそれとしてはやや深めの午後10時。ただ、FMにしうみのバイトだの番組明けだのの食事としては割と普通の時間らしい。ちなみに今はまだ7時にもなっていないので、それまでの時間は大石の家かプチメゾンで待機していればいいとのことだった。
ただ、店にいると普通に飲み始めてパーティーを始める頃にはべろべろになる可能性もあったので、大石の家で待機させてもらうことに。パーティーまで何も食わないのも腹が減り過ぎてしんどいので、軽めの晩飯を食わせてくれるとのこと。大石の家ですることと言えば、アイツの部屋のタンスの片付けだ。夏に片付けたタンス以外にも溢れているところはたくさんあるらしい。
「そのバイトの子っていうのはミーナの後を引き継ぐみたいな感じなのか?」
「そうなるね。美奈も一応バイトは続けるみたいだけど、大学院生だといつ忙しくなるかわからないから学生のスタッフを入れるって局の方針に変わりはなかったみたいだね」
「へえ。そう言えば、ミーナにもちゃんと聞いたことなかったんだけど、ラジオ局のアルバイトって具体的に何やってんだろ」
「うんとね、美奈の場合は実際の番組でミキサーを扱ったり、ニュース原稿を書いたり取材に出たりって感じらしいね」
「学生でも実際の番組でミキサーを扱うのかという驚きと、ニュース原稿を書いたり取材までやるのかっていう驚きとが合わさって、俄然興味しかない」
「朝霞は何にでも興味しかないでしょ」
「否定は出来ない。でも、派遣で渡り歩いてた時もこういう仕事はしてこなかったしな。つかお前、ボトムスの方のスウェットもめちゃくちゃダブってるじゃねーか」
「これが春秋用でこれが夏用で」
「それを抜きにしても同じのばっかだろ。吊り札を見た感じ、品名も色も組成も一緒で違うのは上代だけじゃねーか」
「うーん、朝霞が製品の知識を得るとこうなるのかー」
就職する頃に新しいのを下ろすかーと言いながら大石は同じものばかりのスウェットパンツを並べている。また今度ファミリーセールがあるらしいから、そこでまた同じスウェットを何着か買ってしまうのだろう。俺も外を歩き回るのに何かいいシューズが欲しいから、連れて行ってもらおうか。オシャレなクツよりスポーツ用の靴の方が明らかに歩きやすいもんな。
「と言うか、話は戻るけど今日誕生日だっていうそのバイトの子とやらって、そんな遅い時間にパーティーなんかやって大丈夫なのか? 俺は1人暮らしだから全然大丈夫だけど」
「その子は西海の子だから割と近所なんだよね。家の人にも遅くなることは伝えてあるって。大学生だとオールになることもあるし、その辺のことは家によって違うとは思うけどね」
「近所なのか。じゃあ終電とかを気にする必要はないんだな」
「そうだね」
「ちなみに、他に俺みたいな感じで呼ばれた人はいるのか?」
「美奈はバイト先の先輩枠で呼ばれてるね。それから高崎も来るって」
「高崎が来るのか。アイツ豊葦だろ」
「高崎は年末まで番組をやってたのもあるし、兄さんのお気に入りだからね。あと、その子が緑ヶ丘の子なんだよね」
「あ、そうなのか。え、つか緑ヶ丘なんだったらそれこそ高木君に声を掛けりゃ良かったんじゃないのか」
「タカティは明日インターフェイス関係で打ち合わせがあるって言ってたんだよ」
「あ、そうなのか」
「とりあえず、軽食はうどんでいいかな?」
「おっ、サンキュ」
end.
++++
サキ誕の少し前のこと。大石家にてちーちゃんとPさん。また片付けしてるよこの人
時間が時間ということもあっていろいろ心配なこともあるようだけど、Pさん人の心配ばっかしてるね
佐崎家は一家団欒という感じの家じゃないとは焼きそばの時に言ってたけど、遅いお帰りとかでも大丈夫なのね
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「朝霞って明日バイトある日だっけ?」
「いや、休みだな。そうそう、明日明後日と休みをいただいてます」
「わかったよー。朝早い用事とかじゃなければ、良かったら店に来ない?」
「何かあるのか?」
「あのねえ、FMにしうみにアルバイトで入った子が誕生日なんだって。その子の誕生日パーティーをやるって言って兄さんが張り切ってるんだよ」
「ラジオ局関係だからベティさんとも知り合いなのか」
「そうなるね」
例によってこの時期は向西倉庫の仕事を大石から口頭でもらって何とか食い繋ぐことになっている。そして例によって高木君にも声を掛け、大石に送り迎えをしてもらいながらどうにか働いている。去年は製品の吊り札付けの仕事をやってたんだけど、今年はそれ以外の仕事もちょこちょこ頼まれていて、毎日毎日新しいことの連続だ。
バイトを終え、帰りの車内でのこと。高木君を下ろした後に大石が切り出した。パーティーに来ないかと。ベティさんはどうせパーティーをやるなら盛大にというスタンスの人だし、数合わせとしての俺なのだろう。プチメゾンは割と久し振りだったし、今回はこのまま折り返す大石の車に乗っていればいいから交通費もかからない。これは行かない理由はない。
「でも、そのバイトの子って人との面識がないんだけど大丈夫か?」
「朝霞ってそういうの気にする方だった?」
「いや、全然」
「人見知りの人だとか、そういうのを気にする人だったら声を掛けてないよ」
「いや、俺はいいけど向こうだよ。誰だかわかんない奴がベティさんの飯が美味いからって理由で数合わせになってるとか引くだろ」
「うーん、大丈夫じゃないかな? 結構淡々としてる子だしそんな細かいことは多分気にしないと思う」
「まあ、今後会わない可能性の方が断然高いもんな」
祝われる対象の子というのが今日は普通にバイトをしているとのことで、パーティーの開始時刻は学生のそれとしてはやや深めの午後10時。ただ、FMにしうみのバイトだの番組明けだのの食事としては割と普通の時間らしい。ちなみに今はまだ7時にもなっていないので、それまでの時間は大石の家かプチメゾンで待機していればいいとのことだった。
ただ、店にいると普通に飲み始めてパーティーを始める頃にはべろべろになる可能性もあったので、大石の家で待機させてもらうことに。パーティーまで何も食わないのも腹が減り過ぎてしんどいので、軽めの晩飯を食わせてくれるとのこと。大石の家ですることと言えば、アイツの部屋のタンスの片付けだ。夏に片付けたタンス以外にも溢れているところはたくさんあるらしい。
「そのバイトの子っていうのはミーナの後を引き継ぐみたいな感じなのか?」
「そうなるね。美奈も一応バイトは続けるみたいだけど、大学院生だといつ忙しくなるかわからないから学生のスタッフを入れるって局の方針に変わりはなかったみたいだね」
「へえ。そう言えば、ミーナにもちゃんと聞いたことなかったんだけど、ラジオ局のアルバイトって具体的に何やってんだろ」
「うんとね、美奈の場合は実際の番組でミキサーを扱ったり、ニュース原稿を書いたり取材に出たりって感じらしいね」
「学生でも実際の番組でミキサーを扱うのかという驚きと、ニュース原稿を書いたり取材までやるのかっていう驚きとが合わさって、俄然興味しかない」
「朝霞は何にでも興味しかないでしょ」
「否定は出来ない。でも、派遣で渡り歩いてた時もこういう仕事はしてこなかったしな。つかお前、ボトムスの方のスウェットもめちゃくちゃダブってるじゃねーか」
「これが春秋用でこれが夏用で」
「それを抜きにしても同じのばっかだろ。吊り札を見た感じ、品名も色も組成も一緒で違うのは上代だけじゃねーか」
「うーん、朝霞が製品の知識を得るとこうなるのかー」
就職する頃に新しいのを下ろすかーと言いながら大石は同じものばかりのスウェットパンツを並べている。また今度ファミリーセールがあるらしいから、そこでまた同じスウェットを何着か買ってしまうのだろう。俺も外を歩き回るのに何かいいシューズが欲しいから、連れて行ってもらおうか。オシャレなクツよりスポーツ用の靴の方が明らかに歩きやすいもんな。
「と言うか、話は戻るけど今日誕生日だっていうそのバイトの子とやらって、そんな遅い時間にパーティーなんかやって大丈夫なのか? 俺は1人暮らしだから全然大丈夫だけど」
「その子は西海の子だから割と近所なんだよね。家の人にも遅くなることは伝えてあるって。大学生だとオールになることもあるし、その辺のことは家によって違うとは思うけどね」
「近所なのか。じゃあ終電とかを気にする必要はないんだな」
「そうだね」
「ちなみに、他に俺みたいな感じで呼ばれた人はいるのか?」
「美奈はバイト先の先輩枠で呼ばれてるね。それから高崎も来るって」
「高崎が来るのか。アイツ豊葦だろ」
「高崎は年末まで番組をやってたのもあるし、兄さんのお気に入りだからね。あと、その子が緑ヶ丘の子なんだよね」
「あ、そうなのか。え、つか緑ヶ丘なんだったらそれこそ高木君に声を掛けりゃ良かったんじゃないのか」
「タカティは明日インターフェイス関係で打ち合わせがあるって言ってたんだよ」
「あ、そうなのか」
「とりあえず、軽食はうどんでいいかな?」
「おっ、サンキュ」
end.
++++
サキ誕の少し前のこと。大石家にてちーちゃんとPさん。また片付けしてるよこの人
時間が時間ということもあっていろいろ心配なこともあるようだけど、Pさん人の心配ばっかしてるね
佐崎家は一家団欒という感じの家じゃないとは焼きそばの時に言ってたけど、遅いお帰りとかでも大丈夫なのね
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