2021(04)
■サイクルサイクリング
++++
「ふーっ、30分終わりー。1回休みー」
「美雪さん、最初と比べると体が動くようになってきましたよね」
「って言うか、今日がまだ3回目くらいじゃないっけ」
「そうですけど、慣れて来ているのでしょうか。最初はエアロバイク30分の後に1回休んでまたやろうという気力はなかったと思うので」
「それはそう。でも、週に1回でもやんないよりやった方が圧倒的に体の調子がいい気がするー」
お兄ちゃんが勤めている自動車整備工場の娘さん、春風ちゃんに付き合ってもらって軽く体を動かすようになってしばし。エアロバイクだったりランニングマシンだったりを使った運動にも慣れて来たような気がする。やってるのはそこまで激しい運動じゃないけど、程よく汗をかくくらいには一生懸命やってる。
今日はミドリがバイト先の後輩の子と一緒に長篠にあるテディベア博物館みたいなところに行っている。長距離を走った後には軽く車を見てもらうことにしてるみたいだけど、今回は年末年始の後に見てもらったから端折るのかな。どっちにしても、ここにいるあたしを拾ってくれるみたいだから、ミドリが帰ってくるまであたしは運動タイム。
春風ちゃんも、あたしに付き合うようになってからは教える側の自分がちゃんとしていないと示しがつかないと言って運動の習慣をしっかりと固めることにしたそうだ。示しも何も、ちゃんとしようと思う前から週に2回は運動をしてたんだから十分立派だと思う。こういう機械を買うだけ買って物干し竿になってる家とかいくらでもありそうだもん。
「あ、ミドリもうこの辺にいるんだ。でも確かにそろそろいい時間ー」
「彼氏さんですよね」
「そうそう。一応明日からテスト期間らしいから程よい時間には帰って来るって言ってたけど、本当に思ったより早かったなあ」
「今が5時過ぎですよね。長篠からこれくらいの時間に戻って来るとなると、現地での滞在時間はあまり長くなかったんじゃないでしょうか」
「朝も結構早くに発ったみたいだし、どんだけ弾丸旅行だったんだろう。まあいいや。自転車漕ぎながら待ってよーっと」
ゆるゆるとエアロバイクを漕ぎながら、ミドリの車が来るのを待つ。このプレハブのトレーニング室の窓からは工場や駐車場も覗くことが出来るから、誰かが来ればわかるようになってるっぽい。それから、従業員さんと共用のシャワールームもある。トレーニングの後に使うこともできるし、仕事でドロドロになった時とかの洗い場としても使えるみたい。
「あ、ミドリ来た」
「あの軽ですね」
「そうそう」
ミドリも工場には何度も来てるからある程度勝手はわかってて、車を下りたらとりあえず事務所にご挨拶という感じかな。ただ、今日は日曜日で工場の稼働自体はお休み。あたしが個人的に春風ちゃんと約束をして運動をしてるっていう感じ。ちなみにここまでは電車と徒歩で30分くらいで着くくらいの距離感だから、意外にすぐ来れるんだよね。
「あっ、ユキちゃん」
「ミドリお帰りー。あっ、こちら工場をやってる家の娘さんで春風ちゃん。あたしの運動に付き合ってくれてるんだよ」
「鳥居春風といいます」
「ご丁寧にどうも。川北碧です。えっと、良かったらどうぞ。いつもお世話になってます」
「えっ! そんな、わざわざありがとうございます! 明日従業員の皆さんで分けていただきますね」
「いえいえ。大したものではないんですけど」
「今回の、あんまり見たことない箱だね」
「工場にはおやき詰め合わせだね。ユキちゃんにはまた別にあるから後でね」
「やったー」
「ええと、こちらは冷凍保存ですね」
「そうですねー。好きなタイミングでチンするか焼いて食べてもらえたらいいですねー」
「うわあ、中身の種類がいろいろあって選ぶのも楽しみですけど、まずは工場の皆さんですね、ガマンガマン」
春風ちゃんは運動もするけどその分しっかりと食事もするみたくて、食べるのも本当に大好きなんだって。それでこれだけスラッとして締まったスタイルなのがただただ凄いんだけど、ミドリが買って来たおやきの詰め合わせの箱を眺めながらどの味にしようかなって真剣に悩む様が可愛い。普段は大人っぽい感じだけど、こうしてるとウチの1年生たちと何ら変わんないし。
「ミドリ、テディベア博物館はどうだった?」
「凄かったよー、圧巻だった。世界のいろんなメーカーのベアだったり、歴史だったりがいろいろ展示されててね、もふもふなテディベアに触ることも出来て楽しかったよ」
「後輩の子の付き添いで行ったんだよね? ミドリの方が羽目を外して楽しんでたとかじゃないよね?」
「それは大丈夫だよ。でも、その後輩の子って普段は大人しいんだけど、やっぱり一番好きな物の専門的な施設だからか、目の輝きが全然違ったね。バースデーベアをお迎えすることも出来たみたいだし、テスト期間が終わったら新しい子を作るって言ってたよ」
「そう言えば、私も明日からテストなので夕飯を食べたら勉強をしないと」
「そっかー、向島だったよね。あたしもうテスト終わったから自由気ままだったけど」
「いえ、テスト期間には入りますけど、テストとは関係のない用事なども個人的にはたくさん入れているのです」
end.
++++
鳥居家(工場)と上野家はほどほどに近いんだろうなあとは思っていた。通勤するのにも苦にならない程度の距離感がベスト
ミドリは多分現地滞在時間より車を運転していた時間の方が長いくらいだけど、それはそれで多分楽しんでた
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「ふーっ、30分終わりー。1回休みー」
「美雪さん、最初と比べると体が動くようになってきましたよね」
「って言うか、今日がまだ3回目くらいじゃないっけ」
「そうですけど、慣れて来ているのでしょうか。最初はエアロバイク30分の後に1回休んでまたやろうという気力はなかったと思うので」
「それはそう。でも、週に1回でもやんないよりやった方が圧倒的に体の調子がいい気がするー」
お兄ちゃんが勤めている自動車整備工場の娘さん、春風ちゃんに付き合ってもらって軽く体を動かすようになってしばし。エアロバイクだったりランニングマシンだったりを使った運動にも慣れて来たような気がする。やってるのはそこまで激しい運動じゃないけど、程よく汗をかくくらいには一生懸命やってる。
今日はミドリがバイト先の後輩の子と一緒に長篠にあるテディベア博物館みたいなところに行っている。長距離を走った後には軽く車を見てもらうことにしてるみたいだけど、今回は年末年始の後に見てもらったから端折るのかな。どっちにしても、ここにいるあたしを拾ってくれるみたいだから、ミドリが帰ってくるまであたしは運動タイム。
春風ちゃんも、あたしに付き合うようになってからは教える側の自分がちゃんとしていないと示しがつかないと言って運動の習慣をしっかりと固めることにしたそうだ。示しも何も、ちゃんとしようと思う前から週に2回は運動をしてたんだから十分立派だと思う。こういう機械を買うだけ買って物干し竿になってる家とかいくらでもありそうだもん。
「あ、ミドリもうこの辺にいるんだ。でも確かにそろそろいい時間ー」
「彼氏さんですよね」
「そうそう。一応明日からテスト期間らしいから程よい時間には帰って来るって言ってたけど、本当に思ったより早かったなあ」
「今が5時過ぎですよね。長篠からこれくらいの時間に戻って来るとなると、現地での滞在時間はあまり長くなかったんじゃないでしょうか」
「朝も結構早くに発ったみたいだし、どんだけ弾丸旅行だったんだろう。まあいいや。自転車漕ぎながら待ってよーっと」
ゆるゆるとエアロバイクを漕ぎながら、ミドリの車が来るのを待つ。このプレハブのトレーニング室の窓からは工場や駐車場も覗くことが出来るから、誰かが来ればわかるようになってるっぽい。それから、従業員さんと共用のシャワールームもある。トレーニングの後に使うこともできるし、仕事でドロドロになった時とかの洗い場としても使えるみたい。
「あ、ミドリ来た」
「あの軽ですね」
「そうそう」
ミドリも工場には何度も来てるからある程度勝手はわかってて、車を下りたらとりあえず事務所にご挨拶という感じかな。ただ、今日は日曜日で工場の稼働自体はお休み。あたしが個人的に春風ちゃんと約束をして運動をしてるっていう感じ。ちなみにここまでは電車と徒歩で30分くらいで着くくらいの距離感だから、意外にすぐ来れるんだよね。
「あっ、ユキちゃん」
「ミドリお帰りー。あっ、こちら工場をやってる家の娘さんで春風ちゃん。あたしの運動に付き合ってくれてるんだよ」
「鳥居春風といいます」
「ご丁寧にどうも。川北碧です。えっと、良かったらどうぞ。いつもお世話になってます」
「えっ! そんな、わざわざありがとうございます! 明日従業員の皆さんで分けていただきますね」
「いえいえ。大したものではないんですけど」
「今回の、あんまり見たことない箱だね」
「工場にはおやき詰め合わせだね。ユキちゃんにはまた別にあるから後でね」
「やったー」
「ええと、こちらは冷凍保存ですね」
「そうですねー。好きなタイミングでチンするか焼いて食べてもらえたらいいですねー」
「うわあ、中身の種類がいろいろあって選ぶのも楽しみですけど、まずは工場の皆さんですね、ガマンガマン」
春風ちゃんは運動もするけどその分しっかりと食事もするみたくて、食べるのも本当に大好きなんだって。それでこれだけスラッとして締まったスタイルなのがただただ凄いんだけど、ミドリが買って来たおやきの詰め合わせの箱を眺めながらどの味にしようかなって真剣に悩む様が可愛い。普段は大人っぽい感じだけど、こうしてるとウチの1年生たちと何ら変わんないし。
「ミドリ、テディベア博物館はどうだった?」
「凄かったよー、圧巻だった。世界のいろんなメーカーのベアだったり、歴史だったりがいろいろ展示されててね、もふもふなテディベアに触ることも出来て楽しかったよ」
「後輩の子の付き添いで行ったんだよね? ミドリの方が羽目を外して楽しんでたとかじゃないよね?」
「それは大丈夫だよ。でも、その後輩の子って普段は大人しいんだけど、やっぱり一番好きな物の専門的な施設だからか、目の輝きが全然違ったね。バースデーベアをお迎えすることも出来たみたいだし、テスト期間が終わったら新しい子を作るって言ってたよ」
「そう言えば、私も明日からテストなので夕飯を食べたら勉強をしないと」
「そっかー、向島だったよね。あたしもうテスト終わったから自由気ままだったけど」
「いえ、テスト期間には入りますけど、テストとは関係のない用事なども個人的にはたくさん入れているのです」
end.
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鳥居家(工場)と上野家はほどほどに近いんだろうなあとは思っていた。通勤するのにも苦にならない程度の距離感がベスト
ミドリは多分現地滞在時間より車を運転していた時間の方が長いくらいだけど、それはそれで多分楽しんでた
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