2021(04)
■深夜の息抜き?
公式学年+1年
++++
1限を取ってなければ深夜バイトでも案外支障は少ないなと気付き始めたのが2年に上がってからのこと。一人暮らしを始めたのと同時に始めたコーヒーショップとガソリンスタンド併設店でのバイトは、乙四の資格も取れたということで無事深夜スタッフとして定着した。
今くらいの時期になるとさすがに果林先輩もバイトの辞め時をいつにするかという話が具体的になっていて、他にも日勤の方にも4年生の先輩がいたりしたからその人たちが抜ける分をまた募集掛けなきゃと店長が言っているのを聞いた。
いろいろ動く時期だなあと思いつつも、今年の俺は変わることも少なそうだなと思っていつものようにゆるっとバイト中だ。去年の今頃はマジで引っ越しの準備だテストだと忙しくしてたけど。あれから思えば今年は穏やか過ぎて大丈夫かとも思うけど。
「智也ー、仕事してるー!?」
「シノキ君が制服着てる~、変な感じだね~」
「うわっ、お前ら何しに来やがった!」
「ひっどー! アタシら夜遅くまでスタジオに籠もってゼミ合宿のワークショップ用の素材作ってんのに。アンタ成績が下の下だから免除されてるってお忘れ?」
「麻衣の言い方がすげームカつくけど俺の成績がゼミの中じゃ下の下なのは事実だから反論出来ねーよちくしょう!」
ゼミの方では合宿に向けた準備というのも行われているらしかった。2年に上がって正式なゼミ生となると、社会学的なワークショップとやらの内容から考えて、それに使う素材を用意したり、企画進行の手順を考えたりしなければならないらしかった。
ただ、俺は成績を免除されてMBCCのミキサーということでゼミに拾われた身だから、そういう頭を使う系の仕事にはお呼びじゃないんだよな。今回中心になっているのは麻衣や下梨みたいなムードメーカーだったり、ササや亮真みたいな成績優秀者だ。
「ったく。お前ら飲んでくのか持ってくのかどっちだよ」
「え、深夜だからって応対雑過ぎない?」
「うるせーよ。お前ら以外に人いねーんだからいーんだよ。冷やかしならスタジオに帰れ」
「智也がムカつくからしばらく居座って邪魔しよ」
「来須サン、素直じゃないね~」
「シノ、ゴメンな。俺がどうせ外に出るならシノの顔が見たいって言ったばっかりに」
「いや、お前は気にすんなって」
4人がここに乗り込んできた経緯としては、昼も夜もないスタジオでの作業中、作業がなかなか進まず気が狂いそうになったので休憩がてら気分転換に外に出ようということだったらしい。で、ササが「どうせ外に出るなら~」と現在に至っている。
「つか外に出て大丈夫だったのかよ。また戻るんだろ? 鍵とか」
「3年生の先輩もいるから」
「ああ、そうか」
「アタシオレンジジュースM」
「俺は黒糖ラテのMにしよっかな~」
「エスプレッソ」
「ブレンドのMで」
「少々お待ち下さい」
人数分のドリンクを作って、出す。連中の顔を見てると本当にスタジオでは大変だったんだなっつーのがわかる。俺は頭脳労働系の作業になるとマジで参加出来ないし何やってんのかさっぱりわかんないけど、それでヒゲさんからの評価もあるってんだから大変だなとは。
ちなみに3年生の方はワークショップに使う用の映像や音声を高木先輩が編集してるって話だから、俺もそういう仕事なら出来るんだけどなーと思う。つか3年生の仕事の割り振りがガチなんだよな。昼に出したアイディアを深夜に編集して、またそれを受けて昼に話し合ってっつー。
「シノ、お客さん来そうだ」
「マジか。いらっしゃいませー」
「はー、あったかーい」
「あれ、ササだ。よく見たらシノもいる」
「みちるか。一瞬誰かわからなかった」
「つか海月、何やってんだこんなトコで。お前星港市内だろ」
「みちるが夜遊びしたいっていうから」
「夜遊びって」
「っくしゅん」
「つかバイク乗るのもさみーんだぞ。体冷やすなよ。で、何飲む?」
「私はブレンドのM。テイクアウトで」
「えーっと、私はどうしよう。コーヒーだとすぐトイレ行きたくなっちゃうよね」
「ココアとかホットミルクとかにしたら?」
「じゃあ、ホットミルクで」
「少々お待ち下さい」
みちるがバイクを乗り回す中、後ろで風を受け続けていた海月がかなり寒そうにしている。つかまだ1月だぞ。日中でも寒いのに、深夜にそんなことしてたら風邪をひいたってバカかよって言われて終わりのような気がする。
「みちるのコーヒーと」
「ありがとう」
「ホットミルク。砂糖2本だろ」
「ありがと」
「じゃ、風邪ひくなよ。また長引くぞ」
「うん、じゃあね。バイト頑張って」
「おう。あざっしたー」
せっかくあったかいの買ったんだから飲んできゃいーのにと思いつつ、あったかいドリンクをバイク脇で飲むっつーのも絵にはなるんだよな。みちるが乗ってるのは原付2種らしいけど、これがなかなか便利な代物らしい。2人乗りも出来るし二段階右折もないし。
「智也、アタシに対する態度とあの子に対する態度違いすぎない?」
「これはシノキ君の彼女かな~ってこっちじゃ大盛り上がりよ」
「ササ、全力で否定しろ」
「やんわり程度にしか否定出来ませんでした」
「やんわりかよ!」
「ホットミルクに入れる砂糖の量把握してるとか有罪よ!? だって外でホットミルクなんか飲む!?」
「ホットミルクは寝入りに飲みたいよね~」
「でしょ!?」
「それに、他校の子の風邪が長引いてたのを知ってるってね~」
「むぎぃ、状況証拠が強いよ!?」
「ね~。シノキ君のイケメンの一面を見たね~」
「つかお前ら飲むモン飲んだんならさっさと作業に帰れよ! 先輩に留守番させてんだろ!?」
「えー、おもんなー」
「気になるのにね~。佐々木クン他に情報ない?」
「アタシくるるルートで攻めよう」
「じゃ俺はてっちゃんルートで」
「何でお前らそれぞれMBCCメンバーに繋がってんだよ!」
すがやんは問題ないにしてもくるみはちょっとマズいかもしんねー。みちると仲いいし。いやいや、つかマジでこいつら休憩長すぎじゃね!? こんな時に限って給油の車も他の客も来ねーしよ! いや、別に何が疚しいとかではないんだけどもだ。
「ったく、帰れ帰れ!」
「おもんなー」
「ちょっと遊び過ぎたね~」
「……シノ、ドンマイ」
「亮真サンキュ。……はーっ」
「シノ、テスト明けのデート楽しみだな」
「そんな大袈裟なモンじゃねーし。対策の会議後に飯行くだけだぞ」
「とりあえず、スタジオでの炎上は防げるように頑張ります」
「マジで頼んます」
end.
++++
+1年の時間軸ではシノくらにもちょっとした動きがあるようなないようなだけど、ここはフェーズ1で言うところの高菜ルート。
まいみぃとむぎぃがやんややんや言ってるのがかわいい。学祭を経て良コンビになりつつある? 下衆くすると向島のああいう感じになる。
ササはもちろんシノくらのいろいろを知ってるんだけど、まいみぃらの反応を含めて楽しんでる感があるので一番性質が悪いかもしれない。佐々木陸ってのはそういう男なんですよ
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公式学年+1年
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1限を取ってなければ深夜バイトでも案外支障は少ないなと気付き始めたのが2年に上がってからのこと。一人暮らしを始めたのと同時に始めたコーヒーショップとガソリンスタンド併設店でのバイトは、乙四の資格も取れたということで無事深夜スタッフとして定着した。
今くらいの時期になるとさすがに果林先輩もバイトの辞め時をいつにするかという話が具体的になっていて、他にも日勤の方にも4年生の先輩がいたりしたからその人たちが抜ける分をまた募集掛けなきゃと店長が言っているのを聞いた。
いろいろ動く時期だなあと思いつつも、今年の俺は変わることも少なそうだなと思っていつものようにゆるっとバイト中だ。去年の今頃はマジで引っ越しの準備だテストだと忙しくしてたけど。あれから思えば今年は穏やか過ぎて大丈夫かとも思うけど。
「智也ー、仕事してるー!?」
「シノキ君が制服着てる~、変な感じだね~」
「うわっ、お前ら何しに来やがった!」
「ひっどー! アタシら夜遅くまでスタジオに籠もってゼミ合宿のワークショップ用の素材作ってんのに。アンタ成績が下の下だから免除されてるってお忘れ?」
「麻衣の言い方がすげームカつくけど俺の成績がゼミの中じゃ下の下なのは事実だから反論出来ねーよちくしょう!」
ゼミの方では合宿に向けた準備というのも行われているらしかった。2年に上がって正式なゼミ生となると、社会学的なワークショップとやらの内容から考えて、それに使う素材を用意したり、企画進行の手順を考えたりしなければならないらしかった。
ただ、俺は成績を免除されてMBCCのミキサーということでゼミに拾われた身だから、そういう頭を使う系の仕事にはお呼びじゃないんだよな。今回中心になっているのは麻衣や下梨みたいなムードメーカーだったり、ササや亮真みたいな成績優秀者だ。
「ったく。お前ら飲んでくのか持ってくのかどっちだよ」
「え、深夜だからって応対雑過ぎない?」
「うるせーよ。お前ら以外に人いねーんだからいーんだよ。冷やかしならスタジオに帰れ」
「智也がムカつくからしばらく居座って邪魔しよ」
「来須サン、素直じゃないね~」
「シノ、ゴメンな。俺がどうせ外に出るならシノの顔が見たいって言ったばっかりに」
「いや、お前は気にすんなって」
4人がここに乗り込んできた経緯としては、昼も夜もないスタジオでの作業中、作業がなかなか進まず気が狂いそうになったので休憩がてら気分転換に外に出ようということだったらしい。で、ササが「どうせ外に出るなら~」と現在に至っている。
「つか外に出て大丈夫だったのかよ。また戻るんだろ? 鍵とか」
「3年生の先輩もいるから」
「ああ、そうか」
「アタシオレンジジュースM」
「俺は黒糖ラテのMにしよっかな~」
「エスプレッソ」
「ブレンドのMで」
「少々お待ち下さい」
人数分のドリンクを作って、出す。連中の顔を見てると本当にスタジオでは大変だったんだなっつーのがわかる。俺は頭脳労働系の作業になるとマジで参加出来ないし何やってんのかさっぱりわかんないけど、それでヒゲさんからの評価もあるってんだから大変だなとは。
ちなみに3年生の方はワークショップに使う用の映像や音声を高木先輩が編集してるって話だから、俺もそういう仕事なら出来るんだけどなーと思う。つか3年生の仕事の割り振りがガチなんだよな。昼に出したアイディアを深夜に編集して、またそれを受けて昼に話し合ってっつー。
「シノ、お客さん来そうだ」
「マジか。いらっしゃいませー」
「はー、あったかーい」
「あれ、ササだ。よく見たらシノもいる」
「みちるか。一瞬誰かわからなかった」
「つか海月、何やってんだこんなトコで。お前星港市内だろ」
「みちるが夜遊びしたいっていうから」
「夜遊びって」
「っくしゅん」
「つかバイク乗るのもさみーんだぞ。体冷やすなよ。で、何飲む?」
「私はブレンドのM。テイクアウトで」
「えーっと、私はどうしよう。コーヒーだとすぐトイレ行きたくなっちゃうよね」
「ココアとかホットミルクとかにしたら?」
「じゃあ、ホットミルクで」
「少々お待ち下さい」
みちるがバイクを乗り回す中、後ろで風を受け続けていた海月がかなり寒そうにしている。つかまだ1月だぞ。日中でも寒いのに、深夜にそんなことしてたら風邪をひいたってバカかよって言われて終わりのような気がする。
「みちるのコーヒーと」
「ありがとう」
「ホットミルク。砂糖2本だろ」
「ありがと」
「じゃ、風邪ひくなよ。また長引くぞ」
「うん、じゃあね。バイト頑張って」
「おう。あざっしたー」
せっかくあったかいの買ったんだから飲んできゃいーのにと思いつつ、あったかいドリンクをバイク脇で飲むっつーのも絵にはなるんだよな。みちるが乗ってるのは原付2種らしいけど、これがなかなか便利な代物らしい。2人乗りも出来るし二段階右折もないし。
「智也、アタシに対する態度とあの子に対する態度違いすぎない?」
「これはシノキ君の彼女かな~ってこっちじゃ大盛り上がりよ」
「ササ、全力で否定しろ」
「やんわり程度にしか否定出来ませんでした」
「やんわりかよ!」
「ホットミルクに入れる砂糖の量把握してるとか有罪よ!? だって外でホットミルクなんか飲む!?」
「ホットミルクは寝入りに飲みたいよね~」
「でしょ!?」
「それに、他校の子の風邪が長引いてたのを知ってるってね~」
「むぎぃ、状況証拠が強いよ!?」
「ね~。シノキ君のイケメンの一面を見たね~」
「つかお前ら飲むモン飲んだんならさっさと作業に帰れよ! 先輩に留守番させてんだろ!?」
「えー、おもんなー」
「気になるのにね~。佐々木クン他に情報ない?」
「アタシくるるルートで攻めよう」
「じゃ俺はてっちゃんルートで」
「何でお前らそれぞれMBCCメンバーに繋がってんだよ!」
すがやんは問題ないにしてもくるみはちょっとマズいかもしんねー。みちると仲いいし。いやいや、つかマジでこいつら休憩長すぎじゃね!? こんな時に限って給油の車も他の客も来ねーしよ! いや、別に何が疚しいとかではないんだけどもだ。
「ったく、帰れ帰れ!」
「おもんなー」
「ちょっと遊び過ぎたね~」
「……シノ、ドンマイ」
「亮真サンキュ。……はーっ」
「シノ、テスト明けのデート楽しみだな」
「そんな大袈裟なモンじゃねーし。対策の会議後に飯行くだけだぞ」
「とりあえず、スタジオでの炎上は防げるように頑張ります」
「マジで頼んます」
end.
++++
+1年の時間軸ではシノくらにもちょっとした動きがあるようなないようなだけど、ここはフェーズ1で言うところの高菜ルート。
まいみぃとむぎぃがやんややんや言ってるのがかわいい。学祭を経て良コンビになりつつある? 下衆くすると向島のああいう感じになる。
ササはもちろんシノくらのいろいろを知ってるんだけど、まいみぃらの反応を含めて楽しんでる感があるので一番性質が悪いかもしれない。佐々木陸ってのはそういう男なんですよ
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