2021(04)
■思考と調整
＋＋＋＋
来週からはいよいよテスト期間に入っていくということで、今週の授業は本格的に閉めに入ってるなあって感じがする。講義によっては授業中に課題やレポートを提出しておしまいってヤツもあるし、今週がとにかく大事だ。だからかあからさまに学内に人が増えてるような気がするし、飯を食うにもなかなか席が取れなくて一苦労だ。
こういう時は学食じゃなくて購買の方で弁当とかパンとか持ち運びが出来る物を買って、教室や食堂以外のスペースで食べるっていう手もある。学食で勉強してる人とかがいてなかなか席が空かないんだよな。回転率がこれでもかと下がってる感じがする。机の上にプリントやノートが広がってると、これはしばらくムリだなって。
「ようかっすー。お前も買い弁？」
「おー、奏多。そうなんだよ。学食なんか絶対座れないじゃんか」
「希くんこんにちは」
「あっ、鳥ちゃんもおはよー。って言うか２人も買い弁？」
「かっすーとほぼ同じ理由な」
「情報棟で食べる方がいいかと思いました。休み時間なので、さすがに座って食事をしたいですからね」
夏のテスト前に野坂先輩が言ってたことによれば、ヒロ先輩みたく普段サボってて大学にいるのかいないのかわからないような人がこういう時期になって焦って復帰してくるので人口密度が高くなるということらしい。冬もバッチリ人が増えているので、仕方なくおにぎり３つとお茶を買って俺も然るべき建物に帰ろうかと。
奏多と鳥ちゃんは同じ情報科学部の、確か情報メディア学科？ なので履修もほとんど一緒で、テスト対策なんかも一緒にやっているらしい。鳥ちゃんはしっかり者だし、奏多はああ見えてめちゃくちゃ頭いいからテスト対策なんかもレベルが違うんだろうなとは。俺は単位を落とさないように頑張るのを、２人はＳで固めていくとかそういうイメージだ。
「奏多は最近どんな感じ？ 前原さんとの勝負はどうよ」
「もーちょい頑張れば勝てるかもだけど、時間がなさすぎんだよな。とりあえず明日また勝負よ」
「おっ、頑張れよ」
「サンキュ」
「奏多はその先輩との勝負のために食事の内容も少し見直したようです。お酒の量も減らしたとかで」
「ガチじゃん」
「そこまでガチガチなアスリート食とかじゃないんだけど、あんまり脂っこいモンとか、後に響きそうなモンはちょっと控えてんだよ」
そう言って奏多が手にしたのは運動やってますって感じの食事だけど、完全に糖質みたいなモンをカットするんじゃなくて、不足しないようにほどほどには取っていくらしい。俺にはあんまりよくわかんないんだけど、試合の１週間前からしっかりコンディションを整えているらしい。打倒前原さんへの意気込みがマジでガチになってんだよな。
「鳥ちゃんは最近どんな感じ？」
「私は先日西形で開催されていた宇宙展へ行って来ました」
「安定だな～」
「惑星探査機関係の展示も回って来ていたので、それと同時開催という感じで探査機以外の宇宙展が開かれていたのです」
「面白かった？」
「非常に面白かったのですが、この面白さをどう人に伝えればいいのかということを考えてしまいました。人の興味を引く話し方というのでしょうか」
前に鳥ちゃんと奏多とそんなようなことを話してたんだけど、鳥ちゃんはまだそのことについて考えていたみたいだ。鳥ちゃんは星とか宇宙が好きだけど、同じ熱量で話せる人がなかなかいなくて苦労しているみたかった。星の話が始まっても、奏多なんかはまーた始まったと受け流しがちだし。
お前の星講釈は一方的なんだと奏多に言われてショックを受けたかと思いきや、それなら星や宇宙のことに興味を持ってもらえるような話し方はどうすれば身に付くのかと調べ始めたっていうんだからこっちはこっちで真面目だなあと思う。ただ、鳥ちゃんのやっていることは俺もこれからのMMPで、仮に次の１年生にアナウンサー志望の子がいれば俺が教えなきゃいけないことだ。
「そしたら鳥ちゃんも俺と話し方の練習とかする？ 俺今サークルで機材のこととか話し方とかいろいろ練習してんだけどさ」
「そう言えば希くんはラジオのサークルに入っているんでしたね。希くんに聞けば人に伝わる話し方のことが勉強できそうな気がします。ぜひお願いします」
「おっ、いいねいいね！ でも、俺もまだまだお手本にはなれないから、これっていう見本番組とかないか先輩に聞いてみるわ」
「お願いします」
「よくやるねーかっすーも。こうなった春風はしつこいぞ～」
「しつこいとは何よ」
「俺も１人でやるより得るものがありそうだし。MMPの今後は俺にもかかってるしな！ 休んでるヒマなんかないぜ！」
「おーおー、すっかりそれらしくなっちゃって」
サークルの、技術関係で困ったらとりあえず野坂先輩をつつけってのはここしばらくの経験でわかったことだよな。初心者講習会で講師をやっただけあって全般的にいろんなことを分かってるし。話し方のこととかもちょっと聞いてみようかな。あと、サンプルになりそうな番組って何かありますかーっつって聞いてみよう。
「鳥ちゃん、なる早がいい？ それともテスト期間終わってからがいい？」
「希くんの都合で大丈夫ですよ。テスト期間中の方が案外時間があったりもしますし」
「そっか、それじゃあなる早の路線で準備してみるわー」
「よろしくお願いします」
「俺もかっすーの冷やかしに覗いてみるかなー」
end.
＋＋＋＋
ここから来期に向けて希望が膨れ上がって来るMMP、まずはそれらしいお手本を探すところから。
確かちょっと前に音声ファイル自体はもらってるけど、そのどれがいい番組かはノサカじゃないとパッと判別できない。
春風は成績優秀という感じだし奏多もどちゃくそ頭は良いんだけどさすがにオールＳではないのでヘンクツはさすがのヘンクツ。
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来週からはいよいよテスト期間に入っていくということで、今週の授業は本格的に閉めに入ってるなあって感じがする。講義によっては授業中に課題やレポートを提出しておしまいってヤツもあるし、今週がとにかく大事だ。だからかあからさまに学内に人が増えてるような気がするし、飯を食うにもなかなか席が取れなくて一苦労だ。
こういう時は学食じゃなくて購買の方で弁当とかパンとか持ち運びが出来る物を買って、教室や食堂以外のスペースで食べるっていう手もある。学食で勉強してる人とかがいてなかなか席が空かないんだよな。回転率がこれでもかと下がってる感じがする。机の上にプリントやノートが広がってると、これはしばらくムリだなって。
「ようかっすー。お前も買い弁？」
「おー、奏多。そうなんだよ。学食なんか絶対座れないじゃんか」
「希くんこんにちは」
「あっ、鳥ちゃんもおはよー。って言うか２人も買い弁？」
「かっすーとほぼ同じ理由な」
「情報棟で食べる方がいいかと思いました。休み時間なので、さすがに座って食事をしたいですからね」
夏のテスト前に野坂先輩が言ってたことによれば、ヒロ先輩みたく普段サボってて大学にいるのかいないのかわからないような人がこういう時期になって焦って復帰してくるので人口密度が高くなるということらしい。冬もバッチリ人が増えているので、仕方なくおにぎり３つとお茶を買って俺も然るべき建物に帰ろうかと。
奏多と鳥ちゃんは同じ情報科学部の、確か情報メディア学科？ なので履修もほとんど一緒で、テスト対策なんかも一緒にやっているらしい。鳥ちゃんはしっかり者だし、奏多はああ見えてめちゃくちゃ頭いいからテスト対策なんかもレベルが違うんだろうなとは。俺は単位を落とさないように頑張るのを、２人はＳで固めていくとかそういうイメージだ。
「奏多は最近どんな感じ？ 前原さんとの勝負はどうよ」
「もーちょい頑張れば勝てるかもだけど、時間がなさすぎんだよな。とりあえず明日また勝負よ」
「おっ、頑張れよ」
「サンキュ」
「奏多はその先輩との勝負のために食事の内容も少し見直したようです。お酒の量も減らしたとかで」
「ガチじゃん」
「そこまでガチガチなアスリート食とかじゃないんだけど、あんまり脂っこいモンとか、後に響きそうなモンはちょっと控えてんだよ」
そう言って奏多が手にしたのは運動やってますって感じの食事だけど、完全に糖質みたいなモンをカットするんじゃなくて、不足しないようにほどほどには取っていくらしい。俺にはあんまりよくわかんないんだけど、試合の１週間前からしっかりコンディションを整えているらしい。打倒前原さんへの意気込みがマジでガチになってんだよな。
「鳥ちゃんは最近どんな感じ？」
「私は先日西形で開催されていた宇宙展へ行って来ました」
「安定だな～」
「惑星探査機関係の展示も回って来ていたので、それと同時開催という感じで探査機以外の宇宙展が開かれていたのです」
「面白かった？」
「非常に面白かったのですが、この面白さをどう人に伝えればいいのかということを考えてしまいました。人の興味を引く話し方というのでしょうか」
前に鳥ちゃんと奏多とそんなようなことを話してたんだけど、鳥ちゃんはまだそのことについて考えていたみたいだ。鳥ちゃんは星とか宇宙が好きだけど、同じ熱量で話せる人がなかなかいなくて苦労しているみたかった。星の話が始まっても、奏多なんかはまーた始まったと受け流しがちだし。
お前の星講釈は一方的なんだと奏多に言われてショックを受けたかと思いきや、それなら星や宇宙のことに興味を持ってもらえるような話し方はどうすれば身に付くのかと調べ始めたっていうんだからこっちはこっちで真面目だなあと思う。ただ、鳥ちゃんのやっていることは俺もこれからのMMPで、仮に次の１年生にアナウンサー志望の子がいれば俺が教えなきゃいけないことだ。
「そしたら鳥ちゃんも俺と話し方の練習とかする？ 俺今サークルで機材のこととか話し方とかいろいろ練習してんだけどさ」
「そう言えば希くんはラジオのサークルに入っているんでしたね。希くんに聞けば人に伝わる話し方のことが勉強できそうな気がします。ぜひお願いします」
「おっ、いいねいいね！ でも、俺もまだまだお手本にはなれないから、これっていう見本番組とかないか先輩に聞いてみるわ」
「お願いします」
「よくやるねーかっすーも。こうなった春風はしつこいぞ～」
「しつこいとは何よ」
「俺も１人でやるより得るものがありそうだし。MMPの今後は俺にもかかってるしな！ 休んでるヒマなんかないぜ！」
「おーおー、すっかりそれらしくなっちゃって」
サークルの、技術関係で困ったらとりあえず野坂先輩をつつけってのはここしばらくの経験でわかったことだよな。初心者講習会で講師をやっただけあって全般的にいろんなことを分かってるし。話し方のこととかもちょっと聞いてみようかな。あと、サンプルになりそうな番組って何かありますかーっつって聞いてみよう。
「鳥ちゃん、なる早がいい？ それともテスト期間終わってからがいい？」
「希くんの都合で大丈夫ですよ。テスト期間中の方が案外時間があったりもしますし」
「そっか、それじゃあなる早の路線で準備してみるわー」
「よろしくお願いします」
「俺もかっすーの冷やかしに覗いてみるかなー」
end.
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ここから来期に向けて希望が膨れ上がって来るMMP、まずはそれらしいお手本を探すところから。
確かちょっと前に音声ファイル自体はもらってるけど、そのどれがいい番組かはノサカじゃないとパッと判別できない。
春風は成績優秀という感じだし奏多もどちゃくそ頭は良いんだけどさすがにオールＳではないのでヘンクツはさすがのヘンクツ。
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