2021(04)
■入れ替わる戦力図
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さすがにこの時期になると少しずつ人が増えてくるのを受付の稼働率からも感じることが出来る。情報センターでは1月に入ると繁忙期に片足突っ込むと言われているんだけど、卒論の波を越えて、次にやってくるのがテスト期間だ。
厳密に言えばテスト期間は再来週からなんだけど、来週の授業までにレポートを提出するっていうタイプの授業もあるし、課題の追い込みにかかる人がいたりもするし、とにかく利用者の母数が増えるし夜遅くまでやっていく人もいたりする。
「川北、いたか」
「あっ、林原さんおはようございまーす」
「那須田さんから聞いていると思うが、来月の追試験終了後にセンターで用いられるマシンにAdobe系のソフトをインストールすることになっている。シフトを組む際は留意してくれ」
「えっ、初めて聞きましたよ!?」
「あの人は未だにオレがバイトリーダーだと思っているのか。まあいい。そういうことだ。詳細はお前が那須田さんをつつけ。お前が動かんとあの人はオレがいなくなってもオレがいるものだと思い続ける」
「わかりましたー」
ちなみにだけど、林原さんからバイトリーダーの役割を受け継ぐことになった。林原さんと烏丸さんが抜けた後の最高学年はカナコさんになるんだけど、カナコさんはA番専のスタッフだし、残りのスタッフの中では俺が一番歴が長くなるからって。
春山さんもそうなるだろうなーっていう風に見通して俺にA番の強い権限を引き継いだっていう話だし、まあ、そういうことならそうなるものなんだろうなあとある程度納得してこの仕事を引き受けるようになった。今年って役職の当たり年なのかなあ、定例会でも議長になっちゃったし。
「画像編集ソフトとかがこっちの自習室にも入るんですねー。今まで入ってなかったのが不思議な感じもしますけど」
「グラフィック系の授業が多いのは理系であった時代の名残らしいが、今では文系の学部でもグラフィックや音楽を扱ったり、文理の区別が付け難い学部もあるからな。情報センターと理系の自習室の差を多少なりとも埋めようということらしい」
「フォトショやイラレが使えるようになると、センターの利用者層もちょっと変わったりしますかねー」
「学業とは関係のない私的な利用が増えることは容易に想像出来るな」
「その辺の線引きは難しそうですねー」
何が怖いかってアオがB番に入ってるときだよね。アオは林原さんほどとまでは行かないにせよバッサバッサとブラックリストに登録しようとするから。実際真桜が受付業務をしてるときなんかは横からマシンを操作して自分でブラリ登録していくって話だし。
「とは言え、些細な画像編集であればスマホでも済ませられるし、こればかりは稼働を始めてみんことには何とも言えんな」
「そうですよねー。ちなみにですけど、その頃には林原さんって」
「いつまでもオレがいると思うな」
「そうですよねえ! 春山さんだって絶対にいなくならないと思ってたのに遺産と存在感だけ残したままいなくなっちゃいましたもんね」
「青山さんにはキツく言っておいたから今年はプレッツェルのような物が襲ってくることはないと思いたいが、厭な残留思念のような物がまだこびり付いているようには思えるな」
「残留思念って言うと怨念とか怨霊みたいな感じですね~、どろどろ~って出てきそうです」
「実際あの凶悪な目つきは恨み辛みを乗せてなければ出せまい」
「あー……否定はしませんけど」
繁忙期に片足突っ込んでいるとは言え、一応は土曜日でお休みなのでこんな風にのんびりと雑談をすることも出来てるんだけど。本当に忙しくなってくるとひっきりなしに人が来てずーっと学生証とカードキーを交換し続けることになるよね。
春山さんが短い休憩の間に受付を睨みながら片手で食べられるご飯を食べてたのも懐かしいなあ。今ではまあまあスタッフの人数もいるから交代で休みを入れながら仕事を出来るけど。あっ、もしかして林原さんと烏丸さんがいなくなるとまたあの頃に逆戻りするんじゃ!?
「何を指折り数えている」
「あ、いえ、4年生の先輩たちがいなくなった後の履修登録がどう回るのかっていうことをちょっと」
「5人いるのであればそれなりに回るだろう」
「一応はそうなんですけどね?」
「今いるスタッフの戦力比ではお前たち新3年の日程が多少不安ではあるが、それはお前たちが健康診断を早々に終えてここに走るか、ピーク時を避けるなり1人ずつ行けばいいというだけのことだからな」
「そっか、1人ずつ行けばいいのか」
「仮に2人抜ける日でも3人残るのは大きいからな」
「本当ですよねー。カナコさんをずっと受付に置いておけることの心強さですよ。あれっ、そう言えば結局カナコさんのB番研修ってどうなったんですか?」
「埒が明かんという理由で閉講した。適性無し、不合格だ」
「正式にA番専任スタッフに落ち着いたんですねー」
「そういうことだ。ただ、Adobeのソフトが入ると事情が変わる可能性もある。綾瀬は趣味で画像編集やロゴ制作などはパソコンで行っているから、あの辺りのソフトの扱いにはある程度慣れている。高山も写真屋での経験があるから対応出来るだろう」
「そっか! スタッフもソフトの扱いに慣れなきゃいけないんだ! えー、俺画像編集はあんまりやったことないんだよなー……1年生の子たちってー……」
「五百崎は一通り扱える。有馬は知らん」
ちょっとこれは、アオか誰かに新しいソフトの使い方の講習を受けなきゃいけなくなるかもなー。動画編集ソフトとかも入ってくるのかなあ。だったらインターフェイスの方にも生きそうだけど、どうなのかなー。
end.
++++
最初ミドレンで誕生日にお出かけする計画の話のつもりだったのにリン様が出張ってきてレンレン出る幕なくなった
春山さんの謎の存在感については何も言えないヤツ。情報センターの伝説的構成員。去年のプレッツェルはいつ片付いた?
そういや最近のリン様って大事なときにインフルエンザとかやらかさなくなってるわね。4年になって頑丈になった?w
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さすがにこの時期になると少しずつ人が増えてくるのを受付の稼働率からも感じることが出来る。情報センターでは1月に入ると繁忙期に片足突っ込むと言われているんだけど、卒論の波を越えて、次にやってくるのがテスト期間だ。
厳密に言えばテスト期間は再来週からなんだけど、来週の授業までにレポートを提出するっていうタイプの授業もあるし、課題の追い込みにかかる人がいたりもするし、とにかく利用者の母数が増えるし夜遅くまでやっていく人もいたりする。
「川北、いたか」
「あっ、林原さんおはようございまーす」
「那須田さんから聞いていると思うが、来月の追試験終了後にセンターで用いられるマシンにAdobe系のソフトをインストールすることになっている。シフトを組む際は留意してくれ」
「えっ、初めて聞きましたよ!?」
「あの人は未だにオレがバイトリーダーだと思っているのか。まあいい。そういうことだ。詳細はお前が那須田さんをつつけ。お前が動かんとあの人はオレがいなくなってもオレがいるものだと思い続ける」
「わかりましたー」
ちなみにだけど、林原さんからバイトリーダーの役割を受け継ぐことになった。林原さんと烏丸さんが抜けた後の最高学年はカナコさんになるんだけど、カナコさんはA番専のスタッフだし、残りのスタッフの中では俺が一番歴が長くなるからって。
春山さんもそうなるだろうなーっていう風に見通して俺にA番の強い権限を引き継いだっていう話だし、まあ、そういうことならそうなるものなんだろうなあとある程度納得してこの仕事を引き受けるようになった。今年って役職の当たり年なのかなあ、定例会でも議長になっちゃったし。
「画像編集ソフトとかがこっちの自習室にも入るんですねー。今まで入ってなかったのが不思議な感じもしますけど」
「グラフィック系の授業が多いのは理系であった時代の名残らしいが、今では文系の学部でもグラフィックや音楽を扱ったり、文理の区別が付け難い学部もあるからな。情報センターと理系の自習室の差を多少なりとも埋めようということらしい」
「フォトショやイラレが使えるようになると、センターの利用者層もちょっと変わったりしますかねー」
「学業とは関係のない私的な利用が増えることは容易に想像出来るな」
「その辺の線引きは難しそうですねー」
何が怖いかってアオがB番に入ってるときだよね。アオは林原さんほどとまでは行かないにせよバッサバッサとブラックリストに登録しようとするから。実際真桜が受付業務をしてるときなんかは横からマシンを操作して自分でブラリ登録していくって話だし。
「とは言え、些細な画像編集であればスマホでも済ませられるし、こればかりは稼働を始めてみんことには何とも言えんな」
「そうですよねー。ちなみにですけど、その頃には林原さんって」
「いつまでもオレがいると思うな」
「そうですよねえ! 春山さんだって絶対にいなくならないと思ってたのに遺産と存在感だけ残したままいなくなっちゃいましたもんね」
「青山さんにはキツく言っておいたから今年はプレッツェルのような物が襲ってくることはないと思いたいが、厭な残留思念のような物がまだこびり付いているようには思えるな」
「残留思念って言うと怨念とか怨霊みたいな感じですね~、どろどろ~って出てきそうです」
「実際あの凶悪な目つきは恨み辛みを乗せてなければ出せまい」
「あー……否定はしませんけど」
繁忙期に片足突っ込んでいるとは言え、一応は土曜日でお休みなのでこんな風にのんびりと雑談をすることも出来てるんだけど。本当に忙しくなってくるとひっきりなしに人が来てずーっと学生証とカードキーを交換し続けることになるよね。
春山さんが短い休憩の間に受付を睨みながら片手で食べられるご飯を食べてたのも懐かしいなあ。今ではまあまあスタッフの人数もいるから交代で休みを入れながら仕事を出来るけど。あっ、もしかして林原さんと烏丸さんがいなくなるとまたあの頃に逆戻りするんじゃ!?
「何を指折り数えている」
「あ、いえ、4年生の先輩たちがいなくなった後の履修登録がどう回るのかっていうことをちょっと」
「5人いるのであればそれなりに回るだろう」
「一応はそうなんですけどね?」
「今いるスタッフの戦力比ではお前たち新3年の日程が多少不安ではあるが、それはお前たちが健康診断を早々に終えてここに走るか、ピーク時を避けるなり1人ずつ行けばいいというだけのことだからな」
「そっか、1人ずつ行けばいいのか」
「仮に2人抜ける日でも3人残るのは大きいからな」
「本当ですよねー。カナコさんをずっと受付に置いておけることの心強さですよ。あれっ、そう言えば結局カナコさんのB番研修ってどうなったんですか?」
「埒が明かんという理由で閉講した。適性無し、不合格だ」
「正式にA番専任スタッフに落ち着いたんですねー」
「そういうことだ。ただ、Adobeのソフトが入ると事情が変わる可能性もある。綾瀬は趣味で画像編集やロゴ制作などはパソコンで行っているから、あの辺りのソフトの扱いにはある程度慣れている。高山も写真屋での経験があるから対応出来るだろう」
「そっか! スタッフもソフトの扱いに慣れなきゃいけないんだ! えー、俺画像編集はあんまりやったことないんだよなー……1年生の子たちってー……」
「五百崎は一通り扱える。有馬は知らん」
ちょっとこれは、アオか誰かに新しいソフトの使い方の講習を受けなきゃいけなくなるかもなー。動画編集ソフトとかも入ってくるのかなあ。だったらインターフェイスの方にも生きそうだけど、どうなのかなー。
end.
++++
最初ミドレンで誕生日にお出かけする計画の話のつもりだったのにリン様が出張ってきてレンレン出る幕なくなった
春山さんの謎の存在感については何も言えないヤツ。情報センターの伝説的構成員。去年のプレッツェルはいつ片付いた?
そういや最近のリン様って大事なときにインフルエンザとかやらかさなくなってるわね。4年になって頑丈になった?w
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