2021(04)
■お客様からの脱却
公式学年+1年
++++
「えー、今年もゼミ合宿が近付いてきたということで、そのお知らせです」
佐藤ゼミでは2月の中旬に差し掛かるくらいの頃にゼミ合宿といって、4年生の卒論発表を主とする合宿が行われる。これは長篠にある緑ヶ丘大学のセミナーハウスでやるんだけど、そのセミナーハウスはスキー場が併設された洋館のような場所で、夕飯はフランス料理のフルコースだったりとにかく学生の泊まるような場所なのかという施設だ。
宿泊室もホテルみたいな感じでしっかりした部屋だったし、お風呂もかなり豪華だった。去年は露天風呂で雪見風呂を楽しんだりもした。ただ、一応は学生の学習施設としての側面もあるので一本脇の廊下に入ってしまえば大学の学部棟と同じような造りになっていて、普通に教室なんかもあったりする。
「基本的に全員参加で、よっぽど親が危篤とかそういう事情じゃない限りは来るように。4年生は私が卒論を発表するに値すると評価した者のみを選抜して参加させます。就職先で研修があるなどの予定がある場合は早く申告するように」
俺たちは去年の経験があるので今年はどんな準備が必要かなどを考えつつ荷物をまとめることになる。2年生からは酒類の持ち込みも解禁されるそうだけど、片付けのことを考えるとどうした物かなあと。ビールやチューハイ程度なら現地調達も出来るけど、観光地料金なので下界で買って持ち込む方が圧倒的にいい。
「えー、2年生と3年生には、合宿中に行うワークショップ用の素材を用意してください。学年ごとにワークショップの内容も考えてもらって、当日の進行までお願いします。内容は社会学的であれば自由。君たちがこれまでどういう勉強をしてきたかをいかんなく発揮してもらって全学年の前で打ち出してもらえればと思います」
合宿の料金の払い方だとか、その他の連絡事項を先生がつらつらと読み上げれば今回の合同ゼミは終わりだ。俺たちは去年、終わりですと言われた瞬間に高木先輩と果林先輩を捕まえて合宿って具体的に何をどう準備したらいいんですかっていう風に質問責めにした。それだけこの合宿がしおりを読み込むだけでは予測不可能な行事なんだ。
「シノ先輩ササ先輩!」
「あ、やっぱり来た」
「お前らの聞きたいことはわかるぞ。どう準備するかっつー具体的な話だろ」
「そうです!」
余談だけど、来年からは今いるMBCCの1年生から3人佐藤ゼミに入ることになっている。アナウンサーの男子が1人と、ミキサーが男女1人ずつだ。ちなみに成績面の資格要件は全員普通にクリアしているのでシノと高木先輩が例によって先生からチクチク刺されている現場を俺は見ていたのだけど、高木先輩はもう先生に何を言われても完全にノーダメージなんだろうなあとは。
「まず必要なのは非常食だな」
「非常食?」
「それはシノ先輩が量食う方だからとかじゃなくてですか」
「考えてみろよ、観光バスからマイクロバスに乗り換えなきゃ上ってけねー山ん中だぞ!? そう気軽に何でも買いに行けるような環境じゃねーからな」
「俺たちが食べる方だからとかじゃなくて、一般的な男子なら心許ないって俺たちも高木先輩から言われたから。凛斗も程よく非常食を持ってるといいと思う」
「ラーメン持ってくかー」
「あと、甘いモンも不足しがちだから必要ならチョコでも飴でもあった方がいいな」
「糖分切れたらちむりーが死ぬ」
「食事はともかく、甘い物は必要ですね」
正直、1年生は雰囲気を掴むための合宿なので特に準備らしい準備は必要ない。生活するに当たっての困りごとを潰しておけばそれで十分かなと思う。それが食事の問題とお小遣いの問題だ。小遣いは、人によっては観光地料金で割高な売店でお土産を買ったりスキーをする人であれば山小屋で食事をするのに使う。それからサービスエリアでの買い物が合宿の本番だという人もいる。
「君たち、MBCCで情報の共有かい?」
「それっくらいいーじゃないすか」
「ダメとは言ってないじゃないのよ。わかってるだろうけど、卒論発表合宿であって、勉学が主目的だからねシノキ君。分かってる?」
「あーはい大丈夫っすわかってますはい」
「間違っても私が話してる最中に寝るなんてことはしないように」
「さすがに抵抗しますよ」
「俺が責任持って起こしますんで」
「頼むよ佐々木君。まあ、シノキ君はまだいい方だからねえ。君たちの先輩は何度言ってもああだよ全く!」
君たちの先輩というのが誰のことを言っているのかはお察しください状態だ。ちなみにこの1年生3人は学業でのボーダーを普通にクリアしてるんだけど、特にミキサーのちむりーが先生曰く春学期時点で学部でも指折りの成績をしているらしく、座学型のミキサーの登場に先生が興奮していたのは記憶に新しい。
「学業の合宿ではあるけど、遊ぶこと自体はいいんですよね?」
「自由時間もあるからね、その辺は自由にしてもらって」
「よーし!」
「中、わかってると思うけどギャンブルめいたことは出来ないと思っといた方が」
「だーいじょうぶです! トランプ持ち込んで自己紹介し合いがてらきゃっきゃするくらいですって!」
「佐々木君、1年生の監督もよろしくね」
「……はい」
なるほど、今までの先輩たちもそうやって情報共有と監督をしてきたのか。凛斗とちむりーは心配ないけど、中がやらかさないかはちょっと心配だけど、まあシノもいるし。いや、それだけじゃなくて2年生はワークショップもあるのか。やることが何気にあるぞ。
end.
++++
在りし日のササシノデビューのように、フェーズ3になって1年生として登場する子たちが一部プレデビュー。
ササシノもこの時間軸では先輩なので、ゼミ合宿のお知らせが出されると攻略情報を出す側に回ります。時間の流れを感じる。
多分TKGは歴代MBCCの佐藤ゼミ生の中でもメンタル強者。ヒゲさんに何を言われたところでマイペースを貫くよ
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公式学年+1年
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「えー、今年もゼミ合宿が近付いてきたということで、そのお知らせです」
佐藤ゼミでは2月の中旬に差し掛かるくらいの頃にゼミ合宿といって、4年生の卒論発表を主とする合宿が行われる。これは長篠にある緑ヶ丘大学のセミナーハウスでやるんだけど、そのセミナーハウスはスキー場が併設された洋館のような場所で、夕飯はフランス料理のフルコースだったりとにかく学生の泊まるような場所なのかという施設だ。
宿泊室もホテルみたいな感じでしっかりした部屋だったし、お風呂もかなり豪華だった。去年は露天風呂で雪見風呂を楽しんだりもした。ただ、一応は学生の学習施設としての側面もあるので一本脇の廊下に入ってしまえば大学の学部棟と同じような造りになっていて、普通に教室なんかもあったりする。
「基本的に全員参加で、よっぽど親が危篤とかそういう事情じゃない限りは来るように。4年生は私が卒論を発表するに値すると評価した者のみを選抜して参加させます。就職先で研修があるなどの予定がある場合は早く申告するように」
俺たちは去年の経験があるので今年はどんな準備が必要かなどを考えつつ荷物をまとめることになる。2年生からは酒類の持ち込みも解禁されるそうだけど、片付けのことを考えるとどうした物かなあと。ビールやチューハイ程度なら現地調達も出来るけど、観光地料金なので下界で買って持ち込む方が圧倒的にいい。
「えー、2年生と3年生には、合宿中に行うワークショップ用の素材を用意してください。学年ごとにワークショップの内容も考えてもらって、当日の進行までお願いします。内容は社会学的であれば自由。君たちがこれまでどういう勉強をしてきたかをいかんなく発揮してもらって全学年の前で打ち出してもらえればと思います」
合宿の料金の払い方だとか、その他の連絡事項を先生がつらつらと読み上げれば今回の合同ゼミは終わりだ。俺たちは去年、終わりですと言われた瞬間に高木先輩と果林先輩を捕まえて合宿って具体的に何をどう準備したらいいんですかっていう風に質問責めにした。それだけこの合宿がしおりを読み込むだけでは予測不可能な行事なんだ。
「シノ先輩ササ先輩!」
「あ、やっぱり来た」
「お前らの聞きたいことはわかるぞ。どう準備するかっつー具体的な話だろ」
「そうです!」
余談だけど、来年からは今いるMBCCの1年生から3人佐藤ゼミに入ることになっている。アナウンサーの男子が1人と、ミキサーが男女1人ずつだ。ちなみに成績面の資格要件は全員普通にクリアしているのでシノと高木先輩が例によって先生からチクチク刺されている現場を俺は見ていたのだけど、高木先輩はもう先生に何を言われても完全にノーダメージなんだろうなあとは。
「まず必要なのは非常食だな」
「非常食?」
「それはシノ先輩が量食う方だからとかじゃなくてですか」
「考えてみろよ、観光バスからマイクロバスに乗り換えなきゃ上ってけねー山ん中だぞ!? そう気軽に何でも買いに行けるような環境じゃねーからな」
「俺たちが食べる方だからとかじゃなくて、一般的な男子なら心許ないって俺たちも高木先輩から言われたから。凛斗も程よく非常食を持ってるといいと思う」
「ラーメン持ってくかー」
「あと、甘いモンも不足しがちだから必要ならチョコでも飴でもあった方がいいな」
「糖分切れたらちむりーが死ぬ」
「食事はともかく、甘い物は必要ですね」
正直、1年生は雰囲気を掴むための合宿なので特に準備らしい準備は必要ない。生活するに当たっての困りごとを潰しておけばそれで十分かなと思う。それが食事の問題とお小遣いの問題だ。小遣いは、人によっては観光地料金で割高な売店でお土産を買ったりスキーをする人であれば山小屋で食事をするのに使う。それからサービスエリアでの買い物が合宿の本番だという人もいる。
「君たち、MBCCで情報の共有かい?」
「それっくらいいーじゃないすか」
「ダメとは言ってないじゃないのよ。わかってるだろうけど、卒論発表合宿であって、勉学が主目的だからねシノキ君。分かってる?」
「あーはい大丈夫っすわかってますはい」
「間違っても私が話してる最中に寝るなんてことはしないように」
「さすがに抵抗しますよ」
「俺が責任持って起こしますんで」
「頼むよ佐々木君。まあ、シノキ君はまだいい方だからねえ。君たちの先輩は何度言ってもああだよ全く!」
君たちの先輩というのが誰のことを言っているのかはお察しください状態だ。ちなみにこの1年生3人は学業でのボーダーを普通にクリアしてるんだけど、特にミキサーのちむりーが先生曰く春学期時点で学部でも指折りの成績をしているらしく、座学型のミキサーの登場に先生が興奮していたのは記憶に新しい。
「学業の合宿ではあるけど、遊ぶこと自体はいいんですよね?」
「自由時間もあるからね、その辺は自由にしてもらって」
「よーし!」
「中、わかってると思うけどギャンブルめいたことは出来ないと思っといた方が」
「だーいじょうぶです! トランプ持ち込んで自己紹介し合いがてらきゃっきゃするくらいですって!」
「佐々木君、1年生の監督もよろしくね」
「……はい」
なるほど、今までの先輩たちもそうやって情報共有と監督をしてきたのか。凛斗とちむりーは心配ないけど、中がやらかさないかはちょっと心配だけど、まあシノもいるし。いや、それだけじゃなくて2年生はワークショップもあるのか。やることが何気にあるぞ。
end.
++++
在りし日のササシノデビューのように、フェーズ3になって1年生として登場する子たちが一部プレデビュー。
ササシノもこの時間軸では先輩なので、ゼミ合宿のお知らせが出されると攻略情報を出す側に回ります。時間の流れを感じる。
多分TKGは歴代MBCCの佐藤ゼミ生の中でもメンタル強者。ヒゲさんに何を言われたところでマイペースを貫くよ
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