2021(03)
■先輩の話
公式学年+1年
++++
「ういーす佐々木クン」
「ああ、下梨君。おはよう」
「シノキ君の応援行かなくていいの?」
「行くつもりで一応昼買ってきた」
ゼミのラジオブースも代替わりを迎え、3年生の先輩から2年生の何人かに技術継承と言えば大袈裟だけど、どんな風に番組をやっているのかっていうのを見せて教える期間に入っている。今日はシノがミキサーの補佐としてブースに入ってるんだけど、メインミキサーが高木先輩じゃないのでどうなるかなって感じ。
どちらかと言えばミキサー(シノみたいなガチなミキサーや、これまでの活動で機材やパソコンの扱いが上手かった人)の方がこの期間に招集される傾向にあるので、アナウンサーの俺の優先順位は後ろに回りがちなんだよな。まあ、機材の配置さえわかれば番組をやることは出来るくらいにはミキサーの練習はサークルでもしてるし、今はまだ急がなくていいかな。
「そーいやさ、去年のこれくらいの時期に何かゼミのラジオっぽくないめちゃくちゃカッコいい番組やってたの覚えてる?」
「あー、もしかして高木先輩の暗躍の件かな?」
「暗躍? 物騒じゃん」
「高木先輩とこないだ卒業した先輩がやってた番組かな、下梨君が言ってるのって。俺も去年「とにかく行かなきゃいけないんだ!」ってシノに引き摺られて聴きに来てたよ」
「ホント、シノキ君てラジオに一生懸命だよねえ」
「そこがアイツのいいところだから。で、その番組がどうかした?」
「ううん、ラジオのカレンダーを見てて思い出しただけ。すげーカッコ良かったなーっていう、思い出?」
「高崎先輩はMBCCでも伝説の先輩だからな」
そう言えば、去年の今頃だったなあ。今から思えば高木先輩が暗躍しようとしているのを1ヶ月も黙っていられたって、シノにしては本当によく我慢したんじゃないかと思う。ゼミのブースでやっている番組を第1学食に飛ばす実験をしたり、水面下でいろいろやっていたとは聞く。
思えば、シノがミキサーとしての練習により力を入れるようになったのはあの番組の後からだったかもしれない。高木先輩に番組のファイルを貰いに行って、シンプルな機材配置だった頃にこんな音をどうやって作っていたんだって問い詰めてその場所でそのまま練習して。
「実はさ俺、千葉さんが番組やってる日は普通に毎回聞いてんだよね。ファンってヤツ?」
「え、そうなんだ」
「俺はラジオの技術的なことはよくわかんないんだけどさ、ただ上手いだけじゃなくてすげー楽しそうだし、それがただバカ騒ぎしてる楽しさじゃなくて、ほっこりすんだね」
「あー、なるほど」
ゼミでの果林先輩の番組と言えば、普通に毎日放送している昼の番組じゃなくて、オープンキャンパスのような公開生放送のイメージだ。ああいう形態での番組は、技術的なこと云々と言うよりも雰囲気の良さが前面に出て来る。果林先輩と高木先輩のアドリブ合戦の織りなす妙だ。あれは他の誰にも真似出来ない。
「ほら、千葉さんの番組って毎週やってるワケじゃないからカレンダーもチェックするよね」
「何だかんだゼミラジオってやる人が固定されてるからね。果林先輩からはその辺のちょっとブラックな事情なんかも聞いてるけど」
「えっ!? 何それブラックとか!」
「あのラジオブースに入るためにはまず先生に気に入られる必要があるらしいね。技術どうこうより好感度の方が重要だとか」
「あ~、でもそう言われたらそんな感じするね。えっ、そしたらシノキ君は気に入られてるみたいなこと?」
「シノは気に入られてるって言うより単純にミキサーだからじゃないかな」
「あ、そっちか」
「まいみぃは普通に気に入られての採用っぽい。女子の方が気に入られやすいとも聞くし」
「わっかりやすいもんね~、あのセンセ」
果林先輩は根っからの佐藤先生嫌いで、ヒゲに媚びてまであそこでの番組をやる必要はないって言っているのを何度も聞いたことがある。それでも学術的なところで佐藤ゼミを選んで入っていて、実際果林先輩の社会学的な視点や論理的思考に基づく討論力などは先生に一目置かれるレベルだ。
高木先輩も先生が成績などには現れないところの果林先輩の社会学的な力みたいなものを褒めているのを何度も聞いたことがあるそうだし、口で戦う力は鍛えてもらいなさいよと何度も言われて来たそうだ。今から思えば、俺も果林先輩にもうちょっと鍛えてもらえば良かったかもしれない。
「ゼミでやってる果林先輩の番組を果林先輩の番組たらしめるのは高木先輩のミキサーなんだよなあ、やっぱり」
「オープンキャンパスとか、デカい場面でここぞと出して来るもんな」
「そうなんだよ。何だかんだ言って肝心な時は果林先輩頼みなところもある」
でも、多分今は難しいんだろうなあ。何かちょっと前からあの2人、結構ギクシャクしてるし。仲良いトコしか見てきてないから、あんだけ絡みのない先輩たちに違和感しかないっていう。喧嘩してるなら仲直りして欲しいし、別の要因でも早く元に戻って欲しい。
「そういや明日はまいみぃが番組やるって言ってたな」
「あ、そうだっけ。応援行く?」
「行くだけ行くことにはなると思う。とりあえず今日はシノの応援かな」
「そだね~」
end.
++++
フェーズ2の+1年軸は17年度でやってた+2年軸の世界線。なのでタカりんは絶賛ギクシャク中。ゼミ合宿を待て
で、その時間軸だとMBCCも今の1年生たちに代替わりが済んでるし、各役職の発表もされてる。機材部長はともかくアナ部長は誰だ。
むぎぃが果林のファンということが明かされたのでいつかオープンキャンパスの番組とかも聞いてる話とか見たいね
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公式学年+1年
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「ういーす佐々木クン」
「ああ、下梨君。おはよう」
「シノキ君の応援行かなくていいの?」
「行くつもりで一応昼買ってきた」
ゼミのラジオブースも代替わりを迎え、3年生の先輩から2年生の何人かに技術継承と言えば大袈裟だけど、どんな風に番組をやっているのかっていうのを見せて教える期間に入っている。今日はシノがミキサーの補佐としてブースに入ってるんだけど、メインミキサーが高木先輩じゃないのでどうなるかなって感じ。
どちらかと言えばミキサー(シノみたいなガチなミキサーや、これまでの活動で機材やパソコンの扱いが上手かった人)の方がこの期間に招集される傾向にあるので、アナウンサーの俺の優先順位は後ろに回りがちなんだよな。まあ、機材の配置さえわかれば番組をやることは出来るくらいにはミキサーの練習はサークルでもしてるし、今はまだ急がなくていいかな。
「そーいやさ、去年のこれくらいの時期に何かゼミのラジオっぽくないめちゃくちゃカッコいい番組やってたの覚えてる?」
「あー、もしかして高木先輩の暗躍の件かな?」
「暗躍? 物騒じゃん」
「高木先輩とこないだ卒業した先輩がやってた番組かな、下梨君が言ってるのって。俺も去年「とにかく行かなきゃいけないんだ!」ってシノに引き摺られて聴きに来てたよ」
「ホント、シノキ君てラジオに一生懸命だよねえ」
「そこがアイツのいいところだから。で、その番組がどうかした?」
「ううん、ラジオのカレンダーを見てて思い出しただけ。すげーカッコ良かったなーっていう、思い出?」
「高崎先輩はMBCCでも伝説の先輩だからな」
そう言えば、去年の今頃だったなあ。今から思えば高木先輩が暗躍しようとしているのを1ヶ月も黙っていられたって、シノにしては本当によく我慢したんじゃないかと思う。ゼミのブースでやっている番組を第1学食に飛ばす実験をしたり、水面下でいろいろやっていたとは聞く。
思えば、シノがミキサーとしての練習により力を入れるようになったのはあの番組の後からだったかもしれない。高木先輩に番組のファイルを貰いに行って、シンプルな機材配置だった頃にこんな音をどうやって作っていたんだって問い詰めてその場所でそのまま練習して。
「実はさ俺、千葉さんが番組やってる日は普通に毎回聞いてんだよね。ファンってヤツ?」
「え、そうなんだ」
「俺はラジオの技術的なことはよくわかんないんだけどさ、ただ上手いだけじゃなくてすげー楽しそうだし、それがただバカ騒ぎしてる楽しさじゃなくて、ほっこりすんだね」
「あー、なるほど」
ゼミでの果林先輩の番組と言えば、普通に毎日放送している昼の番組じゃなくて、オープンキャンパスのような公開生放送のイメージだ。ああいう形態での番組は、技術的なこと云々と言うよりも雰囲気の良さが前面に出て来る。果林先輩と高木先輩のアドリブ合戦の織りなす妙だ。あれは他の誰にも真似出来ない。
「ほら、千葉さんの番組って毎週やってるワケじゃないからカレンダーもチェックするよね」
「何だかんだゼミラジオってやる人が固定されてるからね。果林先輩からはその辺のちょっとブラックな事情なんかも聞いてるけど」
「えっ!? 何それブラックとか!」
「あのラジオブースに入るためにはまず先生に気に入られる必要があるらしいね。技術どうこうより好感度の方が重要だとか」
「あ~、でもそう言われたらそんな感じするね。えっ、そしたらシノキ君は気に入られてるみたいなこと?」
「シノは気に入られてるって言うより単純にミキサーだからじゃないかな」
「あ、そっちか」
「まいみぃは普通に気に入られての採用っぽい。女子の方が気に入られやすいとも聞くし」
「わっかりやすいもんね~、あのセンセ」
果林先輩は根っからの佐藤先生嫌いで、ヒゲに媚びてまであそこでの番組をやる必要はないって言っているのを何度も聞いたことがある。それでも学術的なところで佐藤ゼミを選んで入っていて、実際果林先輩の社会学的な視点や論理的思考に基づく討論力などは先生に一目置かれるレベルだ。
高木先輩も先生が成績などには現れないところの果林先輩の社会学的な力みたいなものを褒めているのを何度も聞いたことがあるそうだし、口で戦う力は鍛えてもらいなさいよと何度も言われて来たそうだ。今から思えば、俺も果林先輩にもうちょっと鍛えてもらえば良かったかもしれない。
「ゼミでやってる果林先輩の番組を果林先輩の番組たらしめるのは高木先輩のミキサーなんだよなあ、やっぱり」
「オープンキャンパスとか、デカい場面でここぞと出して来るもんな」
「そうなんだよ。何だかんだ言って肝心な時は果林先輩頼みなところもある」
でも、多分今は難しいんだろうなあ。何かちょっと前からあの2人、結構ギクシャクしてるし。仲良いトコしか見てきてないから、あんだけ絡みのない先輩たちに違和感しかないっていう。喧嘩してるなら仲直りして欲しいし、別の要因でも早く元に戻って欲しい。
「そういや明日はまいみぃが番組やるって言ってたな」
「あ、そうだっけ。応援行く?」
「行くだけ行くことにはなると思う。とりあえず今日はシノの応援かな」
「そだね~」
end.
++++
フェーズ2の+1年軸は17年度でやってた+2年軸の世界線。なのでタカりんは絶賛ギクシャク中。ゼミ合宿を待て
で、その時間軸だとMBCCも今の1年生たちに代替わりが済んでるし、各役職の発表もされてる。機材部長はともかくアナ部長は誰だ。
むぎぃが果林のファンということが明かされたのでいつかオープンキャンパスの番組とかも聞いてる話とか見たいね
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