2021(03)
■スキャナーの活用法
++++
「今日で今年度の活動っていうのは一応一段落っていうことで、とりあえず最後にやるのはアレでいーんすかね」
「アレだな」
「そしたらL先輩に指揮を取ってもらうべ」
今日で最後なのかーとしみじみしていたら、それじゃやりますとL先輩が両手をパンと打った。1年6人は何が始まるのかと立ち尽くすしか出来なかったけど、2年生以上の先輩はアレという言葉だけで察したのか、それぞれの持ち場についていく。
「そしたらササとシノは荷物のラックを外に出して、サキとすがやんでベンチを出してくれっていう」
「エージ先輩、今から始まるのって大掃除ですか?」
「L先輩がこんだけ気合入れることは掃除以外にないっていう」
「そう言われれば確かに」
「エイジ、粗方搬出が終わったらシノとサキ借りていい?」
「ああ、機材周りの整理があるんだったな。じゃ俺はササとすがやんを預かるっていう」
大掃除をするのがサークルの伝統なのかと思いきや、ここまでの規模の掃除は去年の2月とか3月にやったのが初めてで、それまではラグや床の上に掃除機をかけるくらいだったそうだ。L先輩からエイジ先輩っていう綺麗好きの流れが掃除をするっていう行動を当たり前にしてるんだろうなと。
ラックや何かの大物を通路に出して、天井から壁、床にかけての拭き掃除が始まる。天井を掃除した時に埃とかが降って来ないように、機材にはしっかりと適当な布でカバーがかけられている。一旦撤去されたラグも、埃を叩いたりするのに外に持って行かれたようだ。
「そしたらサキは……ああ、ゴメンササ、ちょっとあの上のカゴ取ってもらっていい?」
「はい」
「重いから気を付けてね」
高木先輩から取るように頼まれたのは、サキがいつも読んでいるような古いノートが詰まったカゴだ。MBCCの歴史が詰まっていると言っても過言ではないこのノートに触るのだろうか。
「ここに、先生からもらったスキャナーと借りた裁断機があるから、サキは過去のノートの自炊をやってくれる?」
「いいんですか」
「やっちゃって。ああ、いつ頃のノートかとか、フォルダで分けるとかファイル名で区別しておいてもらえれば後から分かりやすくなるかな」
「最終的にドライブに突っ込むような感じですか」
「そうだね。せっかく掃除してもらったし、紙屑とかが片付けやすいように裁断はこのシートの上でやってもらって」
「わかりました」
「で、シノはこの1年のうちに増えた機材のチェックをして、今後MBCCで使いそうかどうか、使わないなら処分なのか譲渡なのかっていうのを俺と確認していくよ」
「了解っす!」
と言うか高木先輩、サキが自炊に使うスキャナーを「先生からもらった」ってサラッと言ったけど言ってることが例によっておかしいんだよな。一度に何十枚もセットしてスキャンできる、立派なスキャナーなんだよな。これには果林先輩もさすがに感心している様子。
一方、その他の掃除の方も順調に進んでいた。ハナ先輩とくるみはラグを干してきたようだし、その他のメンバーも要らない物を分別したり窓やイスの脚の裏を拭いたりとやることは案外ある。俺は身長が高い方だから高所作業の担当になりがちだ。
「高木先輩、俺思ったんですけど質問していーすか?」
「ああうん、いいよ。どうしたのすがやん」
「これ、今サキがスキャンしてるのって文章が書かれた紙じゃないすか」
「そうだね」
「写真のデータ化みたいなことも出来るんすか?」
「理論上出来るんじゃないかな」
「あー、そしたらやっぱ紙の写真とかはやっといた方がラクっすよね」
「すがやんは紙の写真をいっぱい持ってるの?」
「MMPのサークル室って、すげー分厚いアルバムが何冊もあるんすよね。菜月先輩がメチャクチャ撮ったヤツらしいんすけど。そのことを思い出して。でも、ああいうのってアルバムを開くっていう行為が楽しかったりもすんのかなー」
「すがやん、手が空いてるならこっち手伝ってくれる?」
「オッケー、何やる?」
「スキャンが終わった紙の整理とか」
昔のノートだとかMDストックだとかがどんどんデジタルデータ化されていって、圧縮されているのをサークル室の機材や広さからも少しずつ感じている。特に書類なんかは何年先の物まで保管しておくかの線引きが難しい。5年以上前とかならもうデータがあるだけ儲けものみたいな感覚でいいのかな。
「高木先輩、俺も思ったこと聞いていーすか?」
「いいよ」
「このスキャナーって、もうサークルの備品になったみたいなことすか?」
「そうだね。裁断機は借りただけだけど、スキャナはもうここに置くことにしたから」
「そしたら、例えばっすけど、ササのノートとかプリントをスキャンしてデータ化して、それを俺に送るみたいなことも出来る的な?」
「……出来るけど、本当にやる気?」
「最悪の事態を回避するためならガチでやります。プリントとかがデータ化されてたら俺もバイト中とか通学時間中に勉強出来るじゃないすか」
「言ってることは尤もらしいんだけどねえ。一応言っとくけど、ノート持ち込み可のテストもあるけどちゃんと自筆じゃないとダメだからね」
「それはわかってるっす」
「そういうことだからササ! 頼む! 何卒!」
1人暮らしもしたいしゼミでの立場もあるし成績はガチで大事なんだーとシノは懇願する。俺もシノの成績のことは頼まれているし、1人暮らしが出来るように応援している立場としては勉強のサポートはするつもりではいたんだけど。そうか、データ化が出来るようになったのか。
「先輩、いいんですか」
「シノの成績が悪いと俺と果林先輩にも実害が及ぶし、いいんじゃないかな」
end.
++++
シノの成績が良くなってしまうと避雷針が無くなるんやよTKGよ。まあのらりくらりやってくんだろうけど
MBCCの大掃除回。3年生のラストなのにLが指揮をとっての大掃除なところが今期のMBCCっぽさなのよ。
TKGがスキャナーをどうやってヒゲさんからゲットしてきたのかはわからんけど、果林は来期MBCCも安泰だわーって思ってる多分
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「今日で今年度の活動っていうのは一応一段落っていうことで、とりあえず最後にやるのはアレでいーんすかね」
「アレだな」
「そしたらL先輩に指揮を取ってもらうべ」
今日で最後なのかーとしみじみしていたら、それじゃやりますとL先輩が両手をパンと打った。1年6人は何が始まるのかと立ち尽くすしか出来なかったけど、2年生以上の先輩はアレという言葉だけで察したのか、それぞれの持ち場についていく。
「そしたらササとシノは荷物のラックを外に出して、サキとすがやんでベンチを出してくれっていう」
「エージ先輩、今から始まるのって大掃除ですか?」
「L先輩がこんだけ気合入れることは掃除以外にないっていう」
「そう言われれば確かに」
「エイジ、粗方搬出が終わったらシノとサキ借りていい?」
「ああ、機材周りの整理があるんだったな。じゃ俺はササとすがやんを預かるっていう」
大掃除をするのがサークルの伝統なのかと思いきや、ここまでの規模の掃除は去年の2月とか3月にやったのが初めてで、それまではラグや床の上に掃除機をかけるくらいだったそうだ。L先輩からエイジ先輩っていう綺麗好きの流れが掃除をするっていう行動を当たり前にしてるんだろうなと。
ラックや何かの大物を通路に出して、天井から壁、床にかけての拭き掃除が始まる。天井を掃除した時に埃とかが降って来ないように、機材にはしっかりと適当な布でカバーがかけられている。一旦撤去されたラグも、埃を叩いたりするのに外に持って行かれたようだ。
「そしたらサキは……ああ、ゴメンササ、ちょっとあの上のカゴ取ってもらっていい?」
「はい」
「重いから気を付けてね」
高木先輩から取るように頼まれたのは、サキがいつも読んでいるような古いノートが詰まったカゴだ。MBCCの歴史が詰まっていると言っても過言ではないこのノートに触るのだろうか。
「ここに、先生からもらったスキャナーと借りた裁断機があるから、サキは過去のノートの自炊をやってくれる?」
「いいんですか」
「やっちゃって。ああ、いつ頃のノートかとか、フォルダで分けるとかファイル名で区別しておいてもらえれば後から分かりやすくなるかな」
「最終的にドライブに突っ込むような感じですか」
「そうだね。せっかく掃除してもらったし、紙屑とかが片付けやすいように裁断はこのシートの上でやってもらって」
「わかりました」
「で、シノはこの1年のうちに増えた機材のチェックをして、今後MBCCで使いそうかどうか、使わないなら処分なのか譲渡なのかっていうのを俺と確認していくよ」
「了解っす!」
と言うか高木先輩、サキが自炊に使うスキャナーを「先生からもらった」ってサラッと言ったけど言ってることが例によっておかしいんだよな。一度に何十枚もセットしてスキャンできる、立派なスキャナーなんだよな。これには果林先輩もさすがに感心している様子。
一方、その他の掃除の方も順調に進んでいた。ハナ先輩とくるみはラグを干してきたようだし、その他のメンバーも要らない物を分別したり窓やイスの脚の裏を拭いたりとやることは案外ある。俺は身長が高い方だから高所作業の担当になりがちだ。
「高木先輩、俺思ったんですけど質問していーすか?」
「ああうん、いいよ。どうしたのすがやん」
「これ、今サキがスキャンしてるのって文章が書かれた紙じゃないすか」
「そうだね」
「写真のデータ化みたいなことも出来るんすか?」
「理論上出来るんじゃないかな」
「あー、そしたらやっぱ紙の写真とかはやっといた方がラクっすよね」
「すがやんは紙の写真をいっぱい持ってるの?」
「MMPのサークル室って、すげー分厚いアルバムが何冊もあるんすよね。菜月先輩がメチャクチャ撮ったヤツらしいんすけど。そのことを思い出して。でも、ああいうのってアルバムを開くっていう行為が楽しかったりもすんのかなー」
「すがやん、手が空いてるならこっち手伝ってくれる?」
「オッケー、何やる?」
「スキャンが終わった紙の整理とか」
昔のノートだとかMDストックだとかがどんどんデジタルデータ化されていって、圧縮されているのをサークル室の機材や広さからも少しずつ感じている。特に書類なんかは何年先の物まで保管しておくかの線引きが難しい。5年以上前とかならもうデータがあるだけ儲けものみたいな感覚でいいのかな。
「高木先輩、俺も思ったこと聞いていーすか?」
「いいよ」
「このスキャナーって、もうサークルの備品になったみたいなことすか?」
「そうだね。裁断機は借りただけだけど、スキャナはもうここに置くことにしたから」
「そしたら、例えばっすけど、ササのノートとかプリントをスキャンしてデータ化して、それを俺に送るみたいなことも出来る的な?」
「……出来るけど、本当にやる気?」
「最悪の事態を回避するためならガチでやります。プリントとかがデータ化されてたら俺もバイト中とか通学時間中に勉強出来るじゃないすか」
「言ってることは尤もらしいんだけどねえ。一応言っとくけど、ノート持ち込み可のテストもあるけどちゃんと自筆じゃないとダメだからね」
「それはわかってるっす」
「そういうことだからササ! 頼む! 何卒!」
1人暮らしもしたいしゼミでの立場もあるし成績はガチで大事なんだーとシノは懇願する。俺もシノの成績のことは頼まれているし、1人暮らしが出来るように応援している立場としては勉強のサポートはするつもりではいたんだけど。そうか、データ化が出来るようになったのか。
「先輩、いいんですか」
「シノの成績が悪いと俺と果林先輩にも実害が及ぶし、いいんじゃないかな」
end.
++++
シノの成績が良くなってしまうと避雷針が無くなるんやよTKGよ。まあのらりくらりやってくんだろうけど
MBCCの大掃除回。3年生のラストなのにLが指揮をとっての大掃除なところが今期のMBCCっぽさなのよ。
TKGがスキャナーをどうやってヒゲさんからゲットしてきたのかはわからんけど、果林は来期MBCCも安泰だわーって思ってる多分
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