2021(03)
■無自覚の強み
++++
「プロさん、お土産です」
「今回はどこに行って来たの?」
「水堀ですね」
いつもながら、話を聞く度に朝霞のバイタリティはどうなっているのだと不思議でならない。いくら現在大学4年で授業がそこまでないと言ってもあっちこっちを行ったり来たりして動画撮影だの何だのと忙しくしていれば、たまには自堕落に過ごしたくなることもあるだろうに。
土産物の類はとりあえずキョージュ宅に持ち込んでおけというスタンスだ。豊葦に行きたいから付き合ってくれと足のように使われたのには納得行かんが、オレもヒマだからと朝霞の部屋を勝手に訪れたりしているのでやっていること自体に大差はなかった。
「へえ、西かあ。レイ君て光洋とか行ってるイメージ強いけど今回は西だったんだね」
「カンヂさんに呼ばれて動画撮影してたんですよ」
「へえ、何撮ってたの?」
「カンヂさんと2人で撮ってたのは短めのTRPGとか2人でやるシミュレーションゲームで、あといきなりミキさんとハクさんが来たんで、ノリでいろいろ撮ってました」
「マジで? 結構なベテランが来たじゃん。しかもミキさんとハクさんて普通に東都に住んでるでしょ? アポなしでよく来たね。で、急に人数増えて何やってたの?」
「パーティーゲームやったり、普通に外に出てアナログゲームを現地調達したりして。ああ、プロさんとソルさんによろしくと言付かったので、ここで伝えておきます」
「はいどーも。確かに」
“カンヂ”に“ミキ”、そして“ハク”はそれぞれネット世界で長く活動している実況者で、実況動画を適当に見ようと思うとおすすめ動画に上がって来たりもするから、チャンネル登録はしていなくとも名前は知っているというユーザーも多いのではないかと思う。
レイこと朝霞は持ち前のコミュ力からか、ベテラン実況者に誘われてマイクラサーバーに入ったりして日々交流をしていく中で知り合いをどんどん増やしていたようなのだ。カンヂはチャンネル登録者数30万を有する実況者だが、元々活動していた動画サイトでの支持は今なお厚い。
「でもあの辺の人たちって俺から見ても結構年上じゃん。レイ君ジェネレーションギャップとか大丈夫だった?」
「それすら楽しむ感じでしたね」
「いくつ年違うんだっけ」
「カンヂさんが8コ上で、ミキさんが一回り上って言ってました」
「一回りは結構だねえ」
「その年代の実況者とはマイクラサーバーの方でも話しているから比較的慣れてはいるだろう」
「まあね。あっ、でも在りし日のプロさんとソルさんの話なんかも聞けたのは凄かったです」
「俺らの話? あの辺と絡みあったっけ」
「昔一度だけP&Sがイベントに出たことがあったそうなんですけど、そこでの話ですね」
「昔って何年前だっけ。俺が今年26じゃん、だから10年は経ってないと思うんだけどなー。まあいいや。ちなみにどんな話だった?」
「P&Sはゲームのスキルが凄く高いし無駄話もほとんどなくて、コラボもない、イベントもほとんど出ないユニットだからどんな奴が来るんだと思ったら凄い若い子で驚いたとか、そんなような話でしたね」
「ああ、よく言われるようなことだね。実際去年のアモアスで久々に他の実況者と絡んだもんね」
今ではUSDXというグループになったが、元々はP&Sというコンビだった。当時のキョージュとソルはゲームのプレイで魅せるタイプの実況者で、ゲーム実況とは名ばかりで動画内に賑やかしのようなトークなどはほとんどなく、他実況者との絡みもほとんどなかったそうだ。
P&S時代から見ている視聴者の中にはUSDXになってキャラ推しアイドル実況者路線に堕ちたかと幻滅した者も少なくないようだが、P&SだろうがSDXだろうがUSDXだろうが、その時キョージュのやりたいことをやりたいようにやっているだけなので、キャラ遊び路線も飽きれば辞める、それだけだ。
「カンヂさんとはどこで仲良くなったの?」
「TRPGの方ですね。他の方も含めた卓でGMやってたんですけど、そこでご一緒させてもらって。カンヂさんベースやってるじゃないですか。それでギターの練習配信とかも見てもらってたみたくて。上手くなったね~ってあの声で褒められたらお世辞でもメチャクチャ嬉しいじゃないですか」
「わかる。あの人優しいけど結構毒舌だからね」
「オレはあの人のバイオ実況などは全シリーズ制覇したな。考察などもしっかりしているし、何より上手い」
「今度人狼に誘われたし、また遊ばせてもらうことにはなってて」
「あの人結構人狼強いから心してかかった方がいいよ」
「はい。他にも心得のある人が揃ってるみたいです」
世間話にこそジェネレーションギャップはあれど、今一緒にやっているゲームに関しては同じ目線で、対等に話が出来るところが趣味の友人、知り合いのいいところだと考える。USDXというグループのメンバーにしてもそうだろう。
「でも、ミキさんとカンヂさんと普通に遊べるようになったとなれば、レイ君ワンチャン彼らのやってるネット番組にゲスト出演とかもあるんじゃない?」
「いやあ、まさか。俺みたいなペーペーのへっぽこなんか呼ばれませんよ」
「ペーペーのへっぽこだからこそ出せる撮れ高も少なからずあるけど、それだけなら長年実況やっててそれで食べてる人らが年も離れた新人をわざわざ遊ぼうって誘わないから。実況者としての強みを驕らない程度に自覚して磨くのも大事だよ」
実況者としての強みか~と朝霞は考え込んでしまった。ただ、USDXというグループの中で言えば「人間らしい」という点においては突出しているし、身近な存在、親しみやすい存在として扱われているのではないかとオレは思う。
「よくよく考えたらプロさんも長年実況やってる人でしたね」
「そうだよ。イベントに呼ばれるくらいには数字持ってたんだよ」
end.
++++
大人の友達にこねくり回されて可愛がられてるレイ君がみたいだけのヤツだけど、それはまだこの時間軸では早い。もうちょっと先。
プロ氏は今年26でソルさんが27。歴自体はまあまああるけど始めたのが早いのでベテラン勢から見てもまだまだ若者。
実況者としての強み。レイ君はコミュ力だとは思うけど、バネ様は何かな? やっぱりプレイヤースキルとかになるのかしら
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「プロさん、お土産です」
「今回はどこに行って来たの?」
「水堀ですね」
いつもながら、話を聞く度に朝霞のバイタリティはどうなっているのだと不思議でならない。いくら現在大学4年で授業がそこまでないと言ってもあっちこっちを行ったり来たりして動画撮影だの何だのと忙しくしていれば、たまには自堕落に過ごしたくなることもあるだろうに。
土産物の類はとりあえずキョージュ宅に持ち込んでおけというスタンスだ。豊葦に行きたいから付き合ってくれと足のように使われたのには納得行かんが、オレもヒマだからと朝霞の部屋を勝手に訪れたりしているのでやっていること自体に大差はなかった。
「へえ、西かあ。レイ君て光洋とか行ってるイメージ強いけど今回は西だったんだね」
「カンヂさんに呼ばれて動画撮影してたんですよ」
「へえ、何撮ってたの?」
「カンヂさんと2人で撮ってたのは短めのTRPGとか2人でやるシミュレーションゲームで、あといきなりミキさんとハクさんが来たんで、ノリでいろいろ撮ってました」
「マジで? 結構なベテランが来たじゃん。しかもミキさんとハクさんて普通に東都に住んでるでしょ? アポなしでよく来たね。で、急に人数増えて何やってたの?」
「パーティーゲームやったり、普通に外に出てアナログゲームを現地調達したりして。ああ、プロさんとソルさんによろしくと言付かったので、ここで伝えておきます」
「はいどーも。確かに」
“カンヂ”に“ミキ”、そして“ハク”はそれぞれネット世界で長く活動している実況者で、実況動画を適当に見ようと思うとおすすめ動画に上がって来たりもするから、チャンネル登録はしていなくとも名前は知っているというユーザーも多いのではないかと思う。
レイこと朝霞は持ち前のコミュ力からか、ベテラン実況者に誘われてマイクラサーバーに入ったりして日々交流をしていく中で知り合いをどんどん増やしていたようなのだ。カンヂはチャンネル登録者数30万を有する実況者だが、元々活動していた動画サイトでの支持は今なお厚い。
「でもあの辺の人たちって俺から見ても結構年上じゃん。レイ君ジェネレーションギャップとか大丈夫だった?」
「それすら楽しむ感じでしたね」
「いくつ年違うんだっけ」
「カンヂさんが8コ上で、ミキさんが一回り上って言ってました」
「一回りは結構だねえ」
「その年代の実況者とはマイクラサーバーの方でも話しているから比較的慣れてはいるだろう」
「まあね。あっ、でも在りし日のプロさんとソルさんの話なんかも聞けたのは凄かったです」
「俺らの話? あの辺と絡みあったっけ」
「昔一度だけP&Sがイベントに出たことがあったそうなんですけど、そこでの話ですね」
「昔って何年前だっけ。俺が今年26じゃん、だから10年は経ってないと思うんだけどなー。まあいいや。ちなみにどんな話だった?」
「P&Sはゲームのスキルが凄く高いし無駄話もほとんどなくて、コラボもない、イベントもほとんど出ないユニットだからどんな奴が来るんだと思ったら凄い若い子で驚いたとか、そんなような話でしたね」
「ああ、よく言われるようなことだね。実際去年のアモアスで久々に他の実況者と絡んだもんね」
今ではUSDXというグループになったが、元々はP&Sというコンビだった。当時のキョージュとソルはゲームのプレイで魅せるタイプの実況者で、ゲーム実況とは名ばかりで動画内に賑やかしのようなトークなどはほとんどなく、他実況者との絡みもほとんどなかったそうだ。
P&S時代から見ている視聴者の中にはUSDXになってキャラ推しアイドル実況者路線に堕ちたかと幻滅した者も少なくないようだが、P&SだろうがSDXだろうがUSDXだろうが、その時キョージュのやりたいことをやりたいようにやっているだけなので、キャラ遊び路線も飽きれば辞める、それだけだ。
「カンヂさんとはどこで仲良くなったの?」
「TRPGの方ですね。他の方も含めた卓でGMやってたんですけど、そこでご一緒させてもらって。カンヂさんベースやってるじゃないですか。それでギターの練習配信とかも見てもらってたみたくて。上手くなったね~ってあの声で褒められたらお世辞でもメチャクチャ嬉しいじゃないですか」
「わかる。あの人優しいけど結構毒舌だからね」
「オレはあの人のバイオ実況などは全シリーズ制覇したな。考察などもしっかりしているし、何より上手い」
「今度人狼に誘われたし、また遊ばせてもらうことにはなってて」
「あの人結構人狼強いから心してかかった方がいいよ」
「はい。他にも心得のある人が揃ってるみたいです」
世間話にこそジェネレーションギャップはあれど、今一緒にやっているゲームに関しては同じ目線で、対等に話が出来るところが趣味の友人、知り合いのいいところだと考える。USDXというグループのメンバーにしてもそうだろう。
「でも、ミキさんとカンヂさんと普通に遊べるようになったとなれば、レイ君ワンチャン彼らのやってるネット番組にゲスト出演とかもあるんじゃない?」
「いやあ、まさか。俺みたいなペーペーのへっぽこなんか呼ばれませんよ」
「ペーペーのへっぽこだからこそ出せる撮れ高も少なからずあるけど、それだけなら長年実況やっててそれで食べてる人らが年も離れた新人をわざわざ遊ぼうって誘わないから。実況者としての強みを驕らない程度に自覚して磨くのも大事だよ」
実況者としての強みか~と朝霞は考え込んでしまった。ただ、USDXというグループの中で言えば「人間らしい」という点においては突出しているし、身近な存在、親しみやすい存在として扱われているのではないかとオレは思う。
「よくよく考えたらプロさんも長年実況やってる人でしたね」
「そうだよ。イベントに呼ばれるくらいには数字持ってたんだよ」
end.
++++
大人の友達にこねくり回されて可愛がられてるレイ君がみたいだけのヤツだけど、それはまだこの時間軸では早い。もうちょっと先。
プロ氏は今年26でソルさんが27。歴自体はまあまああるけど始めたのが早いのでベテラン勢から見てもまだまだ若者。
実況者としての強み。レイ君はコミュ力だとは思うけど、バネ様は何かな? やっぱりプレイヤースキルとかになるのかしら
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